79 / 109
ハーピオンの略奪者編
第79話 ハーピオン急襲 ーザビーネー
しおりを挟む
女王となってから1週間。
反抗する者は全て処罰し、ハーピー達は皆アタシに従うようになった。
「でも不思議だよなぁ? リイゼルが素直に従うなんてよ」
「……私の役割はハーピオンを守ることだ。例え仕える者が変わったとしても、その役割を続けるだけ」
「おい、女王に対してその口の利き方はなんだ?」
「申し訳ございません。ザビーネ女王」
「クカカッ。それでいいんだよ。ところで、周辺国への侵攻準備はどうだ?」
「それですが……本当に行われるのですか? 小国とはいえ、複数の国を攻めるなどと……先人達が築き上げて来た信頼関係を破壊する行為です」
「分かってないねぇ」
「……何をですか?」
「相手が行儀良く『信頼』してくれてるウチに攻め落とすんだよ。電撃的に奪い尽くさなければ意味がねぇ」
「ホークウッド村と同じようにですか?」
「そうだ」
「しかし、周辺国へ愛着を持つハーピー達も多いかと。彼女達の説得には女王自らの言葉ではないと響きません」
「分かってるっての」
兵士達の前での演説か。これで下の者どもに示す。今後のハーピオンは何を重視していくのか。
力こそが全て。弱い者は搾取されるだけだってことを教えてやる。
幼い頃のアタシのようにな。
……ちっ。
いらぬことを考えちまった。
◇◇◇
翌日。女王を倒した闘技場へ兵士達を集めた。
闘技場の中央へと舞い降りると、兵士達から歓声が上がる。見渡すと、皆ギラついた瞳をしていた。
甘っちょろいヤツらはほぼ消えたか。
魔法士が拡声魔法を放ったのを確認し、観衆へと語りかける。
「皆聞け! 知っての通りアタシは女王を葬り、新たな王となった。これからハーピオンを強国へと導く役目がある!」
観衆から賛同の声が響く。
「これからは同調や融和など甘いことは言わん! 周りを見てみろ! 魔王国が台頭し、ヒューメニアは魔神竜を狙った! 我らに残された道は強国として力をつけることだけだ!」
全員の眼を見つめる。
「アタシが下す命令はシンプルだ。殺せ! 奪え! 今手にしていない物全てを己が物とせよ!」
ポツリポツリと賛同の声が上がり、それがやがて渦になっていく。熱狂に闘技場が飲み込まれていく。
ククク。皆アタシのようになれ。世界はシンプルだ。弱い者は奪われる為に存在している。
「なるほどな。それが新たな女王の方針か」
突然。場違いな声が聞こえた。拡声魔法により広げられた男の声。
「なんだぁ? どこから聞こえる?」
周囲を見渡すと、闘技場観衆の一角だけ違和感があることに気付いた。
眼を凝らすと、ハーピー達に何かが繋がっている。
何だあれは? 光の……鎖?
鎖が消えると、一斉にハーピー達が席を開ける。そして、空いた空間の中央には、黒づくめの者達がいた。
黒いフードの男、双剣を持つ獣人の女、海竜人の子供……。
「何だぁお前達は? なぜ兵士達はなぜその男を拘束しない?」
男がフードを外す。すると、その奥から現れる。黒い眼球と緋色の瞳。明らかに普通の人間ではない両眼が。
「無駄だ。周囲のハーピー達は皆その精神を拘束した。俺達に手を出すことはできない」
「精神を拘束……? 何を言っている!?」
「ハーピオンの女王ザビーネよ。俺は魔王軍知将、ヴィダル・インシティウス。ハーピオンへの宣戦布告。及び攻撃開始の通達に来た」
「んだとテメェ……? 宣戦布告どころか攻撃開始ってのはどういうことだぁ?」
「貴様がホークウッド村へ行った仕打ちと同じだ。急襲。襲撃……何とでも呼ぶがいい」
男が右手を上げる。
「1つ、ザビーネ女王へ教えてやろう」
「何をだ?」
「侵攻の大義を与えるということがどういう意味なのかをな」
ヴィダルという男が指を鳴らすと、突然地面に青い魔法陣が浮かび上がった。
次の瞬間。
甲高い鳴き声が闘技場に響き渡った。
「キュオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
突如としてディープドラゴンが現れ、闘技場へとアクアブレスを照射する。
「う、うわああああああぁぁぁ!?」
「ディープドラゴンだと!?」
兵士達は突然のドラゴンの襲来に混乱し空へと逃げ出していく。
「我らには広範囲の移動魔法を発動できる者がいる」
移動魔法だと? 地点記録魔法を打たなければ使えない魔法だぞ!
