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第1章 ヤンデレ雪女と可愛い幼女スネコスリ
1-1 ナーリは「ぬらりくらり」した性格のようです
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「アカナメ、か……あんたも妖怪なんだな?」
妖怪という存在は日本のアニメで見聞きしたことはあるが、俺はあまり詳しくない。
そのため、俺は尋ねてみた。
「は、はい……。その、私はその……人の垢が大好きで……それを食べて生きている妖怪なんです……」
「垢をなめる……? それだけか?」
「はい……」
信じられない。
彼女たちは、いわゆる西洋系の魔物であるヴァンパイアやエルフのように、複雑なバックボーンや特殊なスキルといったものを持たないようだ。
単に「垢をなめる」ということだけがアイデンティティという彼女たちの特性を見て、俺は少し驚いた。
「こんな風に、人の体を突然舐めるのがあんたらのやり方なのか?」
純粋な興味で聞いたのだが、彼女は非難されているように感じたのだろう、頭を下げて答えた。
「い、いえ、その……普段はお風呂掃除の仕事をして、そのお礼に垢をもらっていたんですが、最近はこの街でも妖怪差別が激しくて、入れてもらえなくなって……」
「それで、俺の垢をなめたってわけか……」
「ええ。……ああ、ごめんなさい! けど、おなかがすいちゃって仕方なくて……! もっとなめさせてください!」
そういうと、彼女は俺を押さえつけて、服の間に長い舌を入れ、べろべろとなめてきた。
「うひゃひゃひゃひゃひゃ! ひーひひひひ! ぎゃはははは!」
アカナメは、ロングの黒髪を振り乱しながら、俺の体を一心不乱になめてくる。
こんなにかわいい少女に体を舐められるのは、人によっては嬉しいのだろう。
だが、くすぐったがりな俺にとっては正直拷問以外の何物でもない。
「はあ、はあ……も、もう気が済んだか?」
ひとしきり俺の体をなめ切って満足したのか、よだれでべとべとになった俺の体を納屋にあった毛布でぬぐってきた。
「ふう……ごちそうさまでした。あなたの垢、本当においしかったです……こんなにおいしいのは初めて……あなたの種族と、私たちの相性がいいんですね……」
「そりゃ、よかった。……でさ、その毛布俺が今夜使うやつなんだけど……」
「え? ご、ごめんなさい! 私、昔っからこうで……!」
彼女はべっしょりと濡れたタオルを手に、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
どうやら、結構ドジなところがあるのだろう。
「けど……。その、ありがとうございました。あなたの垢を舐めさせてもらったお礼に、何か私にできることはありませんか?」
「え、お礼?」
「ええ。また、汗をいっぱいかいてくれることだったら、喜んで協力しますから……」
彼女は頬を染めながら、ぺろりと舌なめずりをしてきた。
その目線はねっとりと、まるで嘗め回すように俺の体を見つめてきている。
特に視線は汗が集中しやすい脇や太ももを見ているのがわかる。まるで人間の男が美女の胸やお尻を見るような視線に、俺は少しあきれた。
「お礼か……。なら、仕事か寝床を探しているんだけど、何かないか?」
「え? ……それは……その……仕事は私も探しているくらいですし……」
そういうと彼女は押し黙った。
まあ、こんな夕暮れに納屋に忍び込むということは、彼女も行き場がないのだろう。
また、彼女のみすぼらしい容姿を見るに、金銭を差し出すことも期待できない。
……一体、なにをお礼として差し出すつもりだったのだ。
まあ、それはいいか。
「じゃあ、今晩あんたの家に泊めてくれないか?」
だが、アカナメはそれについても首を振った。
「いえ、その……じつは私たち……住処を山賊に奪われちゃったんです。……それで、行くところがなくて……」
「山賊?」
「ええ。……私はたまたま留守だったから助かったのですが……友達の『スネコスリ』と『雪女』達は、捕まって彼らの奴隷となってしまったんです……」
「ん? スネコスリ?」
それを聞いて、俺は先ほど出会った幼女を思い出した。
「それって、あんたと同じ黒髪で『着物』を着た、ちっこい女の子のことか?」
「ええ。ご存じなんですか?」
「ああ。ヤギの下半身をしたサテュロスに連れられていたよ」
そういうと、アカナメは驚いた表情で俺に答えてくる。
「そいつです! そいつが私たちの住処を奪った山賊の大将なんです! 10人くらい引き連れて、私たちの砦を奪ったんです!」
「そうだったのか……」
残念だが、この世界では妖怪の生体販売が公然と行われている。
法に基づいてその商売が行われている以上は、俺は感情的には許せない行動とはいえ、彼らの売買行動を咎める権利はない。
だが、この国において妖怪を奴隷にするには、国王から正式な許可を得た組織が、適切な手段に基づいて捕獲および販売を行わなくてはならない法律がある。
……これは妖怪のためではなく、乱獲防止のためであるのは言うまでもないのだが。
「じゃああのスネコスリは、無許可で奴隷として働かされているってことじゃないか?」
「はい……。この国の軍隊(この世界にはまだ、警察組織は存在しない)は、妖怪がつかまっていても動いてくれないので……」
なるほど、あのサテュロスは正規の手段を踏まず、無許可で奴隷化しているということだ。
また、妖怪を無許可に奴隷化しても軍隊が動かないということは、逆に言えば、その妖怪を奪い返しても軍隊は動かない可能性は高い。
……それであれば、俺が彼女たちを助けても咎められることはないだろう。
(あのサテュロスには恨みもあるし、あの子を解放してやりたいが……)
……だが、どうやって、彼女を助ける?
