461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第29話 地底湖の主を倒せ 【配信回】

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 ~天王洲 アイル~

「カアアアアアアアアアアァァァッ!!!」

 ブリッツアンギラが両頬の電気袋を振動させる。バチバチという音と共に全身に電撃が溜まり始める。

「アイル。ナーゴ。俺の後ろに来い」

 オロオロとするナーゴの手を引いてヨロイさんの後ろに隠れる。ヨロイさんを盾にするみたいで嫌だけど、きっと何か考えがあるはず。

 私は私のできることを。ヨロイさんの相棒は私なんだ。

「アイルちゃん……?」

 ナーゴを心配にさせないように笑顔を作る。

「大丈夫だよ」


〈電撃攻撃!〉
〈ヤバそう〉
〈広範囲攻撃とか逃げ場無いだろ〉
〈ブリッツアンギラは周囲に電撃を放出する攻撃が得意:wotaku〉
〈461さん終わったねぇ……〉
〈全身鎧の461さん感電するンゴ〉
〈アンチの執念ヤバ〉

 コメントのみんなも戸惑ってる。ヨロイさんのことをバカにしてる人もいる。それだけ強いボスだってことだ。

 でも、ヨロイさんならなんとかしてくれる。ううん。ヨロイさんと一緒なら、きっと倒せる。


「ァアアアアアァァァァ!!!」


 ブリッツアンギラの全身から電撃が放射される。バチバチすごい音と一緒に私達の方へと向かってくる。

「どどどどうするのにゃ!?」

 雷が迫る。雨みたいに広範囲に流れる電気が。

「よし」

 迫っていた電撃に向けてヨロイさんがショートソードを投げ付ける・・・・・反射魔法リフレクション符呪エンチャントも消えて、ただのショートソードになった剣を。

〈何やってんの?〉
〈リフレクションソード?〉
〈あの刀身は符呪付いてない:wotaku〉
〈マジ!?〉
〈ダメやん!〉
〈感電死?〉
〈アイルちゃん死なないでぇ……〉
〈死なないでおじさんまたいるやん〉


 悲観的なコメントが目に入った直後。雷がショートソードに吸い込まれるように直撃する。その瞬間分かった。代々木でボスと戦ったことを応用したんだって。

 地底湖内部に響き渡る轟音。眩いまでの光。本当の雷が目の前に落ちたような衝撃に思わず目を細めてしまう。でも、ブリッツアンギラから目を逸らしてはいけない気がして必死に目を凝らした。

 光が止んだ時。筆記魔法ワーダイトによって大量のコメントが目の前を流れた。


〈!?!?!!?!!??〉
〈ええええええぇぇええ!?〉
〈なんで無事なん!?〉
〈電撃魔法は金属に吸い寄せられる性質がある:wotaku〉
〈早く言えよ!〉
〈めちゃくちゃ焦った〉
〈代々木の再現か~〉


「アアアアアアアアアアァァァァ!!」

  
 ブリッツアンギラが雄叫びを上げて空中に舞い上がり、空中でアーチを描く。そして勢いよく・・・・頭から・・・飛び込み・・・・、ウネリを上げながら水中へと消えていく。その尾が水中に消えた瞬間。地底湖は一気に静まり返った。

「アイル。今の動き、覚えたか?」


 動き? それって今水中に潜ったこと?


 ……。


 そういうことか。


 なんだか、ヨロイさんの考えてることが分かって無性に嬉しい気持ちになった。それも、私が手に入れたアレ・・を頼ってくれてる。

「うん。次同じ動きしたら撃つ・・わ」


「察しいいじゃん」

「だって相棒だもん」


「なんだにゃなんだにゃ!? ナーゴにも分かるように言ってほしいにゃ!」

「ナーゴはクローの用意しておけよ。俺と一緒に電気袋攻撃してもらうからさ。アイツを潰せば厄介な攻撃は止まる」

「にゃ~! なんだか分からないけどやってやるのにゃ!」

 ナーゴが両手を上へ向けると、それぞれ3本のクローがシャキンと現れた。

 その直後。水中からブリッツアンギラが飛び出してきた。体に電撃を迸らせながら足場を通り過ぎていく。


「ガアアアアアアアアアアァァァァ!!!」


〈乗り出してきた!?〉
〈やっぱデケエエエエ!?〉
〈電撃を流したままの突撃も得意だな:wotaku〉
〈だから早く言えよ!〉


 ヨロイさんについて地面へ飛び込む。真横をブリッツアンギラが通りすぎ、頬にバチリと痛みが走った。

「痛っ……!」

 でも言ってられない……っ! ヨロイさんの動きに集中しないと。

 ヨロイさんの方を見ると、その指がブリッツアンギラを指していた。その先にはあの電気袋。それだけで何をしてほしいのか分かった。

 中級魔法は魔力チャージに時間かかるからここは初級で。ヨロイさんはアレを攻撃したいはずだ。なら、私が使う魔法は決まってる。

 魔力を貯める。その時が来たらすぐ撃てるように杖先を電気袋に狙いを定める。ヨロイさんも腰からナイフを構えてもう1つの電気袋に狙いを定めた。


「どうするのにゃ!? 体中に電気がバチバチしてるから攻撃できないにゃ!?」


「任せろ。ヤツが振り向いた。頼むぜアイル」

「うん! 氷結魔法フロスト!」


 勢い良く杖から冷気が発射する。それと同時にヨロイさんがもう1つの電気袋へナイフを投げる。冷気と刃物。2つが同時に電気袋に直撃した。


「グギャアアアァァァァ!?」


〈!!?!?!??!?!?〉
〈電気袋潰した!!〉
〈投げナイフかよ!?〉
〈アイルちゃんと息合いすぎ!〉
〈帯電が……:wotaku〉
〈よく当てられるなぁ……〉


「ヤツの帯電が消えた! 行くぞナーゴ!」

「にゃにゃ!」


 ナーゴとヨロイさんがブリッツアンギラの下に飛び込み斬撃を浴びせる。苦しむ声を上げるブリッツアンギラ。それを見ながら懐から魔力回復薬を取り出し、一気に飲み干す。

 全身に魔力が満たされるのを感じる。もう一度ヤツへと狙いを定めた。


 ブリッツアンギラのあの動き・・・・に合わせるために魔力を貯める。


 まだよ私。焦っちゃダメ。動きを見極めるの。


 まだ。


「ギュアアアアアァァァァ!?」


「来いナーゴ!」

「ヒィィィィにゃあああ!?」


 斬撃を浴びせていたヨロイさんがブリッツアンギラの動きを察知して、ナーゴと飛び退く。


 地面をのたうち回ったブリッツアンギラは、湖へと体を向けて陸地から帰っていく。


〈また潜ろうとしてる!?〉
〈ブリッツアンギラは水中で体力を回復させる:wotaku〉
〈長期戦か~〉
〈電気袋回復したらヤバそう〉
〈水中戦は流石にできんだろうしなぁ〉
〈水中戦www461さん錆びるだろww〉


「ァァァァアアアアアァァァァ!」


 ブリッツアンギラが水中へ潜ろうと高く舞い上がり、頭から水面へと飛び込む──。


 ──今だ!


氷結晶魔法クリスタルバースト!!」


 ホーラの杖から無数の氷の結晶が発射される。それが、ブリッツアンギラが飛び込もうとする水面に当たる。

 結晶が吸い込まれたその一角だけ、円形状に凍り付いていく。分厚い氷の板になった水面に、ブリッツアンギラが顔面から直撃した。


「グギャアアアアァァァアアアアアアアアア!?」


〈あんな魔法あったっけ!?〉
〈アイルちゃんの新魔法!〉
〈威力すごっ!〉
〈顔面から直撃して痛そう〉
〈氷結晶魔法を習得したのか:wotaku〉
〈ボス悶えてる!〉
〈今イケる!〉


「よし! もう一度行くぞ!!」

「にゃああああああああ!!」


 ショートソードを構えたヨロイさんとクローを展開したナーゴがブリッツアンギラに飛び込んで連続斬撃を浴びせる。


〈うわああああああ!!〉
〈ボスダウンしまくってんぞ!〉
〈いけいけ!!〉
〈マジか:wotaku〉
〈ヤバッ!?〉
〈完封じゃん!〉
〈33-4〉
〈なんでや!?阪神関係無いやろ!!〉



「にゃにゃにゃにゃにゃ!!」

 ナーゴがめちゃくちゃにブリーツアンギラの顔を攻撃する。クローの連続攻撃は想像以上にブリッツアンギラにダメージを与えてるみたい。

 ナーゴにボスが意識を向けてる間に、ヨロイさんが
ボスの頭の上に登っていた。


「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 その顔面にヨロイさんがショートソードを深々と突き刺す。

「ィギャアアアアアァァァ!?」

 苦しみの声を上げる地底湖の主。暴れ回るブリッツアンギラからヨロイさんが飛び降りる。ローリングで着地の勢いを殺してブリッツアンギラからこちらへと駆け出してきた。

 ヨロイさんが離れたってことはまだ終わってない。もう一撃が必要なはず。

 もう一度懐から魔力回復薬を取り出して飲む。苦味が口の中に広がる。絶対来る。ヨロイさんの指示が。だから気を抜くな、私。



「にゃにゃ!? 置いてかないでにゃっ!」


 ナーゴとヨロイさんがブリッツアンギラの下から走ってくる。


「アイル! もう1発撃てるか!?」


 来た!


「大丈夫! 待ってたわ!」


 ヨロイさんが頼ってくれる。それだけで胸の奥が熱くなる。六本木の時から感じてた絆みたいなものが、すごく嬉しい。


 次弾に向けて魔力は溜めてあった。ヨロイさんの動きが……分かっていたから。


「ギャアアアアアァァァァ!!!?」


 暴れ回るブリッツアンギラ。ボスが苦しみながら天を仰いだ瞬間に合わせて、魔法名を告げた。


「氷結晶魔法《クリスタル・バースト》!!」


「ギッ──ッ!?」


 放たれた氷の結晶達がブリッツアンギラに直撃する。巨大な魚の全身は瞬く間に凍り、大地に倒れ込んだと同時に粉々に砕け散った。


〈うおおおぉぉぉ!!?〉
〈今回速ェェェェェェ!!〉
〈アイルちゃんの新魔法!〉
〈コンビネーション含めてさらに強くなってるな:wotaku〉
〈立派になって……ホントに……〉
〈泣いてるヤツwww〉


「にゃにゃ~! アイルちゃんすごいにゃん♡」


「今回も助かったぜ。ありがとな」


 今回も。


 私を見下ろすヨロイさん。嬉しい。頭の中が嬉しいでいっぱい。


 私、役に立ってる。いっつもすごいヨロイさんが私を頼ってくれてる。


 嬉しい。


 嬉しい嬉しい嬉しい!


 飛び跳ねるたくなるのを抑えて、極力冷静に振る舞おうとする。でも嬉し過ぎて、体中がソワソワしてしまう。

「あ、あったりまえじゃない。だって私は、ヨロイさんの……相棒なんだから」


「そうだな。アイルと組んで良かったぜ」


 私と組んで良かった……。


 良かったって!


 そう思うだけで私の頭はポワポワした。


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