常華

タナトス

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Episode1

Scene3

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―20XX 7.22 10:42―
翌日、ガキの日用品などを揃えるためにガキを連れて町に出ていた。しかしこのガキほとんど喋らないし取り乱したりもしない。昨夜ねぐらに戻ってからも、
『今はお前用の部屋もないからな、そこにある毛布を使って適当に寝ろ。ただし部屋からは出るなよ』
『……(コクリ)』
『腹が減ったら適当に食え。すぐに食えるものはそこの棚に入ってる』
『……(コクリ)』
と、終始この調子である。今も少し物珍しそうに周りを見てはいるが、平静の範疇から出るほどではない。別に良いのだが外見からすれば不釣り合いなほどに落ち着いている。
「なあ、お前齢は覚えているのか?」
「ううん。年齢も覚えてない」
「そうか……」
やはり覚えてはいなかった。元々こういう性格なのか、何かが原因でこうなったのか、ただ警戒されているだけなのかはわからないが、見た目より年齢は高いのかもしれない。少なくともこの落着き様なら20といっても不審に思われたりはしないだろう。
「ねえ」
などと考えていたら、不意に袖を引いてきた。
「どうした?」
「随分表通りから離れてきたけど、どこに向かってるの?」
「あぁ、お前の身分証を手に入れておこうと思ってな」
「なんで?」
第四次大戦がはじまってから、亜人によるスパイおよびテロ行為の防止として世界共通の身分証が人間亜人ともに発行され、携帯することが義務付けられた。これは公共機関の利用などの際に提示を要求され、これに抵抗したり、持ってないのがばれるとよくて実刑、普通はその場で殺されかねない――、などということを説明しながら偽造屋に向かう。ガキは結構熱心に聴いていたが、その様子を見るに忘れているというよりは、元から知らなかったという風だ。学などなくてもただ生きているだけで自然に身につくはずの知識さえ持っていないとは……やはりかなり面倒な存在かもしれない。
「あの」
「どうした?」
「私名前や歳を覚えてないけどどうするの?」
「歳はとりあえず18でいいだろ。名前は何か希望あるか?」
「希望……思いつかない」
「ふむ、まああそこには本来の名前を名乗れなくなったやつとかも来るからな、頼めば適当な名前を付けてくれるからそこで頼めばいいだろ」
まあ追加で金はとられるが、数をこなしているだけあって違和感を持たれたりすることもない名前を付けてくれる。あそこで頼めば大丈夫――
「いや」
「ん?」
「そんなのに適当に名前を付けられるのは嫌」
まあわからないでもないが、
「じゃあお前はどうしたいんだ。何か候補があるのか?」
「あなたが考えて」
「はぁ?」
「あなたは私を拾った。だからあなたが私に名前を付けて」
「んな…いやちょっと待て、正気か?」
コクリと頷いてくる。参った。こんなことになるとは思ってなかった。
「じゃあ、貞――」
「……(ジトッ)」
「冗談だ」
さて困った。当然のごとく俺に名づけの経験などない。とりあえず見た目の印象などから考えればいいのかとこいつを観察する。しかしこいつの髪はすごい。おそらく色は白だがとても艶がよく光を柔らかく反射して銀に光っている。ああ、そうだ――
「白蓮(はくれん)、でどうだ?」
「……ん」
「しかし普段から呼ぶには長いな。呼び方は白(ハク)でいいか?」
「ん、それでいい」
どうやらお気に召したらしい。それから5分ほどで目的地にたどり着く。
「廃ビル?」
「まぁ、さすがに表通りに大々的に店出すわけにはいかんだろ」
なるほどという風に頷く白を連れてビルに入る。
「邪魔するぞ」
「いらしゃ~い、って珍しいやつがき……」
白を見た店主―ギルバートスミス―がカウンターの奥から出てきて俺の肩に手を置く、
「とうとうやっちまったか……これは相当長くぶち込まれるぞ」
「いや、ちげぇよこいつは」
「いや、大丈夫だわかっている。みなまで言うな」
「んだよ。まぁ解ってんなら話は早い。こいつの身分しょ」
「町でさらってきたんだろ?しかしガキとはなぁ。おまえロリ○ンだったのか」
「わかってねぇじゃねえか!!」
「はい。町を歩いていたらいきなり連れてこられて……」
よよよと泣きまねをする白、
「お前も乗るな!」
こいつは思っていたよりだいぶいい()性格をしているのかもしれない。



―20XX 7.22 11:00―
「支部長!脱出艇が見つかりました!!」
「どこだ」
「トウキョウエリアのF7ブロックです!」
「至急部隊を派遣し周辺ブロックを捜索しろ!『種』の発見は我々にとって最重要事項だ、どんな些細な痕跡も見逃すな、心してかかれ!」
「「「「はっ!」」」」



