66 / 109
復活の厄災編
第66話 王国への罠 ー王女マリアー
しおりを挟む
魔王国建国の日からヒューメニアの様相はすっかり変わってしまった。
お父様達は連日会議詰め。私も何かあった時の為に参加するよう言われた。ずっと入りたかった政治に参加できるから良いのだけど……。
「市民の不満が噴出しております。貧困層の中には魔王国へと向かおうとする者すら現れました」
役人の報告にトルコラが喚き散らす。
「奴らは何者なのだ!? 突然現れて我らの作り上げた物を冒涜しおって! バイス王国が落とされただと!? そんなことはあってはならぬ!」
「落ち着きなさいトルコラ。そんなことを言ったところで起きた現実は覆すことはできませんわ」
トルコラが面食らった顔でお父様を見る。
「……くっ!? 陛下! これからどのようにされるおつもりで!?」
「……まずは民達を抑えねばなるまい。警備の兵を増やせ。役人には民の意見を吸い上げるよう指示しなさい」
「た、民に屈するというのですか! 大国ヒューメニアの王が!?」
「トルコラよ。それができなかったからこそバイス王は国を奪われたのでは無いのか?」
「う……」
「今は外敵に備え、内輪の揉め事を抑える時。そうは思わぬか?」
「……そ、そのように致します」
トルコラが数人の部下を引き連れて会議室を出て行った。
「ふぅ。アレにも困りものだな」
ため息を吐かれるその顔には疲れが浮かんでいた。
「お父様。お疲れのところ申し訳ございませんが、今後の魔王国への対応はどうされるおつもりですか?」
「あの魔王の口ぶり。一国の主で収まる器では無いだろうな。必ず他国へと攻め入るだろう」
お父様が手を払うと、他の者が席を外す。それだけで私の意見を聞いて下さるということが分かった。
全員がいなくなったのを確認し、お父様へと意見を述べる。
「私はハーピオンとの同盟を結ぶべきだと思いますわ。今の2カ国の関係は良好。非公式の軍事同盟ならば結べるかと」
「なるほど……だが、長きにわたる遺恨。そう易々と無くなる物ではないぞ」
「王族が直接交渉せねばならぬでしょうね」
この状況で動ける者は1人しかいない。お父様には国内を治めて貰わなければならない。弟のアレクはまだ幼すぎる。親類では……難しいだろうな。
「私がハーピオンへと向かいます」
「……我が娘が聡明で良かった。この国の掟さえ無ければ其方に正式な王位を渡したいほどだ」
「私はアレクセイへの『つなぎ』。そのお心だけで十分ですわ」
「これで後もう少し私の助言を聞いてくれると良いのだが」
お父様が少年のような笑みを浮かべる。
「もう! 真面目な話をしているのに!」
「はっはっは。いや、期待しているぞ。後はハーピオンへと送り出す理由を考えねばな。王女の出国なのだ。皆の耳に入る。真実を告げる訳にもいかぬしな……」
お父様が唸っていると、扉を叩く音がした。
「入れ」
1人の兵士が中へと入る。
「陛下。謁見の願いが出ております」
「おぉ。思ったより早かったな」
「来客? 誰ですの?」
「グレンボロウのアルフレド殿だ。先日より熱心に使い魔を送ってくれておってな」
アルフレド様が? あの方のお父上はヒューメニア王族と懇意にしていたけれど……なぜこのタイミングで?
