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第56話 最強のパーティ 【ボス戦配信回】
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~ジークリード~
「ヤツは氷結魔法を使うアイルを狙うはずだ。ジーク、ミナセ。俺らでアイルを守るぞ」
天王洲が杖を構えると、魔力が渦を巻く。それを鎧、俺、ミナセで囲みスキル・ルーラーの襲撃に備える。
「ケホケホッ……」
ミナセが咳き込む。それを見た瞬間、先程の自分の不甲斐無さが込み上げ、彼女の背を撫でた。
「ジーク……ありがとう」
「俺のせいだ。また俺は相手を甘く見てしまった」
クソッ。盗賊との戦闘でせっかく掴めた感覚が……情け無い。
「お前らさぁ、反省会は後でやれ。今は目の前と俺の声だけに集中しろ」
「ヤツは全てのモンスターを食ってそのスキルを使えると言っていた」
「私達のスキルもね……ケホッ」
「そこは俺に任せとけ。お前達はまだ強化魔法効果が残ってるから物理攻撃を……っと。早速仕掛けて来たぜ!」
鎧がそう言って指を指す。その先へ視線を向けると、足元にうっすらと黒い影が現れていた。
「シャドウバットは影となって移動する。だがそれには致命的な弱点がある。出現する際に影が現れることだ!」
鎧が俺達を守るように前へ出る。その瞬間、影のあった場所からスキル・ルーラーが現れた。
「貴様らブチ殺シてヤるよぉ!!」
スキル・ルーラーが右手を槍のように変化させ、その切先を俺達へと向ける。
〈攻撃来るって!!〉
〈どうするんだ!?〉
〈こっちの攻撃通らんだろ!〉
〈氷結魔法使えって!〉
〈その前に攻撃防がなあかんやろ〉
〈大丈夫:wotaku〉
〈え、なんで大丈夫なんだ!?〉
〈461さんはモンスターの特性把握してる:wotaku〉
「我の攻撃は防ぐことはできん! 死ねええぇぇぇえええ!!!」
突き出される槍。どうする……っ!? 先程俺の攻撃は通らなかった。天王洲の魔法発動にはまだ時間が……どうやって防げばいい!?
「お前の特性は見破ってんだよ!!」
鎧が盾を構える。
〈盾なんかすり抜けちゃうんだ!〉
〈相手不定形やぞ!?〉
〈ダメじゃん〉
〈アイルちゃん……死なないでぇ……〉
〈私の尻が……っ!?〉
〈そこかよ〉
槍が盾に直撃する刹那──。
「らあっ!!」
鎧が、盾でスキル・ルーラーの攻撃を弾いた。
〈!?!!?!?!?〉
〈えぇぇぇぇぇ!?〉
〈跳ね返した!?〉
〈何でなんだ!?〉
〈ジークリードは攻撃当たらんかったやろ!?〉
「スライム種は物理攻撃の瞬間だけ硬質化する!! パリィも可能だぜ!」
「な!? 貴様──」
「氷結魔法!!」
天王洲の氷結魔法が放たれ再びスキル・ルーラーの体がビシリと凍り付く。
「ジーク! ミナセ!! 顔面を狙え!!」
体が勝手に動く。この瞬間を逃してはいけないという想いが剣を振るわせる。
「ガが……サせ、ン!!」
凍り付く両腕で、頭部の光を守ろうとするスキル・ルーラー。その両腕目掛けてミナセが杖を振り下ろす。彼女の体が青く光る。物理攻撃強化呪文がミナセの一撃を飛躍的に向上させた。
「さっきのお返し!!」
杖を叩き付けられ、粉々に砕け散るヤツの両腕。無防備になった頭部。そこへバルムンクを叩き付ける。
「うおおおおお!!!!」
ヤツの頭部を一閃する。真っ二つになる光球。その全体から棘のような物が出現し、半分となった光の片方が消滅した。
「ギャアアアアアアアアアァァァァアアアアア!?」
〈ダメージ入った!?〉
〈パリィできるってマジかよ!!〉
〈ヒット直前で行うパリィとスライム種の硬質化の特性は相性悪い:wotaku〉
〈すげ〉
〈失敗したら死ぬんだ!よくできるんだ!〉
〈スキルイーターはあの光が核。アレを攻撃すれば倒せる:wotaku〉
〈いけるやん!〉
地面に落ちて粉々に砕け散ったスキル・ルーラー。液体に戻ったヤツは俺達から距離を取り、再び人の姿を形作った。
「な、ナゼだ……なぜワタクシのトくセいが分かっタですカ……っ!?」
鎧が俺達の前に出て盾を構える。その背後には天王洲……それだけで先程の陣形を取れということだと分かった。
「残念だがお前が食ったモンスターの特性は全て把握してるぜ? お前に俺達は倒せねぇよ。スキルイーター」
「スキルイーター」と呼ばれたヤツは全身を戦慄かせた。鎧のヤツ……挑発してるのか?
