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第4章
4-2 シイルは鈍感なんじゃない。自信がないだけなんだ
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それから船に乗って二週間ほど経過した後、俺たちは船着場からほどなく歩いたところにある「ミーヌの街」に到着した。
魔王城に到達するためには、この街にあるミーヌ鉱山を通り橋を渡る必要がある。
だが、現在そのミーヌ鉱山は四天王の一人であるゴーレム・キング『フロア・デック』が抑えていると話は聞いている。
「はあ、もう疲れたよ……シイル? 船酔いしちゃったみたいで……」
船から降りるなり、普段滅多なことでは弱音を吐かない……いや、吐いてくれないマルティナが珍しく目をふらつきながらそう答えた。
山育ちの彼女にとっては、辛いんだろう。そう思いながらも俺はかがんで背中を貸す。
「……ほら。乗ってくれ。……いや、言い方を変えるな。『リュック』になってくれ」
「いいの?」
「嫌じゃないならな」
「……ありがと、やっぱり優しいね。シイルは」
「別に、優しさじゃないよ……誰だって、女の子は背負いたいものだろ」
「……フフ……そういうことにしとくね」
マルティナはそういいながら俺におぶさってくれた。
誰かに奉仕されることを極端に嫌うマルティナが、俺の申し出を受け入れてくれると思わなかったから、少し意外だった。
(そういや、ディラックも言ってたもんな。『※もっとお互い本音で話したほうがいい』って。……あいつに感謝しないとな)
※3章6節参照。なお、ディラックはまったく違うニュアンスで話していますが、シイルはそう解釈しています。
「ゴメンね、シイル? 重くない?」
「アハハ、全然だ。マルティナは凄い軽いよ」
心配そうに尋ねるマルティナを心配させまいと、俺はそう答えた。
それでも申し訳なさそうな顔をするマルティナの表情を見て、俺はフォローするべく続ける。
「正直、ロナや元カノのほうがずっと重かったしな」
「……え?」
そういうと、マルティナは少し驚いたような表情を見せた。
「元カノ……って……?」
「ああ、元の世界にいた時に付き合ってた子だよ。あいつも昔足くじいたことがあって、それでこうやって背負ったことがあるんだ。……まあ、半年で別れたけどな」
「嘘……そんなの、初めて聞いた……」
信じられないという表情をするマルティナ。
そういえば、まだこのことは話していなかったな。まあ、大して重要な話題でもないからだが。
「それって……どんな女なの?」
急に睨むような表情になって俺に尋ねてきた。……俺を好きになる女なんているとは思えないのだろう、マルティナは。
「別に普通の……明るいギャルって感じの子だよ。『付き合ってくれたら、ロナと友達になってあげてもいい』っていうから付き合ったんだけどな」
当時、俺は妹へのいじめを辞めさせるため、必死でスクールカーストを上げていた。
その一環として文化祭で代表をやったこともあったのだが、後夜祭の後にその子からそう告白されたことを思い出した。
(幹事とか代表って柄じゃない俺だけど……ほんっと、ロナのためにがむしゃらに何でもやっていたな……)
それを聞いて、マルティナは少し焦るような表情を見せた。
まあ、俺と付き合うような女がこの世にいると聞いたら、それは驚くだろうが。
「それで……そのおん……その子とはどこまでいったの?」
「え? ああ、デートで金を払わされたり、友人に見せびらかす要員に使われたり、そんな感じだったな。別に変なことはしてないけどな」
「……な、なんだ……。じゃあ、シイルは『仕方なく』付き合ってたってことだよね?」
そう尋ねられて俺は一瞬言葉に詰まる。
元カノは『俺』ではなく『彼氏』が欲しかっただけだったのだと今にして思う。実際、彼女と居て楽しかった思い出はあまりない。だが俺も『ロナの友達』が欲しかっただけなのだから同罪だ。
「え、あ、いや……正直、そうかもな……」
また、彼女の『ロナと友達になってくれる』という約束は果たされなかった。
一応元カノも気を使って家に来てくれて話をしようとしたり、バーベキューに誘おうとしてくれた。
……だが、なぜかロナは異常なほどその元カノを嫌っていたのだ。