「何やら伝えねばならぬことがあるらしい。其方も来るか?」
「はい」
◇◇◇
応接室に入ると貴族の青年が人の良さそうな笑みを浮かべた。
「そちらの美しい女性は?」
「娘のマリアだ。アルフレド殿と会うのは幼い時以来か」
「姫様でしたか。あまりに美しくなられていたので……失礼致しました。いけませんね。いつまでも子供時代の印象を持っていては」
「久しく会う者には皆そう言われるよ。中々聡明な子なのだが、それが祟ったのか相手がおらんのだ」
「お、お父様? 何を……」
急に縁談の話を出されたので顔が熱くなってしまう。
「いやいやすまん。して、何用で我が国へ来られたのかな?」
「その前にまず謝罪を。申し訳ございません。陛下にこのような形で謁見をお願い致しまして」
「良い。他の者には聞かれたく無いことであったのだろう?」
「実は……先日より我が国の交易ルートにあるナイヤ遺跡にて不可思議な現象が起きておりまして。陛下ならば何かご存知では無いかと」
「ナイヤ遺跡だと? どのような現象なのだ?」
「はい。遺跡の奥より黒い霧が発生し、周辺のモンスターが凶暴化しております」
「黒い霧……か」
ナイヤ遺跡。我が国の古文書では何かが封印されているという記述があったはずだ。相当古い本だったから詳細までは分からなかったけれど。
「ご存知の通り我が国は貴族と商人の集合体。我が国の部隊だけでは凶暴化したモンスターが彷徨くあの場所の調査は困難を極めます。お力添えを頂ければと」
「ふむ」
「かの交易ルートはヒューメニアへと至る道でもあります。このまま行けば貴国にも損害があるかと思いまして」
お父様が何かを考えるように髭をさすった。
「お父様。私が部隊を率いて調査を致します。私は回復魔法と浄化魔法が使えますから、戦闘に置いても役に立てるはずです」
「何? 危険が伴うかもしれん。お前に任せる訳には……」
「我が国を脅かす危機を孕んでるかもしれません。民を守る為に王女の命1つ惜しくはありませんわ。それに……先程の件もありましょう?」
ある意味これはハーピオンへ赴くチャンスとも言える。遺跡の調査という大義名分があれば民も文句は言わないだろう。
お父様が私の瞳を見つめる。
そしてしばらくの沈黙の後、肩をすくめながら言った。
「……分かった。しかし、深追いはするな。危険と見ればすぐ離れるのだぞ?」
「分かっておりますわ」
「陛下。当然ながら我らも同行致します。何があった時姫様を逃がすことくらいはできましょう」
アルフレド様は再び微笑みを浮かべた。
お父様達は連日会議詰め。私も何かあった時の為に参加するよう言われた。ずっと入りたかった政治に参加できるから良いのだけど……。
「市民の不満が噴出しております。貧困層の中には魔王国へと向かおうとする者すら現れました」
役人の報告にトルコラが喚き散らす。
「奴らは何者なのだ!? 突然現れて我らの作り上げた物を冒涜しおって! バイス王国が落とされただと!? そんなことはあってはならぬ!」
「落ち着きなさいトルコラ。そんなことを言ったところで起きた現実は覆すことはできませんわ」
トルコラが面食らった顔でお父様を見る。
「……くっ!? 陛下! これからどのようにされるおつもりで!?」
「……まずは民達を抑えねばなるまい。警備の兵を増やせ。役人には民の意見を吸い上げるよう指示しなさい」
「た、民に屈するというのですか! 大国ヒューメニアの王が!?」
「トルコラよ。それができなかったからこそバイス王は国を奪われたのでは無いのか?」
「う……」
「今は外敵に備え、内輪の揉め事を抑える時。そうは思わぬか?」
「……そ、そのように致します」
トルコラが数人の部下を引き連れて会議室を出て行った。
「ふぅ。アレにも困りものだな」
ため息を吐かれるその顔には疲れが浮かんでいた。
「お父様。お疲れのところ申し訳ございませんが、今後の魔王国への対応はどうされるおつもりですか?」
「あの魔王の口ぶり。一国の主で収まる器では無いだろうな。必ず他国へと攻め入るだろう」
お父様が手を払うと、他の者が席を外す。それだけで私の意見を聞いて下さるということが分かった。
