3 / 43
第1章 弓士団試験
受験場前の口喧嘩
しおりを挟む
「人間二人が受験するのね?……ふうん」
そういうと、こちらを品定めするように受け付けのエルフは見つめてきた。
現実世界では、おそらくモデルとして雑誌の表紙を飾っているであろう美貌。これはどのエルフにも共通の特徴である。
その傲慢な態度ですら、ドラマのワンシーンに感じさせるような魅力がエルフには存在する。
「……ちょっと、何セドナのこと見てるのさ?」
当然それが気に入らないのだろう、チャロはその鋭い目つきをさらに細め、その受付嬢を睨みつけた。
「え? 別に、人間なんて初めて見るから驚いただけよ?」
「言っとくけど、セドナはエルフのことなんか大っ嫌いなんだからね!」
そういうと、チャロはセドナの腕を引き寄せながら尋ねた。
「ふうん。あなたはエルフが嫌いなの?」
「あったりまえでしょ!数が多いからって、いつもいつも人間に偉そうにしてさ!力だって人間にはかなわないくせに!人間がエルフに優しいからって、セドナに色目使わないでよ!」
『人間がエルフに優しい』と言う発言に対して、少し違うな、とセドナは思った。
実際には人間は優しい種族と言うわけではなく、単に(人間目線では)優れた美貌を持つエルフを心底から憎むことが出来ないだけだ。
そのことも人間が個体数を大幅に減らした原因だろう、と思いながらもセドナは押し黙った。
「……フフフ。そんなにこのお兄さんを取られるのが心配なの?」
「……だとしたら、何?」
「大丈夫、エルフが人間なんかと付き合うことなんてあり得ないわよ」
「なんでそう言い切れるのさ?」
「恋愛を楽しめるのはせいぜい数十年。しかも、それが終わったら介護でしょ?そんな種族と付き合うなんて、まっぴらよ」
さも平然のように答えながら、受付嬢は笑みを崩さない。
「そんなことも分からないなんて、やっぱり人間って、頭が悪い種族なのね」
「そういうところがエルフの嫌いなところなんだよ!」
「まあまあ、チャロ。俺たちは喧嘩しに来たわけじゃないだろ?」
「けど……!」
「それに、これから一緒に働くことになるかもしれないし、な?」
「……うん。……ごめん、セドナ」
困った顔をしているセドナを見て、ようやくチャロは冷静さを取り戻したようだった。
「まったく。……けど、セドナって言ったわよね?あなたなら見た目も悪くないし、ピッタリなのは確かね」
「兵士に向いてるってことですか?」
セドナが尋ねると、受付嬢は少しためらいを見せながらも、質問を続ける。
「ううん、何でもないわ。ところで、申し込み用紙は書ける?書けないんなら私が書いてあ・げ・る」
その容姿から一見誘惑するような口調に誤解されるだろうが、その本音は読み書きが出来ない人間への侮蔑であることは明らかだ。
そのことは、チャロにも容易に感じ取れた。だが、先ほどの件で懲りたのか、憮然とした表情ではあるが、何も言い返さなかった。
少しほっとしたセドナは、羊皮紙を受け取ろうと手を伸ばした。
「いえ、こちらで記載できます。申し込み用紙を頂いてよろしいですか?」
「へえ……。人間にも文字が書ける個体がいるのね。意外だわ。じゃあこれね」
受付嬢から乱雑に羊皮紙を投げ渡され、セドナは申込用紙に二名分の受験内容を記載する。
(なによ、あの女!……いい、セドナ?ああ言うのは相手にしちゃだめよ?)
文字が書けないチャロはサインの部分だけ適当に殴り書きながら、セドナに耳打ちした。
(一番突っかかっていたのはチャロの方だろう?)
(けどさ……!セドナだってあの女の事すごい興味持ってみてたよね?)
