とあるメイドの優雅な日常

夕凪子凪

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逃げるが勝ちですので逃げ出したいのですが仕事中なので逃げられません。

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  この世の終わりかと錯覚するほどの衝撃が私に襲いかかりました。例えるならば、隠していたエロ本が見つかったようなそんな感じの絶望感です。隠したことはありませんよ!もってもいません。あくまで例えですから!

 パニックになるあまり、現実逃避をしていると「これ君のだよね。名前書いてあるからすぐわかったよ。」トドメを刺されました。ナイフが高速で私の胸に刺さってきました。逃げ場なしですね。もしもここに神様がいるのなら、メモ帳をひったくって彼から私に関しての記憶を一切消して欲しいです。そして来世はダンゴムシにしてくださいお願いします。
 「……はい。」自分の持ち物には、必ず名前を書くこと。幼少期から親に徹底されたそれがなんということでしょう、秘密をばらすということをしでかしてくれました。

 いたたまれなさに下を向いて口をつぐみます。頭の中は透明になっていくのに心臓は止まることなく激しく動き、全身から汗が吹き出す感覚。やばいやばいと頭の中はそればっかりで全く頭が回りません。嗚呼もう穴があったら埋めて欲しい。そしてメモは燃やしてくれ。

 「君は月より綺麗だよ…」
ねっとりと絡みつくような甘い声が耳元で言いました。
 「俺の全てをやるからお前の愛だけくれ…」
 耳が!耳が孕む!!
 危険を察知した脳が命令し、ばっと後ろに飛び退き戦闘態勢をとります。
 私は蝶よ花よとは育てられず、上に3人いる兄からもまれにもまれ育てられたのでそれなりに腕っ節はあるんですよ。
 いざとなったらお前を殴るぞと目でひたすらに訴えます。本当はすぐにでも殴りかかって記憶を消したいんですけれども。
 じっと睨みつけていると、目を丸くした彼はクスリと笑いました。

 「ね、これ返してほしい?」
面白そうに問いかけられた質問に首がもげるほど頷くと更に言葉は続けられます。
 「ならさ、俺の言うこと聞いてね」
声音は無邪気なのに彼の表情はそれはそれは邪気に溢れておりました。
 
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