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第64話 成長するアイル 【ボス戦配信回】
しおりを挟む30分ほどブロック玩具の店に身を隠し、外を覗いた頃にはすっかりシーグールはいなくなっていた。そこからシーグールの群れに遭遇しないよう慎重に進んで、お台場ダンジョンのボス部屋へと辿り付いた。
先生からはここにボスがいると聞いていたけど……何ここ? ロボットが壁にいっぱい描かれた部屋。そこに大量のシーグールが倒れてる。
「これってさっきの群れかな?」
「可能性はありますわね……見てアイルさん! あそこに誰か立っておりますわ!」
モモチーが指した先、そこに立っていたのは薄い青と紫の西洋甲冑だった。左腕には丸いシールド、右手にはレイピアみたいな剣。でも1番特徴的なのは、頭頂部に付いてる金属製の一本角……。
ていうか入り口のやつといい角が付いているのがお台場のボスの特徴なの?
西洋甲冑のヘルム、そこに十字に刻まれたスリットの中央で赤い光がボワリと光る。
「ギャン!!」
西洋甲冑が吠える。見た目は少しだけヨロイさんに似てるけど、意思疎通は取れなさそうね。というか、犬っぽい吠え方ね……人型とはとても思えないわ。
〈お?〉
〈ありゃあ……〉
〈知らないんだ!何なんだ!?〉
〈いいものだよ〉
〈全然分かんないんだ!〉
〈ロボヲタワラワラで草w〉
「あいつがここのボスよね」
「ええ。金属製のツノ、レイピアにシールド……間違い無いですわ。アレがこのダンジョンのボス。お父様から聞きましたの」
「お父様」と言ってモモチーがバツの悪そうな顔をする。気にしなくて良いのに。
「まぁいいですわ。私がボスを討伐して差し上げましてよ!!」
モモチーが被りを振って剣を抜く。
「あ、ちょ!? 協力して倒さないの!?」
「ここまで来れば手助け不要ですわ!」
モモチーがロングソードを肩に担ぎ、甲冑モンスターに飛び込んだ。速い。シーグール達と戦っている時に気付いた。モモチーは無茶苦茶ばかりするし、お金かけまくった装備とかしてるけど、普通に戦っても強くなれる。
良い探索者になれる。きっと。
「ギャン!? ギャギャン!!」
西洋甲冑が盾を構えるとその盾から無数の火炎弾が発射される。何あの盾!? 盾にあんなことできるの!?
「鬱陶しいですわね……っ! フリーズエッジ!」
モモチーが魔法剣スキルを発動する。その刀身に強烈な冷気を纏わせ、剣撃で火炎弾を切り裂く。放たれていた炎は、氷の刀身によって一瞬にして消え去った。
「ギャン!?」
「その程度の炎では私を止められませんわよ!!」
空中へ飛び上がったモモチー。彼女は西洋甲冑へ向け、剣を叩き付けた。
「撃⭐︎滅!! ですわ!」
フロアに響き渡る衝撃音。その音だけでモモチーの斬撃の威力が分かる。力押しな戦い方だけど理にかなってる。ロングソードのパワーに属性の付与。このスキルを使うことでモモチーは威力を補っているんだ。
「……ア゛、ルギャギャッ!?」
西洋甲冑が盾で攻撃を受け止めるが、フリーズエッジの冷気がその盾をバキバキと凍らせていく。
「その面倒な盾! このまま叩き割って差し上げますわ!」
ガキンガキンとモモチーが連続で剣撃を放って行く。氷結によって脆くなったのか、盾にビシリとヒビが入った。
〈おお!!〉
〈ボス速攻で行けそう!〉
〈モモチーの攻撃ヤバイ〉
〈デッッッ!!!!!!!!!!!!!!!〉
〈バルンバルンなんだ!!!!!!!!!!〉
〈揺れが止まんないねぇ……〉
〈キショコメ増えたwww〉
「これで終わりですわ! 滅⭐︎殺!!」
モモチーが横回転を加えた一撃を放つ。それがシールドに直撃し、そのシールドの亀裂が一気に広がる。
しかし。
「ギャン、バルッ……カンッ!!!」
西洋甲冑は崩壊するシールドを使いモモチーを突き飛ばし、彼女の体勢を崩した。粉々に飛び散るシールド。でもヤツは手に入れてしまった。モモチーへ一撃を放てる隙を。
「しまッ──!?」
「ギャンスロットォッ!!」
西洋甲冑がレイピアを構え、モモチーへ突きを放つ。咄嗟にロングソードの刀身で攻撃を受け止めたモモチー、響く金属音。しかし、物凄い威力の一撃を受け止めることはできず、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「くぅ……っ!?」
〈うわああああああ!?〉
〈逆転された!?〉
〈無重力ッ!?〉
〈揺れに揺れてるんだ!!?〉
〈見るのそこかよ!?〉
モモチーが壁に叩き付けられてしまう。彼女は苦しそうに膝をついて地面を叩き付けた。
「かは……っ!? クソクソクソですわ! なんて威力!? 完全に油断しましたの!」
「ギャンクォ!!!」
モモチーに飛び込む西洋甲冑。貯めていた魔力を放出しながら、杖をヤツへ向ける。
「……ギャン!?」
私が魔法で狙っていることに気付いた西洋甲冑が大地を蹴る。杖を向けるとすぐに射線を逸らす。ステップのような動き……速すぎて狙いが定まらないっ!?
〈速ええええええ!?〉
〈何であんな速度出せるんだよ!?〉
〈ステップ移動なんだ!〉
〈ちょっと動きキモくない?〉
〈でもあんな動きされたら攻撃当てられねぇよ!〉
……魔法を撃たせ無い気ね。
「けど甘いわね。私にアンタの弱点はもう把握してるわ」
〈弱点?〉
〈何なんだ?〉
〈アイルちゃん……がんばってぇ……〉
〈モモチーとアイルちゃんを失うのは人類の損失〉
〈きしょコメすごE〉
あの一本角。代々木の時の応用で行けるはず!!
「モモチー動ける!? 私が隙を作るわ! その間に攻撃して!」
「あ、アイルさんの指示に従うなんて……」
「勝ちたいでしょ!? 勝つためには何でもするのが探索者よ!」
ヨロイさんはいつもそうだから。私だって……っ!!
「で、でも……」
「どうすんのよ!? 今のアンタには私しかいないの!? アンタ有名になる為になんでも使うって言ったでしょ!? 今は私を使いなさい!」
横目でモモチーを見ると、彼女は歯を食いしばってヨロヨロと立ち上がった。勝つ事に全部を注ぐ眼、渋谷で盗賊と戦う時、ジークがしていた眼と同じだ。
私もきっと、同じ眼をしている。きっとこれはヨロイさんと同じ眼なんだ。なぜだか分からないけど……そんな気がした。
「勝ちたい……っ! 私は、勝ちたいですわ!!」
その言葉を聞いた瞬間、代々木でヨロイさんと鳥型ボスのペラゴルニスを倒した時を思い出す。ヨロイさんが私を信頼して攻撃を任せてくれた時のことを。あの時の私より……私は強くなったの!!
だから私達だけで絶対倒せる!!
杖に迸る電撃エネルギーを西洋甲冑へと向け、魔法を放つ。
「電撃魔法!!」
「……ギャギャッ!!」
地面を蹴る西洋甲冑。ヤツは私をバカにするみたいに高速でステップ移動した。
〈速すぎるっピ!?〉
〈あんなの当たらないんだ!?〉
〈どうすんの!?〉
〈突撃されたらヤバそう〉
〈アイルちゃん……〉
高速でフロアを移動する西洋甲冑は嘲笑うようにステップを速めた。すぐさま自分の中の魔力を練り直し、氷へと切り替える。
「無駄よ! 氷結晶魔法!!」
杖の先端から3つの氷の礫が放たれる。魔力のタメが足りなくて威力が弱い。だけど、大丈夫。この広さなら。
放たれた氷の礫が地面へぶつかり、部屋の床面を一気に凍り付かせる。
「ギャッ!?」
ステップの着地と同時に足が凍り付く西洋甲冑。ヤツは面食らったように私を見た。
〈うおおおおお!!!〉
〈でも電撃魔法が避けられちゃってるんだ!〉
〈アイツ氷砕いてるぞ!?〉
〈逃げられるって!〉
〈早く次の攻撃!!〉
「みんな慌ててるけど……大丈夫」
空中に放たれていた電撃魔法。その電撃がヤツの頭頂部にある金属製のツノに吸い寄せられる。
電撃魔法は金属に引き寄せられる性質がある。私だって色々ヨロイさんと一緒に学んだもん。忘れてない。私はヨロイさんに教えて貰ったことは忘れない!!
「アギャギャギャギャギャギャギャギャ!?」
〈スゲエエエエエエ!!!〉
〈ホーミングなんだ!〉
〈電撃魔法の性質ってヤツ?〉
〈アイルちゃんめっちゃ成長してるやんけ!?〉
〈モモチー飛び込んでる!〉
〈攻撃行け!〉
電撃が直撃して感電する西洋甲冑。モモチーに視線を送ると、彼女は何も言わずに頷いた。それだけで伝わる。私達探索者には敵を倒すっていう共通の目標がある。だから言わなくても伝わる。どうすればいいのか見せてあげれば。
ブスブスと煙が出て動きが止まった所にモモチーが剣を叩きつけた。
「サンダーエッジ!!」
「アギャギャギャギャギャギャギャギャ!?」
感電する西洋甲冑。ブスブスと煙が出て動きが止まった所に電撃魔法を放つ。
「アギャギャギャギャギャギャギャギャ!?」
〈wwwwwwwwww〉
〈パターン入ったw〉
〈どっかで見たハメ攻撃www〉
〈アイルちゃん……こんなこともできるようになって……〉
〈すごいんだ!〉
……。
…。
「電撃魔法!!」
「アギャギャギャギャギャギャギャギャ!?」
6回目の攻撃の後、西洋甲冑は煙を出しながら動かなくなった。
倒れた西洋甲冑からレベルポイントの光が溢れ出し、私達のスマホに吸収されていく。スマホが眩く光り、合計「160pt」が溜まったことを告げる。
〈すごE〉
〈コンビネーション良かったな〉
〈アイルちゃんはやっぱり可愛いんだ!〉
〈モモチーのがええやろ!〉
〈じゃあアイ×モモで行くんだ!〉
〈百合厨ウゼ〉
〈百合厨消えろ〉
〈みんなひどいんだ!〉
〈ケンカすんな〉
「やったやった! やりましたわ!」
モモチーが飛び上がって私の両手を掴んだ。しかしすぐハッとなって恥ずかしそうに俯いてしまう。
「そ、そのアイルさん? 色々、その……」
「モモチー」
「え?」
「やったね!」
モモチーは恥ずかしそうに目を泳がせたあと……。
「うん!」
普通の女の子みたいに嬉しそうに笑った。
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