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バイス王国征服編
第62話 魔王の玉座 ーヴィダルー
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フィオナからの使い魔が届き、彼女達が戦に勝利したことが報告された。ナルガインがバイス王国側の英雄を打ち取り司令官を捕虜としたことで、兵士達は全てを諦めたようだった。
それから数時間後。魔王軍はバイス王国へと入った。怯える民達に対し、デモニカが魔王軍による国の守護、並びに民達へ危害を加える意思は無いと宣言。民は大きな混乱を引き起こすことなく状況を受け入れた。
そうして一夜が明けた。
——旧バイス王国。デモニカの王宮。
玉座の間へと入ると、デモニカがたった1人、その玉座に座っていた。
壮大な内装に魔王の容姿をした彼女が座る姿は、俺の想像以上に絵になっていて胸が熱くなる感覚がした。
「ヴィダルか。レオリアも呼んだはずだが」
「今、フィオナ達と建国宣言の準備をさせている。まもなくやって来るだろう」
「そうか。民の様子はどうだ?」
「落ち着いている。自由を自覚したのか、圧政に慣れているからか……恐らく後者だろう。首がすげ替えられた所で民の生活は変わらない。そんな諦めを感じる」
「力による体制維持の影響か。捕虜にした者達は?」
「投降した者、王宮で我らに着いた者、一部例外を除いて貴方から預かった再生の火を使って傀儡にした」
「例外とは?」
「ナルガインだ。彼女から指揮官は生かすよう嘆願があった。俺としても彼女の意思を尊重したいが……どうだろうか?」
「其方の考えを述べるが良い。その考え次第だ」
「ナルガインと敵の英雄との間で交わした約束だと言っていた。彼女には豪将として、武人としてその名を世に轟かせて貰う必要がある。今回の件はそれに有効だと考える」
デモニカの瞳が俺を見据える。全ての察しは着いたという瞳。しかし、その先を敢えて聞きたいと彼女の瞳が告げている気がした。
「彼女の力、功績、英雄譚はそのまま魔王軍のイメージへと直結する。敵の士気低下は勿論、彼女を慕い我が軍の門を叩く者も現れるはずだ」
「……武将、英雄。そう言った類いの存在か。良いだろう。其方とナルガインの願い。聞き入れよう。今回捕虜にした者達はナルガインの部隊とせよ」
「ありがとう。デモニカ」
「礼を言うのは我の方だ。其方無しには今日の成果はありえなかった。我1人ではな」
その言葉で気になっていたことが浮かぶ。
俺達が今回呼ばれた理由。
聖剣シリーズの1つ。クラウソラス。
ルドヴィックに神殺しの双剣と言われたあの武器。あれとデモニカの関係が。
……聞いても良いのだろうか?
「教えて欲しい。あの双剣とデモニカにはどんな関係があるんだ?」
デモニカが顔を曇らせる。
「すまない。あまり……言いたくない」
それはデモニカが見せる初めての顔だった。思えば今回はそんなことばかりだったな。
彼女のことを何も知らないと改めて実感させられた。分かったことは、聖剣シリーズと何らかの因縁があることだけ。
俺は、彼女の精神的負担を分かち合うことも、取り除いてあげることもしてあげられない。
今、彼女の為に俺がしてあげられることは……。
「あのクラウソラスは4本ある聖剣シリーズの1つ。ならば、残り3本の情報を集めよう」
「何?」
デモニカがその瞳を見開く。
「デモニカとその武器達に因縁があるのであれば、その恨みを晴らす手助けをするのが俺の役割であり……願いだ」
デモニカの元で新たな世界を作った時、彼女には幸せであって欲しい。俺を必要としてくれた彼女は幸せでなければならない。その為の不安要素は徹底的に排除してみせる。
デモニカが笑いを堪えるように俯いた。
「くっ……ふふ……其方は面白い」
「俺は何かおかしなことを言っただろうか?」
「いや、聖剣のことまで知っているとはな。我の目に狂いは無かったと思ってな」
デモニカが優しげな顔を俺へと向ける。それは俺が忠誠を誓った時に見せてくれた顔。そして、レオリアを引き摺り込んだ罪悪感に苛まれる俺を抱きしめてくれた時の顔。
