常華

タナトス

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Episode2

Scene6

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―20XX 11.2 9:21―
「襲撃の手伝い?」
『ええ、以前4区に妙な連中が出てきたことはお話ししましたよね?』
「そういや言ってたな」
『これまではこちらに従っていたので放っておいたのですが、どうやら禁止しておいた種類の薬などを売って武器等を集めているようでして』
「それで?」
『潜り込ませていたものによると明日仕掛けてくるようなので先に潰しておきたいのですよ』
「で、俺に話を持ってきたと」
『もちろんあなたたちだけにすべてやれなどとは言いませんし、うちの者を率いろとも言いません』
「ようは指揮しなくていいし指揮下にも入らないでいいから手伝えってことだな」
『ええ、もちろん報酬はいつもよりは増やしますよ』
「なるほどな……いくつか聞いておきたいんだが」
『なんでしょう』
「どうせあんたら今回の襲撃もっと早くに嗅ぎ付けてただろ」
ああ絶対こいつ今笑ってやがる
「なんでほっといた?」
『どうやら他の反抗的だった者やこれまで従っていなかった者たちにも声をかけていたようでしたので』
「集まるまで待ってたと」
『はい』
「……俺たちが断るとは?」
『3か月ほど前は大変でしたねぇ』
「……」
『突然寝床を移すから探してくれと言われ、しかも解放軍がらみで前のが使えなくなったと言われ。隠蔽や新しい場所探しは大変でしたねぇ』
「……」
『さて、受けてくださいますよね?』
他にどう言えと
「わかった……何時に何処だ」
『17時までならいつでも結構です。場所は5区の事務所でいいでしょう。連絡をくだされば迎えをよこしますが』
「いや、問題ない。ああ、一応言っておくがアイツも連れて行くぞ」
『問題ありませんよ。むしろ言ってくださらなければ私から頼もうと思っていましたから』
言わなきゃよかった……いろいろ引き出せただろうに
「わかった。準備ができ次第向かう」
『ええ、ではお願いしますね』
電話を切ってため息をつく、襲撃とはまた面倒くさい……護衛なら適当に何人かのしてしまえば終わりなんだが
「また仕事?」
ため息をついていたら食事の支度をしていた白が寄ってきた。とりあえず頭を撫でて憂鬱な心を癒しつつ説明する。
「ああ、今夜襲撃の手伝いだ」
「襲撃?……珍しい」
「ああ、面倒だから受けたくなかったんだがなあ……」
「結局受けたなら愚痴らない、場所と時間は?」
「5区の事務所、準備でき次第向かうぞ」
「わかった、まずご飯食べよう」
そういって台所に戻っていく。あれから3か月ほどたったが随分としゃべるようになった。表情も昔よりは変わるようになったしいろいろ感慨深いものがある。
あの後、李氏に連絡を取り用意してもらった新しい寝床に住むようになってから、俺は『働かざる者食うべからず』と言って、白に家事と身の守り方を教え込み、一通りものになったところで“仕事”に連れて行き始めた。どう考えてもあいつらが白がらみで襲ってきた以上、自衛できるようにし、もしもの時に一人で生きていけるようにと思っていたのだが、予想以上に優秀だった上に、本人も初めに行ったことを存外気にしていたらしくついていきたがるので、一通り覚えさせた今でも連れて行っている。
「早く」
「わかった、わかった」
しかし本当に俺もこいつも変わったもんだ。

* *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  * 

―20XX 11.2 15:41―
「邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ、何にします?」
支度を終えて指定された事務所に来てみればなぜか酒場になっており、カウンターの奥から20代くらいのチャイナドレスを着た女と長身の侍女(メイド)に出迎えられた。
「……何やってんだあんた」
「おやまあ、お客さん随分とご挨拶ですねぇ」
あんまりせっかちだと嫌われますよ、などとコロコロ笑いながら言ってくる。余計な御世話だ。
「仕事で呼ばれたと思ったんだが……白、帰るか」
白を連れて踵を返したらカウンターの奥の女―雇い主の李(リ) 雪梅(シュエメイ)―がすがりついてきた。
「まってまって、ええ仕事よ?仕事で呼んだからというかいないとこまるからまっておねがいかえらないでぇぇぇ」
ええい、鬱陶しい。
「わかったわかった。しかしいいのか?言葉遣いが崩れてるぞ」
「あ」
間抜けな声を上げてギギギと音が鳴りそうな動作で振り向き、メイドの笑顔(目が笑っていない)を見てだらだらと冷や汗を流し始める。もはやコントだ。
「コ、コホン。え、と、本日はこの仕事を受けてくださりありがとうございます」
どうやら無かった事にしたいらしい。
「今更取り繕っても無駄だと思うがね」
「そ、そんなことないわよ!ないわよね、ねぇないよね!?」
「!?」
必死な形相の女にいきなり肩を掴まれて揺すぶられて怯えたのか白が俺の後ろに逃げてきた。まるで毛を逆立てた猫のようになっているので頭を撫でて落ち着かせておく。
「お嬢様」
「!!あの、えっと、今のは違うのよ?」
「後でお説教です」
「……ハイ」
そうこうしているうちにやかましかった雪梅が黒髪のメイド―鼓堂(こどう) 朔(さく)夜(や)―に黙らされていた。
「わざわざご足労頂きましたのに主人が申しわけありません」
「いいさ、目くじら立てるようなことでもない。それよりもいい加減仕事の話に入りたいんだが、そんなに時間もないだろう?」
「はい、主人が本当に申し訳ありません。……お嬢様?」
話を進めようとしたら肝心の雪梅から反応がない。目を向けてみれば必死の形相でじりじりと後ずさる白とル○ンダイブ直前のような姿勢で距離を詰める変態(雪梅)の姿があった。
「……おい」
「……本当に申し訳ありません、少々お待ちを」
そう言って朔夜が後ろから雪梅を殴り倒した。というかいまゴガンって鳴ったぞ、生きてんのかアイツ。
「~~~ッツ何するの朔夜ッ!」
「まだ生きてる……!」
うん、気持ちはわからんでもないがその反応はさすがに失礼だぞ白。
しかし本当にしぶといなコイツ。などと思いながら見ていたら、朔夜が食って掛かる雪梅の顔を掴んで力を籠め始めた。
「ちょ、痛い痛い!」
「何するの?お嬢様、貴方こそ何をしているのですか?仕事を依頼しておきながら悪ふざけをし、常日頃から言動に気を付けるようにとあれほど言っているのにこの体たらく……」
ミシッ、ミシッ
「まってまって!割れる、割れちゃうから!」
「終いには注意をした直後だというのに嫌がる子供にあのような真似を……」
パキッ
「ぅ……ぁ……(ビクン、ビクン……クタッ)」
「……おや、気絶しましたか……零示様」
「ん?」
「申し訳ありません、私と主人は少々席を外します。右手側の部屋に今回の現場指揮官がおりますので、その者の説明をお聞きください」
「ああ、わかった」
「では、失礼致します」
そういって朔夜は見事なお辞儀をして左側の部屋に入っていった。
雪梅の頭を掴んで引きずったまま。
「本当に相変わらずだなあいつらは……」
3か月前に引き合わせてからえらく白の事が気に入ったらしい。だが、やっていることがただの変態のそれなので毎度毎度白に嫌がられて逃げられ、それを追いかけるという図式になっている。しかし、コイツが来てから本当にいろいろなものが変わった。
「速く行こう」
「わかったわかった」
白が来てからの変化を思いながら急かされて右の部屋に向かう。部屋に入る直前に何やら絶叫が聞こえてきたがまあいいだろ。
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