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第1章
『ハーレム』を夢見るコミュニケーションが苦手な男に現実を突きつけるの、良いよね
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そして一行は帰宅し、ラルフに報告を行った。
「ラルフ様。本日は、これだけの虫を駆除していただきました。それと、薬草もこれほど入手しました」
シリルはそう言いながら薬草と虫かごを見せると、ラルフは満面の笑みを浮かべた。
「おお、みな、よくやってくれたな。特にザント。お前は初めての仕事だったのに、大変じゃなかったか?」
「いえ、俺は別に……」
おどおどした口調ながら、ザントは少し嬉しそうに答えた。
「それでは、その虫たちを厨房に持って行ってくれ」
「え、これを食べるんですか?」
「ああ、セドナが良い調理法を教えてくれてな。これをつまみに今日はみなで楽しもうというわけだ」
「は、はあ……」
昆虫を食べる文化は、グリゴア領にはなかった。
そのこともあり、ザントは少ししり込みするような表情を見せた。
「それでは、みな。夜になったら食堂に集まってくれ。近くに住む領民たちも誘うから、粗相はないようにな」
そう言うとラルフは部屋の奥に引っ込んでいった。
それから夜になり、少しずつ領民や使用人たちが集まってきた。
「アハハ、あんたのその料理、いったいなんだよ?」
「別にいいだろ!? ちょっと焦げてるけど、そこが良いんだって!」
「けっ、こんなまずい水みてーな酒で酔えるかよ?」
「ラルフ様、あまり濃いお酒は好きじゃないのかねえ……」
使用人と領民、全員合わせて20人くらいだろうか。
特に言いつけはなかったが、領民たちもこぞって自作の料理を持ってきてくれている。
とはいえ、獣肉や家禽類と言った貴重な食材は用意できなかったらしく、カエルや川エビと言った自然由来の食材を中心に用意している。
(……はあ、やっぱりジジババばっかりだな……)
その独特の輪の雰囲気になじめず、ザントはそう思いながら近くに置かれていたサラダを口にしていた。
(もっとかわいい子が居たらなあ……。俺も積極的になれるってのに……これじゃあ、頑張っても意味ないよなあ……)
そう思いながら、ザントはあたりを見回した。
少し離れたところに、セドナがかいがいしく給仕の役をやりながら、同じく調理に汗を流しているシリルと談笑しているのが目に入った。
(まともに可愛いのは、セドナさんくらいか……。やっぱ良いよな、おっぱいは小さいし、お尻も目立たないけど、目がぱっちりしていて素敵だし……。彼女が俺の内面の良さに気づいてくれれば付き合えるかなあ……)
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、セドナの身体的特徴について考えるザント。とてもではないが『良い内面』を持つものが考えるようなことではないのだが、本人にその自覚はないようだ。
(ああいう彼女が居たら、毎日楽しいだろうな。こういう場でも、二人っきりで『あーん』なんてしてもらったりなんかしてさ……。そうすればここで居心地の悪い思いもしないし……何とか彼女をラルフさんから買いとることが出来ればなあ……)
既に女性を『買うもの』と考えている時点で恋愛の前提が誤っているが、この世界ではある種の人身売買のような形で雇われるものも多い。
ザントの妄想はさらに加速していった。
(あと、休日はお弁当作ってもらってデートしたり、花畑でイチャイチャしたり……。それで、ほかにもメイドや奴隷をいっぱい買って、みんなで楽しくハーレム生活、毎日『ザント様、キスして?』 『ザント様、愛してます!』って感じに言われて、過ごしたいなあ……)
などと考えながら一人で過ごしていると、後ろから、ドン、と皿を置く音が聞こえた。
「今日はお疲れだったな、ザント! よかったらこれ食いなよ!」
シリルだった。
ある程度調理が終わったのだろう、ザントの隣の席にどっかりと座り、肩に手を回してきた。
「あ、シリルさん……」
