461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第62話 天才ダンジョン配信者、モモチー

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 ~天王洲アイル~

 御徒町駅おかちまちえきから山手線に乗って、大井町でりんかい線へ乗り換える。しばらく電車に揺られていると、見覚えのある名前が車内モニターに映った。

『間も無く天王洲アイル・・・・・・、天王洲アイル駅に到着致します』

 ……。

 何でお台場じゃなくて隣の東京テレポート駅に集合なのよ。嫌がらせ?

(アレ……天王洲アイルじゃないか?)
(え、別人だろ?)
(いや、ブルーの髪に紫のメッシュの髪だぜ? 絶対天王洲アイルだって)
(フード被ってるのに良く分かるな)
(ファンだからな!)
(厄介なファンだな……)
(でも天王洲アイル駅で天王洲アイル見るってwレアwww)

 ぼうっと案内表示を見ていると、大学生くらいの男の人達がヒソヒソと話しているのが聞こえた。

 ……やっぱり。私のこと知ってる人にバレたらこうなるって。フード被ってマスクもして来たけどダメね。


 確かに駅名から付けたけど、モモチーがなんでこんなことするのか謎だわ。



◇◇◇

「うわぁ……」

 東京テレポートを降りると、広いロータリーに出た。
 看板にはタクシー乗り場のマーク。本来だったらタクシーがいるはずの空間は、ダンジョンの影響でただ広いだけの道路になっていた。奥に見える寂れた建物が妙に哀しい。私が生まれたばかりの頃は観光地として有名だったって聞くけど、見る影も無いな。

 ダンジョンが現れなかったら私もここに遊びに来たりしたのかな?


 ……お父さんと一緒に。


 あ、そんなこと考えてる場合じゃない。お台場ダンジョンの入り口には大型の巨人モンスターがいるんだ。そこまで強くないらしいけど気合い入れないと。


 そんなことを考えていると、遠くから妙な声が聞こえた。低いエンジン音に、何これ? 笑い声?


 オーホッホッホッホ!!


 え? この声、どこから聞こえるの?


 目を凝らすと、遠くから黒い車体にゴテゴテした装飾をした世紀末みたいな車が走って来る。その窓から女の子が体を乗り出す。妙に露出度の高い鎧にロングソードを手に持った……モモチー!?


「時間通りでしたわねアイルさん! 早速攻略開始致しましてよ!」


「ギギギギギ!?」


 攻略って……なんで車!? しかも車の前に緑色の小さな人みたいな……ゴブリン!? モンスターが貼り付いてるし!? 何あれ!?


 目の前に来た車が急ブレーキを踏む。甲高い音と一緒に張り付いていたゴブリンが吹き飛ばされる。


「ギギ~!?」


「オーホッホッホ!! ワタクシの前に立ちはだかった愚か者はブチ殺してやりませんとねぇ!!」


 車から飛び出したモモチーが剣を高く上げる。


「フレイムエッジ!!」


 ボワっと火が付くロングソードの切先。え、モモチーって魔法剣スキル使うの?

 授業で習ったことがある。魔法剣のスキルはその名の通り、武器に属性を付与し威力を高める技。射程を殺す代わりに通常の初級魔法よりも威力が高くなるらしい。

 うわ~モモチーの攻略動画見ておくべきだったわね……自分のことばっかり考えてた。


 燃え盛る剣を振りかぶったまま、モモチーはゴブリンに飛び込んだ。


「お逝きなさいっ!!」

「ギャアアア!?」


 燃えながら真っ二つにされるゴブリン。モモチーが私の方へ振り返るとメロンみたいな胸がバルンバルン揺れた。制服の時は気付かなかったけど何よそれ……何故かマウント取られた気分。

 ……腹立つわね。

「オーホッホッホ!! ワタクシの手にかかりましたらクソ雑魚ゴブリンなんて滅⭐︎殺ですわ! 高輪たかなわ! 田町たまち! 品川しながわ! 早く天王洲アイルを車に乗せなさい!」