恐らくだが、彼女のようなギャルが、自分をいじめていた相手と雰囲気が似ていたことが原因だろう。
「その元カノのこと、ロナは苦手だったみたいでさ……怒鳴られたんだよ」
「怒鳴られた?」
「ああ。『絶対、その女と遊びたくない! 絶対に家に呼ばないで』ってな」
「……ふうん。そうだったんだね」
そういうとマルティナは少しほっとしたような表情で答える。
「やっぱさ。……ロナはシイルのことが嫌いでしょ? だから、シイルの連れてくる女も好きになれなかったんだね? 本当に酷い妹だって思うよ。シイルには悪いけど……」
「いや、悪いのは俺だったからな……」
「そんなことないよ! そんなに気を遣ってもらったらさ。あたしがロナだったら……きっとシイルを好きになってたもん! いいな、ロナは」
そういってマルティナは俺にギュっとしがみついてきた。
「……シイルみたいなお兄ちゃん、あたしも欲しかったな……」
やはり、マルティナは家族というものに憧れているんだろう。
マルティナも妹だったら、ロナと仲良くしてくれたのかな……。そう思いながら、俺はマルティナの身体をぐい、と持ち上げて背負いなおす。
「ところでさ、シイル? 話は変わるけど、次の街にはどうやって行くの?」
「うーん……それなんだよな……」
俺はそういいながら少し逡巡した。
この街は噂によると、ゴーレム系の魔物が多く出ているとの話を聞いている。
彼らには、今まで使っていたような眠り草を使うような『ハメ技』は効かない。
「ゴーレムには、眠りは効かないんだっけ?」
「ああ。当然だけど『マヒ』も効かないな」
魔法生物であるゴーレムには雷系の魔法が有効だ。だが、その魔法はレベル5で最初に覚えるため、今の俺には使うことが出来ない。
仮に覚えても火力が低すぎて使い物にならないだろうが。
それに正直、前回の戦いはかなり綱渡りなところがあった。
万が一、あの鬼ごっこの中で一度でもドラゴンの攻撃を喰らっていたら、それで終わっていたのだから。そう思うと、やはり頭数がもっと欲しい。
「……やっぱり、一緒に旅をする仲間が必要だな」
「やっぱそうか……。シイルと二人でも良かったんだけどね……」
「ハハハ……まあ、家族が増えると思って、歓迎してくれよ?」
「うん、そうだね……」
あれ、家族が増えると嬉しいと思ったが、思ったより喜ばないな。
そう思いながら俺達は酒場に向かった。
魔王城に到達するためには、この街にあるミーヌ鉱山を通り橋を渡る必要がある。
だが、現在そのミーヌ鉱山は四天王の一人であるゴーレム・キング『フロア・デック』が抑えていると話は聞いている。
「はあ、もう疲れたよ……シイル? 船酔いしちゃったみたいで……」
船から降りるなり、普段滅多なことでは弱音を吐かない……いや、吐いてくれないマルティナが珍しく目をふらつきながらそう答えた。
山育ちの彼女にとっては、辛いんだろう。そう思いながらも俺はかがんで背中を貸す。
「……ほら。乗ってくれ。……いや、言い方を変えるな。『リュック』になってくれ」
「いいの?」
「嫌じゃないならな」
「……ありがと、やっぱり優しいね。シイルは」
「別に、優しさじゃないよ……誰だって、女の子は背負いたいものだろ」
「……フフ……そういうことにしとくね」
マルティナはそういいながら俺におぶさってくれた。
誰かに奉仕されることを極端に嫌うマルティナが、俺の申し出を受け入れてくれると思わなかったから、少し意外だった。
(そういや、ディラックも言ってたもんな。『※もっとお互い本音で話したほうがいい』って。……あいつに感謝しないとな)
※3章6節参照。なお、ディラックはまったく違うニュアンスで話していますが、シイルはそう解釈しています。
「ゴメンね、シイル? 重くない?」
「アハハ、全然だ。マルティナは凄い軽いよ」
心配そうに尋ねるマルティナを心配させまいと、俺はそう答えた。
それでも申し訳なさそうな顔をするマルティナの表情を見て、俺はフォローするべく続ける。
「正直、ロナや元カノのほうがずっと重かったしな」
「……え?」
そういうと、マルティナは少し驚いたような表情を見せた。
「元カノ……って……?」
「ああ、元の世界にいた時に付き合ってた子だよ。あいつも昔足くじいたことがあって、それでこうやって背負ったことがあるんだ。……まあ、半年で別れたけどな」