シリルの作った料理は、自身が捉えた虫を佃煮のようにしたものだった。
一つ摘まんでみたが、意外なほど良い味がした。
「どうだ、美味いだろ? これもセドナに教えてもらったんだけどな」
「あ、ああ……。思ったより、普通に美味しいんだな、これ」
たどたどしく答えるザントに、シリルは少し心配そうに尋ねる。
「どうしたんだよ、こんな遠くで? みんなの輪の中に入る気がないのか?」
「あ、えっと……」
その様子を見て、明るく笑顔を見せて肩をバン、と叩く。
「あ、分かった。可愛い女の子がいないから、あまり参加する気になれねえんだろ?」
「え? な……」
図星を付かれたことに焦った表情で、ザントが表情を変えた。
「あはは! やっぱそうか! ま、かわいい子はみんなグリゴア領に取られちまったからな。けどさ、今ここに居る奴らも気の良い連中ばっかりだから、仲よくしようぜ、な?」
「え、あ、ああ……」
そう言いながら、ザントは手に持ったグラスに入った水を飲みほした。
「それともザントは、人と話をするのが嫌い……と言うより、相手と仲良くなるのが面倒なタイプか? けど、彼女だけは欲しい、或いは女の子に囲まれるハーレムは作りたい。そんな感じじゃねえか?」
「……な、なんでわかるんだよ……」
それもやはり図星だったのだろう、ザントは少し不機嫌そうに皿の上の佃煮を口に運び始める。
「アハハ、『一夫多妻』を求めるのは、お前ら獣人の特性だからな。……けどさ、俺たち人間の世界に伝わる言い伝えがあってさ。『作る前に、維持する準備をしろ』ってことわざ、知ってるか?」
「え?」
聴きなれないことわざだったのだろう、ザントは首を傾げた。
「俺たち人間にはさ。時々『天才』って言って、すげー能力の高い奴が産まれんのは知ってるか?」
「えっと……ああ、聞いたことがある」
人間は個体間の能力差が他の種族に比べて大きい。とりわけ「天才」と呼ばれるものの存在はしばしば巨大な帝国を作り上げたり、広大な土地をわがものにしたりなどによって恐れられることが多い。
そのことによる恐怖もまた、この世界で人間が肩身を狭くする原因ともなっている。
なお、シリルは基礎的な能力こそ高水準だが、決して『天才』ではない。
「で、そう言う奴ってさ。男は大体国内を統一した後に『ハーレム』を作りたがるんだよ。いっぱい女の子集めて、毎日侍らせるのな。女の場合は『逆ハーレム』か、或いは同じように可愛い女の子を集めて侍らせてるな」
「へえ……」
それを聞いて、羨ましそうな表情を見せると同時に、聖女ミレイユの姿が一瞬ザントの頭の中に浮かんだ。
彼女も『ハーレム』ではないが、大概いつも可愛い容姿の女友達と一緒に過ごしていることを思い出したためだ。
「けどさ。今の世界で、そんなハーレムを維持できてる人間って、いないんだよ」
その発言で、はっとしたようにザントも頷く。
「あ、そう言えば……俺も初めて知ったな」
「だろ? どうしてだと思う?」
「え? ……お金が足りなくなったじゃないのか?」
だが、シリルは首を振る。
「そうじゃない。ハーレムを作ってモテモテになってもな。最初は楽しく過ごしてるんだけど、だんだんお互いに話すことが無くなってくるんだよ」
「話すことが? ……ああ……」
それを聞いて、痛いところを突かれたような表情を見せた。
ザントも、自身のコミュニケーション能力が低いことを十分に自覚しているからだ。
「それで、間を持たせるためにキスしたりイチャついたりしてるんだけど、それが周りにも分かるくらい、退屈そうになるんだ。……結局男女の関係って『夜の生活』を楽しむ時間より、一緒に話し合ったり笑いあったりする時間の方が長いからな」
「う……」
またしても、痛いところを疲れたような表情をザントは見せた。
事実、ザント自身も仮にハーレムを築いたとしても、正直なところ『夜の生活』を楽しんでいる以外の時間をどう過ごすかは、全く考えていなかった。
「流石にその『天才』様もそのことを気にしててな。それで何とか話をしようとするんだけどな。出来るのはせいぜい、戦いの話か、後はせいぜい自慢話、後は誰かの悪口くらいしかできなかったんだよ」