「「「ウェーイ!!!」」」


「ちょ!? 持ち上げないでよ!?」

 いつの間にか車から出ていた男達に持ち上げられて、ゴテゴテした車の後部座席に放り込まれる。全員車に乗り込むと、最後にモモチーが私の隣に腰を下ろした。

「高輪! 発進させなさい! お台場ダンジョンに突撃して差し上げて!」


「ウェイ!!」


 急発進する車。それはロータリーをぐるりと1周すると歩道へと乗り上げた。ガタガタ揺れる車体、無茶苦茶な走りに車が壊れそう。


「ちょ!? 何この車!? この人達誰!?」


「ワタクシの護衛探索者『高輪ゲートガーディアンズ』です。お父様のリサーチによるとこのダンジョン入り口には巨人タイプのモンスターがおりますの。それを抹⭐︎殺する為に車を用意して来たのですわ!」

「はぁ!? 頭おかしいんじゃないのアンタ!?」


「オーホッホッホ!! 凡人のアナタは黙っておりなさい!」


 車が加速する。すると目の前に巨人が現れた。

 白い体に額に一本角の巨人型モンスター。何あいつ!? 想像よりもずっと大きいじゃない! 建物と同じくらいの大きさ!?


「で、デカすぎる……!?」


「全高20メートルの一角獣巨人……だけど心配無用ですわ。あんなものただのハッタリにすぎませんの!」


「アーアーアーアー!!!」


「何この声!? このオーケストラみたいな声があいつの声なの……っ!?」


「やたら壮大に見せたがる敵ですわね! 田町! 車に物理防御上昇魔法をありったけ重ねがけなさい! 品川は物理攻撃上昇を! 高輪はアクセル全開!!!」


「「「ウェーイ!!!」」」


「ヒィィィィ!!?」


 車の速度が急激に上がる。体に襲いかかる重力。街路樹の隙間を縫う様に走る車。恐る恐る前を見ると一角獣巨人の拳がこちらを殴り付けようとしていた。


「アーアーアーアーアアアーア、アーアーアアー!!!」


「ちょ!? 大丈夫なの!?」

「天才ダンジョン配信者モモチーを信じなさい!!」


 これのどこが天才よ!?


 目の前に拳が迫る。巨人の図体で太陽がさえぎられ、目の前が暗くなった。


「きゃああああああああ!?」


 ダメ! 直撃する──!?


 目を閉じそうになった直後、加速した車が一角獣巨人のスネに体当たりした。


「ア"ッ!?」


 後ろで人形のように高速回転する一角獣巨人。巨人は、そのまま頭から地面へ激突し、ゴキリという嫌な音が周囲に響き渡った。


 急ブレーキをかける車。モモチーが飛び出して巨人を確認すると、巨人の全身からレベルポイントの光が溢れ出し、私達のスマホに吸収された。


「オーホッホッホ!!! ワタクシの作戦通り! このままお台場ダンジョンに突入しましてよ!!」


 馬鹿笑いするモモチー。彼女が笑う度にその胸がバルンバルン揺れる。どこからやって来たのか、彼女の肩にドローンがフワリと着地した。それと同時に私の視界にもコメントが流れて来る。モモチーのヤツ、勝手に私にコメント見えるようにしたわね。


〈デッッッッッッ!?〉
〈馬鹿すぎワロタw〉
〈車潰れてるしw〉
〈金かかりすぎやろwww〉
〈さすがモモチー!〉
〈もはやダンジョン攻略じゃないwww〉
〈はぁはぁ……モモチーの鎧は素晴らしいんだ!〉
〈新規もいるな~〉


「配信もバッチリ! 自分の頭脳が恐ろしくなりますわね!」


「「「ウェーイ!!!」」」


 モモチーと高輪ゲートガーディアンズが馬鹿笑いしていると、突然彼女の探索者用スマホが鳴った。


「え? 真田先生?」

 モモチーがスマホを耳に当てる。

「はい桃園ですわ。真田先生も見てくれていたのですわね!? え? 車使用禁止? ゲートガーディアンズも? そんなこと何も……え、このまま突入したら単位無し? そんなっ!?」

 モモチーは膝から崩れ落ちた。



 ……。



 当たり前よ。



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