彼女が俺へと向けてくれる信頼。それを感じるだけで満たされる感覚を覚える。
「以前教えてくれたな。この世界を其方の理想郷へと変えるという願いを。我も再び誓おう。その願い、必ず叶えてみせると」
デモニカが再び威厳のある顔付きへと戻る。そんな彼女は、この世を総べる存在たる風格を備えていた。
その時。ドアを叩く音が聞こえた。
「デモニカ様~お待たせしました!」
レオリアが扉から顔を覗かせる。
「レオリアか。貴様に話があったのだ」
「なんですかデモニカ様?」
「ヴィダルよ。コレをその子に」
デモニカが指を鳴らすと、俺の目の前に双剣が現れる。
鞘に収められた2つの双剣を手に取り、レオリアの前へと運ぶ。
「これって……」
「我が側近、レオリア・リベルタス。今回の功績を認め、聖剣クラウソラスを与える」
「う、嘘!? これ僕が使っていいの!?」
「ああ。それがデモニカ様の意思だ」
デモニカが頬杖をつく。
「今回の働き。貴様の身一つで聖剣の使い手を打ち倒したことには目を見張るものがある。そして、貴様のヴィダルへの親愛。忠誠。我はそれを高く評価する。神殺しの双剣をもってヴィダルの前に立ち塞がる者全てを斬り伏せるが良い」
「こ、光栄ですっ!」
レオリアが双剣を抱きしめた。
「さて、そろそろ向かうか。準備も整ったであろうしな」
デモニカが玉座からゆっくりと立ち上がる。
……。
建国宣言。
我らが魔王の国を起こしたという宣言であり、国としての格を他国へ見せるもの。
しかしこれはもう1つの意味がある。
ルドヴィック・フォン・バイスが圧政を敷いていたこと、それを打ち倒したことを伝える。
そうすれば、他国の虐げられし者達は俺達を望む。
そして。
それは権力の座に座る者達への宣戦布告でもある。
それから数時間後。魔王軍はバイス王国へと入った。怯える民達に対し、デモニカが魔王軍による国の守護、並びに民達へ危害を加える意思は無いと宣言。民は大きな混乱を引き起こすことなく状況を受け入れた。
そうして一夜が明けた。
——旧バイス王国。デモニカの王宮。
玉座の間へと入ると、デモニカがたった1人、その玉座に座っていた。
壮大な内装に魔王の容姿をした彼女が座る姿は、俺の想像以上に絵になっていて胸が熱くなる感覚がした。
「ヴィダルか。レオリアも呼んだはずだが」
「今、フィオナ達と建国宣言の準備をさせている。まもなくやって来るだろう」
「そうか。民の様子はどうだ?」
「落ち着いている。自由を自覚したのか、圧政に慣れているからか……恐らく後者だろう。首がすげ替えられた所で民の生活は変わらない。そんな諦めを感じる」
「力による体制維持の影響か。捕虜にした者達は?」
「投降した者、王宮で我らに着いた者、一部例外を除いて貴方から預かった再生の火を使って傀儡にした」
「例外とは?」
「ナルガインだ。彼女から指揮官は生かすよう嘆願があった。俺としても彼女の意思を尊重したいが……どうだろうか?」
「其方の考えを述べるが良い。その考え次第だ」
「ナルガインと敵の英雄との間で交わした約束だと言っていた。彼女には豪将として、武人としてその名を世に轟かせて貰う必要がある。今回の件はそれに有効だと考える」
デモニカの瞳が俺を見据える。全ての察しは着いたという瞳。しかし、その先を敢えて聞きたいと彼女の瞳が告げている気がした。
「彼女の力、功績、英雄譚はそのまま魔王軍のイメージへと直結する。敵の士気低下は勿論、彼女を慕い我が軍の門を叩く者も現れるはずだ」
「……武将、英雄。そう言った類いの存在か。良いだろう。其方とナルガインの願い。聞き入れよう。今回捕虜にした者達はナルガインの部隊とせよ」
「ありがとう。デモニカ」
「礼を言うのは我の方だ。其方無しには今日の成果はありえなかった。我1人ではな」
その言葉で気になっていたことが浮かぶ。
俺達が今回呼ばれた理由。
聖剣シリーズの1つ。クラウソラス。
ルドヴィックに神殺しの双剣と言われたあの武器。あれとデモニカの関係が。
……聞いても良いのだろうか?
