461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第71話 西のB級探索者、鉄塊の武史

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 翌日。

 俺は反射魔法リフレクション符呪エンチャントされた剣を受け取り、指定された中野ブロードウェイ1階へと向かった。リレイラさんはルリアの所で待つ段取りになっていたはずなのだが、見送ると言って聞かなかった。昨日の事を思い出して妙に恥ずかしい。

 入り口のすぐ脇、細い通路に入ると警備の探索者に守られている入り口がある。その中には上階のマンションへ入るエレベーター。そこで、約束通り武史が待っていた。相変わらずの黒い鎧に馬鹿でかい剣を背負って。白い歯をニカリと見せて武史が元気の良い声を上げた。


「お~! 来たなヨッさん! 待ってたで!」

「は? ヨッさんってなんだよ?」

「親しみを込めてヨッさんや! あだ名の方が呼びやすいやん?」

 ケラケラと笑う武史。妙に距離の近いヤツだな。

「ヨロイ君」

 リレイラさんが俺の両手をそっと握る。彼女は複雑そうな顔をしていた。俺の事を心配してくれているような、だけど信頼してくれているような顔。それに答えるように、その手を握り返す。

「行って来るよ」

「うん……気を付けてね」

 昨晩、中野ダンジョンについては相当情報を仕入れた。急遽の探索になったが大丈夫。そうリレイラさんに告げて、彼女に背を向けると武史が苦笑しながら顔を背けた。

「ちっ、ええなぁ~。オレなんかなぁ……ホンマ、泣けるで……」

「あんまり見るなよ」


 恥ずかしいから。


「はいはい。邪魔して悪かったっての」


 武史はブンブンと顔を振るとキリッとした表情で俺達を見た。


「じゃ、行くでヨッさん! 魔族のネーさんもヨッさんは俺がしっかり守ったるからな!」


 リレイラさんへ別れを告げ、俺達はエレベーターに乗る。


 「10階」のボタンを押すと、エレベーターが動き出す。ダンジョンに挑むのにエレベーターから入るなんて新鮮だ。だが、中野ブロードウェイは下層階が商業地区。電気が通っていても不思議じゃない。

 ゆっくり進むエレベーターは、最上階の10階まで15分ほどかかる。これは中野ダンジョンの歪みのせいらしい。恐らく、時空の歪みとかそういうものなのだろう。


 ……。


 2階、3階、4階……階数が進む度に心臓の鼓動が増して行く。未知のダンジョン、未知の敵。これは……。

「なんや、緊張しとるんか?」

 横目で俺を見た武史がおどけたように言って来る。

「いや、ワクワクしてる」

「ワクワク? ははは! やっぱりオモロイ男やなアンタ! 六本木や渋谷の時もそんな感じやったんか?」

「なんだ? 俺達の配信知ってるのか?」

「知ってるも何もめちゃくちゃ有名やで。俺も六本木攻略のアーカイブ見てから天王洲アイルの配信を追っとる。配信者として・・・・・・ライバルの実力は知っとく必要があるからな」

「武史も配信者なのか」

「せやで。そういやちゃんと自己紹介してなかったな。俺の探索者名は『鉄塊の武史たけし』! 西日本のダンジョンを中心に攻略してるB級探索者や!」


 鉄塊の……。


 ……。



 ……。



 いいな、それ。


「いい探索者名だな。2つ名というのはとても良い」

「せやろ!? いや~名前決めるのに苦労したんや! 1週間もかかってなぁ」

 照れ臭そうに頭を掻く武史。一度挑んだとはいえ、これからダンジョンに向かうのにリラックスしている。おごりではなく自然体。これは……中々やりそうだな。

「以前B級の槍使いと戦ったことがあるが……武史の方がやりそうだな」

 以前戦った九条商会の鳴石はその素振り、風格から「強者」を演出していた。いや、演出していたというより、強者であろうとしていた感覚がした。そういうヤツは隙がデカい。

 上手く言葉にはできないが、実力以上を見せようとすることに慣れると、人は自分の力を過信する。武史にはそれが感じられない。

「ホントか!? まぁこれでも登録者数80万人抱えてるからな~! 日々精進は怠っとらん! B級に恥じん実力を付けたいもんやで!」

 両手を組んでうんうんと頷く武史。彼は急に目をギラリと光らせると俺を見た。

「だが……俺には分かるで? ランクは違えどヨッさんの方が実力は上。他の探索者達はランクでしか物を測っとらん。渋谷の件もジークリード達がいたから攻略できたと思っとるヤツもおる。アンタが中心やったにも関わらず……や」

 武史はエレベーターを殴りつけると苦虫を噛み潰したような顔をした。

「伊達のオッサンの反応を見たやろ? アレが今の探索者の認識や。正直めちゃくちゃ腹立ったで。ヤツらは本質を見とらんのや。そうは思わんか?」

「うぅん……俺は別にランクとかに興味無いからな」

 答えると武史がニヤリと笑い、俺を指差した。

「そこや。アンタのそういう所がオレは好きや。生粋の探索者。タイプは違えど鯱女王オルカに通ずる所がある」

「やめてくれ。体が痒くなる」

「そんな謙遜けんそんせんでも~! ……っと到着したで」


 ベルのような音と共に扉が開く。その先にあったのは石壁の広い空間、マンションの面積は超えているな。それに加えて現代の建造物と異なる意匠。異世界の建物がそのまま転移したタイプか。

「歪みの話は聞いとるやろ? この中野ブロードウェイは変なことになっとるらしくてな。外観とダンジョン内の広さは全く関係ないんや。大学のセンセ達も頭抱えとるらしいで」

「だが、歪み以外は王道なダンジョン。正統派な攻略で対応できるはずだ」

「よう勉強しとるやんけ。そう、ストレートなダンジョンや。だから難易度自体はさほど高くない。あの新しいボスナーガレイズを除いてな」

「分かってる。気合い入れて行くぞ」

「案内は任せとけ! ヨッさんの攻略法、しっかり学ばせて貰うで!」


 それぞれの武器を構え、俺達はダンジョンの攻略を開始した。


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