「で?今日は何をしに来たんだ?弾はこの前買ってったし、新調しに来たか?」
あのあと、盛大に悪乗りするギルと白を黙らせるのに30分以上かかった。
「いや、今日はこいつの身分証を手に入れたくてな」
そしてこいつに大雑把に事情を説明する。
「なるほど、しかし話を聞くとなおさら解せねぇな」
「やっぱりお前もそう思うか」
「あぁ。お前の寝床って確かF8ブロックだろ。あそこはこんな小さい嬢ちゃんが一人で入り込める場所じゃねぇはずだ」
「そうなんだよな、隣接ブロックにも孤児院やブローカーのアジトなんてないし、『檻』があんのは特区だしなあ」
昨日から見ている限りでは、白は対して強いわけでもない。百歩譲って何かの間違いで隣接した区から紛れ込んできたとしてもその隣接区に白がいた可能性のある施設がないのだ。そしてこの町で対して強くもないやつがいくつもの区の『裏』を抜けれるわけがない。コイツ(白)があそこにいたのは何とも納得のいかないことだった。
「まあ、んなことはいい。で、作れるのか」
「ああ、1時間もあればできるぜ。登録名とかはどうするんだ」
「歳は18、引受人は俺でいい。名前は――」
「白蓮」
いきなり後ろから発せられた声に少々驚いたが、じっとこちらを見ている白を見て苦笑を浮かべた。
「てなわけで名前は御堂白蓮にしといてくれ」
「オーケー、関係はどうしておく?」
「ふむ、じゃあ兄妹に、いやさすがにばれるか……んじゃまあ従妹にでもしといてくれ」
「あいよ……そういやこの前売った武器の調子はどうだ?」
「ああ、一応今のところ文句なしだ。銃の精度と威力もよかったが、それ以上にあのナイフと刀には驚いたな、全力で振って切りつけても欠けも曲がりもしなかった。」
「そりゃあよかった。たださすがにあれ等匹敵するものはそう頻繁には調達できん。大事に使えよ」
「わかってるさ」
そんな話をしつつ、30分程各区の『裏』の情報などをやり取りしていたら、奥から何か妙なものが出てきた。
「なるほどねえ。品の流れが悪いと思ってたらやっぱり4区が荒れてたか……っと、そらお求めの品だぜ」
「なに?随分と速いな。クオリティは大丈夫なんだろうな」
もし粗悪品だったら、と睨みつけると心外そうに手を振りながら
「おいおい、お前はうちの店にとっちゃ金払いのいいお得意様だぜ?そのお前を騙すようなまねはしねえよ。騙しでもしたら問答無用で殺されそうだしな」
などと言っていたからまあ大丈夫だろう。「よくわかってるじゃないか」と言ったら何故か少々顔を青くして呻いていたが、後悔している風ではなかったから大丈夫だろう。
「そういえばそれはなんだ?この前来た時には見なかったが」
「ああ、これか?この間博士殿が持ってきたロボットでな、結構細かい動作も任せられるってんで手伝いに重宝してるぜ」
「アイツのか……」
ギルのいっている『博士殿』とは如月のことだ。あいつは闇医者の他にこういったロボットを作って提供したりなど手広くやっているらしい。提供しているものはおおむね好評なのでおそらくはかなり腕がいいのだろうが、アイツの作るものとなるとろくなものでないような気がしてしまうのは俺の気のせいだろうか。
「まあ大丈夫だろうが気をつけろよ、アイツの作ったものだ。どんな機能がくっ付いてるかわかったもんじゃない。朝起きたら店が更地になってたなんてことがないようにな」
「まさか、大丈夫だろ。博士殿の品で苦情が来たことはないしな」
「そうか……がんばれよ」
「なあ、おいどういう意味だ?なんか知ってるのか?おい」
「必要なものは手に入ったからもう帰る。じゃあな」
おいちょっとまて、おーい、というやつの必死な声を聞きながら白を連れて表通りに向かった。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

来た道とは別の道をたどって表通りに戻ってきた。白の身分証もできたのでこれで大っぴらに出歩ける。行きにも通ったとはいえ、未だこのように活気のある通りは新鮮なようで、心持はしゃぎ目に周りを見ている白に声をかける。
「とりあえずお前の生活必需品を買うか」
「いいの?」
平静を装っているがだいぶ期待をしていたようで、うずうずした感じが伝わってきた。どうやら傍から見ている分にはわかりにくいだけで精神年齢も見た目相応なのだろう、などと考えている自分に苦笑する。どうやらこの短期間で俺は自分で思っていたより白に慣れてきているらしい。
「ガキが遠慮なんかすんな」
そういって白の頭をクシャッと撫でる。
「まあ、お前が服はずっとそれでほかの日常用品も一切使いたくないというならば止めはしないが」
「……(ブンブンブン!!)」
「わかったわかった。まず服から行くか?」
「ん」
必死になって首を振る白宥めながら服屋へとむかった。
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