「ちなみにあんたの住処はどこにあるんだ?」
「え? はい、あの北にある山のふもとにある砦です……」
アカナメはそう言いながら、近くの山を指さした。
あそこであれば、ほんの30分もあれば到着できるはずだ。
「砦か……砦?」
そこで俺は思いついた。
今、あのサテュロスは彼女の住処にいるということだ。
であれば、俺の『合法侵入』のスキルを使えば奴に怪しまれずに上がり込むことは可能だ。
だが、もしスネコスリたち奴隷を勝手に逃がした場合、その時点で俺の正体がバレる。
真っ向から力比べをしたら、あの化け物には勝ち目がない。
相手が10人もいるのであれば猶更だ。
また、仮に彼女たちを逃がしたとしても住居を奪い返さない限り、行き場がないことに変わりはない。
アカナメはそう答えた。
「そうか……。ところで、サテュロスの特徴とかわかることを教えてくれないか?」
「え? はい……」
俺はこの世界に来て日が浅いし、あまり元の世界ではファンタジー系の物語にはあまり触れてこなかった。
だが、幸いなことにサテュロスはこの世界ではあまり珍しくない種族のようだ。
彼女からひとしきり、サテュロスの特性について話を聞いて、俺はうなづいた。
「なるほどな。……なら、もしかしたら俺が、あんたたちの住んでる砦を奪い返せるかもしれないな」
「ほ、本当ですか?」
「ああ。……ただ、あんたにも協力してもらうからな?」
「はい! じゃあ明日の昼間から一緒に頑張りましょうね?」
……昼間?
俺は少し首を傾げた。
「どうして昼からなんだ? 一刻も早く彼女たちを助けたいんじゃないのか?」
「え? だって、その……その時間って一番暑いじゃないですか。だから……」
ああ、そういうことか。
俺がたくさん汗をかいて、そのあと俺の垢を腹いっぱい食べたいということか。
……まったく、しょうがない奴だ。
俺はそう思いながら、彼女をじっと見つめた。
やっぱり彼女はかわいいな。
それに彼女はさっき『お礼』をしてくれるとも言っていた。
……それを思い出し、俺はニヤリと笑って、彼女にある提案をすることにした。
「それじゃあさ、今から俺が沢山汗かいてやるからさ。明日の分まで食いだめしておけよな?」
「え、い、いいんですか?」
だが、外はもう暗い。
『部屋の中で二人でできる運動』と言ったら、もうあれしかない。
「ああ。……たっぷり『運動』すりゃいいんだろ? あんたも協力してくれるよな?」
「え? あ、わかりました……! じ、じゃあ、早速始めましょうか?」
そういうなり、アカナメは顔を真っ赤にしながらも、俺の体を押し倒した。
……なるほど、さすがは妖怪だ。単純な腕力は俺より上だな。
仰向けになった俺の足を押さえつけて、アカナメは舌なめずりをしながら腕まくりをする。
早速やる気満々だな。
そして、彼女は蠱惑的な笑みを浮かべた。
「私から行きましょうか? それともあなたから?」
「じゃあ俺からやるよ」
「ええ……。その、私のことは気にしないで、思いっきり激しくしてくださいね? たくさん汗かいて、上質な垢が欲しいですから……」
「ああ、もちろん」
そういって俺は彼女に向けて体を持ち上げ、そして……
「1,2,3,4!」
「え? あ、あの……」
俺は腹筋運動を繰り返す。
……この世界に来てから筋トレしていなかったから、ちょうどいい頃合いだ。
やはりトレーニングパートナーがいると効率が違う。
「あの、一体なにを……」
「なにって、筋トレだよ。こう見えても俺は元の世界じゃ結構鍛えてたんだ」
俺がそういうとアカナメは一瞬困惑したような表情を見せた。
だがすぐに、少しひきつったような、それでいて安堵したような笑みを浮かべながら叫んだ。
「そ、そうなんですね……。うん、これはこれでいいですね……すごい汗が出てきていますから、なめとるのが楽しみです。……ほら、脇腹にも汗をたくさんかいてくださいね!」
「言われなくても! ……よ、は、ほっ……」
今度は俺は体をひねる腹筋運動をして、腹に汗がたまっていくのを感じる。