「自慢話や悪口か……そう言うのって、嫌われるものだよな」
「だろ? その癖、相手にさせてるケアには感謝もせず、話なんか聞きゃしない。『天才』様の頭の中は自分のことばっかでさ。女のことなんて、その顔と胸のでかさくらいしか関心が無くって、そいつの人生観や日々の暮らしのことなんか、何も考えてなかったからな」
「相手の話、か……」
ザントはそれを聞いて、少し恥ずかしくなったように顔を赤らめた。
セドナに対して向けていた目も、まさに身体的特徴ばかりであり、相手を自分の性欲を満たすための人形であるかのように考えていたことを少し恥じたためだ。
「で、結局相手に幻滅されちまって、別れる。そのことに怒った『天才』は相手を『恩知らず』となじって、国を出奔して一人寂しく生きていくようになる。……そんな話が、俺たち人間には山ほど伝わってんだ」
そこで一呼吸置き、シリルは続けた。
「だからさ。愛する人がいるなら、権力や暴力だけじゃなくて『相手との関係を維持する力』を持たなきゃいけないって教訓話になってんだよ」
「なるほど……。なんか、怖い話ですね……」
ハーレムを手に入れる才能があったとしても、ハーレムを『維持する』才能があるかと言えば、それは別問題である。単に『チート能力』を身に着け、暴力や権力で前者を手に入れることが出来ても、後者は手に入れることが出来ない。
そのことを理解し、ザントは神妙な顔で頷いた。
「だからさ。まずは他人の『内面に興味を持つ』ことから始めねえか? ここにはザントの好きな子はいないかもしれないけど……逆に、だからこそ練習にはもってこいだろ? みんな、失敗しても怒ったりしないしさ」
「え? ……うん……けど……」
自身の内面を見透かされたようで少し恥ずかしそうにしながらも、ザントは頷く。だが、まだ不安そうにもじもじとする様子を見せた。
その様子を見て、シリルは言いたいことが分かったとばかりに頷いた。
「……まあ、いきなり話すのは難しいよな。それならまずは……」
そう言ってザントの手を取って立ち上がり、
「みんなと一緒に踊ることから始めよう、な?」
笑顔を向け、みんなが車座になっている中に足を進めた。
「ラルフ様。本日は、これだけの虫を駆除していただきました。それと、薬草もこれほど入手しました」
シリルはそう言いながら薬草と虫かごを見せると、ラルフは満面の笑みを浮かべた。
「おお、みな、よくやってくれたな。特にザント。お前は初めての仕事だったのに、大変じゃなかったか?」
「いえ、俺は別に……」
おどおどした口調ながら、ザントは少し嬉しそうに答えた。
「それでは、その虫たちを厨房に持って行ってくれ」
「え、これを食べるんですか?」
「ああ、セドナが良い調理法を教えてくれてな。これをつまみに今日はみなで楽しもうというわけだ」
「は、はあ……」
昆虫を食べる文化は、グリゴア領にはなかった。
そのこともあり、ザントは少ししり込みするような表情を見せた。
「それでは、みな。夜になったら食堂に集まってくれ。近くに住む領民たちも誘うから、粗相はないようにな」
そう言うとラルフは部屋の奥に引っ込んでいった。
それから夜になり、少しずつ領民や使用人たちが集まってきた。
「アハハ、あんたのその料理、いったいなんだよ?」
「別にいいだろ!? ちょっと焦げてるけど、そこが良いんだって!」
「けっ、こんなまずい水みてーな酒で酔えるかよ?」
「ラルフ様、あまり濃いお酒は好きじゃないのかねえ……」
使用人と領民、全員合わせて20人くらいだろうか。
特に言いつけはなかったが、領民たちもこぞって自作の料理を持ってきてくれている。
とはいえ、獣肉や家禽類と言った貴重な食材は用意できなかったらしく、カエルや川エビと言った自然由来の食材を中心に用意している。
(……はあ、やっぱりジジババばっかりだな……)
その独特の輪の雰囲気になじめず、ザントはそう思いながら近くに置かれていたサラダを口にしていた。
(もっとかわいい子が居たらなあ……。俺も積極的になれるってのに……これじゃあ、頑張っても意味ないよなあ……)
