人口比率が『エルフ80%、人間1%』の世界に、 チート能力もなしで転移した俺が「勇者」と呼ばれるまで

フーラー

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第4章 ディエラ帝国での救出劇

ハッタリバトル・最終幕

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その発言に、近衛兵たちは顔色を変える。
「な……今の一撃が効かない……避けたのではなく、か?」
「ああ。直撃するのは見ていた。……それに今のは、当たれば確実に魂を奪う隊長の最終奥義……!」
「それが効かないってことは、あいつは……」
そこで、セドナはだめ押しと言わんばかりの一言をつぶやく。
「そうだ。俺は……神の名を騙る異端者をさばくために天界から来た存在……『天使』だ」
「……!!!」

既に何度も説明してきたが、セドナは人間ではなくロボットだ。
そんなセドナに『魂』を奪い去る魔法など効くわけがない。
だが、迷信はびこるこの世界、ましてや機械人形など『ゴーレム』くらいしか知らない彼らエルフたちには、このハッタリは十分に効果的だった。

「く……認めんぞ……!貴様が……天使など!」
自分の切り札を回避ではなく『無効化』されたことでプライドをひどく傷つけたのだろう、先ほどのような余裕を見せる表情はすでに隊長にはなかった。
「チャロ!」
そのセドナの叫びでチャロは飛び込み、隊長の乗っていた馬に肘鉄をかます。
「うお!」
その一撃で馬はつんのめり、隊長は馬から振り落とされた。
「隊長!……くそ!」
エルフたちは矢を構えるも、チャロはそれを読んでいたかのように大きく体をかがませて射線から姿を消す。そして右手を軸に体をひねり、強烈な足払いを放つ。
「ぐわ!」
「くそ……!くらえ……」
だが、そこはさすがに近衛兵と言ったところだろう、この不意打ちにも完全にパニックにならず、チャロに掌を向けた。魔法を放つつもりだろう。
だが、その様子を見たセドナは、短剣を大きく山なりに投げつける。
「チャロ!」
「うん!」
そのセドナの叫びにチャロは身を伏せ、目を覆う。
「え……しま……ぐわ!」
次の瞬間、セドナの放った短剣からまばゆい閃光がほとばしった。
以前入隊試験の時に兵士が使用していたものだ。これを今回の作戦の時に譲ってもらっていたのだ。
「よし、逃げるぞ、チャロ!」
「うん!」
そう言うと、チャロは気を失ったリオを担ぎ上げ、城壁の階段を上る。

そして城壁の上まで到着するなり、セドナは懐からホイッスルを取り出し、
ピイイイイイイ……
と音を鳴り響かせた。
「……まずい、もうきやがった!」
目をしばしばと瞬かせながらも、近衛兵たちはセドナ達を追って階段を上ってきた。
「くそ……よくもやりやがって……!」
「何が『天使』よ……!人間のために『天使』が力を貸すなんて、あるわけないじゃない……!」
兵士たちの目には憤怒の光が見える。
……だが。
「副隊長!見つけたわ!早く来て!」
彼らがチャロ達の傍に走り寄る前に、城壁の下から聞き知ったサキュバスの声が聞こえた。
セドナ達弓士隊の隊員だ。彼女には合図が来るまで城壁前で馬と共に待機するようにセドナが伝えていた。
「よし、チャロ!頼むぞ!」
「オッケイ! ……セドナも行くよ!」
「ああ!じゃあな、兵隊さん!追いかけたら天罰を食らわすからな!」
その声のもとに、セドナ達は城壁から飛び降りた。

「副隊長、無事だったのね!」
着地したセドナに、隊員のサキュバスが駆け寄ってきた。
「ああ!ほかのみんなも無事だ!……馬は?」
「もちろん、ここに居るわよ!」
サキュバスはそう言うと、馬を連れ出してきた。
「あたしの睡眠魔法でぐっすり寝てたから、体力は万全よ!」
彼女の脱出役を任命した理由は、動物への睡眠魔法を得意とすることだ。
体力の温存もそうだが、馬が叫ぶことでこちらの目論見が露見しないようにすることも理由となる。
城壁の上から近衛兵たちの声が聞こえてきた。
「く……俺たちも追うぞ!」
「だめ……!馬はここから下ろせないわ……!」
「城門から出ていったんじゃ間に合わない……。もう、諦めるしかないな……」
「……ああ……」
セドナが『天使』だという発言を若干信じ『天罰』とやらを恐れたのだろう、近衛兵たちはあっさりと追跡を断念した。

セドナ達が馬を走らせてから10分ほど経過したのち。
「……大成功だったな、セドナ!」
「あれ、目を覚ましたのね、リオ」
目を覚ましたリオは、自分を乗せてくれていたサキュバスにお礼を言いつつ、馬上でセドナにガッツポーズを見せた。
「ああ!あとは明日、ロナ隊長たちが国を出れば完璧だな!」
「これで……俺たちみたいな種族の立場も良くなると良いんだけどな……」
「そりゃ、無理だと思うよ」
リオの発言をあっさりと否定するように、セドナは答えた。
「え、どうしてだよ?」
「結局、俺たちが手柄を上げても周りが得するわけじゃないからな。よその子が成績上げても、その子を好きになるなんて大人はいないだろ?『結果を出してもらえてよかった』って思われるようにならないと」
「アハハ、まあな……。じゃあ、これからどうするんだよ?」
「あ、それなら私思うんだけどさ!……報酬もらったら、派手にパーティーやろうよ!」
話を聞いていたチャロが、大声で提案した。
「パーティー?」
「そう!エルフも人間も夢魔もドワーフも獣人も、みんなでさ! ……そうすればきっと、みんな私たちの手柄を喜んでもらえるでしょ!」
「うわあ!……て、てめえ、誰だあ!」
だが、その発言にリオは、オーバーに驚くリアクションを見せた。

「あ、あのチャロが、そんな素敵なことを言うなんて……!お前、偽物だな……いや、そうにちがいねえ!」
その様子を見ながら、セドナは笑いながら横から馬で割り込む。
「違うよ、リオ。この間ゲームで、チャロはロナにコテンパンにされただろ?だから、パーティにかこつけて再戦したいんだよ」
「う……!なんでわかったのさ!」
「ハハハ、そりゃ、付き合いも長いからな。……お、見ろよ!」
セドナは楽しそうに笑いながら、東の空を指さした。
「日の出か……きれいだな……」
どこまでも続く地平線の向こうから見える陽光が、セドナ達を明るく照らし始めていた。
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