461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第15話 六本木ヒルズへの挑戦【配信回】

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「ヨロイさん。六本木ヒルズはこっちよ」

 日比谷線、六本木駅で下車して地下道を進む。アイルが六本木ヒルズ直通の「1c出口」に向かう。途中の廊下で強めの障壁魔法が張られていた。オーロラのように輝くまくを触る。人間には反応しないらしく、スルリと中へと入り込めた。

「もうすぐか」

「言ってた大グモが逃げ出さないように張ってあるらしいわよ。この障壁魔法」

 六本木ヒルズは他のダンジョンと少し違う。通常のダンジョンは建物と異世界産ダンジョンが融合したことでファンタジーの内観をしている一方、六本木ヒルズはモンスターだけがヒルズに住み着いたタイプだ。

 そのモンスター達も数が多い。最上階のボスまで連続戦闘が強いられる。


 地下通路を進み、今は止まってしまった長いエスカレーターを登る。

「はぁ……はぁ……この上がすぐタワーの入り口……階段キツいわね……」

「作戦は覚えてるか?」

「入り口周囲を徘徊するマザースパイダーに見つからないように……はぁ……よね?」

 リレイラさんに聞いてからダンジョン『六本木ヒルズ』の情報は事前に調べ尽くした。ヒルズの周囲にはボスモンスター、マザースパイダーが徘徊している。

「本来ならアイルの成長の為に戦いたい相手だが、ジークリードとの勝負では相手にしない方が得策だ」

「デカグモとか……考えただけでゾワッとするわねぇ」

 虫が苦手なのか、アイルが何度も両腕を摩る。
 
 長い階段を登り、吹き抜け状の地下を抜け、地上へと到着する。目の前の六本木ヒルズ正面玄関を見ながら、近くの茂みへと隠れる。茂みの隙間から様子を窺うと、情報通りマザースパイダーの姿が見えた。

「嘘……めちゃくちゃデカいじゃない……」

 アイルが息を呑む。

 4mはあろうかという8本の脚。それが中央へと集約し、クモの本体へと繋がっていた。

「あの脚、恐らく普通の人間なら一撃で貫かれるな」

「……直撃は避けたいわね」

 顔をしかめたアイルが、懐から小型ドローンを取り出し、フワリと浮かせる。飛んだのを確認してからアイルがスマホを見た。

「ジークリードの相方のミナセさんから連絡来てるわ。2人ともヒルズ周辺に到着したみたい」

「いつでも開始できるって訳か」

「配信開始したらジークリード達の回線とリンクさせるわ。私が向こうと話すわね」

 そう言うと、アイルがスマホを操作する。すると、スマホに2分割された配信画面が現れた。アイルの顔と、もう1つの若い女性の顔。その画面の端にチラリとジークリードの姿が見える。

「ミナセさん。こちらは準備OKよ」

『りょ~か~い。じゃあ確認するね? 六本木ヒルズを同時に攻略する。先に最上階のボス「ファザースパイダー」を倒した方が勝ち……それで大丈夫?』

「問題無いわ」

『おっけ~コメントもオンにするよ』


〈期待〉
〈テンション上がってきた〉
〈ジークリードvs461さんw〉
〈アイルちゃんもミナセちゃんも可愛い♡〉
〈ジークリードさん頑張って!〉
〈流石にジークリードに勝てる訳無い〉


「ど、同接数15万超え!? 嘘でしょ……っ!?」

 アイルが画面を食い入るように見つめる。同接数って確か……今この配信を見ている人数って言ってたよな。じゃあ15万人が見てるってことか? ジークリードってすごいヤツなんだなぁ。

(がんばるわよヨロイさん! 絶対勝とうね!)

