461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第6話 461さん、代々木公園迷いの森へ

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 ~探索者461さん~

 天王洲てんのうずアイルから探索者パーティーに誘われてから数日。

 それぞれの準備を終え、渋谷で合流した俺達は代々木公園の周辺まで来ていた。

「何よそのリュック」

「今回の探索は長丁場になるからな。必要最低限の食料や調理器具を持っていく。ていうかアイルもリュック背負ってるじゃん」

「わ、私だって色々考えてるの! 何にでも対応できるようにアイテムいっぱい持ってきたんだから!」

「何にでも? イタズラにアイテム持ってきても動き阻害そがいするだけだぜ?」

「うっさい!」

 怒ったアイルが杖をブンブンと振り回す。それを避けるとアイルの顔はさらに真っ赤になった。


「ムキーーーーっ! ムカつくわねぇーー!」


 アイルが悔しそうに飛び跳ねる。水色に紫のメッシュが入ったツインテールが、飛び跳ねる度にヒョコヒョコ揺れた。

 恥ずかしがってると思えばすぐ怒る。子供かよ……あ、高校生だから子供か。


 国立代々木競技場を右手に見ながら人のいない通りを抜ける。突き当たりの歩道橋を渡ると、そこから一気に視界が悪くなる。霧が濃くなり、数メートル先すら見えなくなってしまった。

「渋谷から少し離れただけで一気に雰囲気変わるわねぇ」

 歩道橋の最端……ダンジョン入り口までやって来た時、アイルがつぶやいた。

 魔法職用のローブを着直し、杖をギュッと握りしめるアイル……その表情から緊張している様子がハッキリ見てとれる。どう見ても初心者……フォローしてやる必要があるかもなぁ。

「ダンジョン管理局のデータベースは見たか? ダンジョンに一度入ると最深部の転移魔法に辿り着くまで出られないからな。気合い入れて行けよ」

「……分かってるわ」

「持ってるアイテム見せな」

「なんでよ?」

「重いだろ? すぐ必要じゃない物は俺が持っててやるよ」

「い、意外に優しいじゃない……」

 そう言うと、アイルは小さめのリュックからアイテムを出し始める。

「え~と体力回復用と魔力回復用の回復薬ポーション。毒消しに麻痺対策のアンチパラリスに……」

 お、結構分析して持ってきてるじゃん。さっきの忠告は余計なお世話だったかもな。


「虫除けスプレーに」


 ん? 虫除け?


 アイルが取り出したアイテムを見るが、薬局で売ってる普通の虫除けスプレーだ。こんなの虫型モンスターに効くか?

「あとは~日焼け止めとコーラにポテチにグミにシュワシュワするラムネ……あ、ミントのタブレットもあるわよ?」

「……遠足かよ」

「い、いいじゃない。虫に刺されたり日焼けしたら嫌だし、お菓子は休憩の時にリラックスするのに必要でしょ?」

 うぅん……1人の時とは探索の感覚が変わるなぁ。現代日本人だからしょうがないのか? 東京の探索者ってもっとプロ感あると思ったのに。


 ……。


「何よ?」


 不思議そうに首を傾げるアイル。


 ……アイルだけ見て東京の探索者全員を知った風に思うのは間違いか。


 重そうなアイテムを預かり、お互いに使える魔法とスキルを確認し、階段を降りる。そこからはもうダンジョン内部だ。

 俺達は、迷いの森へと足を踏み入れた──。



◇◇◇

 鞄から小さなドローンを取り出したアイル。彼女はドローンのスイッチを入れると、フワリとそれを空中に浮かせた。

 ドローンは彼女の周りをぐるりと飛ぶと、次に俺の目の前までやって来る。それは先日、雑司ヶ谷地下墓地ぞうしがやちかぼちで俺の周囲を飛び回っていたヤツだった。

「この前の配信ってやっぱそれで撮ってたのか。じゃあもう見えてんの?」

「ううん。とりあえず今はアーカイブ用の撮影だけ。長くなりそうだしね」

 そう言うとアイルは探索者用スマホを取り出した。

「こっちからいつでも配信開始できるから。面白くなり始めたら配信開始するわ」

「ふぅん……ま、俺は探索に集中させてもらうぜ」


 アイルの前に出て周囲を見渡す。


 霧によって先が見えない。ただ、周囲に映えた木々が壁面のように道を作っていた。その内の1本に触れてみる。ダガーを抜いて木を叩くとキンッという金属音が響いた。

「この木……金属成分が入ってるな。普通の剣じゃとてもじゃないが切断出来ない」

「つまりどういうこと?」

「通路通りに進むしかないってこと」

 木に囲まれた通路を進み、突き当たりの三叉路さんさろまでやって来ると、木の上にボワリと赤い文字が浮かび上がった。


〈この先、敵が出るぞ〉


「お、これ……」

 後ろにいたアイルが顔を覗かせる。

筆記魔法ワーダイトね。以前挑んだ人が残したのかも」

「へぇ。詳しいじゃん」

「ダンジョン配信者なら知ってて当然よ。筆記魔法ワーダイトを使ってコメントを視覚化するんだから。まぁ、配信者本人にしか見えないように設定してるから分からないと思うけど」

 筆記魔法ワーダイトをそんな風に使ってんのか。

 アイルが手を差し出す。すると、ドローンが彼女の手のひらの上でホバリングする。ニコリと笑った彼女がその手を上げると、それに従うようにドローンは空高く登っていった。

 アイルがスマホの画面を見る。

「う~ん……敵の影でも映るかと思ったけど霧が邪魔ね……」

 そんなこともできるのかぁ。便利アイテムだな。

「……と感心してる場合じゃないな」

 腰のバッグからスマホを取り出す。ホーム画面から筆記魔法ワーダイトを起動し、文字を入力する。スマホの画面を木へと向けると、赤く光る文字が木へと刻み込まれていく。

〈1、三叉路。南に入り口〉

「何これ?」

「迷いの森だからな。番号振っとかないとな」

「目印ってわけね」

 腰からショートソードを引き抜く。

 この通路幅なら十分戦えるな。この三叉路……まずは北へ直進するか。

「俺が先に行く。アイルはいつでも氷結魔法フロスト撃てるように準備しておけよ」

「分かったわ」

 警戒しながら先へと進む。過去に噴水があったであろう朽ちた水路に沿って進んでいくと、突然甲高い声が聞こえた。


「カアアアアアアア!!」


 上空から3体のカラス型モンスターが襲いかかる。

「モルデンクロウだ。集まってくる前に仕留めるぞ」

 襲いかかるモルデンクロウの爪をかわし、間髪容れずにショートソードで斬撃を放つ。

「ガアァ!?」

 攻撃を受けたモルデンクロウが袈裟懸けに引き裂かれる。

「ガァ!?」
「ガガッ!」

 仲間がやられたことで残りの2体が上空へと逃げようとする。モルデンクロウの習性。強敵が現れると仲間を呼びに行く動きだ。

 集まってきたら厄介だからな。ここで仕留める。


「よっ」


 ショートソードを捨て、腰のナイフとダガーを投げ付ける。


「ガッ!?」
「ギィッ!?」


 落下する2体。走りながらショートソードを拾い上げ、2体のモルデンクロウを叩き切る。既に致命傷を受けていた鳥は、真っ二つとなって息絶えた。

「すご……配信始めておけば良かった」

「油断するな」

「え?」

 アイルの後方から新たなモルデンクロウが襲いかかる。

「ガアァァ!」

「きゃああ!?」

 振り向き様にアイルが手にしていた杖をモルデンクロウへと向ける。その瞬間、彼女が放てるよう準備していた氷結魔法《フロスト》が発動した。


「ガッ! ア、アア……」


 空中で凍りついたモルデンクロウは地面へと落下し、粉々に砕け散る。

 死んだモンスター達から経験値となるあふれ、俺とアイルのスマホへ吸収・・・・・・されていく。

「はぁ……言われた通り魔力貯めておいて良かったわ……」


 アイルがその場へとへたり込んだ。


 うぅん……やっぱり初心者っぽい動きだな。いきなり最深部に行くのは難しいかも。


 途中で訓練させながら奥へ向かうか。



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