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第72話 武史のスキル
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石造りのダンジョンを進み、聖剣アスカルオのある部屋を目指す。
中野ダンジョンは1度10階まで潜り、下へと降りて行くことで最深部の地下10階へ到達できるらしい。本来なら地上31メートルの場所にあるであろうダンジョンは、光が差し込む隙間すら無く、地下にいるような錯覚を覚えさせた。
「変な感じやろ? 歪みのせいでこうなってるんやと。ここだけ異世界と繋がってたりしてなぁ」
「武史はこのダンジョンに挑むのは2回目か?」
「ああ。だが内部構造はちゃんと把握してるからな。安心せえ」
今回の目的はアイテム回収だからな。あまり探索を楽しむ暇は無い……か。今度またアイルと挑むかな。
そう考えていると、俺のすぐ側をドローンが通り過ぎる。黒い小型ドローン。武史の配信用か。武史がスマホを操作すると、ドローンは彼の背後でホバリングした。
「悪いがボス戦は配信させて貰うで。前回視聴者に情け無い姿を見せたしな。リベンジマッチしたいんや。ヨッさんがゲストって形になるけどな。嫌なら極力映さんようにするで」
「俺は構わないぜ」
「サンキューやで!」
武史がそう言った時、通路の奥に虫型のモンスターが見えた。中型犬くらいのサイズに大きな羽……鈴虫に似ている「サウンドバグ」か。大きな羽を擦り合わせて魔力を込めた音波攻撃を仕掛けてくる敵。音と言っても侮ってはいけない。直撃すれば聴覚器官にダメージを受ける。下手をすると脳にまで。
だが、音波攻撃は指向性を高くすることで威力を上げている側面がある。ヤツらの顔の向きを落ち着いて見定めれば対処はできる。
サウンドバグは3体。通路はそこまで広くない。まずは一体。ナイフの投擲で対処するか。
「おう! オレに任せとけ!」
「あ、おい!」
俺が動く前に武史が走る。彼に気付いたサウンドバグ達がその羽を振動させた。
「リリリリっリリリリリリ!!!!」
「リリリリリッリリリッリ!!!!」
「リリッリリリリリリッリ!!!!」
魔力の波が発生し、音波攻撃が武史へと向かう。彼はそれをサイドステップで避けながら、背中の大剣を引き抜いた。
「せい!!」
「リ゛ッ!?」
大剣が叩き付けられ、サウンドバグの1体が轟音と共に潰れる。残った2体のサウンドバグが武史へと飛びかかり鋭利な前脚の攻撃を放つ。しかし、彼はそれをものともせずサウンドバグ達を右手で殴り付けた。
空中に飛ばされる2体のサウンドバグ。ヤツらを目掛け、武史が大剣を薙ぎ払う。
「だらぁ!!」
「リ゛ア゛!?」
「リリリラアアア゛ァ!?」
横なぎの一撃。巨大な剣に絡め取られたサウンドバグはそのまま鉄塊のような剣でと壁に挟まれ叩き潰された。
「おう見とったかヨッさん! オレのスキルは『鉄壁』! 防御100%上昇しとるオレには如何なる攻撃も効かん!! なはははは!!!」
馬鹿笑いする武史の後ろに更なるサウンドバグが現れた。現れた2体が羽を擦り合わせる。
「なんや新手か? なら……」
武史が動く前に腰からナイフとダガーを引き抜き2体のサウンドバグへ投擲する。1体にナイフが命中。ダガーは当たらなかったものの、ヤツの意識を引き付けた。その隙にショートソードを構えてサウンドバグへと駆け抜ける。
「うおおおおお!!」
「リリ!?」
再び音波攻撃が放たれる直前、大地を蹴ってヤツの懐へと飛び込みショートソードを薙ぎ払う。最後のサウンドバグは真っ二つとなって息絶えた。
「なんやぁ。俺に任せといてくれたら良かったのによぉ~」
武史が残念そうに大剣を背負う。よく言うな。今の動きを見た限りだと武史の弱点だろそれは。
「ヤツらの方が先に動いた可能性がある。音波攻撃受けたらヤバかっただろ」
「いや、だから俺は防御を──」
「効かないのは物理防御だけだろ?」