魔王国に地点記録魔法を許した覚えなど無い。
一体いつ……。
「あ……っ!?」
ディープドラゴン……エルフェリア使節団か!?
「ヤツら……魔王国と繋がっていやがったか!!」
「気付いたようだがもう遅い。イリアス。部隊を展開しろ」
「了解なのじゃ!」
海竜人の子供が再び両手をかざすと、魔法陣の中から燃え盛る骸骨兵士達が現れ、闘技場が埋め尽くされていく。
「何の罪もない村をお前達が攻め落としたことは周辺国へ伝えてある。いくら待とうが救援など来ないぞ」
「んだと!? 貴様あああああぁぁぁ!?」
「覚悟しろザビーネ。貴様には絶望と後悔を教えてやる」
ヴィダルは、その両眼を怪しく光らせた。
反抗する者は全て処罰し、ハーピー達は皆アタシに従うようになった。
「でも不思議だよなぁ? リイゼルが素直に従うなんてよ」
「……私の役割はハーピオンを守ることだ。例え仕える者が変わったとしても、その役割を続けるだけ」
「おい、女王に対してその口の利き方はなんだ?」
「申し訳ございません。ザビーネ女王」
「クカカッ。それでいいんだよ。ところで、周辺国への侵攻準備はどうだ?」
「それですが……本当に行われるのですか? 小国とはいえ、複数の国を攻めるなどと……先人達が築き上げて来た信頼関係を破壊する行為です」
「分かってないねぇ」
「……何をですか?」
「相手が行儀良く『信頼』してくれてるウチに攻め落とすんだよ。電撃的に奪い尽くさなければ意味がねぇ」
「ホークウッド村と同じようにですか?」
「そうだ」
「しかし、周辺国へ愛着を持つハーピー達も多いかと。彼女達の説得には女王自らの言葉ではないと響きません」
「分かってるっての」
兵士達の前での演説か。これで下の者どもに示す。今後のハーピオンは何を重視していくのか。
力こそが全て。弱い者は搾取されるだけだってことを教えてやる。
幼い頃のアタシのようにな。
……ちっ。
いらぬことを考えちまった。
◇◇◇
翌日。女王を倒した闘技場へ兵士達を集めた。
闘技場の中央へと舞い降りると、兵士達から歓声が上がる。見渡すと、皆ギラついた瞳をしていた。
甘っちょろいヤツらはほぼ消えたか。
魔法士が拡声魔法を放ったのを確認し、観衆へと語りかける。
「皆聞け! 知っての通りアタシは女王を葬り、新たな王となった。これからハーピオンを強国へと導く役目がある!」
観衆から賛同の声が響く。
「これからは同調や融和など甘いことは言わん! 周りを見てみろ! 魔王国が台頭し、ヒューメニアは魔神竜を狙った! 我らに残された道は強国として力をつけることだけだ!」
全員の眼を見つめる。
「アタシが下す命令はシンプルだ。殺せ! 奪え! 今手にしていない物全てを己が物とせよ!」
ポツリポツリと賛同の声が上がり、それがやがて渦になっていく。熱狂に闘技場が飲み込まれていく。
ククク。皆アタシのようになれ。世界はシンプルだ。弱い者は奪われる為に存在している。
「なるほどな。それが新たな女王の方針か」
突然。場違いな声が聞こえた。拡声魔法により広げられた男の声。
「なんだぁ? どこから聞こえる?」
周囲を見渡すと、闘技場観衆の一角だけ違和感があることに気付いた。
眼を凝らすと、ハーピー達に何かが繋がっている。
何だあれは? 光の……鎖?
