461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第21話 探索者達の帰還

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「じゃ、みんなまたね!」

〈乙~!〉
〈すごかった〉
〈俺スレ立てるわ〉
〈もう立ってる……〉
〈マジ!?〉
〈注目されてるなぁ〉
〈次も楽しみにしてる〉

 アイルがドローンに向かって手を振り、スマホを操作する。ふよふよと彼女の肩に止まるドローン。それをつまみあげ、アイルが鞄の中にしまう。

 その様子を横目にミナセとジークリードの下へ向かう。心配そうにジークリードを見つめるミナセ。彼女の腕の中でジークリードは苦しそうに脇腹を押さえた。

「大丈夫か?」

「うっ……ああ。なんとか、回復薬の効果で、動ける」

 ジークリードの容態はかなり回復していたが、ズタズタになった白銀龍のスーツが戦闘の壮絶さを物語っていた。

「ミナセ。肩を貸してくれ」

「うん……」

 ミナセの肩を借りながら、ゆっくりと立ち上がるジークリード。彼は一瞬俺を見たが、すぐに項垂れてしまった。

「俺が、驕っていたせいでよろい天王洲てんのうずを危険な目に遭わせた。そればかりか助けられて……本当に……すまなかった」

 頭を下げるジークリード。いつの間にか隣に立っていたアイルが驚いたように声を上げる。

「あ、アンタも頭下げたりするのね」

「……随分ずいぶんな言われ方だな」

 ジークリードが視線を遠くへと向ける。六本木ヒルズから見渡せる東京の景色。高層ビルに囲まれた一帯をゆっくり見渡していき、彼は東京タワーを見て視線を止めた。

「誰かを死なせたくないから俺は探索者になった。俺は、配信者を名乗るヤツらが私欲に取り憑かれていることが……許せなかったのかもしれない。その怒りで周りが見えなくなっていた」

「う……っそれを言われると私は何にも言えないんだけど……」


 探索者になる理由……かぁ。人それぞれとしか言いようがないよな。俺は楽しくてやってるだけだし、アイルはトップ配信者になりたいらしい。ジークリードの指すヤツらのことを否定できない。

「だが、少し考えを改めることにする。鎧の強さ。アレは意図せずとも人を救えるだけの力だ。俺が試す必要なんて……無かった」

 ジークリードがもう一度頭を下げる。

「俺はお前の戦いも凄えって思ったぜ? あんな覚悟決まった戦い方できるヤツはそういないって」

「お前にそれを言われるとはな……」

「鎧さん……カズく……ううん。ジークリードを助けてくれて、本当にありがとう」

「ミナセだっけ? 気にすんなよ」

「でも……ありがとう。今度お礼するね」


 去っていくジークリード達。寂しげな背中。そんな彼に向かってアイルが叫んだ。


「約束は!? 負けたらなんでも言うこと聞くって言ったわよね!?」

「おい。もういいじゃん」

「ダメ。こういうのはしっかり守らないと」

 ジークリードが振り返る。少しだけ覇気が弱まったような瞳で。

「ムシが良い話かもしれないが、引退なら……少しだけ時間をくれ。俺にはまだやらなければならないことがある。それが済めば引退を」

 アイルは無言で首を振ると、俺の手を握る。その手は何故だか震えていた。

「また、さ。私達とコラボしてよ。同接数とか関係なくて……ヨロイさんと一緒にダンジョン探索したら、この人がなんで『楽しい』って言ってるか分かるから」


 ジークリードがその目を大きく見開く。


「そう、だな……俺は初心が無いまま探索者になってしまったようだ。それを……今度教えてくれ」

「おう。また行こうぜジーク」

「何よジークって?」

「ジークリードだと言いにくいし」

「いきなり愛称で呼ぶとか……あ、私もいきなり呼び捨てだったわね」

「別に良いだろ。パーティで探索する時のコツが分かったんだよ。名前は呼び捨てや愛称の方がいい! 『意思疎通は迅速に』が原則だってな」

「ホントダンジョンのことばっかよね~」

 ふとジークが気になって視線を向けると、相棒のミナセに肩を借りながら彼はほんの僅かに口元を緩めていた。

 先程までの姿が蘇る。彼なりに俺達を守ろうとしてくれた姿が。今までも、あんな風に誰かの為に戦ってきたのかも。周りが見えなくなってた……か。


 そう思うと、悪いヤツじゃない気がした。


◇◇◇


 ジークリード達を見送った後、俺達も52階へと戻った。アイルが休憩した展望室まで戻ると、その部屋の中央に転移魔法の魔法陣が見えた。

 アイルがスマホをチェックする。さっきからずっと画面を見ては喜んでるな……。

「すごいすごい! チャンネル登録者数もツェッターのフォロワーもすごい勢いで増えてる! 見て見て!」

 アイルがスマホを見せてくる。その画面にはチャンネル登録者120万人と表示されていた。

「目標にしてた100万人超え! こんなにあっさり超えちゃうなんて~」

 アイルが回ると、そのツインテールがヒラヒラと舞う。

「よっぽど嬉しいんだな」

「嬉しいもーん!」

 画面を見つめるアイルから離れ、展望室のイスへと座った。なんだか、せっかくここまで到達したのにすぐ帰ってしまうのがおしいような気がして。

 少し曇った窓から東京の街並みが見える。高層ビルに、この前クリアした代々木公園。東京湾にスカイツリー……これを見ただけでも観光した気になるな。

 しかし、俺が一番気になったのは、目の前にそびえる赤と白の鉄塔……東京タワーだった。

 あの一帯だけは空気感が違う。東京タワーから広範囲に紫のモヤがかかった空間。その異様な雰囲気。それを見ているとポツリと言葉がこぼれてしまう。

 この世界に初めて現れたダンジョン。無数の探索者が挑みながら、未だ最深部に到達できていないダンジョンの名前が。


「東京パンデモニウム……」


「何見てるの?」

 いつの間にか背後にやって来ていたアイル。彼女は俺の視線の先に気付くと小さく頷いた。

「ヨロイさんだったらやっぱり気になるわよね。東京パンデモニウム」

「ああ。絶対に挑みたいね」

 東京パンデモニウム。それは東京タワーを中心に1つの街がダンジョン化した存在。東京でも最難関のダンジョン。これと肩を並べるダンジョンは新宿迷宮ラビリンスしかない。


 俺が東京に来た本当の目的はこれだ。


 このダンジョンは絶対に攻略したい。前人未到の地。その最奥に辿り着いた時、俺は何を感じるんだろう? いったい何が待っているんだろう? それを考えただけで子供の頃のようにワクワクしてしまう。

「私も……行ってみたい、かも」

 隣でアイルがポツリと呟く。彼女からそんな言葉が出るなんて意外で、思わずその顔を見てしまう。

「い、今はまだ無理だけど……私も、その、冒険とか楽しかったし……」

「楽しかった?」

 突然ハッとしたアイルがブンブンと手を振った。

「そ、そうよ! 誰も見たことないダンジョンで配信したら絶対人気出るでしょ?」

「配信かぁ~。ま、それもいいんじゃないか?」

「ふふっ」

「よし。腹減ったしさ、どっかでメシでも食ってこうぜ。おごってやるよ」

「ホント?」


「今日のアイルは100点だったからな!」


 100点と言った瞬間、アイルの顔は花が咲いたように満面の笑みになった。


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