物理防御と言った瞬間、武史は大袈裟な動きで目を見開いた。隠せていると思っていた顔……それだったらこの状況はおかしいだろ……。
「マジか!? なんで分かったんや!?」
「本当に防御全振りしていたら火炎弾を使うボスに対して撤退したりしない」
「うっ……っ!?」
「それに、先ほどサウンドバグの音波攻撃を避けていた。本当に防御全振りならそのまま突っ込んだはずだ」
「そ、そうや……いい所見せようとしたが失敗したな……」
苦笑しながら頭を掻く武史。この成長構築……恐らく探索者としての経歴が浅いんだろう。どのスキルを取るか取捨選択していった結果……物理は受ける、魔法は避けるというスタイルに落ち着いたのか。そしてあの大剣。
「スキルツリーは攻撃にも振っているだろ? だが全振りするほどのポイントを稼げていない……だからこそ、その大剣の一撃で相手を仕留めようとした。物理防御を上げたのは攻撃寸前の隙をカバーする為だな」
武史は小さな声で「マジか」と溢した。俺の読みは当たっていたみたいだな。
「流石やな……事前情報と今の戦闘だけでそこまで分かるか」
「武史の探索者歴は?」
「3年や」
「その短期間でBまで上がったということは、よほどそのスタイルはお前に合っていたんだろうな。すごいと思うぜ、俺は」
「そうか!? いや~ヨッさんに褒められるとめちゃくちゃ嬉しいわ! 俺も頑張って来た甲斐があるってもんやで!」
ガハハと笑う武史。3年か、それだけでここまでの強さを獲得できるなんてな。鯱女王式のビルドの凄さを改めて実感した。
……。
その後、案内役の武史のおかげで俺達は難なくボス直前まで辿り付いた。
◇◇◇
この扉の先にボス、ナーガレイズがいるのか。
自分のアイテムを確認する。回復薬に状態異常対策、投擲用の音爆弾に……リフレクションソード。準備は万全だ。
「覚悟はいいかヨッさん?」
「ああ。楽しみだ」
「楽しみって……やっぱり変わってるなぁアンタ」
武史は呆れたように呟くと、スマホを操作した。配信開始したのか……。
両手でゆっくりと扉を開く。
「ナーガレイズ、攻略してやるぜ」
俺と武史は、巨大な蛇の待つボス部屋へと足を踏み入れた──。
中野ダンジョンは1度10階まで潜り、下へと降りて行くことで最深部の地下10階へ到達できるらしい。本来なら地上31メートルの場所にあるであろうダンジョンは、光が差し込む隙間すら無く、地下にいるような錯覚を覚えさせた。
「変な感じやろ? 歪みのせいでこうなってるんやと。ここだけ異世界と繋がってたりしてなぁ」
「武史はこのダンジョンに挑むのは2回目か?」
「ああ。だが内部構造はちゃんと把握してるからな。安心せえ」
今回の目的はアイテム回収だからな。あまり探索を楽しむ暇は無い……か。今度またアイルと挑むかな。
そう考えていると、俺のすぐ側をドローンが通り過ぎる。黒い小型ドローン。武史の配信用か。武史がスマホを操作すると、ドローンは彼の背後でホバリングした。
「悪いがボス戦は配信させて貰うで。前回視聴者に情け無い姿を見せたしな。リベンジマッチしたいんや。ヨッさんがゲストって形になるけどな。嫌なら極力映さんようにするで」
「俺は構わないぜ」
「サンキューやで!」
武史がそう言った時、通路の奥に虫型のモンスターが見えた。中型犬くらいのサイズに大きな羽……鈴虫に似ている「サウンドバグ」か。大きな羽を擦り合わせて魔力を込めた音波攻撃を仕掛けてくる敵。音と言っても侮ってはいけない。直撃すれば聴覚器官にダメージを受ける。下手をすると脳にまで。
だが、音波攻撃は指向性を高くすることで威力を上げている側面がある。ヤツらの顔の向きを落ち着いて見定めれば対処はできる。
サウンドバグは3体。通路はそこまで広くない。まずは一体。ナイフの投擲で対処するか。
「おう! オレに任せとけ!」
「あ、おい!」
俺が動く前に武史が走る。彼に気付いたサウンドバグ達がその羽を振動させた。
「リリリリっリリリリリリ!!!!」
「リリリリリッリリリッリ!!!!」
「リリッリリリリリリッリ!!!!」