(俺はそんなつもりはないけど……。そう思わせたのならごめんな、チャロ)
(……うん……)
恐らく、このような場に出ることが初めて興奮しているのだろう。
そう判断したセドナは、チャロが落ち着くのを待って、受付嬢に申し込み用紙を手渡した。
「……よし、これでかけました」
「ふうん……。へえ……?人間ごときにしては、きれいな字ね。見直したわ」
どれだけ評価低かったんだよ、と思いながらもセドナは言葉を飲み込んだ。
「年齢は……え?チャロちゃんが14歳……これ、本当?」
「そりゃそうでしょ。いくら人間でも数くらいは数えられるよ」
頬を膨らませながら答えるチャロに、受付嬢は、同情を含んだ表情を向けてきた。
「あなたたち、まだ赤ちゃんじゃない……?やっぱり、試験を受けるのは辞めたら?」
「何さ、失礼だな!私たちはもう十分戦えるんだけど?それに、受験資格に年齢はないよね?」
「そ、そうね……。……はい、それじゃあ受け付けは済んだから、あっちで時間まで待っててね?」
そういうと、受付嬢は奥の部屋を指さした。
「ありがとうございます」
セドナだけがそう答え、二人の姿が見えなくなった時に、
「なんで、私の『忠告』が聞けないのよ……」
受付嬢は誰にも聞こえない声で、そう一言だけつぶやいた。
そういうと、こちらを品定めするように受け付けのエルフは見つめてきた。
現実世界では、おそらくモデルとして雑誌の表紙を飾っているであろう美貌。これはどのエルフにも共通の特徴である。
その傲慢な態度ですら、ドラマのワンシーンに感じさせるような魅力がエルフには存在する。
「……ちょっと、何セドナのこと見てるのさ?」
当然それが気に入らないのだろう、チャロはその鋭い目つきをさらに細め、その受付嬢を睨みつけた。
「え? 別に、人間なんて初めて見るから驚いただけよ?」
「言っとくけど、セドナはエルフのことなんか大っ嫌いなんだからね!」
そういうと、チャロはセドナの腕を引き寄せながら尋ねた。
「ふうん。あなたはエルフが嫌いなの?」
「あったりまえでしょ!数が多いからって、いつもいつも人間に偉そうにしてさ!力だって人間にはかなわないくせに!人間がエルフに優しいからって、セドナに色目使わないでよ!」
『人間がエルフに優しい』と言う発言に対して、少し違うな、とセドナは思った。
実際には人間は優しい種族と言うわけではなく、単に(人間目線では)優れた美貌を持つエルフを心底から憎むことが出来ないだけだ。
そのことも人間が個体数を大幅に減らした原因だろう、と思いながらもセドナは押し黙った。
「……フフフ。そんなにこのお兄さんを取られるのが心配なの?」
「……だとしたら、何?」
「大丈夫、エルフが人間なんかと付き合うことなんてあり得ないわよ」
「なんでそう言い切れるのさ?」
「恋愛を楽しめるのはせいぜい数十年。しかも、それが終わったら介護でしょ?そんな種族と付き合うなんて、まっぴらよ」
さも平然のように答えながら、受付嬢は笑みを崩さない。
「そんなことも分からないなんて、やっぱり人間って、頭が悪い種族なのね」
「そういうところがエルフの嫌いなところなんだよ!」
「まあまあ、チャロ。俺たちは喧嘩しに来たわけじゃないだろ?」
「けど……!」
「それに、これから一緒に働くことになるかもしれないし、な?」
「……うん。……ごめん、セドナ」
困った顔をしているセドナを見て、ようやくチャロは冷静さを取り戻したようだった。
「まったく。……けど、セドナって言ったわよね?あなたなら見た目も悪くないし、ピッタリなのは確かね」
「兵士に向いてるってことですか?」
セドナが尋ねると、受付嬢は少しためらいを見せながらも、質問を続ける。
「ううん、何でもないわ。ところで、申し込み用紙は書ける?書けないんなら私が書いてあ・げ・る」
その容姿から一見誘惑するような口調に誤解されるだろうが、その本音は読み書きが出来ない人間への侮蔑であることは明らかだ。
そのことは、チャロにも容易に感じ取れた。だが、先ほどの件で懲りたのか、憮然とした表情ではあるが、何も言い返さなかった。
少しほっとしたセドナは、羊皮紙を受け取ろうと手を伸ばした。
「いえ、こちらで記載できます。申し込み用紙を頂いてよろしいですか?」
「へえ……。人間にも文字が書ける個体がいるのね。意外だわ。じゃあこれね」
受付嬢から乱雑に羊皮紙を投げ渡され、セドナは申込用紙に二名分の受験内容を記載する。
(なによ、あの女!……いい、セドナ?ああ言うのは相手にしちゃだめよ?)
文字が書けないチャロはサインの部分だけ適当に殴り書きながら、セドナに耳打ちした。
(一番突っかかっていたのはチャロの方だろう?)
(けどさ……!セドナだってあの女の事すごい興味持ってみてたよね?)
(俺はそんなつもりはないけど……。そう思わせたのならごめんな、チャロ)
(……うん……)
恐らく、このような場に出ることが初めて興奮しているのだろう。
そう判断したセドナは、チャロが落ち着くのを待って、受付嬢に申し込み用紙を手渡した。
「……よし、これでかけました」
「ふうん……。へえ……?人間ごときにしては、きれいな字ね。見直したわ」
どれだけ評価低かったんだよ、と思いながらもセドナは言葉を飲み込んだ。
「年齢は……え?チャロちゃんが14歳……これ、本当?」
「そりゃそうでしょ。いくら人間でも数くらいは数えられるよ」
頬を膨らませながら答えるチャロに、受付嬢は、同情を含んだ表情を向けてきた。
「あなたたち、まだ赤ちゃんじゃない……?やっぱり、試験を受けるのは辞めたら?」
「何さ、失礼だな!私たちはもう十分戦えるんだけど?それに、受験資格に年齢はないよね?」
「そ、そうね……。……はい、それじゃあ受け付けは済んだから、あっちで時間まで待っててね?」
そういうと、受付嬢は奥の部屋を指さした。
「ありがとうございます」
セドナだけがそう答え、二人の姿が見えなくなった時に、
「なんで、私の『忠告』が聞けないのよ……」
受付嬢は誰にも聞こえない声で、そう一言だけつぶやいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる