転生死神ちゃんは毎日が憂鬱なのDEATH

小坂みかん

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* 死神生活三年目&more *

第320話 ジャージ戦隊★キントレン②

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【第**話】

〈シーン1 @@アリーナ裏〉

薫ちゃん(以下、黄)「追い詰めたぞ、蓄音鬼ッ!」

蓄音鬼「くっ……!」

キントレン全員「唸れ、筋肉ッ! ハム・エクササイズボンバーッ!」


 蓄音鬼に一人ずつ、ワン、ツー、エルボーを決めていくキントレン。しかし、一番最後、黄がヒザを入れようと突っ込んでいったものの、何者かが片手で易々とそのヒザを受け止める。


黄「何ッ!?」


 そのまま、跳ね返される黄。そしてキントレン全員に大ダメージが入る。


キントレンたち「キャーッ!」


 爆発が起こり、累々と倒れるキントレンたち。もうもうと煙が上がる中、何者かの不敵な笑い声が響く。どんどん大きくなっていく笑い声を聞きながら、必死に起き上がろうとするキントレンたち。笑い声が絶頂となり、煙が晴れて、キントレンたちは上半身を起き上がらせた状態で愕然とした表情を浮かべる。


もふ殿(以下、青)「おぬしは……!」

ピエロさん(以下、桃)「三下・マサちゃん……!」

サイボーグ・マサ(以下、マサ)「はーっはっはっはっはっはっ!」


(タイトルロゴ表示。主題歌IN)


〈シーン2 モニター映像〉

 番組アナウンサー(広報部ニュース担当)、ニュースを読み上げる。


アナ「御狐町で発生した〈悪の科学者ビット〉の手下による襲撃事件の続報です」


 画面切り替わり、街の防犯カメラの映像として〈サイボーグ・マサが笑い声を轟かせながら街のあちこちを爆破して回る映像〉が映し出される。現場中継として五歩ごぶさん(受付ゴブリン嬢)の映像にさらに移り変わるが、そこにマサが乱入して五歩は一言も発する間もなく画面から消える。


アナ「現場の五歩さん!? 五歩さん、大丈夫ですか!?」


〈シーン3 作戦会議室〉


 ゴブリン嬢が画面から消え、アナウンサーが必死に呼びかけているモニター映像を、手負いのキントレンたちが呆然と眺めている。にゃんこ(以下、緑)は部屋の隅に設置されたキャットタワーに潜り込んでおり、尻尾がぐったりと外に垂れているのが見える。


青「まさか、かなり前に倒したはずのあの三下が復活するとは思わなかったのじゃ……」

桃「しかも、あんな魔改造を施されてさ。三下のくせにパワーアップして復活とか、ふざけてるよね!」

黄「グレート・マサか……。とても恐ろしいやつだったな……」


 三人がため息混じりにぼんやりとモニターを眺めていると、颯爽とケイティー軍曹(以下、軍曹)が会議室に入ってくる。


軍曹「みんな、聞いてくれ。グレート・マサについて、解析結果が出たぞ。残念ながら、最悪であると言わざるを得ない。攻撃力だけではなく、諦めの悪さ、俊足、ポジティブシンキングなど〈その他諸々〉の部分までもが当社比二倍となっていた」

桃「何それ、超絶面倒臭い!」

黄「とっととカタをつけないと、どこまでも粘着してきそうだよな」

青「じゃが、わらわの町は今もなおピンチなのじゃ。〈たいいくのおじかん〉でおさらいしている暇はないのじゃ。――こう、〈まほーしょうじょ〉のようにパッと〈おきがえ〉で〈ぱわーあっぷ〉できたらいいのじゃが……」

黄「ドーピングしようってか!? それは、筋肉に対して、とても失礼じゃあないのか!? 筋肉との信頼を裏切るようなことなんて、俺にはできないんだが……!」


 勢い良く立ち上がる黄。しょんぼりとうなだれる青。呆れ顔の桃。気まずい雰囲気の三人を、軍曹が諌める。


軍曹「まあ、待て。イエロー。お前の気持ちは痛いほど分かる。しかし、今は時間がない。――先ほど、ブルーが〈魔法少女のように〉と言っていたが、隊のデータベースにそれらしい情報があったな。御狐町のどこかに何かあるらしいんだが……」

黄「ブルーの町に、そんなものが!?」

桃「ブルー、何か心当たりないの? ないの?」

青「残念ながら、初耳なのじゃ……!」

軍曹「こちらのほうでも、いろいろとデータを洗い直してみるとしよう。だから、お前らも、町で聞き込みをしてみてはくれないか?」

黄・青「おうっ!」

桃「合点承知の助だよー!」


〈シーン4 聞き込みをするキントレンたちと、データを洗い直す軍曹と支援班の面々〉

 一生懸命に町で聞き込みをするキントレンたちと、調べものをする司令部の面々のカット。合間に、聞き込み先のたいやき屋からたいやきをご馳走になる黄と青。ジュースのネオ屋台で美容に良さそうなスペシャルスムージーを購入して、おサボりする桃。猫の集会に参加する緑。


〈シーン5 食堂〉


 聞き込み作業に疲れたキントレンたちがひとつのテーブルに集まり、ぐったりとしている。


黄「お前ら、何か収穫あったか……?」

緑「なーんもないのね……」

桃「もうマジ、お手上げだね……!」

青「わらわの町に、かようなものが本当にあるのじゃろうか……」


 しょんぼりとする四人。そこに、食堂を経営する”みんなのお母さん”・マッコイさん(以下、母)が特製パフェを乗せた盆を持ってやって来る。


母「みんな、浮かない顔してどうしたの? さあ、マコママ特製パフェでも食べて、元気を出して」

黄「いつも、すまないな」

青「うむー、ありがたいのじゃー……」

桃「ねえねえ、マコママ」

母「なあに?」

桃「御狐町に古くから伝わるホニャララ的なものとかさあ、最近になっていきなり現れたナニソレ的なものとかでさあ、みんなが知らないようなニッチなやつ、知ってたりしない?」

母「心当たりは、ないわねえ……」

緑「デスヨネなのね……」

母「あ、でも、あのおじいちゃんに聞いたら分かるかも」

黄「おじいちゃん?」

母「ほら、あそこの席に座っている。あのおじいちゃん、うちの常連さんの一人なんですけど、若かりしころは近くの大学でこの地域の民俗史について研究していたんですって」


 母に促されて遠くに視線をやるキントレンたち。頑固そうなダークエルフの老人(組合長)が黙々と食事をしている。


〈シーン6 食堂・ダークエルフを取り囲むキントレンたち〉


老人「御狐町を南に下ったところにある森の片隅に、史跡がひとつある。きちんと管理されていないのでな、草が生え荒れ放題となっていて一見〈史跡がある〉とは気づきにくいが……」


〈シーン7 御狐町はずれ〉


老人(声のみ)「……そこには古びた祠があり、中には破魔の杖が収められていると聞く。真偽を確かめるべく調査を行いたかったのだが、調査費を認めてはもらえんでな。祠の中は結構なダンジョンとなっているようだったので、自力で調査するにも限界で。だから、儂もそれ以上のことは、残念ながら分からんのじゃ。気になるようなら、直接確かめに行ってみるといい」


 老人の語りをBGMに御狐街のはずれを走り、森に分け入っていくキントレンたち。老人の語りが終わるのと同じタイミングで、キントレンたちは祠を無事見つける。
 突如、祠に入っていこうとするキントレンたちは攻撃に遭う。


緑「誰なのね!?」

マサ「俺様だぜぇッ!」

桃「三下!」

マサ「三下じゃねえ! 確かに、蓄音鬼には先に昇進された挙句、一度はお前らに敗れた。しかし、俺様はグレートになって帰ってきた! もう、三下呼ばわりなんかさせねえぜ! ――ゆけっ、ロボット兵! 蓄音鬼よ、死の旋律を奏でてやれッ!」


 放たれるロボット兵。無表情でバイオリンを演奏し始める蓄音鬼。蓄音鬼の演奏により、ここそこの土がボコボコと盛り上がり、そこからゴーレムが二体発生する。
 多勢に無勢の状態に、顔をしかめて歯ぎしりをするキントレンたち。青は泣きそうな顔でぷるぷると震えながら、黄を見て拳を握る。


青「イエロー! ここはわらわたちが食い止めるのじゃ! おぬしは祠の中に行くのじゃ!」

黄「でも……!」

桃「この中で一番筋肉に愛されているのはイエローだからね! イエローならきっとやり遂げてくれるって、あたい、信じてるよ!」

緑「さあ、行くのね、イエロー!」


 意を決するように頷く黄。仲間に背を向け、黄は祠の中へと駆け込んでいく。


マサ「逃がすかよッ!」


 黄を追って、マサも祠の中へと入っていく。


〈シーン8 祠の中〉


 入り組んだ道を進んでいく黄。追いすがるマサ。マサから砲撃を受け、すんでのところでそれをかわす黄。そこから、格闘戦にもつれ込む。打ちのめしても打ちのめしても、めげずに追い掛けてくるマサ。