そう思いながら、ザントはあたりを見回した。
少し離れたところに、セドナがかいがいしく給仕の役をやりながら、同じく調理に汗を流しているシリルと談笑しているのが目に入った。
(まともに可愛いのは、セドナさんくらいか……。やっぱ良いよな、おっぱいは小さいし、お尻も目立たないけど、目がぱっちりしていて素敵だし……。彼女が俺の内面の良さに気づいてくれれば付き合えるかなあ……)
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、セドナの身体的特徴について考えるザント。とてもではないが『良い内面』を持つものが考えるようなことではないのだが、本人にその自覚はないようだ。
(ああいう彼女が居たら、毎日楽しいだろうな。こういう場でも、二人っきりで『あーん』なんてしてもらったりなんかしてさ……。そうすればここで居心地の悪い思いもしないし……何とか彼女をラルフさんから買いとることが出来ればなあ……)
既に女性を『買うもの』と考えている時点で恋愛の前提が誤っているが、この世界ではある種の人身売買のような形で雇われるものも多い。
ザントの妄想はさらに加速していった。
(あと、休日はお弁当作ってもらってデートしたり、花畑でイチャイチャしたり……。それで、ほかにもメイドや奴隷をいっぱい買って、みんなで楽しくハーレム生活、毎日『ザント様、キスして?』 『ザント様、愛してます!』って感じに言われて、過ごしたいなあ……)
などと考えながら一人で過ごしていると、後ろから、ドン、と皿を置く音が聞こえた。
「今日はお疲れだったな、ザント! よかったらこれ食いなよ!」
シリルだった。
ある程度調理が終わったのだろう、ザントの隣の席にどっかりと座り、肩に手を回してきた。
「あ、シリルさん……」
シリルの作った料理は、自身が捉えた虫を佃煮のようにしたものだった。
一つ摘まんでみたが、意外なほど良い味がした。
「どうだ、美味いだろ? これもセドナに教えてもらったんだけどな」
「あ、ああ……。思ったより、普通に美味しいんだな、これ」
たどたどしく答えるザントに、シリルは少し心配そうに尋ねる。
「どうしたんだよ、こんな遠くで? みんなの輪の中に入る気がないのか?」
「あ、えっと……」
その様子を見て、明るく笑顔を見せて肩をバン、と叩く。
「あ、分かった。可愛い女の子がいないから、あまり参加する気になれねえんだろ?」
「え? な……」
図星を付かれたことに焦った表情で、ザントが表情を変えた。
「あはは! やっぱそうか! ま、かわいい子はみんなグリゴア領に取られちまったからな。けどさ、今ここに居る奴らも気の良い連中ばっかりだから、仲よくしようぜ、な?」
「え、あ、ああ……」
そう言いながら、ザントは手に持ったグラスに入った水を飲みほした。
「それともザントは、人と話をするのが嫌い……と言うより、相手と仲良くなるのが面倒なタイプか? けど、彼女だけは欲しい、或いは女の子に囲まれるハーレムは作りたい。そんな感じじゃねえか?」
「……な、なんでわかるんだよ……」
それもやはり図星だったのだろう、ザントは少し不機嫌そうに皿の上の佃煮を口に運び始める。
「アハハ、『一夫多妻』を求めるのは、お前ら獣人の特性だからな。……けどさ、俺たち人間の世界に伝わる言い伝えがあってさ。『作る前に、維持する準備をしろ』ってことわざ、知ってるか?」
「え?」
聴きなれないことわざだったのだろう、ザントは首を傾げた。
「俺たち人間にはさ。時々『天才』って言って、すげー能力の高い奴が産まれんのは知ってるか?」
「えっと……ああ、聞いたことがある」
人間は個体間の能力差が他の種族に比べて大きい。とりわけ「天才」と呼ばれるものの存在はしばしば巨大な帝国を作り上げたり、広大な土地をわがものにしたりなどによって恐れられることが多い。
そのことによる恐怖もまた、この世界で人間が肩身を狭くする原因ともなっている。
なお、シリルは基礎的な能力こそ高水準だが、決して『天才』ではない。
