二度目の冒険は『低レベル縛り』でいきましょう~『自称』ドMの女勇者ちゃんと一緒に、魔王になったヤンデレ妹を討伐します~

フーラー

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第3章

3-10 最高火力をぶっ放す竜に効く道具はこれしかない

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『受けよ、我ら竜族の怒りを!』


リア・ヴァニアと周囲にいたドラゴンたちはそう叫ぶとともにブレスを吐き出してきた。
その火炎はドラゴンたち自身の視界を塞ぐ。……そして、狙うはその一瞬だった。


「今だ!」


俺は以前ホワイトドラゴンとの戦いで手に入れた『白竜の逆鱗』をかざした。

これは、一回だけ敵の『魔法攻撃を反射』することが出来るアイテムだ。
この手の『相手側の行動に依存するアイテム』は通常プレイでは敬遠される場合も多い。……だが、低レベル縛りプレイでは貴重なダメージソースになる。


白竜の逆鱗は俺がかざした瞬間に淡く輝きだし、俺たちの周りに障壁を作る。
そして、


『な……そんな……!』


それがリア・ヴァニアの断末魔となった。
障壁が彼女の『全てのものを跡形もなく焼き尽くす』といわれている火炎を跳ね返し、周囲にいるドラゴンもろとも一気に消し炭にした。


『グアアアアアア!』
『リア・ヴァニア様……ああああああ!』
『ぐあああああ! き、貴様ら……これが……狙いか……!』


反射した、リア・ヴァニアたちの一斉砲火を反射した炎の広がりは凄まじい。
周囲が凄まじい業火に晒される中でドラゴンたちが次々に叫びながら燃えていく。
その様子を見ながら俺は、ふう……と一息ついた。


「よかった……成功だ……」
「うん……」


低レベル縛りクリアの定番である『魔法反射』がここまで綺麗に決まったのはありがたかった。そう思いながらも俺は彼らを見据えた。


『ぐ……ロナ様……申し訳……ありません……!』
『悪い……父ちゃんはここまでだ……娘よ……強く育て……!』


悲壮な断末魔をあげながらも、瀕死の重傷を負ったドラゴンたちはそううめき声を上げていた。

仮にこの炎で死ななくとも、元よりここは敵地であり、彼ら侵略者だ。
しかもドラゴンは倒すと大量の経験値が手に入るのだから、この場で捕虜になることなどなく殺されるのは確実だ。

……もっとも、そもそも彼ら竜族の巨体を入れる牢屋などないのだが。
家族を思いながら死んでいく彼らの様子を見ながら、せめてかたき討ちのチャンスを与えてやろうと思った。

「……悪い、マルティナ……あいつらに手向けをしてやりたいけど……いいか?」
「あたしは『もの』だよ? ……許可なんて要らないから」
「……ありがとうな」

そして俺はローブを取った。
マルティナも俺の意図を読み取ったらしく、髪をほどいた。


その姿を見たドラゴンたちが目を見開く。


『な、貴様はまさか……!』
『伝説の魔導士、シイル……か……!』
「そうだよ! そしてあたしは元勇者マルティナ! ……キミたちを倒したのはあたしたち!」
『くそ……! ただの小娘ではないと……思っていたが……貴様らだったとはな……!』


忌々しそうにそう叫ぶドラゴン。
彼らに同情する思いはありながらも、俺は大声を張り上げる。


「密偵! どうせ、その辺にいるんだろ! ……こいつらを殺した仇敵は俺たちだ! 次は、俺とマルティナを狙え!」
「かたき討ちなら、いつでも来ていいから! 彼らの無念を晴らしたいなら相手になるよ!」