「嘘……そんなの、初めて聞いた……」
信じられないという表情をするマルティナ。
そういえば、まだこのことは話していなかったな。まあ、大して重要な話題でもないからだが。
「それって……どんな女なの?」
急に睨むような表情になって俺に尋ねてきた。……俺を好きになる女なんているとは思えないのだろう、マルティナは。
「別に普通の……明るいギャルって感じの子だよ。『付き合ってくれたら、ロナと友達になってあげてもいい』っていうから付き合ったんだけどな」
当時、俺は妹へのいじめを辞めさせるため、必死でスクールカーストを上げていた。
その一環として文化祭で代表をやったこともあったのだが、後夜祭の後にその子からそう告白されたことを思い出した。
(幹事とか代表って柄じゃない俺だけど……ほんっと、ロナのためにがむしゃらに何でもやっていたな……)
それを聞いて、マルティナは少し焦るような表情を見せた。
まあ、俺と付き合うような女がこの世にいると聞いたら、それは驚くだろうが。
「それで……そのおん……その子とはどこまでいったの?」
「え? ああ、デートで金を払わされたり、友人に見せびらかす要員に使われたり、そんな感じだったな。別に変なことはしてないけどな」
「……な、なんだ……。じゃあ、シイルは『仕方なく』付き合ってたってことだよね?」
そう尋ねられて俺は一瞬言葉に詰まる。
元カノは『俺』ではなく『彼氏』が欲しかっただけだったのだと今にして思う。実際、彼女と居て楽しかった思い出はあまりない。だが俺も『ロナの友達』が欲しかっただけなのだから同罪だ。
「え、あ、いや……正直、そうかもな……」
また、彼女の『ロナと友達になってくれる』という約束は果たされなかった。
一応元カノも気を使って家に来てくれて話をしようとしたり、バーベキューに誘おうとしてくれた。
……だが、なぜかロナは異常なほどその元カノを嫌っていたのだ。
恐らくだが、彼女のようなギャルが、自分をいじめていた相手と雰囲気が似ていたことが原因だろう。
「その元カノのこと、ロナは苦手だったみたいでさ……怒鳴られたんだよ」
「怒鳴られた?」
「ああ。『絶対、その女と遊びたくない! 絶対に家に呼ばないで』ってな」
「……ふうん。そうだったんだね」
そういうとマルティナは少しほっとしたような表情で答える。
「やっぱさ。……ロナはシイルのことが嫌いでしょ? だから、シイルの連れてくる女も好きになれなかったんだね? 本当に酷い妹だって思うよ。シイルには悪いけど……」
「いや、悪いのは俺だったからな……」
「そんなことないよ! そんなに気を遣ってもらったらさ。あたしがロナだったら……きっとシイルを好きになってたもん! いいな、ロナは」
そういってマルティナは俺にギュっとしがみついてきた。
「……シイルみたいなお兄ちゃん、あたしも欲しかったな……」
やはり、マルティナは家族というものに憧れているんだろう。
マルティナも妹だったら、ロナと仲良くしてくれたのかな……。そう思いながら、俺はマルティナの身体をぐい、と持ち上げて背負いなおす。
「ところでさ、シイル? 話は変わるけど、次の街にはどうやって行くの?」
「うーん……それなんだよな……」
俺はそういいながら少し逡巡した。
この街は噂によると、ゴーレム系の魔物が多く出ているとの話を聞いている。
彼らには、今まで使っていたような眠り草を使うような『ハメ技』は効かない。
「ゴーレムには、眠りは効かないんだっけ?」
「ああ。当然だけど『マヒ』も効かないな」
魔法生物であるゴーレムには雷系の魔法が有効だ。だが、その魔法はレベル5で最初に覚えるため、今の俺には使うことが出来ない。
仮に覚えても火力が低すぎて使い物にならないだろうが。
それに正直、前回の戦いはかなり綱渡りなところがあった。
万が一、あの鬼ごっこの中で一度でもドラゴンの攻撃を喰らっていたら、それで終わっていたのだから。そう思うと、やはり頭数がもっと欲しい。
「……やっぱり、一緒に旅をする仲間が必要だな」
「やっぱそうか……。シイルと二人でも良かったんだけどね……」
「ハハハ……まあ、家族が増えると思って、歓迎してくれよ?」
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