「教えて欲しい。あの双剣とデモニカにはどんな関係があるんだ?」
デモニカが顔を曇らせる。
「すまない。あまり……言いたくない」
それはデモニカが見せる初めての顔だった。思えば今回はそんなことばかりだったな。
彼女のことを何も知らないと改めて実感させられた。分かったことは、聖剣シリーズと何らかの因縁があることだけ。
俺は、彼女の精神的負担を分かち合うことも、取り除いてあげることもしてあげられない。
今、彼女の為に俺がしてあげられることは……。
「あのクラウソラスは4本ある聖剣シリーズの1つ。ならば、残り3本の情報を集めよう」
「何?」
デモニカがその瞳を見開く。
「デモニカとその武器達に因縁があるのであれば、その恨みを晴らす手助けをするのが俺の役割であり……願いだ」
デモニカの元で新たな世界を作った時、彼女には幸せであって欲しい。俺を必要としてくれた彼女は幸せでなければならない。その為の不安要素は徹底的に排除してみせる。
デモニカが笑いを堪えるように俯いた。
「くっ……ふふ……其方は面白い」
「俺は何かおかしなことを言っただろうか?」
「いや、聖剣のことまで知っているとはな。我の目に狂いは無かったと思ってな」
デモニカが優しげな顔を俺へと向ける。それは俺が忠誠を誓った時に見せてくれた顔。そして、レオリアを引き摺り込んだ罪悪感に苛まれる俺を抱きしめてくれた時の顔。
彼女が俺へと向けてくれる信頼。それを感じるだけで満たされる感覚を覚える。
「以前教えてくれたな。この世界を其方の理想郷へと変えるという願いを。我も再び誓おう。その願い、必ず叶えてみせると」
デモニカが再び威厳のある顔付きへと戻る。そんな彼女は、この世を総べる存在たる風格を備えていた。
その時。ドアを叩く音が聞こえた。
「デモニカ様~お待たせしました!」
レオリアが扉から顔を覗かせる。
「レオリアか。貴様に話があったのだ」
「なんですかデモニカ様?」
「ヴィダルよ。コレをその子に」
デモニカが指を鳴らすと、俺の目の前に双剣が現れる。
鞘に収められた2つの双剣を手に取り、レオリアの前へと運ぶ。
「これって……」
「我が側近、レオリア・リベルタス。今回の功績を認め、聖剣クラウソラスを与える」
「う、嘘!? これ僕が使っていいの!?」
「ああ。それがデモニカ様の意思だ」
デモニカが頬杖をつく。
「今回の働き。貴様の身一つで聖剣の使い手を打ち倒したことには目を見張るものがある。そして、貴様のヴィダルへの親愛。忠誠。我はそれを高く評価する。神殺しの双剣をもってヴィダルの前に立ち塞がる者全てを斬り伏せるが良い」
「こ、光栄ですっ!」
レオリアが双剣を抱きしめた。
「さて、そろそろ向かうか。準備も整ったであろうしな」
デモニカが玉座からゆっくりと立ち上がる。
……。
建国宣言。
我らが魔王の国を起こしたという宣言であり、国としての格を他国へ見せるもの。
しかしこれはもう1つの意味がある。
ルドヴィック・フォン・バイスが圧政を敷いていたこと、それを打ち倒したことを伝える。
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