461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第63話 アイルの理由

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 一旦モモチーが配信中断し、高輪ゲートガーディアンズが撤収した後、お台場ダンジョンへと入った。

 お台場ダンジョンはショッピングモールがダンジョン化した姿をしていた。中に入ってフロアマップを見る。

 今いるのはフードコートだった場所か。六本木みたいな現代の建物が残っているダンジョンみたいね。


「全く! あの車と高輪ゲートガーディアンズを雇うのにどれだけかかったか分りますの!? これじゃあボス戦まで派手な絵が写せないじゃない! ブツブツ……」

「あ、あの探索者達雇われだったのね……」

 なぜか全員「ウェーイ」しか言わないし、どうやって見つけて来たのあんなヤツら。

「はぁ……せっかく配信用装備で来ましたのに……仕方ないですわ。配信再開はボス戦に致しましょう」

「絶対普通に攻略しなさいよね!?」

「分かっておりますわ。まずはこのダンジョンに火を放って中のモンスターを丸焼きに」

「ダメええええぇぇぇぇ!! アンタ今までどんな攻略して来たのよ!?」

「え? 50人の探索者を雇ってボスをボコしたり」

 50人って……どれだけお金かけてるのよ。ていうかそのボスかわいそ過ぎる……。

「川を決壊させてダンジョンを流し込んだりもしましたわね」

「迷惑かけすぎでしょ!?」

「ま~流石にあの時はやり過ぎましたわ。管理局に加えて行政にも連日詰められましたわねぇ。お父様がなんとかして下さいましたが」

 モモチーのお父さん……不憫すぎる……。

「絶対絶対!! 普通に! 攻略するの! 単位貰えなくなっていいの!?」

「仕方ないですわね。それじゃあ今回は身一つの普通の攻略に勤しむと致しますわ」

 モモチーはフードコートに設置されていた椅子にドカリと座ると、大袈裟な動きで足を組んだ。この鎧もなんなの? 胸も空いてるし、パンチラどころか丸見えじゃない。

「その装備何? 肌露出しすぎて防御力ないでしょ。まともに攻略できるような装備に見えないんだけど」

「大丈夫ですわ。この鎧には150万もする上位防御魔法を符呪エンチャントしておりますの。ワタクシのお肌が見える場所もしっかり守られておりますわ♡」

「150万!? そこまでしてその装備着たかった訳!?」

「あら、殿方の目線を釘付けにするのに有効ですわよ? 桃園モモは使える物は全て使いますの。なぜかお父様は泣いておりましたが」

 モモチーの鎧をよく見る。大きく開いた胸元に露出した太もも… …しかもパンツしか履いてないような腰アーマーだし……というか何でスネとか腕はしっかり守ってるのよムカつくわね。

「ほら、もうゲートガーディアン達がいないんだから。しっかりアイルさんがエスコートしてくださいまし」

 休憩は終わったのかモモチーが立ち上がる。ロングソードをブンブン振るうと、それを背中に背負ってエスカレーターを登って行った。

 大丈夫かな……今回。


◇◇◇

 5階までダンジョンを進む。ショッピングモールの姿を残したダンジョンは複数のルートから上階に進むことができて、登るのは簡単だった。

 渋谷とは大違いね、私達だけでクリアできるダンジョンが選定されているから当然か。


 だけど、モンスターがやたらと多い。モモチーと2人だとキツイな。魔力管理しようとしてもどうしても使わなきゃいけない場面が出てしまう。


「フレイムエッジ!!」


 モモチーがロングソードを掲げると、その刀身が燃え上がり炎の剣になる。

「オーホッホッホ! 滅⭐︎殺!」

「モモチー! 無駄な魔力使わないで!」

「うるさいですわね! ワタクシはちゃんと管理しておりますのよ!」

「どこが管理よ! さっきからバカスカ使ってるじゃない!」

「ふ~ん! 聞かないですわ~!」

 カモメのようなモンスター「シーグール」を真っ二つにするモモチー。彼女が剣を背負った瞬間、新たなシーグールが彼女の背後から迫った。

「ガアアアア!!」

「危ない! 火炎魔法ブレイズ!」

「ガァ!?」

 メラメラと燃え盛るシーグール。それはレベルポイントの光を吐き出しながらモモチーにぶつかった。

「あ」

「あ“っづ!? 何するんですの!?」

「ごめんって」

「ワザとじゃないですの!? ワタクシのお肌にやけど跡でも残ったらどうしてくれるのですの!?」

「符呪あるから大丈夫でしょ」

「キ~! 減らず口を!」

 怒り狂ったモモチーがロングソードをブンブン振り回す。鼻先を掠めたロングソード。切られた私の髪がハラリと宙に舞う。

「っぶないわねぇ!? 当たったらどうしてくれるのよ!?」

「アイルさんが初めに仕掛けて来ましてよ!?」
「私はアンタを助けようとしただけよ!」
「ギャアアアアアア!!」


「ギャアアアアアって何?」
「ギャアアアアアって何ですの?」


 言い合っていたら変な声が聞こえて来る。モモチーとダンジョンの奥を見てみると、大量のシーグールがこちらに向かって来ていた。

「な、何あれ……!?」

「恐らく仲間の仇をとりに来ましたのね。シーグールは仲間意識が高いとお父様が言っておられましたから」

「冷静に言ってないで早く逃げるわよ!」


 モモチーの手を引いてフロアを駆け抜ける。


「「「「ギャアアアアア!!!」」」」


「ちょっと!? 数が増えておりますわよ!?」

「後ろ見てないでどこか逃げ込める場所探してよ!」

 あんな量に囲まれたら一瞬でやられちゃう。そしたら鳥の餌食に……うぅ、考えただけでゾッとする。

 辺りを見回す。ふと目に入ったのはブロック玩具のお店。あそこだけシャッターが閉まり切ってない。逃げ込めるかも!

「モモチー!あそこの店に逃げ込むわよ!」

「りょ、了解ですわ!」


「「「「ギャアアアアアア!!!」」」」


 後ろから迫る声を振り払うように全力で走る。半開きのシャッターの隙間。そこに滑り込み杖を外へと向ける。

「早く閉めてモモチー!!」

「分かっておりますわよ!!」
 
  モモチーがシャッターを閉める。入り込もうとするシーグール達に向けて電撃魔法を放った。


「「「「ギャアアアア!?」」」」


 バリバリと外から聞こえる音がする。一瞬の静寂の後、うるさかった鳴き声は遠くへ去って行った。

「撒けたみたいね。でもまだ近くにいるかも」

「安全が確保できるまで待機……という事ですわね」


◇◇◇

 しばらく外の様子を伺っていたけど、流石に疲れて腰を下ろす。向かいのモモチー見ると、彼女は脚を広げた無防備な座り方をしていた。

「……何その座り方。モロ見えじゃない」

「見せても良い装備ですのよ♡」

 「ですのよ♡」じゃないわよ。Deathしますのよ! く……っ! 私まで変な口調が移って来た!

 ブンブン頭を振ってお嬢様言葉を振り払う。

「なんでそこまでする訳? 女の私から見てそんなに気持ちのいい物じゃ無いんだけど?」

「……」

 急にモモチーが黙り込んで膝を抱える。彼女はジトリと私を睨むと膝に顔を埋めた。


 急に訪れた沈黙が気持ち悪い。さっきまであんなにうるさかったのに。


 声をかけようとしては止めて、また声をかけようとしてはなんと言っていいか分からなくなって、時間だけが過ぎていく。


 そしてこれ以上この話は聞かないでおこうと思った頃、モモチーがポツリと呟いた。


「……登録者が欲しいのですわ」


「登録者……って100万人もいるじゃない」

「100万人? 160万もいる貴方に言われても腹立つだけですの」


 アンタもいつもマウント取って来るでしょ!?


 という言葉をすんでのところで飲み込んだ。モモチーの表情は真剣そのもの。彼女なりに悩んでいるのかもしれない。そこで私までマイナスな事を言えば収集がつかなくなりそうだ。

「貴方は良いですわ。ワタクシの持っていない物を沢山持っておりますから」

「私が?」

 全然そんな風に思えないんだけど。

「登録者数、天才的な相棒、A級の知り合い……でもワタクシにはそんな物は無い。だから登録者数も、同接数も稼ぐ為にはお金と体を使うしか無いのですわ」

「……」

 ……確かに私は運がいい。ヨロイさんと出会っていっぱい色んな物に恵まれた。だけど、「貴方は持っている」と言われるとモヤモヤする。だってモモチーだって私が持ってない物を持ってるじゃない。

「アイルさんは有名になってどうしたいんですの?」

「え?」

「ワタクシは有名になりたい。有名になれば、誰かがワタクシのこと好きになって下さいますでしょ? 学校みたいに避けられることもなくなるかなって」

 モモチー、そんなこと考えてたのか。そう言われると、モモチーっていつも学校だと1人だな。でもそれはモモチーがすぐマウント取るから……。

「アナタも配信者やっているということは有名になりたいのですわよね?」

 モモチーがジッと見つめて来る。ごまかしたいけど適当なこと言ったら怒って来そうな雰囲気ね……。


「……私もそう変わらないわ。お父さんに見て欲しいの」

「は?」

「私のお父さん探索者なの。私が5歳の頃に家を出てそれっきり。きっと今は地方にでも行っているのね、全然連絡付かないダメな父親よ」

「え、へ、ぇ……意外に重い理由でしたのね……」

「でも見て欲しいの、大きくなった私を」

 モモチーが急にソワソワし始める。こうなるからあんまり言いたくないのよね。でも言った限りは最後まで言いたい。自分の心の整理のように、言葉を続ける。

「だからね、ダンジョン配信をやっていればお父さんにも見て貰えるかなって。私の探索者名もお父さんが言ってたのを付けたの。最後に通話した時、人の名前天王洲アイルみたいな駅があるって言ってたから」

 モモチーは何かを言いかけて、口をつぐむ。

「そんなに重く捉えないでよ。父親がいないなんて別に珍しくもないでしょ?」

「ま、まぁ……そうかもしれないですわね」

 モモチーには父親がいて、きっとモモチーの事を応援してる。でも、娘が焦って変な事をしてる様子を見てどう思っているんだろうか?

「……ねぇモモチー。お金とかそんな鎧着なくてもさ、もっといっぱい見て貰えるよ。楽しく攻略していれば」

「楽しく……」

 モモチーは一瞬考え込んだ後、ツンッと顔を背けた。

「ふ、ふんっ! そ、そんなの……アイルさんの嘘に決まってますわ!」

 ダメか……ま、仕方ないな。人の考えなんてそうそう変えられる物じゃないもんな。


 モモチーと、何となく気まずい時間を過ごした。



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