きっと、かなりの皮脂ができるだろう、彼女はそのことを思っているのか、はあはあと待ち切れなそうに舌を出していた。
その様子を見ながら、俺は思った。
(それにしても、妖怪か……。もしも彼女たちを助けることが出来たら……俺も仲間に入れてもらえるのかな……)
いくら『合法侵入』で友人のような関係を作れるといっても、それは所詮かりそめのものだ。
この世界に来てから俺は、対等な立場で会話ができる人がいなかった。
……もし、彼女やスネコスリたちに仲間に入れてもらえるなら、俺もこの納屋でその日暮らしをする生活は終るのかもしれない。
「うわ!」
だが、そう考えていると、つまみ食いとばかりに、アカナメは俺の顔をべろりと舐めてきた。
「ほら、背中にも垢を出してもらわないと! 今度はうつぶせになってください!」
「あ、ああ……。じゃあさっきと同じで足を抑えててくれ」
「はい!」
やれやれ、すでに明日のことよりも俺の垢で頭がいっぱいなのか。
(この作戦のミソは……一番大事な『あれ』をどうやって手に入れるかだな……)
そう思いながら、明日から行う作戦について、考えをめぐらせた。
妖怪という存在は日本のアニメで見聞きしたことはあるが、俺はあまり詳しくない。
そのため、俺は尋ねてみた。
「は、はい……。その、私はその……人の垢が大好きで……それを食べて生きている妖怪なんです……」
「垢をなめる……? それだけか?」
「はい……」
信じられない。
彼女たちは、いわゆる西洋系の魔物であるヴァンパイアやエルフのように、複雑なバックボーンや特殊なスキルといったものを持たないようだ。
単に「垢をなめる」ということだけがアイデンティティという彼女たちの特性を見て、俺は少し驚いた。
「こんな風に、人の体を突然舐めるのがあんたらのやり方なのか?」
純粋な興味で聞いたのだが、彼女は非難されているように感じたのだろう、頭を下げて答えた。
「い、いえ、その……普段はお風呂掃除の仕事をして、そのお礼に垢をもらっていたんですが、最近はこの街でも妖怪差別が激しくて、入れてもらえなくなって……」
「それで、俺の垢をなめたってわけか……」
「ええ。……ああ、ごめんなさい! けど、おなかがすいちゃって仕方なくて……! もっとなめさせてください!」
そういうと、彼女は俺を押さえつけて、服の間に長い舌を入れ、べろべろとなめてきた。
「うひゃひゃひゃひゃひゃ! ひーひひひひ! ぎゃはははは!」
アカナメは、ロングの黒髪を振り乱しながら、俺の体を一心不乱になめてくる。
こんなにかわいい少女に体を舐められるのは、人によっては嬉しいのだろう。
だが、くすぐったがりな俺にとっては正直拷問以外の何物でもない。
「はあ、はあ……も、もう気が済んだか?」
ひとしきり俺の体をなめ切って満足したのか、よだれでべとべとになった俺の体を納屋にあった毛布でぬぐってきた。
「ふう……ごちそうさまでした。あなたの垢、本当においしかったです……こんなにおいしいのは初めて……あなたの種族と、私たちの相性がいいんですね……」
「そりゃ、よかった。……でさ、その毛布俺が今夜使うやつなんだけど……」
「え? ご、ごめんなさい! 私、昔っからこうで……!」
彼女はべっしょりと濡れたタオルを手に、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
どうやら、結構ドジなところがあるのだろう。
「けど……。その、ありがとうございました。あなたの垢を舐めさせてもらったお礼に、何か私にできることはありませんか?」
「え、お礼?」
「ええ。また、汗をいっぱいかいてくれることだったら、喜んで協力しますから……」
彼女は頬を染めながら、ぺろりと舌なめずりをしてきた。
その目線はねっとりと、まるで嘗め回すように俺の体を見つめてきている。
特に視線は汗が集中しやすい脇や太ももを見ているのがわかる。まるで人間の男が美女の胸やお尻を見るような視線に、俺は少しあきれた。
「お礼か……。なら、仕事か寝床を探しているんだけど、何かないか?」