魔力の波が発生し、音波攻撃が武史へと向かう。彼はそれをサイドステップで避けながら、背中の大剣を引き抜いた。
「せい!!」
「リ゛ッ!?」
大剣が叩き付けられ、サウンドバグの1体が轟音と共に潰れる。残った2体のサウンドバグが武史へと飛びかかり鋭利な前脚の攻撃を放つ。しかし、彼はそれをものともせずサウンドバグ達を右手で殴り付けた。
空中に飛ばされる2体のサウンドバグ。ヤツらを目掛け、武史が大剣を薙ぎ払う。
「だらぁ!!」
「リ゛ア゛!?」
「リリリラアアア゛ァ!?」
横なぎの一撃。巨大な剣に絡め取られたサウンドバグはそのまま鉄塊のような剣でと壁に挟まれ叩き潰された。
「おう見とったかヨッさん! オレのスキルは『鉄壁』! 防御100%上昇しとるオレには如何なる攻撃も効かん!! なはははは!!!」
馬鹿笑いする武史の後ろに更なるサウンドバグが現れた。現れた2体が羽を擦り合わせる。
「なんや新手か? なら……」
武史が動く前に腰からナイフとダガーを引き抜き2体のサウンドバグへ投擲する。1体にナイフが命中。ダガーは当たらなかったものの、ヤツの意識を引き付けた。その隙にショートソードを構えてサウンドバグへと駆け抜ける。
「うおおおおお!!」
「リリ!?」
再び音波攻撃が放たれる直前、大地を蹴ってヤツの懐へと飛び込みショートソードを薙ぎ払う。最後のサウンドバグは真っ二つとなって息絶えた。
「なんやぁ。俺に任せといてくれたら良かったのによぉ~」
武史が残念そうに大剣を背負う。よく言うな。今の動きを見た限りだと武史の弱点だろそれは。
「ヤツらの方が先に動いた可能性がある。音波攻撃受けたらヤバかっただろ」
「いや、だから俺は防御を──」
「効かないのは物理防御だけだろ?」
物理防御と言った瞬間、武史は大袈裟な動きで目を見開いた。隠せていると思っていた顔……それだったらこの状況はおかしいだろ……。
「マジか!? なんで分かったんや!?」
「本当に防御全振りしていたら火炎弾を使うボスに対して撤退したりしない」
「うっ……っ!?」
「それに、先ほどサウンドバグの音波攻撃を避けていた。本当に防御全振りならそのまま突っ込んだはずだ」
「そ、そうや……いい所見せようとしたが失敗したな……」
苦笑しながら頭を掻く武史。この成長構築……恐らく探索者としての経歴が浅いんだろう。どのスキルを取るか取捨選択していった結果……物理は受ける、魔法は避けるというスタイルに落ち着いたのか。そしてあの大剣。
「スキルツリーは攻撃にも振っているだろ? だが全振りするほどのポイントを稼げていない……だからこそ、その大剣の一撃で相手を仕留めようとした。物理防御を上げたのは攻撃寸前の隙をカバーする為だな」
武史は小さな声で「マジか」と溢した。俺の読みは当たっていたみたいだな。
「流石やな……事前情報と今の戦闘だけでそこまで分かるか」
「武史の探索者歴は?」
「3年や」
「その短期間でBまで上がったということは、よほどそのスタイルはお前に合っていたんだろうな。すごいと思うぜ、俺は」
「そうか!? いや~ヨッさんに褒められるとめちゃくちゃ嬉しいわ! 俺も頑張って来た甲斐があるってもんやで!」
ガハハと笑う武史。3年か、それだけでここまでの強さを獲得できるなんてな。鯱女王式のビルドの凄さを改めて実感した。
……。
その後、案内役の武史のおかげで俺達は難なくボス直前まで辿り付いた。
◇◇◇
この扉の先にボス、ナーガレイズがいるのか。
自分のアイテムを確認する。回復薬に状態異常対策、投擲用の音爆弾に……リフレクションソード。準備は万全だ。
「覚悟はいいかヨッさん?」
「ああ。楽しみだ」
「楽しみって……やっぱり変わってるなぁアンタ」
武史は呆れたように呟くと、スマホを操作した。配信開始したのか……。
両手でゆっくりと扉を開く。
「ナーガレイズ、攻略してやるぜ」
俺と武史は、巨大な蛇の待つボス部屋へと足を踏み入れた──。
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