「ガああああ違うチガウちがうぅぅ俺はスキル・ルーラーだ!! その名前で呼ブナぁぁ!! オれは支配者シハイシャしはいしゃ!!!」
(ちょ、いいのヨロイさん? アイツめちゃくちゃ怒ってるじゃない)
(いいんだよ。俺らの分断、回復アイテムの破壊……全て小心者がやることだ。そしてジーク達を痛め付けた言動。ああいう劣等感の塊のヤツには安い挑発が1番効く。逆上させた方が動きは単調になるしな)
(そ、そうなの? 作戦だったんだ……)
(そうだ。だから追い討ちしておくぜ)
「スキルイーター君には自分が雑魚だってこと教えてやらねぇとなぁ!!」
「ァァアアアァァァァアアアアア殺してやるコろシてやる!! ころスコロす殺す!!!!」
「来るぜ!! アイルはもう分かってるな! ジークとミナセは合図したら攻撃しろ!! さっきと同じ物理攻撃でいい!! お前らはアイツをぶっ殺すことだけ考えろ!!」
鎧が持っていたショートソードを捨て、盾のある左腕をもう片方の手で掴む。両腕で盾を構えるような形となった状態で、鎧の男が叫んだ。
「俺がヤツの攻撃を全て潰す!! あの核を潰せばアイツは消える。攻撃はお前達に任せたぜ。ヤツに勝てるかどうかお前らにかかってるからな!!」
「何だその指示は!?」
「ジーク! ミナセさん! ヨロイさんを信じて! 絶対大丈夫だから!」
天王洲が俺達の肩を叩く。振り返ると彼女の瞳が目に入った。鎧を絶対的に信頼している瞳。それは、ミナセが俺へと向ける瞳に似ていて……そうだな。渋谷に挑むと決めてからも、ずっと鎧の事を信じて行動して来た。信じれば……信じて俺の役割を全うすれば、勝てる。
「……行くぞミナセ。勝つぞ。俺達で」
一瞬、ミナセは大きく目を見開いた。しかしすぐに鋭い目つきになり、スキルイーターを睨み付ける。
「うん、倒そう。私達なら、勝てる!」
「燃えて来たわねぇーーー!! やってやろうじゃない!! 私がしっかり2人の攻撃届くようにしてあげるからね!!」
ミナセも、俺も、こんな強敵を前にしているのに胸の鼓動が抑えられない。思わず笑みを浮かべてしまう。先程までは、あんなに打ちひしがれていたのに。
「やるぜお前ら!! 気合い入れろよ!!」
鎧の声、その背中。それを見ているだけで絶対に勝てる気がする。俺の全身が熱くなる。
「不思議な男だな本当に!!」
バルムンクを構える。さっきと同じだ。俺達は攻撃に集中すればいい。後は2人が何とかしてくれる。
「フざケやガってエエエエエエ!!!!」
こちらに全力で駆け出して来るスキルイーター。突然、ヤツの体が十数体に分裂した。
〈!?!???!?!?〉
〈分裂したんだ!?〉
〈増えてるやんけ!?〉
〈どうすんの!?〉
「全員嬲り殺シてやるヨおオおぉ!!!」
迫り来るスキルイーター達。それに視線を向けながら鎧はブツブツと何かを呟く。
「分裂スライムは分裂する度に質量も分かれる、小さくなる。だがあの人数に分裂してなおアイツの体には質量変化は見られない。ならこの能力は……」
「シねェエエエエエエ!!」
「幻影騎士の能力「幻影」だ!!」
スキルイーター達の腕が槍へ変化する。無数の槍が迫る中、その1つだけを選び取り、鎧がヤツの攻撃をパリィする。
「ナニぃ!?」
「幻影は影ができないんだぜ間抜け野郎が!!」
「ふざケんナふざけンなフザンナァァ!!!!!」
幻影が消え、1体となったスキルイーター。ヤツは両腕を槍へと変化させ連続攻撃を放った。
それを鎧の男が盾で全て弾き返していく。
「死ねシネ死ねしねシね死ネェエエエェ!!!!」
「ウラアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