そう叫ぶ。

『……フン……貴様ら、精々地獄に落ちろ……』
『シイル、マルティナ……いつか、必ず貴様を……殺す……我が同胞がな……!」


その様子を見て、目の前にいたドラゴン達はこと切れた。……だが、その表情は少しだけ柔らかくなっていた。
……だが、周囲を見渡すとまだ息のあるドラゴンたちがいる。


俺は、その様子を見てディラックを叩き起こした。


「おい、起きろ!」
「え?」

瀕死のけがを負っているが、何とかディラックは目を覚ました。
そして目の前で焼け焦げて息絶えたリア・ヴァニアを見て思わず表情を変えた。


「な……! シイル君……まさか、リア・ヴァニアを倒したのかい?」


自分を完膚なきまでに叩きのめしてきたこの化け物を俺たちが倒せるとは思わなかったのだろう。信じられないという表情で俺たちのほうを見てきた。


「ああ。……だが、まだ周りのドラゴンには生きている奴がいる。だから……」
「ディラック、キミに『おいしいとこどり』させてあげるね! ほら、立って!」

そういうとマルティナは回復薬をディラックにかけた。
ディラックは何とか立ち上がりながら、意味が分からないと言わんばかりに俺のほうを見やる。


「え? ……ど、どういうことだい?」
「ほら、あそこに大量のドラゴンがいるだろ? ……あれ、全部お前がとどめをさしてくれ。経験値も金も、全部お前が独り占めしていい」


だが、そういうとディラックは首を振った。

「ちょっと! いくらなんでも、レベル1のシイル君にそんなことをされる筋合いは……!」
「何言ってんだよ。ここでお前がドラゴンと戦ってくれたから、あいつを倒せたんだ。それに俺たちが経験値をもらってもしょうがない。……だから、気にすんな」
「そうそう! どうせあたしたちは、あいつらを倒しても強くなれないんだし! ……だからさ、ディラックにあげるよ、全部!」


そういうと、俺たちは荷物を持って立ち上がる。
……まあ、元々俺たちの攻撃力ではあのあたりのドラゴンにとどめをさすことができない。万一最後の力をふり絞った一撃で全滅させられたら目も当てられないだろう。


彼に手柄を譲るのは、そういう理由もある。
ディラックは少し驚いたような表情を見せた。

「キミたち……本当にいいのかい?」
「うん! だって、友達でしょ? あたしたちはさ!」
「…………」
「お前があいつを倒したことにしたら、王様もきっと『勇者の証』を譲ってくれるさ。だから、後は任せるよ」
「そうそう!」


「ありがとう……それなら遠慮なくいただくよ。……けど……『友達』に借りは作りたくないな」


そういうとディラックは少し考えるような表情をしながら、いつものキザな表情で俺たちを指さした。


「もし、キミたちに借りを返せるときが来たら教えてほしい。……この僕の命に代えても、キミ達を助けてあげるよ」


……だがその瞬間。


「それはダメ!」


そう叫ぶとともに、マルティナが凄まじい勢いでディラックの頬を張った。
バシン! という音が公園に響く。


「え……?」


「あたしのために命を捨てるなんて、冗談でも言わないで!」
「あ、えっと……」
「あたしは『モノ』だから! みんなに『利用される側』の使い捨てであるべきだから……お願いだから、そうやって優しくしないで? 本当に辛いから……」
「ど、どうしてだい、マルティナ……?」
「どうしもこうしてもないよ! あたしのために犠牲になるくらいなら、恩を仇で返されるほうがマシ!」
「…………」


普段はにこやかなマルティナからは想像もできない凄まじい剣幕に、思わず俺も押し黙った。
だが、ディラックは頷く。


「……分かったよ。言い方を変えるね」


そして少し考えた後にディラックは口を開いた。


「……力が必要になったら、教えてよ。この『持ち逃げのディラック』が、キミたちから『おいしいとこどり』をするために、駆けつけてあげるから」


そういうと、マルティナは『それでいい』とばかりに、フフンと笑う。


「よろしい! ……じゃあディラック! 元気でね!」


次の船の出航まではまだ二日ほどある。きっとここにいたら俺は、またくだらない表彰式に出ないとならないだろう。


……今回の勝利は半ばまぐれだ。かつての力を失った俺たちが、陛下から労われる資格などない。だから、その辺の森の中でアイテム採集を兼ねて時間を潰すほうがいい。


そう思い、俺たちはディラックに後を任せ、出航までこの国を出ることにした。
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