461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第14話 461さん、美女と美少女に押しかけられる。

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~探索者461さん~

 ジークリードに会った日の夜。ヤツの条件をリレイラさんへ報告した。するとすぐに電話がかかって来て、俺の家にリレイラさんが来ることになってしまった。

 何故かアイルも一緒に。

「へ~ここがヨロイさんの家なんだ! 意外に近い所に住んでたのね!」

「アイルはどこに住んでるんだよ?」

御徒町おかちまち

「徒歩圏内じゃん」


「……」


 ん?


 4人がけのテーブルに座るリレイラさんを横目で見ると、彼女は何も言わずにジッと俺達のことを見ていた。

「どれどれ~?」

 アイルが俺の部屋の物色を始める。アイテム整理部屋の棚を開けるだけならまだしも、何故かベッドの下も覗き込む。

「ちょ、勝手にあさるなよ」

「いいじゃない。もしかして女子に見られたらマズイ物でもあるのぉ?」

「俺はガキか」


「コホン!」


「うぉ!?」
「ひっ!?」

 リレイラさんの鋭い目付き。その威圧感に俺もアイルも自然と正座になってしまう。

「それで? ダンジョン管理局に断りも無くそのような条件を出したのか?」

 リレイラさんの雰囲気がいつもと違う。怒りというよりブチギレだ。

「あの~条件を出したのはジークリードなんだけど。そっちを処罰してくれないかしら?」

「できるか! ジークリード達は部長の担当なんだぞ!?」

(というか初対面なのにどうして私が怒られないといけないのよ……)
(俺に言うなよ。アイルがジークリードの勝負受けたからだろ?)
(う……それは悪いと思ってるけど、だ、だってチャンスだって思ったんだもん!)


「私の前で内緒話するなぁ!!」


 涙目でテーブルをバンバン叩くリレイラさん。


 い、いつもと様子が違う。

「せっかくヨロイ君と再びコンビを組んでダンジョンに挑もうという時にこんな邪魔が入るなんて……100歩譲って小娘がパーティに入ることは受け入れたが今度は引退だと? 部長めどんな教育を探索者にしているんだ。私の喜びをぶち壊すなどと上司と言えど許すことはできん。そうだ今までのヤツのハラスメントを全部労基にタレ込んでやろうか。そうすればヤツを排除して私とヨロイ君だけのダンジョンライフをいやしかしまずは今回の一件を片付けなければヨロイ君が引退しては元も子もな」

「リレイラさん……?」
「なんだかこの人目がキマってるけど大丈夫……?」

 ブツブツ何かを呟くリレイラさん。心配になって彼女を見ていると、リレイラさんは急にハッとした顔になる。

「う、コホン……君達とジークリードの会話は多数の目撃者がいたようでな。今SNSは君達とジークリードの話で持ち切りだ。もはや我々では止めることはできない」

 彼女は鞄を漁ると、中からタブレット端末を取り出した。

「だから、せめて六本木ヒルズの情報だけでも伝えたいのだが……いいかな? その、管理局的には敵の詳しい情報は伝えられないのだが」

 リレイラさんは、目を伏せてチラチラと俺を見た。

「君が、探索者を辞めてしまったら……私は、悲しいよ……」


 リレイラさん……。


 俺を必死でサポートしてくれるなんて、なんて素晴らしい人なんだ。やっぱり、俺の担当はリレイラさんが1番だぜ。


「ありがとうリレイラさん。アドバイスとして聞かせてもらうよ」

「なんだか、私が置いてけぼりなんだけど」


 アイルはなぜか頬を膨らませた。


 ……。


 なんでこんな居心地が悪いんだ?


