好奇心に殺される。

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安寧。

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僕は思考する。

思考を止めてはいけないというある種の強迫観念に基づいて思考する。



目の前には想い焦がれる君がいた。

君は、僕の知らない人間と楽しそうに笑い時間を共有し、僕のいない世界で所謂幸せを謳歌している。



物心付いた時から男を取っ替え引っ替えし家に連れ込んでた母親は、母を想う僕の無垢な心でタバコの火を揉み消した。
心底うざったそうな目を僕に向け「家族なんて足枷ね。血の繋がりなんて地獄だわ」と笑った。僕も笑った。
僕に兄弟を作らなくて良かったね、母さん。と思ったからだった。

血縁関係があったとしても所詮は他。混ざり合えるはずもなく、僕と母親は最後まで家族になれなかった。
なれるはずもなかった。



職を失い母に愛想を尽かされ酒と博打に溺れた借金塗れの父親は、父を想う僕の真っ直ぐな心を酒瓶で殴った。
心底この世の中にうんざりしたような目を僕に向け
「お前だってこうなる。蛙の子は蛙なんだ」と笑った。僕も笑った。
蛙の子はおたまじゃくしだよ、父さん。と思ったからだった。


さも最初から絆があったかのように思い込んで生きてきた僕たち3人に、戻る場所も作り上げるも何もなかった。あるはずもなかった。

世間一般では、子供が親の辿った人生に似た人生を歩むらしい。親が金持ちであれば子も自ずと金持ちに。親が片親であれば子もいずれは片親に。


それを聞いて安心した。
僕は一般から外れた勝ち組になったからだった。


僕には今、大切な家族がいる。
優しい微笑みがチャーミングな、母親。
穏やかな笑みを浮かべる、父親。



サークルの中心人物で活発だった股と頭の緩い君は、君を想う僕の心をSNSで嘲笑った。心底嫌悪した目を僕に向け「気持ち悪い。まるで自分が世界の中心ね。」と笑った。僕も笑った。
ハズレ。世界の中心は僕じゃない、僕の眼に映る君と、僕の家族さ。と思ったからだった。


お父さんとお母さんの間に、君を並べる。
君の顔には、見たこともないような満面の笑顔。
少し口角を切り過ぎたらしい。あとで修正。


「母さん、この人が僕の好きな人。」

「父さん、若い時の母さんに似てるだろ?素敵な人なんだ。」

「ねぇ、好きだよ。これが僕の家族さ。4人で素敵な家族になろう。」


もうすぐ春が来る。

花見やピクニック、したいことは沢山あるけれど、
まずは床下に撒く消毒液を買わないといけない。
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