「え? ……それは……その……仕事は私も探しているくらいですし……」
そういうと彼女は押し黙った。
まあ、こんな夕暮れに納屋に忍び込むということは、彼女も行き場がないのだろう。
また、彼女のみすぼらしい容姿を見るに、金銭を差し出すことも期待できない。
……一体、なにをお礼として差し出すつもりだったのだ。
まあ、それはいいか。
「じゃあ、今晩あんたの家に泊めてくれないか?」
だが、アカナメはそれについても首を振った。
「いえ、その……じつは私たち……住処を山賊に奪われちゃったんです。……それで、行くところがなくて……」
「山賊?」
「ええ。……私はたまたま留守だったから助かったのですが……友達の『スネコスリ』と『雪女』達は、捕まって彼らの奴隷となってしまったんです……」
「ん? スネコスリ?」
それを聞いて、俺は先ほど出会った幼女を思い出した。
「それって、あんたと同じ黒髪で『着物』を着た、ちっこい女の子のことか?」
「ええ。ご存じなんですか?」
「ああ。ヤギの下半身をしたサテュロスに連れられていたよ」
そういうと、アカナメは驚いた表情で俺に答えてくる。
「そいつです! そいつが私たちの住処を奪った山賊の大将なんです! 10人くらい引き連れて、私たちの砦を奪ったんです!」
「そうだったのか……」
残念だが、この世界では妖怪の生体販売が公然と行われている。
法に基づいてその商売が行われている以上は、俺は感情的には許せない行動とはいえ、彼らの売買行動を咎める権利はない。
だが、この国において妖怪を奴隷にするには、国王から正式な許可を得た組織が、適切な手段に基づいて捕獲および販売を行わなくてはならない法律がある。
……これは妖怪のためではなく、乱獲防止のためであるのは言うまでもないのだが。
「じゃああのスネコスリは、無許可で奴隷として働かされているってことじゃないか?」
「はい……。この国の軍隊(この世界にはまだ、警察組織は存在しない)は、妖怪がつかまっていても動いてくれないので……」
なるほど、あのサテュロスは正規の手段を踏まず、無許可で奴隷化しているということだ。
また、妖怪を無許可に奴隷化しても軍隊が動かないということは、逆に言えば、その妖怪を奪い返しても軍隊は動かない可能性は高い。
……それであれば、俺が彼女たちを助けても咎められることはないだろう。
(あのサテュロスには恨みもあるし、あの子を解放してやりたいが……)
……だが、どうやって、彼女を助ける?
「ちなみにあんたの住処はどこにあるんだ?」
「え? はい、あの北にある山のふもとにある砦です……」
アカナメはそう言いながら、近くの山を指さした。
あそこであれば、ほんの30分もあれば到着できるはずだ。
「砦か……砦?」
そこで俺は思いついた。
今、あのサテュロスは彼女の住処にいるということだ。
であれば、俺の『合法侵入』のスキルを使えば奴に怪しまれずに上がり込むことは可能だ。
だが、もしスネコスリたち奴隷を勝手に逃がした場合、その時点で俺の正体がバレる。
真っ向から力比べをしたら、あの化け物には勝ち目がない。
相手が10人もいるのであれば猶更だ。
また、仮に彼女たちを逃がしたとしても住居を奪い返さない限り、行き場がないことに変わりはない。
アカナメはそう答えた。
「そうか……。ところで、サテュロスの特徴とかわかることを教えてくれないか?」
「え? はい……」
俺はこの世界に来て日が浅いし、あまり元の世界ではファンタジー系の物語にはあまり触れてこなかった。
だが、幸いなことにサテュロスはこの世界ではあまり珍しくない種族のようだ。
彼女からひとしきり、サテュロスの特性について話を聞いて、俺はうなづいた。
「なるほどな。……なら、もしかしたら俺が、あんたたちの住んでる砦を奪い返せるかもしれないな」
「ほ、本当ですか?」
「ああ。……ただ、あんたにも協力してもらうからな?」
「はい! じゃあ明日の昼間から一緒に頑張りましょうね?」
……昼間?