◇◇◇

「朝にも言った通り、六本木ヒルズはこの世界の建物の形状、内観がそのまま残っているタイプのダンジョンだ。その代わり……他と比べてモンスターが多い」

 リレイラさんが端末を俺達に見せる。そこには大型のクモ型モンスターが写っていた。

「ボスは2体。入り口を守るマザースパイダーと最上階に君臨するファザースパイダー。普通に攻略するならボス戦、雑魚戦、再度のボス戦になる」

「ボスが2体。最初のマザースパイダーにどうやって対処するかだな……リレイラさん。そのマザースパイダーとの戦闘は必然ですか?」

「それはダンジョン管理局としては答えられない」

 答えられない……か。なら戦闘の回避方法があるってことだな。後でマップをもう一度見るか。

「建物内の電気は生きてるの?」

「いや、残念ながら死んでいる。入り口自体は開かれたまま。侵入は可能だ」

「最上階の53階まで階段を登る必要があるのか」

 53階と聞いてアイルが身震いする。

「53階も!? うぇぇ……キツそうね……」

 確かにこの華奢な身体に53階分の階段を登らせて最上階のボスと戦わせるのはキツイか。

「なら良いアイテムがあるぜ」

 隣の部屋のアイテム倉庫。その中からアクセサリが保管された棚を漁る。

「確かにこの辺に……あれはメリカリには出してなかったはず……っとこれだ」

 棚にあった腕輪を取り出す。銀色に輝く本体に緑の宝石が装飾された腕輪を。

持久じきゅうの腕輪。装備してから24時間で効力を失うが、スタミナの回復を補助してくれるアイテムだ」

「へぇ! 使っていいの?」

 アイルの顔がパッと明るくなる。腕輪を手に取り天井のライトにかざす。腕輪の宝石がライトに照らされキラリと光った。

「いいぜ。最上階で動けなくなっても困るしな」

「ありがとヨロイさん!」

「ただアクセサリ系は2つまでしか装備できないから気を付けろよ。それ以上付けると効果を相殺するから」

「大丈夫よ。この前ヨロイさんに貰った指輪・・・・・と合わせて2つだけ装備するわ」

「指輪……だと?」

 後ろから物凄いプレッシャーが襲いかかる。振り返ると笑顔のリレイラさんが俺を見ていた。


 なんだか怖かった。


 ……。


 その後は、ダンジョン管理局の情報を貰った。六本木ヒルズに入るためのルートに雑魚敵の基本情報。流石に体力や詳しい攻撃モーションなんかは明かされていなかったが。


 約束の日まで数日。幸いリフレクションソードは間に合いそうだ。準備は怠らないようにしないとな。


◇◇◇

~天王洲アイル~

 ヨロイさんの家から帰ろうとしたら、ダンジョン管理局のリレイラが家まで送ると言ってきた。

 湯島のヨロイさんのマンションを出て御徒町方面へ歩いていく。真っ暗な道の中をリレイラがついて来る。

「……付いてこなくて大丈夫なんだけど?」

「さっき言ったろ? 君の担当も私になった。気にもする」

「ホントに大丈夫だって」

「この辺りは治安が良くないだろ。女子ならば夜の1人歩きはやめておけ」

「リレイラだって女子じゃない。私を送ってくれるのはいいけど帰り1人で大丈夫なの?」

 リレイラが急に固まる。なんか変なこと言ったかなと考えていたら、リレイラが言いづらそうに口を開いた。

「……私は魔族、だし。というか、ダンジョン管理局の人間は皆魔族だって知ってるだろ?」

「? 知ってるけど?」

「じゃ、じゃあなんでそんな普通の人間のように心配を……」

「私の担当になったんでしょ? これから仲良くしてこうって時にさ、アンタに何かあったら寝覚め悪いじゃない」

 振り返って見ると、リレイラはなんとも言えない表情をしていた。何かを言おうとしては口ごもる。しばらく彼女が何を言うのか待っていると、彼女は諦めたように俯いた。

「……ありがとう。なら、気にせず普通に接するよ」

「ヨロイさんの前では普通だったじゃない」

「それは……っ!? そう、だな……そうだったかも……」

 リレイラがモゾモゾ喋る。それがなんだか同じくらいの女の子に見えて笑ってしまった。

「わ、笑うな……!」


 ……。

 その後はヨロイさんの昔話を聞きながら帰った。引きこもりだったこと。クレジットカードで良い装備を買ってしまって、ダンジョンで良いアイテムを手に入れないとブラックリストに載るとかで、必死になってダンジョンに潜ったこと。

 今のヨロイさんからはちょっと想像付かなかった。今度ヨロイさんをからかってやろうかな。

 そんな時、ずっと疑問に思っていたことが浮かんだ。

「ねぇ。なんでヨロイさんの探索者名って『461さん』なの?」

「なぜそれが気になる?」

「いや、なんとなく。聞いちゃダメ?」

「別に構わないよ。君は彼のパーティだしな。ふふっ」

 意味深長に笑うリレイラ。彼女は思い出すように空を見上げた。

「元々はな、彼は本名を入れようとしたそうだ。だが、それは既に登録されてたらしくてな。何パターン試してもエラー。本名を数字にして、それでもダメで最後はヤケクソで『さん』付けにしたらしい」

「それで461さん?」

「そう。本当は461シライさんなんだよ」

 シライ……白井?

「本人はそれが恥ずかしいらしくてヨロイと呼んでるみたいだがな。ま、彼の見た目的には合っているんじゃないか?」

「ふふっ。何それ。ゲームの名付けみたい」

「そういうヤツなんだよヨロイ君は」

 思わず笑ってしまう。それにつられたようにリレイラも笑う。でも、しばらく笑った後、急にリレイラが静かになった。

「先程はすまなかった」

「え?」

「私も気が気じゃなくてな。君に当たってしまった」

「別にいいって。私のせいだし」

「……私はヨロイ君に引退なんてさせたくない。私が管理局の人間だからじゃない。彼が彼らしく生きられるのがダンジョンだからだ」

 リレイラがうつむく。さっきの話を聞いても、ヨロイさんはずっとダンジョンに潜り続けてきたって分かる。

 ダンジョン探索者じゃないヨロイさん、か。全然想像付かないな。

 ……悪い事したな。勝手に話進めちゃって。

 リレイラの瞳を真っ直ぐ見つめる。今の私に言える状況じゃないけど、真剣だっていう気持ちは伝えたいから。

「頑張る。私には、これしか言えないけど……でも私、頑張るから。ヨロイさんと、貴方の為に」

「……頼む」

 俯いていたリレイラがそっと手を差し出してくる。それをしっかりと握った。


 私が、がんばらないと。


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