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第53話 渋谷の主
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盗賊を倒した後、ジークに高濃度回復薬を使い、最上階を目指した。
ジークは休ませ、アイルの魔法とミナセを前衛に。ミナセの防御向上のおかげかジークの傷は想像以上に軽く、最上階に着く頃にはすっかり体力は回復しているようだった。
「この先がボスが待つ11階。……これで魔力回復薬は最後ね」
一度配信を中断し、アイルとミナセが手にしていたビンに口を付ける。ここに来るまで想像以上にトレント達の抵抗が激しかった。魔力回復はこれで最後。体力回復薬もあと1本。この条件で俺達はボスに勝たなければならない。
「でも腹立つわよね、魔法障壁が帰り道塞いでるなんて。これじゃ一度戻って体制を立て直すこともできないじゃない」
アイルがため息を吐く。ここのボスは探索者を弱らせてから戦いたいらしい。どうにも慎重なヤツだな。
「ねぇみんな、ちょっと聞いて」
ミナセが真剣な表情で俺達を見る。
どうしたんだミナセのヤツ。何か思い詰めたような顔して。
「実は……さっき盗賊と戦う前に気付いたことがあるんだ」
気付いたこと?
……。
ミナセが話す。コメントに書かれた渋谷の都市伝説の事を。
「──ってこんなコメントがあって。あの松と渋谷の都市伝説、関係あるんじゃないかって」
都市伝説と聞いてジークが困惑した表情になる。
「なんだそれは……なぜダンジョン内のモンスターと外の都市伝説が関係を?」
「うぅん……私は関係あると思うわ。だってあのトレント達、どう見ても松みたいな姿してるじゃない」
アイルもジークもうんうんと腕を組んで唸る。だが、結論は出せないようだった。それで言うとあの武者や盗賊も関係あるのか? 渋谷という土地に関係ある現象ってことか?
「考え過ぎかな。でもなーんか無関係には思えなくて~」
ミナセが頬を掻く。本来居ないはずのトレント……それが松の姿をしている理由。武者と盗賊という和風の敵……何かあるなこのダンジョン、通常ではない何かが起きている。だが糸口はあっても、みんな確信には至れないようだ。
ここで悩んでいても仕方ないか。とにかくボスに進むしかないな。
◇◇◇
止まったエスカレーターから11階に上がると、そこはジークのシミュレーションで見た通りのマップだった。
廃棄されたコンビニにカフェ、オフィスエリアへの入り口。それに窓ガラスの前面に広がる渋谷の街……ここにいるとダンジョンにいるとは思えないな。魔法障壁の影響でダンジョン化する前の内装がそのまま保存されているみたいだ。
〈やっとボスか~〉
〈楽しみなんだ!〉
〈どんなボス?〉
〈てか461さん達勝てるんか?〉
〈ジークリードボコられてたしなぁ……〉
「登れるのはここまでか。どこかにボスがいるはずだが……」
「それっぽいの居ないよねぇ」
警戒しながら周囲を見渡すジークとミナセ。確かに広いフロア内にボスらしき影は見当たらない。
「また魔法陣があるかもしれないな」
ふと後ろを見ると、アイルがピタリと俺の背後についていた。
(ボス戦は役に立つから!)
(なんで小声なんだよ?)
(視聴者のみんなに聞こえないように。絶対相棒としてヨロイさんのことサポートするからね?)
アイルのヤツ気合い入ってるな。武者と盗賊の時のこと気にしてるのかも。
そんなことを考えていると、フロアの中央にボワリと魔法陣が浮かび、その中から鎧武者が現れた。首を抱えた首なし武者。連絡通路で俺が戦ったヤツが。
〈出たwww〉
〈首無し武者やんけw〉
〈やっぱアイツボスだったのか〉
〈でもこれなら行けそう?〉
〈……何かありそう:wotaku〉
「やはりここへとたどりつきたるか。われもちからをたくわえておくばあいではなし」
武者が首を投げると、その兜が空中にフワリと浮いた。
〈!?!!?!??!?〉
〈え、なんで浮いてんの?〉
〈ウォタクさん知ってるぅ?〉
〈初めて見た:wotaku〉
〈え〉
〈ウォタクさん知らない敵!?〉
〈勝てんの?〉
〈アイルちゃん……死なないでぇ……〉
「きさまたちのわざはすべてわがこうべにのこふておる。われにかつことはかなわぬ」
武者の首が言った直後、無数の影が首と体に集約していく。首と身体が再び繋がれる。鎧武者の体が巨大となり、背中から新たに2本の腕が現れた。
〈は!?〉
〈デカくなったんだ!?〉
〈腕4本とかw〉
〈ボス感出てきたなw〉
〈え?強そうじゃね?〉
さらに刀が現れ、4本の刀を持った首無し武者が俺達の前に姿を現した。
四つ手の武者が叫ぶ。それを見たアイルが震えた手で俺の腕を掴む。
「4本の刀……厄介そうね」
「お、ビビッてても頭回るようになって来たな」
「何よ真剣に言ってるのに!」
もう一度ヤツの体を見る。4本の刀、4本の腕。3メートルはある体。今までのボスよりは小さいが人型。だが恐らく攻撃方法も多いだろうな。どう戦う? どうやってアイツを攻略する?
ヤバいな……これは……。
「ヨロイさん?」
「初めて戦う相手を攻略する、か……燃えて来たぜ!!」
脳内に何かの物質が分泌されている気がする。全身の血液が沸騰するような感覚なのに冷静な思考。ダンジョンに初めて挑んだことを思い出すなぁ。
〈!!?!!?!!?〉
〈あ~461さんらしいわ〉
〈頭おかしいんだ!すごいんだ!〉
〈461さん死んじゃうかもねぇ……〉
〈まーたアンチ湧いて来たよ〉
〈モンスターなのは間違い無いはず:wotaku>
〈そらな。首落とされて生きてる人間いる訳無いやろ〉
〈じゃあ攻撃パターン決まってるのか?〉
「コメントすごい流れて来てる~! モンスターなのは間違い無いって!」
ミナセが虚空を目で追う。俺には見えないが、視聴者ってヤツらも興奮してんのかも。
「だがどう攻める? 鎧、策はあるのか?」
策か。昔から初見ボス戦の戦い方は決まっている。
「ミナセ。全員に物理上昇。それと自分に物理攻撃上昇頼む。アイルは敵の攻撃を初級魔法で潰してくれ。手数優先だ」
「おっけ~」
「分かったわ」
「俺が攻撃を防ぐ。ミナセとジークは攻撃頼むぜ」
「波動斬は?」
「隙を見て使ってくれ。全力で行くぞ」
初見ボスは攻撃を加えながら相手の特性を読み解く……ボスと自分とのコミュニケーションみたいなもんだ。回復が無い今、俺が防御に回ってジーク達を守り、ヤツを見極める。これが最善だ。
「きさまたちすべてほふってやろう!!」
四つ手の首無し武者が両手を開き、雄叫びを上げた。
ジークは休ませ、アイルの魔法とミナセを前衛に。ミナセの防御向上のおかげかジークの傷は想像以上に軽く、最上階に着く頃にはすっかり体力は回復しているようだった。
「この先がボスが待つ11階。……これで魔力回復薬は最後ね」
一度配信を中断し、アイルとミナセが手にしていたビンに口を付ける。ここに来るまで想像以上にトレント達の抵抗が激しかった。魔力回復はこれで最後。体力回復薬もあと1本。この条件で俺達はボスに勝たなければならない。
「でも腹立つわよね、魔法障壁が帰り道塞いでるなんて。これじゃ一度戻って体制を立て直すこともできないじゃない」
アイルがため息を吐く。ここのボスは探索者を弱らせてから戦いたいらしい。どうにも慎重なヤツだな。
「ねぇみんな、ちょっと聞いて」
ミナセが真剣な表情で俺達を見る。
どうしたんだミナセのヤツ。何か思い詰めたような顔して。
「実は……さっき盗賊と戦う前に気付いたことがあるんだ」
気付いたこと?
……。
ミナセが話す。コメントに書かれた渋谷の都市伝説の事を。
「──ってこんなコメントがあって。あの松と渋谷の都市伝説、関係あるんじゃないかって」
都市伝説と聞いてジークが困惑した表情になる。
「なんだそれは……なぜダンジョン内のモンスターと外の都市伝説が関係を?」
「うぅん……私は関係あると思うわ。だってあのトレント達、どう見ても松みたいな姿してるじゃない」
アイルもジークもうんうんと腕を組んで唸る。だが、結論は出せないようだった。それで言うとあの武者や盗賊も関係あるのか? 渋谷という土地に関係ある現象ってことか?
「考え過ぎかな。でもなーんか無関係には思えなくて~」
ミナセが頬を掻く。本来居ないはずのトレント……それが松の姿をしている理由。武者と盗賊という和風の敵……何かあるなこのダンジョン、通常ではない何かが起きている。だが糸口はあっても、みんな確信には至れないようだ。
ここで悩んでいても仕方ないか。とにかくボスに進むしかないな。
◇◇◇
止まったエスカレーターから11階に上がると、そこはジークのシミュレーションで見た通りのマップだった。
廃棄されたコンビニにカフェ、オフィスエリアへの入り口。それに窓ガラスの前面に広がる渋谷の街……ここにいるとダンジョンにいるとは思えないな。魔法障壁の影響でダンジョン化する前の内装がそのまま保存されているみたいだ。
〈やっとボスか~〉
〈楽しみなんだ!〉
〈どんなボス?〉
〈てか461さん達勝てるんか?〉
〈ジークリードボコられてたしなぁ……〉
「登れるのはここまでか。どこかにボスがいるはずだが……」
「それっぽいの居ないよねぇ」
警戒しながら周囲を見渡すジークとミナセ。確かに広いフロア内にボスらしき影は見当たらない。
「また魔法陣があるかもしれないな」
ふと後ろを見ると、アイルがピタリと俺の背後についていた。
(ボス戦は役に立つから!)
(なんで小声なんだよ?)
(視聴者のみんなに聞こえないように。絶対相棒としてヨロイさんのことサポートするからね?)
アイルのヤツ気合い入ってるな。武者と盗賊の時のこと気にしてるのかも。
そんなことを考えていると、フロアの中央にボワリと魔法陣が浮かび、その中から鎧武者が現れた。首を抱えた首なし武者。連絡通路で俺が戦ったヤツが。
〈出たwww〉
〈首無し武者やんけw〉
〈やっぱアイツボスだったのか〉
〈でもこれなら行けそう?〉
〈……何かありそう:wotaku〉
「やはりここへとたどりつきたるか。われもちからをたくわえておくばあいではなし」
武者が首を投げると、その兜が空中にフワリと浮いた。
〈!?!!?!??!?〉
〈え、なんで浮いてんの?〉
〈ウォタクさん知ってるぅ?〉
〈初めて見た:wotaku〉
〈え〉
〈ウォタクさん知らない敵!?〉
〈勝てんの?〉
〈アイルちゃん……死なないでぇ……〉
「きさまたちのわざはすべてわがこうべにのこふておる。われにかつことはかなわぬ」
武者の首が言った直後、無数の影が首と体に集約していく。首と身体が再び繋がれる。鎧武者の体が巨大となり、背中から新たに2本の腕が現れた。
〈は!?〉
〈デカくなったんだ!?〉
〈腕4本とかw〉
〈ボス感出てきたなw〉
〈え?強そうじゃね?〉
さらに刀が現れ、4本の刀を持った首無し武者が俺達の前に姿を現した。
四つ手の武者が叫ぶ。それを見たアイルが震えた手で俺の腕を掴む。
「4本の刀……厄介そうね」
「お、ビビッてても頭回るようになって来たな」
「何よ真剣に言ってるのに!」
もう一度ヤツの体を見る。4本の刀、4本の腕。3メートルはある体。今までのボスよりは小さいが人型。だが恐らく攻撃方法も多いだろうな。どう戦う? どうやってアイツを攻略する?
ヤバいな……これは……。
「ヨロイさん?」
「初めて戦う相手を攻略する、か……燃えて来たぜ!!」
脳内に何かの物質が分泌されている気がする。全身の血液が沸騰するような感覚なのに冷静な思考。ダンジョンに初めて挑んだことを思い出すなぁ。
〈!!?!!?!!?〉
〈あ~461さんらしいわ〉
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〈まーたアンチ湧いて来たよ〉
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〈そらな。首落とされて生きてる人間いる訳無いやろ〉
〈じゃあ攻撃パターン決まってるのか?〉
「コメントすごい流れて来てる~! モンスターなのは間違い無いって!」
ミナセが虚空を目で追う。俺には見えないが、視聴者ってヤツらも興奮してんのかも。
「だがどう攻める? 鎧、策はあるのか?」
策か。昔から初見ボス戦の戦い方は決まっている。
「ミナセ。全員に物理上昇。それと自分に物理攻撃上昇頼む。アイルは敵の攻撃を初級魔法で潰してくれ。手数優先だ」
「おっけ~」
「分かったわ」
「俺が攻撃を防ぐ。ミナセとジークは攻撃頼むぜ」
「波動斬は?」
「隙を見て使ってくれ。全力で行くぞ」
初見ボスは攻撃を加えながら相手の特性を読み解く……ボスと自分とのコミュニケーションみたいなもんだ。回復が無い今、俺が防御に回ってジーク達を守り、ヤツを見極める。これが最善だ。
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