〈ちょ!? 何だよこれ!〉
〈何で全部パリィしてんねんw〉
〈ヤバ!!〉
〈一回パリィするだけでも難しいんだ!〉
〈攻撃を捨てたから:wotaku〉
〈は?〉
〈どういうことや?〉
〈両腕で盾を構えて最小限の動きでパリィしてる。だから連続で弾き返せる。反撃を狙ったらできない:wotaku〉
〈すごいんだ!!〉
「クソクソクソ!! ナンだお前ハ!!」
焦ったスキルイーターが大振りになる。その一撃を鎧が盾で弾き返す。バランスを崩すスキルイーター。その瞬間、鎧の男が相棒へと叫んだ。
「アイル!!!」
その瞬間を待ち侘びていたかのように、天王洲の声が響く。
「もっかい食らいなさい!! 氷結魔法!!」
「ガッ!?」
腹部から凍り付いていくスキルイーター。ヤツは己の腕を剣に変え、己の下半身を切り落とした。
「ギィ……ッ!? く、クソ……!?」
スキルイーターが黒くなり、霧のように掻き消える。このダンジョンに入ってから何度も見た光景。敵を倒す度に消え、謎に感じていた現象。しかし、鎧が見破った今なら分かる。足元を見れば、出現する場所にヤツの影が浮かぶことが分かる!
「ヨロイさん! エスカレーターの近くに影が出てる!」
「ああ!」
鎧を前衛に影へと向かって走る。前方では再び液体が集結し、スキルイーターが人型を取り戻していた。
「くそ~! また戻ってる! もう脚の氷溶けちゃったの!」
「大丈夫だミナセ。恐らく次の一撃でヤツの核は消滅する」
「ジークの言う通りだぜ。アイル! 氷結晶魔法の準備だ! 次で決めるぜ!!」
「まっかせといて!! 空間ごと凍らせて溶けないようにしてやるわ!」
背後の天王洲から猛烈な冷気が渦巻く。広範囲の氷結魔法……恐らくこれで魔力も最後だろう。なんとしても決める!
「来るナぁ!! 波動斬!!」
袈裟斬りに放たれた風の刃。ヤツめ。俺の技を……。
「鎧! 波動斬は直線上しか斬撃が飛ばん。避けるのは容易い!」
だからこそ俺はその弱点を閃光の速度で補って来た。手に入れたばかりの素人が使いこなせる訳がない!
波動斬が目の前に迫った瞬間二手に別れ、それを避ける。スキルイーターは悔しそうに声を荒げた。
「あああああああ!! なゼだ何故だ!!! このスキルはもっと強かったのにいいいいいい!!!」
「残念だったなぁ!! 雑魚のテメェには使いこなせない技なんだよ!!」
「ギィィィィィィぃぃ!!!」
鎧の挑発に叫び声を上げたスキルイーターが連続で何かを発射する。それは5発の弓矢。スライム状のヤツの体が弓矢の形状となった物だった。
「やっぱ武者の矢はテメェの体だったか。だが」
盾を構えた鎧は向かって来た矢を全て弾き返して行く。
「飛び道具で攻撃するには硬質化して発射するしかねぇよなぁ!? もう当たらねぇよ!!」
「クソがああああああァアアアああ!!!! 物理防御上──」
「強化魔法は発動までタイムラグがあるよ! 撃ってアイルちゃん!」
ミナセの声に、天王洲がニヤリと笑う。彼女は冷気纏う杖をヤツの足元へと向け、魔法名を告げた。
「氷結晶魔法!!!」
杖から発生した大量の氷の礫がスキルイーターを襲い、空間ごと冷凍してしまう。
「ガ……ッ!? く、ソ……氷が振り払え、ン!?」
「行け2人とも!!」
鎧に背中を押される。バルムンクを構え、ミナセと共に全力で走る。
「ギ……く、来るな」
氷ついた体を無理矢理動かすスキルイーター。バギバキという音と共に球体となっていく。
アイツ……っ! 無理矢理核を守つもりか。
ミナセが杖を振りかぶる。横に回転を加えた全力の一撃。それを不完全な球体となったスキルイーターへと叩き付ける。
「往生際悪すぎっ!!!」
ミナセの杖が直撃した球体。表面が砕かれ、赤い核が現になった。
「ジーク!! お願い!!」
「ああ……っ!! これで……終わりだ!!!!」
バルムンクで赤い核を一閃する。スキルイーターの核は真っ二つに切り裂かれ、フロア中にヤツの断末魔が響き渡った。
「ギイアアアアアアアアアアアあああああああああああああああアアアァァァァ!!!??」
形状を維持できず崩れ落ちるスキルイーターの体、そこからレベルポイントの光が溢れ出し、俺達のスマホへと吸収されていく。
〈お、終わった?〉
〈レベルポイントの光が出た。完全に倒した:wotaku〉
〈すげ……〉
〈コメント打つの忘れてたんだ〉
〈見入ってたわ……〉
〈え、ヤバない?〉
〈同接100万人超えてんぞ!!〉
〈マジかよ!?〉
〈ヤベエえええええええええ!?〉
〈めっちゃ見られてるやんけ!!!〉
〈良かった……:wotaku〉
「あ~!! 倒したぜ~!!」
「やったやった!! 高難易度ダンジョンクリアできたわ!」
満足気な声を出して倒れ込む鎧に、飛び跳ねて喜ぶ天王洲。その姿は2人とも子供のようで、先程まで感じていた頼もしさとのギャップに笑ってしまう。
ん?
フワリと浮いた淡い光。それが俺とミナセの体に溶け込むように入っていく。
これは……。
「あ! 見て見てジーク! またスキル使えるようになったよ!」
ミナセが杖を叩くと魔法陣が発動した。また戻って来たんだな……俺達のスキルが……。
自分の手を見つめる。
……良かった。
良かった……ミナセを、スキルを、探索者として積み重ねた日々を失わなくて……本当に……。
安堵、達成感。そして感じた心が踊る感覚……色々な物を噛み締めるように、俺は拳を握り締めた。
「ヤツは氷結魔法を使うアイルを狙うはずだ。ジーク、ミナセ。俺らでアイルを守るぞ」
天王洲が杖を構えると、魔力が渦を巻く。それを鎧、俺、ミナセで囲みスキル・ルーラーの襲撃に備える。
「ケホケホッ……」
ミナセが咳き込む。それを見た瞬間、先程の自分の不甲斐無さが込み上げ、彼女の背を撫でた。
「ジーク……ありがとう」
「俺のせいだ。また俺は相手を甘く見てしまった」
クソッ。盗賊との戦闘でせっかく掴めた感覚が……情け無い。
「お前らさぁ、反省会は後でやれ。今は目の前と俺の声だけに集中しろ」
「ヤツは全てのモンスターを食ってそのスキルを使えると言っていた」
「私達のスキルもね……ケホッ」
「そこは俺に任せとけ。お前達はまだ強化魔法効果が残ってるから物理攻撃を……っと。早速仕掛けて来たぜ!」
鎧がそう言って指を指す。その先へ視線を向けると、足元にうっすらと黒い影が現れていた。
「シャドウバットは影となって移動する。だがそれには致命的な弱点がある。出現する際に影が現れることだ!」
鎧が俺達を守るように前へ出る。その瞬間、影のあった場所からスキル・ルーラーが現れた。
「貴様らブチ殺シてヤるよぉ!!」
スキル・ルーラーが右手を槍のように変化させ、その切先を俺達へと向ける。
〈攻撃来るって!!〉
〈どうするんだ!?〉
〈こっちの攻撃通らんだろ!〉
〈氷結魔法使えって!〉
〈その前に攻撃防がなあかんやろ〉
〈大丈夫:wotaku〉
〈え、なんで大丈夫なんだ!?〉
〈461さんはモンスターの特性把握してる:wotaku〉
「我の攻撃は防ぐことはできん! 死ねええぇぇぇえええ!!!」
突き出される槍。どうする……っ!? 先程俺の攻撃は通らなかった。天王洲の魔法発動にはまだ時間が……どうやって防げばいい!?