黄「お前、本当にしつこいよ!」

マサ「なにせ、グレートだからな! 一筋縄ではいかないぜ! ――今頃、外では蓄音鬼がお前の仲間達をズタボロにしているだろうよ」

黄「くっ、みんなが待ってくれているんだ! 俺は、みんなの期待に応えるんだ!」

マサ「諦めて、お前も俺にやられちまいな!」


 格闘戦のすえ、もつれ合う二人。そのまま、一緒にシュート穴に落ちる。〈もはや、ここまでか〉というかのような苦渋に満ちた表情を浮かべて、上半身を起き上がらせる黄。まだマサは、少し離れたところで四つ這いとなり、頭を抱えて朦朧としている。
 黄はすぐ近くに発光する何かを見つけてハッとする。その何かに、黄はすがりつくように手を伸ばす。


〈シーン9 祠前〉


 押されに押されてボロボロ気味のキントレンたち。蓄音鬼が弓を構え、最後の一曲を奏でようとポーズをとったところに、光の塊が降ってくる。光はキントレンたちと蓄音鬼の間に降り立ち、蓄音鬼は思わず後ろへと身を引く。
 光が消えると、そこには魔法の杖を握りしめた黄が立っている。


黄「待たせたな、みんな!」

青・桃・緑「イエロー!」

桃「マサちゃんは!?」

緑「倒したのね!?」

黄「いや……。こいつを手にして、気がついたらここに帰ってきていたんだよ。――なんだ、こいつは。まるで生きているみたいだ。……お前を、天高く振り上げれば良いのか?」


 魔法の杖を天高く振り上げる黄。すると、南瓜ヘルムをかぶった魔女っ子姿に変身する。


青「ふおおおおおお! イエローが! イエローが〈まほーしょうじょ〉になったのじゃ!」

黄「この後は、どうしたらいいんだ?」


 困り顔でヘルムをポンと叩く黄。すると、南瓜の〈目〉の部分からビームが発射され、偶然にもゴーレムを一体倒すことに成功する。ギョッとする黄に、呆れ顔の桃。とりあえずにこにこと笑う緑。


青「ふおおおおおお! すごいのじゃ! ずるいのじゃ! わらわも変身したいのじゃ!」

桃「とりあえず、イエロー。そのまま、こいつら、やっちゃってよ」

黄「お、おう」

蓄音鬼「……させるかッ!」


 演奏を始める蓄音鬼。残ったゴーレムは強化され、クレマンドラレムへと進化する。黄は魔法の杖を構えて走り出すと、クレマンドラレムめがけて杖を思い切り振り下ろす。


桃「はあああああああ!? イエロー、何しちゃってんの!? 何で物理なの!? さっきのビームは!? 魔法は!?」


 顰蹙ひんしゅくの声を上げる桃。笑顔で応援する青と緑。黄は魔法の杖を捨てて、次々とプロレス技を繰り出していく。とうとう、地に伏すクレマンドラレム。蓄音鬼は苦々しげな表情を浮かべて、バイオリンをひと鳴らしする。


蓄音鬼「オーガニックキマイラ・クレマンドラレム! 再構築リアセンブリーッ!」

桃「あちしたちも! ――グレートソルジャー!」


〈シーン10 どこぞの採石場〉

 巨大化したクレマンドラレムと対峙するグレートソルジャー。脚部の収納からストレッチ運動などに用いるようなゴムバンドが飛び出す。持ち手の部分に重しがついており、グレートソルジャーはそれをフレイルのように振り回す。チェーンでの攻撃を受け、クレマンドラレムはよろける。


〈シーン11 巨大ロボ・グレートソルジャー内〉

青「今なのじゃ!」

緑「必殺!」

黄・桃「マキシマムマッスルラブボンバー!」


 四人揃って、V字に伸ばした腕を胸の前でクロスさせてポーズをとる。


〈シーン12 どこぞの採石場〉

 光るグレートソルジャー。バンザイをした状態でクレマンドラレムへと突っ込んでいき、まるでクレマンドラレムをハグをするかのような動きをする。ハグをされたクレマンドラレムはその力強いハグに耐えきれず、爆発四散する。爆煙から滑るように、胸の前で手をクロスさせ片膝をついたような状態で颯爽と現れるグレートソルジャー。