全員がいなくなったのを確認し、お父様へと意見を述べる。
「私はハーピオンとの同盟を結ぶべきだと思いますわ。今の2カ国の関係は良好。非公式の軍事同盟ならば結べるかと」
「なるほど……だが、長きにわたる遺恨。そう易々と無くなる物ではないぞ」
「王族が直接交渉せねばならぬでしょうね」
この状況で動ける者は1人しかいない。お父様には国内を治めて貰わなければならない。弟のアレクはまだ幼すぎる。親類では……難しいだろうな。
「私がハーピオンへと向かいます」
「……我が娘が聡明で良かった。この国の掟さえ無ければ其方に正式な王位を渡したいほどだ」
「私はアレクセイへの『つなぎ』。そのお心だけで十分ですわ」
「これで後もう少し私の助言を聞いてくれると良いのだが」
お父様が少年のような笑みを浮かべる。
「もう! 真面目な話をしているのに!」
「はっはっは。いや、期待しているぞ。後はハーピオンへと送り出す理由を考えねばな。王女の出国なのだ。皆の耳に入る。真実を告げる訳にもいかぬしな……」
お父様が唸っていると、扉を叩く音がした。
「入れ」
1人の兵士が中へと入る。
「陛下。謁見の願いが出ております」
「おぉ。思ったより早かったな」
「来客? 誰ですの?」
「グレンボロウのアルフレド殿だ。先日より熱心に使い魔を送ってくれておってな」
アルフレド様が? あの方のお父上はヒューメニア王族と懇意にしていたけれど……なぜこのタイミングで?
「何やら伝えねばならぬことがあるらしい。其方も来るか?」
「はい」
◇◇◇
応接室に入ると貴族の青年が人の良さそうな笑みを浮かべた。
「そちらの美しい女性は?」
「娘のマリアだ。アルフレド殿と会うのは幼い時以来か」
「姫様でしたか。あまりに美しくなられていたので……失礼致しました。いけませんね。いつまでも子供時代の印象を持っていては」
「久しく会う者には皆そう言われるよ。中々聡明な子なのだが、それが祟ったのか相手がおらんのだ」
「お、お父様? 何を……」
急に縁談の話を出されたので顔が熱くなってしまう。
「いやいやすまん。して、何用で我が国へ来られたのかな?」
「その前にまず謝罪を。申し訳ございません。陛下にこのような形で謁見をお願い致しまして」
「良い。他の者には聞かれたく無いことであったのだろう?」
「実は……先日より我が国の交易ルートにあるナイヤ遺跡にて不可思議な現象が起きておりまして。陛下ならば何かご存知では無いかと」
「ナイヤ遺跡だと? どのような現象なのだ?」
「はい。遺跡の奥より黒い霧が発生し、周辺のモンスターが凶暴化しております」
「黒い霧……か」
ナイヤ遺跡。我が国の古文書では何かが封印されているという記述があったはずだ。相当古い本だったから詳細までは分からなかったけれど。
「ご存知の通り我が国は貴族と商人の集合体。我が国の部隊だけでは凶暴化したモンスターが彷徨くあの場所の調査は困難を極めます。お力添えを頂ければと」
「ふむ」
「かの交易ルートはヒューメニアへと至る道でもあります。このまま行けば貴国にも損害があるかと思いまして」
お父様が何かを考えるように髭をさすった。
「お父様。私が部隊を率いて調査を致します。私は回復魔法と浄化魔法が使えますから、戦闘に置いても役に立てるはずです」
「何? 危険が伴うかもしれん。お前に任せる訳には……」
「我が国を脅かす危機を孕んでるかもしれません。民を守る為に王女の命1つ惜しくはありませんわ。それに……先程の件もありましょう?」
ある意味これはハーピオンへ赴くチャンスとも言える。遺跡の調査という大義名分があれば民も文句は言わないだろう。
お父様が私の瞳を見つめる。
そしてしばらくの沈黙の後、肩をすくめながら言った。
「……分かった。しかし、深追いはするな。危険と見ればすぐ離れるのだぞ?」
「分かっておりますわ」
「陛下。当然ながら我らも同行致します。何があった時姫様を逃がすことくらいはできましょう」
アルフレド様は再び微笑みを浮かべた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる