461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第55話 スキルの支配者 【ボス戦配信回】

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 ~ジークリード~


 数分前。


 残りの腕が2本となった武者へと追い付く。ミナセが俺の肩を蹴ってヤツの元へと飛び込んだ。


「はああああああ!!」


「く……っ!? しつこきものどもが!」


 強化魔法が施されたミナセの杖は、武者の放つ斬撃をことごとく跳ね返していく。ミナセの表情が変わっていく。笑顔の中で瞳がギラリと光る。

「ジーク!!」

「ああ!!」

 ミナセの合図と共にバルムンクを抜く。彼女がステップで距離を取った瞬間、目の前の状況を把握する。

 武者が振り上げた2本の腕、この角度……今なら同時に腕を狙える、ミナセが射程外に逃れたタイミングで技を放つ。

「波動斬!」

 振り上げられた2本の腕に風と電撃の刃が直撃し、その腕が宙を舞った。

「ぬ"ぅっ!?」

〈逝ったああああああ!!〉
〈楽勝じゃん!〉
〈この画角はいいな……〉
〈尻が?〉
〈もちろん〉
〈何の話www〉
〈ボスの話してなくて草〉
〈もう攻撃方法無いやろ武者ボスw〉


「が、あ、あ……くやしきかな」


 膝をつく武者。ヤツは全てを諦めたように項垂れた。


「終わりだ!!」


 トドメの一撃を放つ。再び放たれた波動斬。その風の刃が武者を捉え──。


「おまエたちノすキるもラった」


 風の刃が直撃する寸前、ポツリと呟く。それと同時に武者の体が液体・・のような形となり、周囲へと飛び散った。


「何っ!?」


〈!?!?!?〉
〈は?え?〉
〈水になったんだ!?〉
〈スライム!?〉
〈武者やったやんけ!?〉
〈擬態か:wotaku〉
〈擬態!?〉


 飛び退く間も無く発せられた液体が、俺とミナセに直撃する。

「が……っ!?」

「う!? な、何これ!?」


 胸にまとわりついたドロリとした透明な物体。掴もうとしても指が液体をすり抜けるだけで全く捉えられない。

 くっ、引き剥がそうとしても取れない……っ!


「よイすきルはあツめる」


 突然、胸の液体が猛烈な熱を発する。胸を焼かれるような痛み。それと同時に全身から力が抜けるような感覚に襲われる。


「ぐあああああああ!?」
「きゃあああああああ!!」


 胸にまとわりついていた液体は光を発すると、すぐに離れ武者がいた場所へと戻って行く……液体が集約していく。


「がっ……はぁ……はぁ……なんだ、今のは?」

「う、ひ、人みたいな……透明なヤツが……」


 液体が人の形を形成し、顔に当たる部分に赤い球体が浮かび上がる。

 スライム人間は俺達を見据え、赤い球体を発光させた。


「ついデに記憶・・も垣間見たが、意思疎通はとれルか? あーアー。聞こエますか? こノ言葉分かっチゃう?」


〈シャベッタアアアアアアアア!?〉
〈スライム人間が喋ったんだ!?〉
〈やはりスキルイーターだったか……:wotaku〉
〈何それ!?〉
〈スライム族の妨害系ザコ。多分このダンジョンにいたモンスター全部捕食してボスになった:wotaku〉
〈!?!!?!!?!?〉
〈そんなことあるん!?〉
〈初めて見た:wotaku〉
〈うせやろ?〉

 「ぐ……っ!? はぁはぁ……」

 クソッ。熱の余韻が……だが、体は動く。まだ戦える。

「ジーク……大丈夫?」


「ああ。ミナセ、攻撃強化を頼む。今度こそ仕留める」

「わ、分かったよ……」


 ヨロヨロと立ち上がったミナセが杖で大地を叩き、物理攻撃上昇の魔法名を告げる。


 が。



 発動に伴う魔法陣が現れない。


「え、嘘……何で魔法が使えないの?」

 何だと? 魔法が使えない?

「ふひハヒはは!」

 不気味な笑い声を上げるスライム人間。のっぺら坊の顔が笑みを浮かべる。口元が裂けているだけなのに、なぜか笑みを浮かべていると感じた。

「貴様ちゃん達のスキルは貰ったヨ、ふヒはひヒヒ! まだ完全にワタクシの物にはなってないでござるが痛め付けでじっくり捕食してあげるから覚悟しなさいヨね?」


〈喋り方キモ!?〉
〈怖いんだ!?〉
〈合成音みたいな声不気味すぎる〉
〈どんな話し方やねん〉


 スライム人間が大袈裟に両手を開く。


「ワレはスキルイーターが極限ノ進化を遂げタ者──技の支配者スキル・ルーラー!! コの渋谷の地のあるじにシて世界の捕食者ナり!」

「スキル・ルーラーだと……」

「わ、私達のスキルも奪われたってこと?」

「ソうそウ。君達の技デ蹂躙しテ屈辱を与えテやルから良い顔を見せて死んでちょうだイね」

 スキル・ルーラーが指を向けると、一瞬にしてミナセが水の球体に取り込まれてしまう。


「がぼ……っ!?」


〈ミナセちゃん!?〉
〈ヤバいって〉
〈どうすんの!?〉
〈461さんは……?〉
〈向こうでトレントと戦ってる〉
〈ヤバいじゃん!?〉
〈ミナセちゃん……死なないでぇ……〉

「ミナセ!?」

「よソ見していイのか?」

 突然目の前に現れるスキル・ルーラー。反射的にヤツへと向かってバルムンクを薙ぎ払う。しかし、水を切ったような感触だけが手元を伝い、一切ヤツには傷を与えられない。くっ……ダメージが与えられんだと……?

「無駄無駄。本気出すって決めタからもうお主程度ジゃ勝てぬ。抵抗はしテくれよ? 貴様の苦しむ顔を見なければ楽しみがなイのでな」

 ヤツの強烈な蹴りが顔面に叩き付けられる。揺れる視界。被りを振って剣撃を放つ。だが、手応えが無い。すかさずもう一撃を叩き込むがどれだけの剣撃を放っても……攻撃が、効かない。


「ぐ、ぐる゛じ……だれ゛が……」


 ミナセの苦しむ声が聞こえる。それを聞いた途端心臓が早鐘のように打つのを感じた。俺が、俺が何とかしなければミナセが……っ!?。

「うおおおお!!!」

「おっト」

 剣が避けられる。閃光が発動しないことが悔しい。こんなにも……こんなにも俺の剣は遅いのか。

「はハっ良い顔ニなって来タじゃン!」

 ヤツの体が青い光が灯った矢先、視界からスキル・ルーラーが消える。ヤツ閃光を発動したのか……悔しさを噛み締めながらヤツを捉える。斬撃を放つ。


「遅イ遅い!!」


 しかし、全てが避けられてしまう。当たってもダメージは与えられない。どうすれば……考えなければ……だが、クソ。焦りで頭が回らない……っ!

「ほらほら早くしないと相棒様が死んでしまウでありまスよ? 溶かして食べちゃうヨ。溺死させずニあらゆる苦痛を味合わセて食らうのも良いな? あの女の悲鳴聞キてぇ~」

「そんなことを……させるかぁ!!」

 全力の一撃を叩き込む。しかし、手応えは無く代わりに腹部に強烈な痛みが走り息が止まる。視線を写すと、ヤツの拳が鳩尾みぞおちに叩き込まれていた。


「が……っ……は……」


〈うあああああああ!?〉
〈ジークリード死んじゃうんだ!?〉
〈ミナセちゃんヤバいって!?〉
〈嘘だろ……〉

 ミナセの防御上昇効果が無ければ腹を貫かれていた……クソ……クソ!!! なぜ目の前の相棒が助けられないんだ!! ジークリード!! お前はこのままでいいのか!?


 視線を写す。苦しそうにもがくミナセ。ダメだ。俺は……俺は目の前で誰かを死なせる訳には行かない……っ!!

「ドうだ悔しカろう? 俺、そノ顔見るの好きなンだよね。食ってヤったモンスター達もみーんナそんナ顔すんのwww おモろwwwww」


「あ゛ああああああ!!!!」


 震える手を握りしめ、スキル・ルーラーの顔に拳を放つ。透明の中に浮かぶ赤い光……それがビカリと怪しく光り、透明な手が俺の拳を受け止めた。

「なんダ? もう力が出ヌのか? 人とハ脆い生キ物だ。だガスキルは有用だなァ。お前ら食ッたらダンジョン出ちゃお~オ前みたイなヤツ食いまくッたラ俺が最強やンけ!」


〈!!?!?!?〉
〈コイツ出て来んのか!?〉
〈モンスターが自分の意思でダンジョンを出ようとするのは初めて:wotaku〉
〈いや、冷静に解説しとる場合か!?


「そろそロ処刑と行クか。貴様ニは盗賊の私が恥をかかさレたカらな」

 スキル・ルーラーの手が俺へと伸びる。殺されるのか? こんな所で。クソ……っ!! どうやってコイツを倒せばいい!! 俺は……どうしたら……っ!!


 心が折れそうになった時、ポツリと声がした。


「ねぇ」


 振り返るスキル・ルーラー。ヤツが振り返った目の前には……。


 天王洲が杖を構えていた。


「氷結魔法《フロスト》」

「がっ……!?」


 パキパキと凍るスキル・ルーラー。ヤツが凍った瞬間、視界に鎧の男・・・が現れる。


「らぁっ!!!」


 叩き付けられるショートソード。その一撃で、粉々に消し飛ぶスキル・ルーラー。鎧が頭部に剣を叩き付けると、凍った頭部はどろりと解け、黒い影となって霧散した。

〈!!?!?!?!?〉
〈461さん!?〉
〈アイルちゃん!!〉
〈氷結魔法効くんだ!〉
〈さすがに対応力高い:wotaku〉
〈やるやんけ!〉


「ちっ。核は守りやがったか」


「鎧……お前……」


「話は後だ。アイル! ミナセを!」

「うん! アイツが砕けた影響で水球も消えたわ!」

 天王洲がミナセへと駆け寄ってその体を抱き上げる。飲み込んでいた液体を吐き出すミナセ。天王洲は彼女に残っていた回復薬を差し出した。

「半分飲んだら全部吐き出して。まだアイツの水が残ってるかもしれないから」

「ゴホッ……うん……半分はカズく……ジークに……っ!」

「分かってるわ」

 ミナセから受け取ったボトルを掴み、鎧が俺へと差し出した。

「飲め。ヤツを攻略するぞ」

「攻略……どうやって?」

 いつもと違う雰囲気の鎧。軽薄さは消え、そのフルヘルムから威圧感すら感じる。

「アイツはどれだけ強くなろうとスキルイーターに違い無い。なら、全力でヤツの弱点を突く。それにはお前達の力が必要だ」

「必要……」

4人・・なら倒せる。あのスキルに溺れてる野郎によ、教えてやろうぜ。戦いはそれだけじゃねぇって」


 鎧の男は、ヘルムの奥の瞳を光らせた。




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