俺は少し首を傾げた。
「どうして昼からなんだ? 一刻も早く彼女たちを助けたいんじゃないのか?」
「え? だって、その……その時間って一番暑いじゃないですか。だから……」
ああ、そういうことか。
俺がたくさん汗をかいて、そのあと俺の垢を腹いっぱい食べたいということか。
……まったく、しょうがない奴だ。
俺はそう思いながら、彼女をじっと見つめた。
やっぱり彼女はかわいいな。
それに彼女はさっき『お礼』をしてくれるとも言っていた。
……それを思い出し、俺はニヤリと笑って、彼女にある提案をすることにした。
「それじゃあさ、今から俺が沢山汗かいてやるからさ。明日の分まで食いだめしておけよな?」
「え、い、いいんですか?」
だが、外はもう暗い。
『部屋の中で二人でできる運動』と言ったら、もうあれしかない。
「ああ。……たっぷり『運動』すりゃいいんだろ? あんたも協力してくれるよな?」
「え? あ、わかりました……! じ、じゃあ、早速始めましょうか?」
そういうなり、アカナメは顔を真っ赤にしながらも、俺の体を押し倒した。
……なるほど、さすがは妖怪だ。単純な腕力は俺より上だな。
仰向けになった俺の足を押さえつけて、アカナメは舌なめずりをしながら腕まくりをする。
早速やる気満々だな。
そして、彼女は蠱惑的な笑みを浮かべた。
「私から行きましょうか? それともあなたから?」
「じゃあ俺からやるよ」
「ええ……。その、私のことは気にしないで、思いっきり激しくしてくださいね? たくさん汗かいて、上質な垢が欲しいですから……」
「ああ、もちろん」
そういって俺は彼女に向けて体を持ち上げ、そして……
「1,2,3,4!」
「え? あ、あの……」
俺は腹筋運動を繰り返す。
……この世界に来てから筋トレしていなかったから、ちょうどいい頃合いだ。
やはりトレーニングパートナーがいると効率が違う。
「あの、一体なにを……」
「なにって、筋トレだよ。こう見えても俺は元の世界じゃ結構鍛えてたんだ」
俺がそういうとアカナメは一瞬困惑したような表情を見せた。
だがすぐに、少しひきつったような、それでいて安堵したような笑みを浮かべながら叫んだ。
「そ、そうなんですね……。うん、これはこれでいいですね……すごい汗が出てきていますから、なめとるのが楽しみです。……ほら、脇腹にも汗をたくさんかいてくださいね!」
「言われなくても! ……よ、は、ほっ……」
今度は俺は体をひねる腹筋運動をして、腹に汗がたまっていくのを感じる。
きっと、かなりの皮脂ができるだろう、彼女はそのことを思っているのか、はあはあと待ち切れなそうに舌を出していた。
その様子を見ながら、俺は思った。
(それにしても、妖怪か……。もしも彼女たちを助けることが出来たら……俺も仲間に入れてもらえるのかな……)
いくら『合法侵入』で友人のような関係を作れるといっても、それは所詮かりそめのものだ。
この世界に来てから俺は、対等な立場で会話ができる人がいなかった。
……もし、彼女やスネコスリたちに仲間に入れてもらえるなら、俺もこの納屋でその日暮らしをする生活は終るのかもしれない。
「うわ!」
だが、そう考えていると、つまみ食いとばかりに、アカナメは俺の顔をべろりと舐めてきた。
「ほら、背中にも垢を出してもらわないと! 今度はうつぶせになってください!」
「あ、ああ……。じゃあさっきと同じで足を抑えててくれ」
「はい!」
やれやれ、すでに明日のことよりも俺の垢で頭がいっぱいなのか。
(この作戦のミソは……一番大事な『あれ』をどうやって手に入れるかだな……)
そう思いながら、明日から行う作戦について、考えをめぐらせた。
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