(俺も引退なんてしたくないからな。本気で行かせてもらうぜ)

『は~い♪ じゃあ配信見てるみんな~? ちゃんと証人になってね~』


〈任された〉
〈ワクワク!〉
〈461さん引退してしまうん?〉
〈引退記念!〉
〈アイルちゃんは続けて!〉
〈なんかアンチいるなぁ〉

『それじゃあ~ダンジョン『六本木ヒルズ』攻略開始!』

 スマホから聞こえる声と同時に茂みを移動し、タイミングを測る。


 まだだ。


 まだ。


 よし。


 マザースパイダーがこちらに背を向けたタイミングでアイルへと声をかけた。


(マザースパイダーが移動した。中へ侵入するぞ)

(分かったわ)


 マザースパイダーの隙を突いて六本木ヒルズ入り口へと向かう。


〈マザースパイダーはスルーかぁ〉
〈完全に勝ちに行ってるな〉
〈ちょっと勿体無いかもw〉
〈戦ってるところ見たかったな~〉


 マザースパイダーが離れていく。完全にこちらには気付いていないな。

(もうちょっと……もうちょっと……)

 後ろでアイルが呟きながらついて来る。あと数メートル。あの中に入れば後は上を目指すだけだ。


 そう考えた矢先──。


 スキル名が聞こえた。


波動斬はどうざん!!」



 頭上を風と雷の刃が通り抜ける。巨大な刃となったそれは、マザースパイダー本体へと直撃した。


「ギィィィィイイイイ!!?」


 斬撃を受けたマザースパイダーがのたうち回る。


〈!!?!?!?〉
〈は!?〉
〈どっから攻撃飛んできた!?〉
〈波動斬って聞こえたぞ!?〉
〈それって……?〉


「何をしているヨロイ。お前はモンスターから背を向けるのか? モンスターに捕らわれた者達がいたらどうする?」


 声の方へと目を向けると、背後の円形状の建物の上にジークリードとミナセらしき女性がいた。


「ギィィィィイイイイ!!!」


 怒り狂ったマザースパイダーが俺達を威嚇する。

「はぁ!? いきなり妨害するの!?」

「これは鎧が探索者に相応しいか試すための試験でもある。鎧、ドラゴンゾンビを倒したお前ならできるはずだ。その大グモ、打ち取ってみせろ!!」

「ごめんね~」


 そう言うと、ジークリードはミナセを抱き抱えてヒルズの中へと走っていった。

「何よアイツらぁ~!! 最っ悪!!!」

〈ズルwww〉
〈テストとか言ってたぞ〉
〈中二wwwwww〉
〈461さんオワタwww〉


「ギィィィィイイイイ!!!」

 迫る大グモ。去っていくライバル達……先を越されれば引退……か。


 ……。


「ふふ」


〈笑ってるwww〉
〈おかしくなったw〉
〈引退したら呼んで〉
〈アンチうぜ〉



 いいじゃん。たまにはこういうタイプの緊張感があってもさ。

「ヨロイさん?」

「アイル。戦い方は伝えたな。やるぞ」

「で、でも!」

「大丈夫だって。元々アイルの強化の為に挑んだんだぜ? 目の前の敵は全部ぎ倒してやろうぜ」


 引退? 試験? 知るか。俺のことは俺が決める。俺は、俺がやりたいことをやるだけだ。


 そう。ダンジョン攻略をな。


「この六本木ヒルズダンジョン。完全攻略してやるぜ」


「……っ!?」


 アイルがその大きな目を潤ませ、杖を握る。ふとその手を見ると、彼女の指には代々木公園で手に入れた琥珀こはくの指輪が付けられているのに気が付いた。


「がんばる。絶対ヨロイさんの足手まといにならないから……っ!」


「しゃっ!! まずはこのデカグモボコってやろうぜ!」

「うん!」

〈うおおおマザースパイダー戦!!〉
〈始まってるか……?:wotaku〉
〈ウォタクくんキターーー!〉
〈解説よろ〉
〈任された:wotaku〉
〈いきなりボス戦とかお得www〉


「ギィィィィオオオオオオォォォ!!!」


 雄叫びを上げるマザースパイダーへ向かって、俺達は駆け出した。

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