461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
56 / 302

第54話 渋谷ダンジョンの真実

しおりを挟む

「よ~し! 全員に発動しちゃうよ~!」

 ミナセが金色のロッドを振り回し大地を叩く。俺達の足元に巨大な魔法陣が浮かび上がり、ミナセが物理防御上昇フィジカル・シルドの魔法名を告げる。それから数秒後、全員の体が青い光を帯びた。

「行くぞジーク! ミナセは物理上昇発動したら来い!」

「ああ!!」
「りょ~かい!!」

 アイルを見る。彼女がコクリと頷いた事を確認し四つ手首無し武者へと駆け抜ける。


「そのたてごとつらぬひてやろふ」


 四つ手武者の腕に影が現れ、通常の倍ほどのサイズの弓の形になる。黒い矢をつがえギリギリと弓を引く。


「くらへ!!」


 「氷結魔法フロスト!!」


 弓を放とうとしていた2本の腕。それがアイルの魔法によってビシリと固まる。


「……!?」

「そんな見え見えの攻撃効かないわよ!」


〈アイルちゃん!!〉
〈攻撃キャンセルした!〉
〈氷めっちゃ効くな!〉
〈ボスに氷結魔法が特効なのかも:wotaku〉
〈いけるやん!〉


 突然体が凍った事に面食らう四つ手武者。そこに盾を構えて飛び込んだ。

「うおおおおおおお!!」

「させぬ!!」

 残った腕で2本の刀を叩きつける四つ手武者。その切先が盾に叩きつけられる。衝撃が全身を伝い、地面にヒビが入る。


 デカくなって威力も上がってるな。ミナセの防御上昇無かったら受け切れなかったぜ。


「ジーク!!」


 叫んだ瞬間、背後のジークが飛び上がる。閃光によって加速した男が四つ手武者の懐へと飛び込む。

「波動斬!!」

 ジークの風と電撃の入り混じった刃が腕の1本を捉える。丸太のような腕が跳ね飛ばされ空中を舞った。

〈早いwww〉
〈腕4本の意味ね~www〉
〈見掛け倒しやんけ〉
〈うわ…渋谷のボス弱すぎ…?〉
〈懐かしw〉
〈全然分かんないんだ!〉


「ギャアアアアアァァァァ!?」


 腕の1本を失った武者が暴れ回る。凍った腕を叩き付け、腕の自由を取り戻し、残った3本の腕がジークへ迫る──。


「しねえええええええ!!!!」

「錯乱したか!」


 2本の腕から放たれる斬撃。その全てを紙一重で交わすジーク。次の攻撃のチャンスを伺うように愛剣を構えた次の瞬間、ロッドを構えたミナセがジークの前に飛び込む。ロッドを操り、武者の斬撃・その軌道を巧みに逸らしていく。

「ジーク! 私が抑えるから!」

「助かる!」

 ミナセが斬撃を弾いたタイミングに合わせるようにジークが波動斬を放つ。その斬撃がもう1本の武者の腕を空中へ跳ね飛ばした。


「ぐおおおおおおお!?」


〈やべえええ!!!〉
〈腕2本……普通の武者になっちゃったねぇw〉
〈大した事なかったな〉
〈みんな強いんだ!〉
〈アングルが甘い。尻が見えん〉
〈女ヲタさん所望してるやんけ〉


 武者が手を挙げると、5体のトレントが現れる。それを盾にした武者は後ろへ大きく飛び退き、俺達が登った物とは別のエスカレーターへと走って行く。あそこだけ障壁が解除されている。アイツ……自分だけ下の階に逃げるつもりか。


「鎧達はトレントを! 俺達はヤツを追い詰める!」

「あ! ジーク!? 待ってよ~!」


 ジークとミナセが武者を追って行き、2台のドローンが2人の後ろへピタリとついて行く。それを横目にアイルが駆け寄って来た。



「どうしたのヨロイさん? トレント達が来てるわよ!」

 アイルが杖をトレントへと構えた瞬間、トレントの姿がぼんやりと揺れたような気がした。


「……なんか変だ。ちょっと待て」


 現れたトレント達は俺達がいるのにも関わらずぼんやりと立ち尽くすだけ。さっきまでのトレントなら襲いかかって来たはずだ。


「うおおお!!」


 その内の1体をショートソードで一閃する。すると、トレントは掻き消えるように消え去ってしまった。


「な、何これ……? 偽物?」

「幻影か」


 他の4体も同じ。ってことはコイツら逃げる為のダミーってことか。だけど、なんでそんなことを……。


 エスカレーターを覗き込むがボスもジーク達も姿が無い。うっすら聞こえる戦闘音。10階の展示エリアに逃げ込んだのか。


 それにしても、先程の戦闘……。


 俺が戦った時はもっと太刀筋が洗練されていた。1対多とはいえ、優勢すぎる。なんだ? この違和感は。


 違和感に急かされるようにジーク達の元へ走る。


「このエスカレーター長いわねうっとうしい!」


 苦言を言うアイルとエスカレーターを駆け降りていると、先程のミナセの言葉が浮かんだ。


 ──あの松と渋谷の都市伝説、関係あるんじゃないかって。


 ミナセが探索者用スマホで調べた所によると人喰い松の都市伝説は比較的古い物らしい。古い都市伝説、武者、盗賊……歴史? 記憶……か。それに炎の効かないトレント、影のように現れる武器、そして幻影……。


 急激に頭の中でピースが埋まる。今回のダンジョンに起きた不可解な現象……あれは元々渋谷にいた全てのモンスター・・・・・・・・の能力・・・があれば可能なんじゃ無いのか?


 元々渋谷にいたモンスターは、シャドウバットに記憶虫メモリー・バグ幻影騎士ミラージュナイト人形使いパペッター、スキルイーターに分裂ディヴィジョンスライム。

 シャドウバットは影のように周囲に溶け込んで移動する。記憶虫は対象の記憶を読み取り精神攻撃を。幻影騎士は敵に幻影を見せ、人形使いは傀儡人形を操って攻撃する。スキルイーターは対象の技や能力を一時的に使用不可にしてコピー、分裂スライムは名前の通り分裂し、増殖する。


 今の現象を起こせるモンスターが1体だけ存在する。それは……。


「スキル、イーター」


「え、どうしたのヨロイさん」

「ヤバイぞ。このダンジョンはやっぱ生態系が変わっていたんだ」

「どういうこと?」

「元々渋谷に存在していた敵一覧を見たろ? その中のスキルイーターが他のモンスターを全部食ったんだよ。自分の体に取り込めば、その能力は永久に使えてもおかしくない」

「じゃあ……あの武者は?」


「スキルイーターが擬態した姿だ」

 アイルの頭に疑問符が浮かぶ。当然だよな。俺もそんなこと考えもしなかった。だが……可能なはずだ。全ての能力を使いこなせば。

「記憶虫がこの土地の歴史記憶でも吸ったんだろ。だからトレントが松の姿をしていた。スライムの能力で分裂して……このダンジョンにいたモンスターは全部スキルイーター1体が分裂した姿だったんだよ」

「い、1体……?」

「あの四つ手武者になる時、影が集まるのを見たろ? 分裂した体が本体に戻ろうとしてたんだ」

 だが、そんなことより問題がある。スキルイーターはスライム種の不定形モンスター。ってことは……今のあの武者は人型である意味が無い。腕を飛ばした事で俺達が有利だというのは幻想だ。スキルイーターの狙いは……。

「急ぐぞアイル! ジーク達をヤツから引き離すんだ!」


 アイルに言った直後。


「ぐあああああああ!?」
「きゃあああああああ!!」


 ジーク達の叫びがビル内に響き渡った。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...