鎖が消えると、一斉にハーピー達が席を開ける。そして、空いた空間の中央には、黒づくめの者達がいた。
黒いフードの男、双剣を持つ獣人の女、海竜人の子供……。
「何だぁお前達は? なぜ兵士達はなぜその男を拘束しない?」
男がフードを外す。すると、その奥から現れる。黒い眼球と緋色の瞳。明らかに普通の人間ではない両眼が。
「無駄だ。周囲のハーピー達は皆その精神を拘束した。俺達に手を出すことはできない」
「精神を拘束……? 何を言っている!?」
「ハーピオンの女王ザビーネよ。俺は魔王軍知将、ヴィダル・インシティウス。ハーピオンへの宣戦布告。及び攻撃開始の通達に来た」
「んだとテメェ……? 宣戦布告どころか攻撃開始ってのはどういうことだぁ?」
「貴様がホークウッド村へ行った仕打ちと同じだ。急襲。襲撃……何とでも呼ぶがいい」
男が右手を上げる。
「1つ、ザビーネ女王へ教えてやろう」
「何をだ?」
「侵攻の大義を与えるということがどういう意味なのかをな」
ヴィダルという男が指を鳴らすと、突然地面に青い魔法陣が浮かび上がった。
次の瞬間。
甲高い鳴き声が闘技場に響き渡った。
「キュオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
突如としてディープドラゴンが現れ、闘技場へとアクアブレスを照射する。
「う、うわああああああぁぁぁ!?」
「ディープドラゴンだと!?」
兵士達は突然のドラゴンの襲来に混乱し空へと逃げ出していく。
「我らには広範囲の移動魔法を発動できる者がいる」
移動魔法だと? 地点記録魔法を打たなければ使えない魔法だぞ!
魔王国に地点記録魔法を許した覚えなど無い。
一体いつ……。
「あ……っ!?」
ディープドラゴン……エルフェリア使節団か!?
「ヤツら……魔王国と繋がっていやがったか!!」
「気付いたようだがもう遅い。イリアス。部隊を展開しろ」
「了解なのじゃ!」
海竜人の子供が再び両手をかざすと、魔法陣の中から燃え盛る骸骨兵士達が現れ、闘技場が埋め尽くされていく。
「何の罪もない村をお前達が攻め落としたことは周辺国へ伝えてある。いくら待とうが救援など来ないぞ」
「んだと!? 貴様あああああぁぁぁ!?」
「覚悟しろザビーネ。貴様には絶望と後悔を教えてやる」
ヴィダルは、その両眼を怪しく光らせた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
100年の恋
ざこぴぃ。
ファンタジー
――2039年8月、千家春文は学校で奇妙な石碑を見かける。
「夢子、あの石碑って……」
「えぇ、ずいぶん古い物ですね。確か100年前の戦没者の慰霊碑だとか。この辺りも空襲で燃えたらしいですわ……」
「へぇ……夢子、詳しんだな」
「まぁ、でも……いえ。何でもないです」
何だか歯切れの悪い言い方をするな……とも思ったが追求する必要もなく、僕達はそのまま千草に校内の案内をして周り、無事に学校説明会が終わった。
………
……
…
テーブルには新聞が置いてある。何気に手に取り、目を疑った。
『1939年8月9日月曜日』
「は?え?1939年?え?」
何度か見直したが西暦は1939年だった。指折り数える。
「えぇと……令和、平成があって……その前が昭和……あっ、書いてある。昭和14年……!?」
新聞は漢字と平仮名表記ではあるが、所々意味がわからずペラペラと捲る。
………
……
…
100年前の世界へタイムリープした春文。そこで起こる数々の出会い、別れ、試練……春文の運命は?
無事に元の世界へ帰る事はできるのか!?
「10年後の君へ」と交わる世界観のファンタジー
「100年の恋」――最後までお楽しみ下さい。
■□■□■□■□■
執筆 2024年1月8日〜4月4日
公開 2024年4月7日
著・ざこぴぃ。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる