461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
55 / 302

第53話 渋谷の主

しおりを挟む
 盗賊を倒した後、ジークに高濃度回復薬を使い、最上階を目指した。

 ジークは休ませ、アイルの魔法とミナセを前衛に。ミナセの防御向上のおかげかジークの傷は想像以上に軽く、最上階に着く頃にはすっかり体力は回復しているようだった。

「この先がボスが待つ11階。……これで魔力回復薬は最後ね」

 一度配信を中断し、アイルとミナセが手にしていたビンに口を付ける。ここに来るまで想像以上にトレント達の抵抗が激しかった。魔力回復はこれで最後。体力回復薬もあと1本。この条件で俺達はボスに勝たなければならない。

「でも腹立つわよね、魔法障壁が帰り道塞いでるなんて。これじゃ一度戻って体制を立て直すこともできないじゃない」

 アイルがため息を吐く。ここのボスは探索者を弱らせてから戦いたいらしい。どうにも慎重なヤツだな。


「ねぇみんな、ちょっと聞いて」


 ミナセが真剣な表情で俺達を見る。

 どうしたんだミナセのヤツ。何か思い詰めたような顔して。

「実は……さっき盗賊と戦う前に気付いたことがあるんだ」

 気付いたこと?

 ……。

 ミナセが話す。コメントに書かれた渋谷の都市伝説の事を。

「──ってこんなコメントがあって。あの松と渋谷の都市伝説、関係あるんじゃないかって」

 都市伝説と聞いてジークが困惑した表情になる。

「なんだそれは……なぜダンジョン内のモンスターと外の都市伝説が関係を?」

「うぅん……私は関係あると思うわ。だってあのトレント達、どう見ても松みたいな姿してるじゃない」

 アイルもジークもうんうんと腕を組んで唸る。だが、結論は出せないようだった。それで言うとあの武者や盗賊も関係あるのか? 渋谷という土地・・に関係ある現象ってことか?

「考え過ぎかな。でもなーんか無関係には思えなくて~」

 ミナセが頬を掻く。本来居ないはずのトレント……それが松の姿をしている理由。武者と盗賊という和風の敵……何かあるなこのダンジョン、通常ではない何かが起きている。だが糸口はあっても、みんな確信には至れないようだ。

 ここで悩んでいても仕方ないか。とにかくボスに進むしかないな。


◇◇◇

 止まったエスカレーターから11階に上がると、そこはジークのシミュレーションで見た通りのマップだった。

 廃棄されたコンビニにカフェ、オフィスエリアへの入り口。それに窓ガラスの前面に広がる渋谷の街……ここにいるとダンジョンにいるとは思えないな。魔法障壁の影響でダンジョン化する前の内装がそのまま保存されているみたいだ。

〈やっとボスか~〉
〈楽しみなんだ!〉
〈どんなボス?〉
〈てか461さん達勝てるんか?〉
〈ジークリードボコられてたしなぁ……〉

「登れるのはここまでか。どこかにボスがいるはずだが……」
「それっぽいの居ないよねぇ」

 警戒しながら周囲を見渡すジークとミナセ。確かに広いフロア内にボスらしき影は見当たらない。

「また魔法陣があるかもしれないな」

 ふと後ろを見ると、アイルがピタリと俺の背後についていた。

(ボス戦は役に立つから!)

 (なんで小声なんだよ?)

 (視聴者のみんなに聞こえないように。絶対相棒としてヨロイさんのことサポートするからね?)

 アイルのヤツ気合い入ってるな。武者と盗賊の時のこと気にしてるのかも。

 そんなことを考えていると、フロアの中央にボワリと魔法陣が浮かび、その中から鎧武者が現れた。首を抱えた首なし武者。連絡通路で俺が戦ったヤツが。

〈出たwww〉
〈首無し武者やんけw〉
〈やっぱアイツボスだったのか〉
〈でもこれなら行けそう?〉
〈……何かありそう:wotaku〉


「やはりここへとたどりつきたるか。われもちからをたくわえておくばあいではなし」


 武者が首を投げると、その兜が空中にフワリと浮いた。


〈!?!!?!??!?〉
〈え、なんで浮いてんの?〉
〈ウォタクさん知ってるぅ?〉
〈初めて見た:wotaku〉
〈え〉
〈ウォタクさん知らない敵!?〉
〈勝てんの?〉
〈アイルちゃん……死なないでぇ……〉


「きさまたちのわざはすべてわがこうべにのこふておる。われにかつことはかなわぬ」


 武者の首が言った直後、無数の影が首と体に集約していく。首と身体が再び繋がれる。鎧武者の体が巨大となり、背中から新たに2本の腕が現れた。

〈は!?〉
〈デカくなったんだ!?〉
〈腕4本とかw〉
〈ボス感出てきたなw〉
〈え?強そうじゃね?〉


 さらに刀が現れ、4本の刀を持った首無し武者が俺達の前に姿を現した。

 四つ手の武者が叫ぶ。それを見たアイルが震えた手で俺の腕を掴む。

「4本の刀……厄介そうね」

「お、ビビッてても頭回るようになって来たな」

「何よ真剣に言ってるのに!」


 もう一度ヤツの体を見る。4本の刀、4本の腕。3メートルはある体。今までのボスよりは小さいが人型。だが恐らく攻撃方法も多いだろうな。どう戦う? どうやってアイツを攻略する?


 ヤバいな……これは……。


「ヨロイさん?」


「初めて戦う相手を攻略する、か……燃えて来たぜ!!」


 脳内に何かの物質が分泌されている気がする。全身の血液が沸騰するような感覚なのに冷静な思考。ダンジョンに初めて挑んだことを思い出すなぁ。


〈!!?!!?!!?〉
〈あ~461さんらしいわ〉
〈頭おかしいんだ!すごいんだ!〉
〈461さん死んじゃうかもねぇ……〉
〈まーたアンチ湧いて来たよ〉
〈モンスターなのは間違い無いはず:wotaku>
〈そらな。首落とされて生きてる人間いる訳無いやろ〉
〈じゃあ攻撃パターン決まってるのか?〉


「コメントすごい流れて来てる~! モンスターなのは間違い無いって!」

 ミナセが虚空を目で追う。俺には見えないが、視聴者ってヤツらも興奮してんのかも。

「だがどう攻める? 鎧、策はあるのか?」


 策か。昔から初見ボス戦の戦い方は決まっている。


「ミナセ。全員に物理上昇。それと自分に物理攻撃上昇頼む。アイルは敵の攻撃を初級魔法で潰してくれ。手数優先だ」

「おっけ~」
「分かったわ」

「俺が攻撃を防ぐ。ミナセとジークは攻撃頼むぜ」

「波動斬は?」

「隙を見て使ってくれ。全力で行くぞ」


 初見ボスは攻撃を加えながら相手の特性を読み解く……ボスと自分とのコミュニケーションみたいなもんだ。回復が無い今、俺が防御に回ってジーク達を守り、ヤツを見極める。これが最善だ。
 

「きさまたちすべてほふってやろう!!」



 四つ手の首無し武者が両手を開き、雄叫びを上げた。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...