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第4章 人生をやり直すためなら、人は悪魔にもなれるのか
4-5 利害を伝える形での愛もある
それからどれくらいの時間が経過しただろうか。
「……いったい……なにがあったの……?」
未夏は閃光と爆音でふらふらしながらも立ち上がった。
……全身のいたるところに擦り傷があったが、幸いなことに大きなケガはしていない。
周囲を見渡すと、そこにはラジーナもフォスター将軍も姿はない。
……居たのは、
「エイド様!」
全身が炎に焼けただれたエイドの姿があった。
顔のやけどは、恐らくもうもとには戻らない。……そして両足は焼失し、すでに機能を果たさなくなっていることは未夏の目にも明らかだった。
「未夏……か……よかった、無事で……」
弱々しい声で彼はつぶやく。
……これだけで状況はすべて呑み込めた。
フォスター将軍は、恐らく禁忌の魔法『自爆の法』を用いたのだ。この魔法をかけられたものが『戦闘不能』になると同時に発動し、周囲に大損害を与える魔法だ。
(一度この魔法がかかった敵は『石化』以外の方法で倒したら確定で自爆するため、プレイヤーから嫌われまくったのは言うまでもない)
これは本来モンスター側が使う魔法だが、ゲーム本編でもイベントで覚えるPCキャラが一人だけいる。
「オルティーナ……ここまでするなんて……!」
……そう、聖女オルティーナだ。
彼女は『自爆の法』を使用するイベントがある。
だがゲーム本編で使用しようとすると、対象のキャラがボイス付きで止めてきたうえで封印されるという、一種の『キャラの反応を楽しむネタイベント』だった。
……だが、今世のオルティーナには止めるようなものがおらず、魔法が封印されることはなかったのだろう。
「エイド様! 今治療するわ!」
無論未夏も、何も考えずについてきたわけではない。
幸いなことに傷を回復させる薬は山ほど持ってきた。
何とか命をつなぐことは出来るはずだ。
だが、エイドは首を振る。
「いや、いい……」
「何言ってんの? 治療しなかったら死ぬでしょ?」
「俺は……もう、足も失ったし、顔も……ただれている……。爆発の衝撃を……フォスターの分まで……引き受けたからな……」
「フォスター将軍の?」
「あいつは……俺の恩人だからな……爆発の威力を俺が吸収したんだ……」
ゲーム本編では、エイドはフォスター将軍に恩義があるという設定だが、これは今世でも生きているようだと未夏は気づいた。
つまり、フォスター将軍がこの場にいないのは木っ端みじんに吹き飛んだからではなく、かろうじて動く身体を引きずりながらもラジーナを追いかけたからだと、未夏は理解した。
「こんな体になった俺が……彼女に渡せるものなんて、もうないから……次は『俺の番』だ……」
「…………」
「下手にここで生きのびて邪魔者になるより……ここで死んで、代わりに、誰か……健康で、五体満足で、魅力ある男と再婚してくださったほうが、ラジーナ様も……」
彼もまた転生者だ。
彼ら転生者は、自分の命よりも他人……特に『転生者でないもの』のことを第一に考える。自身を殺した兵士にまで思いやりを持って接していたモブ兵士の言動から、彼がこういうことは何となく分かっていた。
だが、そこで未夏は大声で遮る。
「喜ぶわけないでしょ! バカ!」
「え?」
「あなたが死にたいのは勝手よ! けど、ここがどこか分かってるの? 聖ジャルダン国の敷地なの! ……ここであなたが死んだら、また戦争が起きるって分からない?」
「あ……」
「そんなにラジーナ様に迷惑かけたくないなら、両国の関係が完全に改善して、あなたが本当に用済みになったあとにでも死ねばいいでしょ?」
無論、これは未夏の本心ではない。
エイドに好意を持つ未夏は、どんな形でも彼に死んでほしくないと思っていたし、それはラジーナも同様だというのは分かっている。
だがエイドに対しては、このように国益を第一にする発言をすれば、いうことをきくと判断したため、このように叫んだ。
今のエイドは立場上はラウルド共和国の住民だ。
そんな彼がもしも命を落としたとあれば、間違いなく国際問題になる。
……そうすれば、厭戦気分が広がっていた今のこの国が、また戦火に巻き込まれる可能性がある。
この論法に気づいたのか、エイドは、
「そうだな……もう、俺は死んで逃げるのはダメだよな……頼む……」
そういうと身体を未夏に預け、治療を頼んだ。
「ええ、すぐに傷を癒すから待ってて?」
まずは出血を止めるべく、未夏は包帯を取り出し、エイドの身体に巻く。
こういう時に学校で学んだ応急処置の知識が役に立った。
「すまない……今、まだよく目が見えないが……ラジーナ様は……?」
「まだ」というように、エイドの両目には破片上のものは刺さっていない。
恐らく視力は無事だと分かり未夏は安堵した。
「ううん。ここにはいないわ……」
一瞬方便でも『傍にいる』と言おうと思ったが、あえて未夏は真実を伝えると、エイドは安堵したような表情を見せた。
「そうか……オルティーナ様を……追ってくれたんだな……」
「……そうね……国のためなら、あなたのことは二の次ってことよね?」
「ああ……あいつと結婚して、よかった……」
ラジーナにとっては「国家が第一で、エイドはセカンド」に過ぎない。
そのため、彼女が国家の危機につながるような『因果律の鎖』のほうに向かうのは当然の行動だ。
……未夏からすれば、それでもラジーナはエイドの傍にいて欲しかったが、エイドにとっては寧ろ逆のようだ。
彼は彼女がいないと聞き、安堵したような表情を見せた。
「やはり、あの方は……国家を第一に考えている方だ……」
「寂しくないの?」
「そんな覚悟で転生者はやっていないさ……」
そうエイドはつぶやく。
「未夏……追わなくていいのか?」
「ええ。……私に出来ることはもうないから……」
状況から考えて、今から急いで祭壇の内部に入っても、もう追いつけない。
今自分に出来ることは、エイドを延命できるように治療することだけだ。
そのことを悟った未夏は、これから起こる未来を受け入れるような表情で、そっと治療を続けた。
「……いったい……なにがあったの……?」
未夏は閃光と爆音でふらふらしながらも立ち上がった。
……全身のいたるところに擦り傷があったが、幸いなことに大きなケガはしていない。
周囲を見渡すと、そこにはラジーナもフォスター将軍も姿はない。
……居たのは、
「エイド様!」
全身が炎に焼けただれたエイドの姿があった。
顔のやけどは、恐らくもうもとには戻らない。……そして両足は焼失し、すでに機能を果たさなくなっていることは未夏の目にも明らかだった。
「未夏……か……よかった、無事で……」
弱々しい声で彼はつぶやく。
……これだけで状況はすべて呑み込めた。
フォスター将軍は、恐らく禁忌の魔法『自爆の法』を用いたのだ。この魔法をかけられたものが『戦闘不能』になると同時に発動し、周囲に大損害を与える魔法だ。
(一度この魔法がかかった敵は『石化』以外の方法で倒したら確定で自爆するため、プレイヤーから嫌われまくったのは言うまでもない)
これは本来モンスター側が使う魔法だが、ゲーム本編でもイベントで覚えるPCキャラが一人だけいる。
「オルティーナ……ここまでするなんて……!」
……そう、聖女オルティーナだ。
彼女は『自爆の法』を使用するイベントがある。
だがゲーム本編で使用しようとすると、対象のキャラがボイス付きで止めてきたうえで封印されるという、一種の『キャラの反応を楽しむネタイベント』だった。
……だが、今世のオルティーナには止めるようなものがおらず、魔法が封印されることはなかったのだろう。
「エイド様! 今治療するわ!」
無論未夏も、何も考えずについてきたわけではない。
幸いなことに傷を回復させる薬は山ほど持ってきた。
何とか命をつなぐことは出来るはずだ。
だが、エイドは首を振る。
「いや、いい……」
「何言ってんの? 治療しなかったら死ぬでしょ?」
「俺は……もう、足も失ったし、顔も……ただれている……。爆発の衝撃を……フォスターの分まで……引き受けたからな……」
「フォスター将軍の?」
「あいつは……俺の恩人だからな……爆発の威力を俺が吸収したんだ……」
ゲーム本編では、エイドはフォスター将軍に恩義があるという設定だが、これは今世でも生きているようだと未夏は気づいた。
つまり、フォスター将軍がこの場にいないのは木っ端みじんに吹き飛んだからではなく、かろうじて動く身体を引きずりながらもラジーナを追いかけたからだと、未夏は理解した。
「こんな体になった俺が……彼女に渡せるものなんて、もうないから……次は『俺の番』だ……」
「…………」
「下手にここで生きのびて邪魔者になるより……ここで死んで、代わりに、誰か……健康で、五体満足で、魅力ある男と再婚してくださったほうが、ラジーナ様も……」
彼もまた転生者だ。
彼ら転生者は、自分の命よりも他人……特に『転生者でないもの』のことを第一に考える。自身を殺した兵士にまで思いやりを持って接していたモブ兵士の言動から、彼がこういうことは何となく分かっていた。
だが、そこで未夏は大声で遮る。
「喜ぶわけないでしょ! バカ!」
「え?」
「あなたが死にたいのは勝手よ! けど、ここがどこか分かってるの? 聖ジャルダン国の敷地なの! ……ここであなたが死んだら、また戦争が起きるって分からない?」
「あ……」
「そんなにラジーナ様に迷惑かけたくないなら、両国の関係が完全に改善して、あなたが本当に用済みになったあとにでも死ねばいいでしょ?」
無論、これは未夏の本心ではない。
エイドに好意を持つ未夏は、どんな形でも彼に死んでほしくないと思っていたし、それはラジーナも同様だというのは分かっている。
だがエイドに対しては、このように国益を第一にする発言をすれば、いうことをきくと判断したため、このように叫んだ。
今のエイドは立場上はラウルド共和国の住民だ。
そんな彼がもしも命を落としたとあれば、間違いなく国際問題になる。
……そうすれば、厭戦気分が広がっていた今のこの国が、また戦火に巻き込まれる可能性がある。
この論法に気づいたのか、エイドは、
「そうだな……もう、俺は死んで逃げるのはダメだよな……頼む……」
そういうと身体を未夏に預け、治療を頼んだ。
「ええ、すぐに傷を癒すから待ってて?」
まずは出血を止めるべく、未夏は包帯を取り出し、エイドの身体に巻く。
こういう時に学校で学んだ応急処置の知識が役に立った。
「すまない……今、まだよく目が見えないが……ラジーナ様は……?」
「まだ」というように、エイドの両目には破片上のものは刺さっていない。
恐らく視力は無事だと分かり未夏は安堵した。
「ううん。ここにはいないわ……」
一瞬方便でも『傍にいる』と言おうと思ったが、あえて未夏は真実を伝えると、エイドは安堵したような表情を見せた。
「そうか……オルティーナ様を……追ってくれたんだな……」
「……そうね……国のためなら、あなたのことは二の次ってことよね?」
「ああ……あいつと結婚して、よかった……」
ラジーナにとっては「国家が第一で、エイドはセカンド」に過ぎない。
そのため、彼女が国家の危機につながるような『因果律の鎖』のほうに向かうのは当然の行動だ。
……未夏からすれば、それでもラジーナはエイドの傍にいて欲しかったが、エイドにとっては寧ろ逆のようだ。
彼は彼女がいないと聞き、安堵したような表情を見せた。
「やはり、あの方は……国家を第一に考えている方だ……」
「寂しくないの?」
「そんな覚悟で転生者はやっていないさ……」
そうエイドはつぶやく。
「未夏……追わなくていいのか?」
「ええ。……私に出来ることはもうないから……」
状況から考えて、今から急いで祭壇の内部に入っても、もう追いつけない。
今自分に出来ることは、エイドを延命できるように治療することだけだ。
そのことを悟った未夏は、これから起こる未来を受け入れるような表情で、そっと治療を続けた。
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