神亡き世界の異世界征服

三丈夕六

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閑話

第73話 ヒューメニア政変 ー王女マリアー

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 ヴィダル達が魔神竜を倒してから数日後。


 ——人間の国、ヒューメニア。


「マリア様。失礼します」

 メイドのイルムが顔を覗かせる。

「陛下達がお呼びです。もう一度話を聞きたいと」

「分かりました」

 扉に手をかけた所でイルムに呼び止められる。

「どうしたの?」

「わ、私は姫様の味方ですから! 酷いです! 姫様だけに責任を押し付けるなんて!」

「イルム。私はその為にあの場にいたのですわ」

「で、でも……っ!?」

「大丈夫ですわ。私がおらずともアレクがいる。きっと成長すれば立派な王となってくれます」


 イルムを部屋に残して会議室へ向かう。

 ……。

 魔神竜の復活。あれを引き起こした兵士ライラは行方が分からない。

 アルフレド様も魔神竜の復活以降連絡が取れないという…最後まで残られていたから、恐らくもう……。


 今、あの場で起きたことを説明できるのは私だけ。

 また尋問のように問い詰められるのか。


 会議室の扉を開くと、中から大臣達の怒号が聞こえた。


何者かが・・・・魔神竜を倒したと言えど、どうされるおつもりで!? 事情を知る家臣達へ示しがつきません! ましてやハーピオンと同盟を結ぼうと画策していたそうではないですか!?」

 喚き立てる皆の言葉を抑えるようにお父様が言葉を述べた。

「皆落ち着け。まずは魔神竜の脅威が現実のものとならなかったことを喜ぶべきではないか?」

 トルコラが顔を歪める。

「申し上げますが陛下。その魔神竜とやらが倒されたということは、それと同列の脅威がこの世界に存在しているということですよ? 喜べる訳無いでしょう!」

 トルコラの顔が怒りのあまり赤く染まる。周囲の者達が彼をなだめて何とか落ち着かせていた。

「しかし、その者達は魔神竜とは違い対話ができるのだろう? そうであればまだ対応もできる」

「ぐ……っ!? それはそうですが!」

 焦るトルコラを庇うように1人の男が前へと出た。

「陛下、いや叔父上。トルコラ殿はこう申しておるのですよ『我ら臣下の者は王室への忠誠が揺らいだ』と」

「え? レオンハルト殿? 私は別に……」

 レオンハルトはトルコラの背中を叩くとニヤリと笑った。

「隠すのはそこまでで良いだろうトルコラ殿」


 レオンハルトが手を上げると、会議室に貴族達が一斉に入って来る。


「何のつもりだレオンハルト」

「叔父上。魔神竜の復活にハーピオンとの結託。この2つにより現王の権威は失墜しました。貴族達は離反も辞さない構えです」

「ど、どうすると言うのですか!?」

「マリア様。方法は1つしかございませんよ。現国王、フリードリヒ様には退位頂く」

「お父様が退位!? そんなこと貴方が決めることでは……」

「私の意見ではありません。忠を尽くして来た者達の意思。……その忠誠を裏切り、独断で事を進めようとした王室に反論はできますか?」

 一斉に私に視線が集まる。レオンハルトだけでなくこの場にいる貴族全員の視線が。


 なんとか……お父様を守らなくては。


「全ては私の独断、お父様に関係はありません!」

「実の娘。それもマリア様のことだ。王の許可無く動くことなどありますか?」

「それは……」

「ふふ。その聡明さを隠さなかったこと……墓穴を掘りましたね」

 レオンハルトが大仰な様子で両手を広げた。


「よって、ここに新たなに即位頂きたい!」


 貴族達が道を開け、1人の少年・・・・・が兵士に手を引かれてやって来る。


「あ、アレク……?」


「貴方の弟君おとうとぎみ。彼ならば皆納得して着いていくと申しております」

「……計ったなレオンハルト。アレクセイを傀儡かいらいとするつもりか」

「そんなことは毛頭考えておりませんよ。陛下が自ら選んだ道です。女など・・・に国政を預けようとしたツケですね」


「貴様!! 我が娘を冒涜する気か!?」

 立ち上がったお父様が兵士達がなだめるように押さえ付ける。

「離さぬか! これは謀反だぞ!? なぜ私を抑えるのだ!?」

 その様子をレオンハルトが嫌らしい笑みを浮かべて眺める。

「おぉ怖い。皆、国王はご乱心のようだ。姫様共々自室へお連れしろ」

「よもや貴方が乗っ取りを拡散しようとは……」

「マリア様。貴方の抱いていたのは空想なのですよ。女性である貴方が王位を守るなどと……」

 振り返ると、幼い弟は不安気に私を見つめていた。

 アレク。

 幼き日に母を亡くした哀れな子。

 私を母のように慕ってくれた弟……。

 兵士達に取り囲まれ、部屋を連れ出される。


「アレク!」

 一瞬の隙を突いて兵士の元から逃げ出す。

「お、お姉様……」

 しかし、すぐに他の兵士へと捉えられ、弟から離されてしまう。

 そんな私の前にレオンハルトが立ち塞がる。

「アレクセイ様は私立派な王としてみせますから。陛下とマリア様はどうか、ご安心してお休み下さい」


「アレク! アレクセイ!」


 どれだけ叫ぼうともあの子との距離は離れていく。どれだけ抗おうとも私を捉える手は振り払えない。


 私が……私が守りたかったのはこんなことじゃ……。
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