天才鍼師の俺に治せないビョーキはない…ハズ!

久遠寺遥

文字の大きさ
58 / 61

ファンキーな父親・狩嶋史門

しおりを挟む
 父さんはメタボ体形だったのに、スリムになっている。

 それはいいけど、ヒゲぼうぼうで、ロン毛、というか、伸ばしっぱなし。

 どう見ても不審者ふしんしゃだ。よくこんな姿で飛行機に乗れたな……

「間にあっちゃったよー。いやーアブなかった。ギリギリセーフ」

史門しもん、なんじゃ、そのカッコウは。
 そんな汚い姿では病院に入れないぞ」

「わかってますって。シャワー浴びてくるよー」

 父さんはボロボロのリュックを待合室に置いて二階に上がって行った。

「あのう……あれが、狩嶋さんのお父さん?」

 父さんの異常なテンションというかノリ。美織がビビるのもムリはない。

 でも、これが父さんのフツウの状態。

「ああ見えても、レッキとした社会人です」

「大丈夫かな……」

 父さんはアロハに着替えて下りて来た。

 ヒゲを剃ったから、さっきほどではないけど、ボサボサのロン毛が超アヤシイ。

 父さんは、待合室の長椅子にドサッと腰を下ろして、腕を伸ばした。

「いやー、飛行機の中でじっとしてたから、疲れたわー」

「早く病院に行ったほうが……」

「おっ、水槽か?
 大きなポンプをつけてるなー。こりゃー本格的だ」

「急がないと……」

「なーに焦ってるんだ。これがあるからダイジョーブ」

 父さんはリュックの中から紙包みを取り出してポンポンと叩いた。

「この中に薬が入ってる。
 これを飲めば、一瞬で治っちゃうんだ」

「ちょっと、見てもいい?」

「ダーメ。これはスッゴク貴重なものだからな。
 世界にこれだけしかなーい」

「そんなハズないでしょう」

「そんなハズあーる。これは、作るのに十年かかるんだ。
 最後に残っていた薬をもらってきたんだよ。
 もしこの薬をこぼしちゃったら、十年待たないと、手に入らなーい」

「こぼすわけないだろ」

「万が一ってことがあるだろ。
 なんつっても、父さんは、母さんのこと愛しちゃってるからさ、お前みたいなおっちょこちょいに、大切な薬を触らせたくないわけよ。
 アンダスタン?」

「もう、どーでもいいよ。早くいくよ!」

 俺たちは加山さんに留守を頼んで、彦坂総合病院に向かった。

「おっ、ケーキ屋ができたのか」

「レジの横にいる人、由香里ちゃんって言うんだけど、あの人の蠱病こびょうを治したのは、俺です。自慢じゃないけど」

「そう言えば、お前、天眼てんがんが開いたらしいな」

「まあね。それが、なにか?」

「やっぱりそうか。天眼を開くには、若いうちから開眼鍼かんがんしんを打たないといけないんだな。
 どうりで、いくら修業してもダメだったんだ」

「才能も関係あると思うよ。
 俺、たぶん、というか、確実に天才だから」

「経絡を見る目はタダのセンサーだろ。
 いくらセンサーがよくても、手技がヘタだったらイミなーい」

 話しているうちに俺たちは六階の病室の前まで来た。

 少し遅れて高木先生と星野さんが来た。

「解毒剤があるとは知りませんでした。間に合ってよかった」

「この薬を口に入れれば、一瞬で邪気が消え、病気は治りまーす」

 父さんは、大事そうに持っていた紙袋を開いて、中に手を入れた。

 みんなの視線が袋に集中する。

 父さんの動きが止まった。

 ん? 父さんの目が泳いでいる。

「父さん、どうしたの?」

「……」

「史門、どうした?」

 父さんは袋の中身を取り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...