「お前の特性は見破ってんだよ!!」
鎧が盾を構える。
〈盾なんかすり抜けちゃうんだ!〉
〈相手不定形やぞ!?〉
〈ダメじゃん〉
〈アイルちゃん……死なないでぇ……〉
〈私の尻が……っ!?〉
〈そこかよ〉
槍が盾に直撃する刹那──。
「らあっ!!」
鎧が、盾でスキル・ルーラーの攻撃を弾いた。
〈!?!!?!?!?〉
〈えぇぇぇぇぇ!?〉
〈跳ね返した!?〉
〈何でなんだ!?〉
〈ジークリードは攻撃当たらんかったやろ!?〉
「スライム種は物理攻撃の瞬間だけ硬質化する!! パリィも可能だぜ!」
「な!? 貴様──」
「氷結魔法!!」
天王洲の氷結魔法が放たれ再びスキル・ルーラーの体がビシリと凍り付く。
「ジーク! ミナセ!! 顔面を狙え!!」
体が勝手に動く。この瞬間を逃してはいけないという想いが剣を振るわせる。
「ガが……サせ、ン!!」
凍り付く両腕で、頭部の光を守ろうとするスキル・ルーラー。その両腕目掛けてミナセが杖を振り下ろす。彼女の体が青く光る。物理攻撃強化呪文がミナセの一撃を飛躍的に向上させた。
「さっきのお返し!!」
杖を叩き付けられ、粉々に砕け散るヤツの両腕。無防備になった頭部。そこへバルムンクを叩き付ける。
「うおおおおお!!!!」
ヤツの頭部を一閃する。真っ二つになる光球。その全体から棘のような物が出現し、半分となった光の片方が消滅した。
「ギャアアアアアアアアアァァァァアアアアア!?」
〈ダメージ入った!?〉
〈パリィできるってマジかよ!!〉
〈ヒット直前で行うパリィとスライム種の硬質化の特性は相性悪い:wotaku〉
〈すげ〉
〈失敗したら死ぬんだ!よくできるんだ!〉
〈スキルイーターはあの光が核。アレを攻撃すれば倒せる:wotaku〉
〈いけるやん!〉
地面に落ちて粉々に砕け散ったスキル・ルーラー。液体に戻ったヤツは俺達から距離を取り、再び人の姿を形作った。
「な、ナゼだ……なぜワタクシのトくセいが分かっタですカ……っ!?」
鎧が俺達の前に出て盾を構える。その背後には天王洲……それだけで先程の陣形を取れということだと分かった。
「残念だがお前が食ったモンスターの特性は全て把握してるぜ? お前に俺達は倒せねぇよ。スキルイーター」
「スキルイーター」と呼ばれたヤツは全身を戦慄かせた。鎧のヤツ……挑発してるのか?
「ガああああ違うチガウちがうぅぅ俺はスキル・ルーラーだ!! その名前で呼ブナぁぁ!! オれは支配者シハイシャしはいしゃ!!!」
(ちょ、いいのヨロイさん? アイツめちゃくちゃ怒ってるじゃない)
(いいんだよ。俺らの分断、回復アイテムの破壊……全て小心者がやることだ。そしてジーク達を痛め付けた言動。ああいう劣等感の塊のヤツには安い挑発が1番効く。逆上させた方が動きは単調になるしな)
(そ、そうなの? 作戦だったんだ……)
(そうだ。だから追い討ちしておくぜ)
「スキルイーター君には自分が雑魚だってこと教えてやらねぇとなぁ!!」
「ァァアアアァァァァアアアアア殺してやるコろシてやる!! ころスコロす殺す!!!!」
「来るぜ!! アイルはもう分かってるな! ジークとミナセは合図したら攻撃しろ!! さっきと同じ物理攻撃でいい!! お前らはアイツをぶっ殺すことだけ考えろ!!」
鎧が持っていたショートソードを捨て、盾のある左腕をもう片方の手で掴む。両腕で盾を構えるような形となった状態で、鎧の男が叫んだ。
「俺がヤツの攻撃を全て潰す!! あの核を潰せばアイツは消える。攻撃はお前達に任せたぜ。ヤツに勝てるかどうかお前らにかかってるからな!!」
「何だその指示は!?」
「ジーク! ミナセさん! ヨロイさんを信じて! 絶対大丈夫だから!」
天王洲が俺達の肩を叩く。振り返ると彼女の瞳が目に入った。鎧を絶対的に信頼している瞳。それは、ミナセが俺へと向ける瞳に似ていて……そうだな。渋谷に挑むと決めてからも、ずっと鎧の事を信じて行動して来た。信じれば……信じて俺の役割を全うすれば、勝てる。
「……行くぞミナセ。勝つぞ。俺達で」
一瞬、ミナセは大きく目を見開いた。しかしすぐに鋭い目つきになり、スキルイーターを睨み付ける。
「うん、倒そう。私達なら、勝てる!」
「燃えて来たわねぇーーー!! やってやろうじゃない!! 私がしっかり2人の攻撃届くようにしてあげるからね!!」
ミナセも、俺も、こんな強敵を前にしているのに胸の鼓動が抑えられない。思わず笑みを浮かべてしまう。先程までは、あんなに打ちひしがれていたのに。
「やるぜお前ら!! 気合い入れろよ!!」
鎧の声、その背中。それを見ているだけで絶対に勝てる気がする。俺の全身が熱くなる。
「不思議な男だな本当に!!」
バルムンクを構える。さっきと同じだ。俺達は攻撃に集中すればいい。後は2人が何とかしてくれる。
「フざケやガってエエエエエエ!!!!」
こちらに全力で駆け出して来るスキルイーター。突然、ヤツの体が十数体に分裂した。
〈!?!???!?!?〉
〈分裂したんだ!?〉
〈増えてるやんけ!?〉
〈どうすんの!?〉
「全員嬲り殺シてやるヨおオおぉ!!!」
迫り来るスキルイーター達。それに視線を向けながら鎧はブツブツと何かを呟く。
「分裂スライムは分裂する度に質量も分かれる、小さくなる。だがあの人数に分裂してなおアイツの体には質量変化は見られない。ならこの能力は……」
「シねェエエエエエエ!!」
「幻影騎士の能力「幻影」だ!!」
スキルイーター達の腕が槍へ変化する。無数の槍が迫る中、その1つだけを選び取り、鎧がヤツの攻撃をパリィする。
「ナニぃ!?」
「幻影は影ができないんだぜ間抜け野郎が!!」
「ふざケんナふざけンなフザンナァァ!!!!!」
幻影が消え、1体となったスキルイーター。ヤツは両腕を槍へと変化させ連続攻撃を放った。
それを鎧の男が盾で全て弾き返していく。
「死ねシネ死ねしねシね死ネェエエエェ!!!!」
「ウラアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
〈ちょ!? 何だよこれ!〉
〈何で全部パリィしてんねんw〉
〈ヤバ!!〉
〈一回パリィするだけでも難しいんだ!〉
〈攻撃を捨てたから:wotaku〉
〈は?〉
〈どういうことや?〉
〈両腕で盾を構えて最小限の動きでパリィしてる。だから連続で弾き返せる。反撃を狙ったらできない:wotaku〉
〈すごいんだ!!〉
「クソクソクソ!! ナンだお前ハ!!」
焦ったスキルイーターが大振りになる。その一撃を鎧が盾で弾き返す。バランスを崩すスキルイーター。その瞬間、鎧の男が相棒へと叫んだ。
「アイル!!!」
その瞬間を待ち侘びていたかのように、天王洲の声が響く。
「もっかい食らいなさい!! 氷結魔法!!」
「ガッ!?」
腹部から凍り付いていくスキルイーター。ヤツは己の腕を剣に変え、己の下半身を切り落とした。
「ギィ……ッ!? く、クソ……!?」
スキルイーターが黒くなり、霧のように掻き消える。このダンジョンに入ってから何度も見た光景。敵を倒す度に消え、謎に感じていた現象。しかし、鎧が見破った今なら分かる。足元を見れば、出現する場所にヤツの影が浮かぶことが分かる!
「ヨロイさん! エスカレーターの近くに影が出てる!」
「ああ!」
鎧を前衛に影へと向かって走る。前方では再び液体が集結し、スキルイーターが人型を取り戻していた。
「くそ~! また戻ってる! もう脚の氷溶けちゃったの!」
「大丈夫だミナセ。恐らく次の一撃でヤツの核は消滅する」
「ジークの言う通りだぜ。アイル! 氷結晶魔法の準備だ! 次で決めるぜ!!」
「まっかせといて!! 空間ごと凍らせて溶けないようにしてやるわ!」
背後の天王洲から猛烈な冷気が渦巻く。広範囲の氷結魔法……恐らくこれで魔力も最後だろう。なんとしても決める!
「来るナぁ!! 波動斬!!」
袈裟斬りに放たれた風の刃。ヤツめ。俺の技を……。
「鎧! 波動斬は直線上しか斬撃が飛ばん。避けるのは容易い!」
だからこそ俺はその弱点を閃光の速度で補って来た。手に入れたばかりの素人が使いこなせる訳がない!
波動斬が目の前に迫った瞬間二手に別れ、それを避ける。スキルイーターは悔しそうに声を荒げた。
「あああああああ!! なゼだ何故だ!!! このスキルはもっと強かったのにいいいいいい!!!」
「残念だったなぁ!! 雑魚のテメェには使いこなせない技なんだよ!!」
「ギィィィィィィぃぃ!!!」
鎧の挑発に叫び声を上げたスキルイーターが連続で何かを発射する。それは5発の弓矢。スライム状のヤツの体が弓矢の形状となった物だった。
「やっぱ武者の矢はテメェの体だったか。だが」
盾を構えた鎧は向かって来た矢を全て弾き返して行く。
「飛び道具で攻撃するには硬質化して発射するしかねぇよなぁ!? もう当たらねぇよ!!」
「クソがああああああァアアアああ!!!! 物理防御上──」
「強化魔法は発動までタイムラグがあるよ! 撃ってアイルちゃん!」
ミナセの声に、天王洲がニヤリと笑う。彼女は冷気纏う杖をヤツの足元へと向け、魔法名を告げた。
「氷結晶魔法!!!」
杖から発生した大量の氷の礫がスキルイーターを襲い、空間ごと冷凍してしまう。
「ガ……ッ!? く、ソ……氷が振り払え、ン!?」
「行け2人とも!!」
鎧に背中を押される。バルムンクを構え、ミナセと共に全力で走る。
「ギ……く、来るな」
氷ついた体を無理矢理動かすスキルイーター。バギバキという音と共に球体となっていく。
アイツ……っ! 無理矢理核を守つもりか。
ミナセが杖を振りかぶる。横に回転を加えた全力の一撃。それを不完全な球体となったスキルイーターへと叩き付ける。
「往生際悪すぎっ!!!」
ミナセの杖が直撃した球体。表面が砕かれ、赤い核が現になった。
「ジーク!! お願い!!」
「ああ……っ!! これで……終わりだ!!!!」
バルムンクで赤い核を一閃する。スキルイーターの核は真っ二つに切り裂かれ、フロア中にヤツの断末魔が響き渡った。
「ギイアアアアアアアアアアアあああああああああああああああアアアァァァァ!!!??」
形状を維持できず崩れ落ちるスキルイーターの体、そこからレベルポイントの光が溢れ出し、俺達のスマホへと吸収されていく。
〈お、終わった?〉
〈レベルポイントの光が出た。完全に倒した:wotaku〉
〈すげ……〉
〈コメント打つの忘れてたんだ〉
〈見入ってたわ……〉
〈え、ヤバない?〉
〈同接100万人超えてんぞ!!〉
〈マジかよ!?〉
〈ヤベエえええええええええ!?〉
〈めっちゃ見られてるやんけ!!!〉
〈良かった……:wotaku〉
「あ~!! 倒したぜ~!!」
「やったやった!! 高難易度ダンジョンクリアできたわ!」
満足気な声を出して倒れ込む鎧に、飛び跳ねて喜ぶ天王洲。その姿は2人とも子供のようで、先程まで感じていた頼もしさとのギャップに笑ってしまう。
ん?
フワリと浮いた淡い光。それが俺とミナセの体に溶け込むように入っていく。
これは……。
「あ! 見て見てジーク! またスキル使えるようになったよ!」
ミナセが杖を叩くと魔法陣が発動した。また戻って来たんだな……俺達のスキルが……。
自分の手を見つめる。
……良かった。
良かった……ミナセを、スキルを、探索者として積み重ねた日々を失わなくて……本当に……。
安堵、達成感。そして感じた心が踊る感覚……色々な物を噛み締めるように、俺は拳を握り締めた。
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オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
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『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
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「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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