「で、そう言う奴ってさ。男は大体国内を統一した後に『ハーレム』を作りたがるんだよ。いっぱい女の子集めて、毎日侍らせるのな。女の場合は『逆ハーレム』か、或いは同じように可愛い女の子を集めて侍らせてるな」
「へえ……」
それを聞いて、羨ましそうな表情を見せると同時に、聖女ミレイユの姿が一瞬ザントの頭の中に浮かんだ。
彼女も『ハーレム』ではないが、大概いつも可愛い容姿の女友達と一緒に過ごしていることを思い出したためだ。
「けどさ。今の世界で、そんなハーレムを維持できてる人間って、いないんだよ」
その発言で、はっとしたようにザントも頷く。
「あ、そう言えば……俺も初めて知ったな」
「だろ? どうしてだと思う?」
「え? ……お金が足りなくなったじゃないのか?」
だが、シリルは首を振る。
「そうじゃない。ハーレムを作ってモテモテになってもな。最初は楽しく過ごしてるんだけど、だんだんお互いに話すことが無くなってくるんだよ」
「話すことが? ……ああ……」
それを聞いて、痛いところを突かれたような表情を見せた。
ザントも、自身のコミュニケーション能力が低いことを十分に自覚しているからだ。
「それで、間を持たせるためにキスしたりイチャついたりしてるんだけど、それが周りにも分かるくらい、退屈そうになるんだ。……結局男女の関係って『夜の生活』を楽しむ時間より、一緒に話し合ったり笑いあったりする時間の方が長いからな」
「う……」
またしても、痛いところを疲れたような表情をザントは見せた。
事実、ザント自身も仮にハーレムを築いたとしても、正直なところ『夜の生活』を楽しんでいる以外の時間をどう過ごすかは、全く考えていなかった。
「流石にその『天才』様もそのことを気にしててな。それで何とか話をしようとするんだけどな。出来るのはせいぜい、戦いの話か、後はせいぜい自慢話、後は誰かの悪口くらいしかできなかったんだよ」
「自慢話や悪口か……そう言うのって、嫌われるものだよな」
「だろ? その癖、相手にさせてるケアには感謝もせず、話なんか聞きゃしない。『天才』様の頭の中は自分のことばっかでさ。女のことなんて、その顔と胸のでかさくらいしか関心が無くって、そいつの人生観や日々の暮らしのことなんか、何も考えてなかったからな」
「相手の話、か……」
ザントはそれを聞いて、少し恥ずかしくなったように顔を赤らめた。
セドナに対して向けていた目も、まさに身体的特徴ばかりであり、相手を自分の性欲を満たすための人形であるかのように考えていたことを少し恥じたためだ。
「で、結局相手に幻滅されちまって、別れる。そのことに怒った『天才』は相手を『恩知らず』となじって、国を出奔して一人寂しく生きていくようになる。……そんな話が、俺たち人間には山ほど伝わってんだ」
そこで一呼吸置き、シリルは続けた。
「だからさ。愛する人がいるなら、権力や暴力だけじゃなくて『相手との関係を維持する力』を持たなきゃいけないって教訓話になってんだよ」
「なるほど……。なんか、怖い話ですね……」
ハーレムを手に入れる才能があったとしても、ハーレムを『維持する』才能があるかと言えば、それは別問題である。単に『チート能力』を身に着け、暴力や権力で前者を手に入れることが出来ても、後者は手に入れることが出来ない。
そのことを理解し、ザントは神妙な顔で頷いた。
「だからさ。まずは他人の『内面に興味を持つ』ことから始めねえか? ここにはザントの好きな子はいないかもしれないけど……逆に、だからこそ練習にはもってこいだろ? みんな、失敗しても怒ったりしないしさ」
「え? ……うん……けど……」
自身の内面を見透かされたようで少し恥ずかしそうにしながらも、ザントは頷く。だが、まだ不安そうにもじもじとする様子を見せた。
その様子を見て、シリルは言いたいことが分かったとばかりに頷いた。
「……まあ、いきなり話すのは難しいよな。それならまずは……」
そう言ってザントの手を取って立ち上がり、
「みんなと一緒に踊ることから始めよう、な?」
笑顔を向け、みんなが車座になっている中に足を進めた。
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