〈シーン13 巨大ロボ・グレートソルジャー内〉

 勝利したことに、その場で飛んだり跳ねたりしながら喜ぶキントレン。


キントレン全員「うおおおおおお、ビクトリーッ!」


〈シーン14 採石場から少し離れた場所〉

 グレートソルジャーを見上げて悔しそうに顔を歪めるマサ。不甲斐なさそうにバイオリンのネックを握りしめる蓄音鬼。


マサ「次こそは、必ず……!」


〈シーン14 食堂〉

  二人ずつ、青と黄・緑と桃が向かい合うように座っている。そこに、母が料理を運んでくる。


母「はい、みんな、お疲れ様。マコママ特製、ホットケーキよ」

青「ふおおおおおお! 一枚一枚がいろんな動物の形をしていて、可愛らしいのじゃ!」

軍曹「みんな、よく頑張ったな。私のおごりだ、存分にやってくれ」

桃「さっそく追加注文しちゃうんだもんね! ママ! ママ!! あちし、スペシャルなシード系ドリンクー!」

黄「あ、俺、肉系の何か。マコママのお任せで」


 笑顔でうなずき、去っていく母。美味しそうにホットケーキを頬張る青。一転して口を尖らせると、羨ましそうにポツリと漏らす。


青「それにしても、イエローばかりずるいのじゃ。わらわも可愛らしく変身したいのじゃ」

軍曹「そうだな。全員が一斉に強化モードを使用できるよう、その魔法の杖を解析するとしよう。イエロー、その杖を私が預かっても問題ないか?」

黄「ああ、もちろん」


 遠くのほうで客が一人、来店。来店者は、例の民俗史の老人。キントレンたちは笑顔で老人に挨拶し、一緒にいかがと口々に誘うのだった。



【第**話 完】



   **********



 来年初頭から放送予定の新番組の〈先日収録した**話〉の編集が終わったということで、死神ちゃんたちは関係者オンリー試写会を行っていた。落とされていた照明が再び明るくなると、開口一番、鉄砲玉が不満をぶちまけた。


「ていうか、俺様は立派な中間管理職じゃあなかったのかよ。途中でクリスに立場奪われて一旦退場した回があっただろ。あのとき、もう復活もなくクランクアップかとヒヤヒヤしたんだぜ。全く、ふざけやがって」


 死神ちゃんが苦笑いを浮かべ、ピエロとにゃんこが呆れを通り越した真顔で沈黙していると、後ろの席から駄々っ子の声がギャンギャンと聞こえてきた。


「ずるいのじゃ! お花ばかりずるいのじゃ! わらわも変身したいのじゃ! 新しい台本にも、まだそういう内容が出てこないのじゃ! いつになったら変身できるのじゃ!」

「お館様、どうか落ち着いてください」


 両手足をバタバタと動かしながら泣きわめく天狐を、おみつは表情を変えることなく淡々と受け流した。すると、天狐は一層激しく暴れまわった。


「いやじゃー! わらわも魔法の杖が欲しいのじゃー! 変身できぬのなら、せめて買うて欲しいのじゃー! 買うてー! 買うて買うて買うてー!」

「買いませんよ。むしろ、買えません」

「何でじゃ! おみつのケチ!」

「この回の放送予定は来年夏ごろです。ですので、魔法の杖が販売されるのも、そのころです。夏休みの玩具商戦に向けて現在生産中のため、まだ市場には出回っていないのですよ」

「生産しておるのなら、手に入るであろう!? なにせ、わらわは〈アイテム開発・管理〉のトップなのじゃからのう!」

「なりません。そういうズルは、いけませんとあれほど――」

「いやじゃー!!」


 ギャン泣きする天狐を死神ちゃんたちが苦笑いで見つめていると、ビットが得意気に割って入ってきた。


「今後の予定なのだが。あの杖を使用してピエロが変身をし、さらには蓄音鬼の手に堕ちてこちら側の人員として大魔法ブッパをしてもらうことになっている。まあ、もちろん、悪の呪縛から逃れて後々キントレン側に復帰するが。あと、全員一斉強化は魔女っ子スタイルではなく、いつものジャージの上にビブスを装着してもらうからな」

「ビブスぅ!? また、ダッサいものを……。女子力の欠片もないよね!?」


 不服そうに口を尖らせたピエロに、死神ちゃんはにやりと笑い、ビットと口を揃えた。


「基本スーツの上にダサい羽織モノをして強化したことにするのは、だからな」


 なおも不服そうにしているピエロに死神ちゃんが得意げに笑いかけていると、天狐がじっとりとした目で見つめてきた。天狐は死神ちゃんとおみつを交互に見ながら、唸るように言った。


「お花はすでにあの杖を持っておるではないか。何故、わらわは駄目なのじゃ」

「ああ、こいつ、妖精を自称するドワーフのおっさんから逃げてきたヤツでさ。まさか撮影のときに再会するとは思わなかったよ」

「撮影以降、第三死神寮で南瓜ともどもペットとして飼われているそうです。つまり、この杖は玩具ではないのですよ。お館様、いい加減に諦めてください」

「いやじゃー! わらわも飼うー! ちゃんと面倒見るからー!」


 この日、天狐は突発で第三死神寮にお泊まりに来て、杖と南瓜を抱えて眠ったという。




 ――――かき入れ時に合わせて玩具を販売するのは、基本中の基本なのDEATH。
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