461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第97話 天王洲アイルの挑戦

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 ~天王洲アイル~

 高速道路の高架下に入って不死鳥の攻撃は唐突にやんだ。でも、ヨロイさんの話ではまだアイツは私達を狙っているらしい。隙を見せる瞬間を伺ってるって。引き付けたのは私達だけど、相当執念深い鳥ね。

 高輪さんがアクセルを緩めたのか、軽トラの速度が落ちる。私を抱きしめていたヨロイさんが、ゆっくりと手を離した。それがすごく残念で、名残惜しい。

「あ……」

「なんだ?」

 首を傾げるヨロイさん。私の顔見られちゃったかな? 恥ずかしくてつい顔を背けてしまう。

「な、なんでもないわよ!」

 ……。

 ヨロイさんがリレイラを抱きしめた時、反射的に「私も」と言いそうになってやめたことを思い出した。

 リレイラがヨロイさんのことを好きなのは気付いていた。私にとってはライバルに……なるのかもしれない。


 だけど……。


 だけど。


 私はリレイラのことも好きなんだ。

 リレイラは、本当はヨロイさんと2人だけが良かったかもしれないのに、私のことをすごく考えてくれてる。六本木の時も私を責めなかったし、渋谷の時も……ずっと心配してくれていたのが分かった。

 そんな優しいリレイラが、ヨロイさんのことになると子供みたいにヤキモチを焼く姿を見ると、見守ってあげたくもなる。でも私自身はヨロイさんに見て欲しくて、嫉妬してしまう時もあって……難しい。

 だから、やめておく。少なくともリレイラとヨロイさんが結論を出すまでは。私が想いを伝えるのは、やめておく。そのせいで2人が結ばれてしまっても。2人が結ばれる姿も……私は見たいから。

 胸がズキズキするのを押さえていると、ヨロイさんが片手でヘルムを押さえた。リレイラから連絡があったみたいだ。

 何を話しているのか耳を澄ます。うっすら聞こえるヨロイさんの声……それでジーク達が危ない状況なんだということだけは分かった。亜沙山の探索者の中にすごく強い人がいるってことが。

 ヨロイさんが考え込む。きっと不死鳥のことを考えているんだろう。もし、不死鳥が私達を諦めたらまた観客を襲う。そんなことになったら、本当に大変なことになる。不死鳥もなんとかしないと……。


 でも、ジークとミナセさんが……。


「うぅん……」

 ヨロイさんが唸り声を上げる。2人の所へ行きたいのかな。最近のヨロイさんは、仲間をすごく大切にしてるのが分かる。

 元々私達の計画には亜沙山の探索者の中にジークと同等以上の強い相手はいなかった。でも、通話を聞いている限りイレギュラーなことがあったらしい。だから、ヨロイさんは助けに行きたいのだろう。


 私ができることはなんでもしてあげたい。何ができる? 今の私に何が……。

 ジーク達の所へ行っても私は足手まといになる。私は対人戦の実践経験が無いから。

 そうするとできることは1つ・・。幸い、今の私には頼れる人達もいる。


「ヨロイさん」

「どうしたアイル?」

「ヨロイさんはジークとミナセさんの所へ行って」

「いや、それだと不死鳥がなぁ……」

 息を吸う。震える手をキツく握る。私は誰だ? 天王洲アイルは、私の尊敬する探索者……ヨロイさんの相棒なんだ。相棒が心からやりたいことがあるのなら、それをさせてあげるのが私の役目だ。ヨロイさんに守られたままじゃダメ。私も、自分の意思で戦えないと。

 軽トラに乗る面々を見る。高輪さんの運転技能は確かだ。逃げるのは大丈夫。モモチーはちゃんと指示を出してあげれば前衛をこなしてくれる力がある。ナビはリレイラに頼めば……さっきのことを思い出せ。私達はヨロイさんの指示に従って・・・・・・不死鳥の攻撃から身を守った。

 なら、その指示を出す者・・・・・・がいたら、私達だけでも不死鳥は引きつけられる。それは私の役目だ。今の私なら、ヨロイさんのサポートを徹底して鍛えた私なら、ヨロイさんの思考を再現できる。

「大丈夫。私がヨロイさんの役割をするわ。モモチー達と一緒に不死鳥を引き付ける。アイツを倒せなくても……ヨロイさんが戻って来るまで引き付けるくらいのことはできるわ」

 モモチー達を見る。モモチーはいつもより真剣な顔で笑みを浮かべた。

「しょうがありませんわねぇ。親友の頼みですもの、私も付き合ってあげますわ!」

「ウェイ! ヨロイの兄さん。アンタの相棒は俺とモモチーがしっかり守ってやるよ!!」

「アンタら……」

 ヨロイさんが2人の顔をジッと見つめて、私の両肩に手を置いた。ヘルムで見えないけど、私のことを見つめてくれてる。リレイラへの視線とは違うのは分かるけど……でも、私はそれが嬉しい。

「……頼むぜアイル。ジーク達を助けたら連絡する」

 想いが止められなくてヨロイさんに抱き付いてしまう。

「お、おい」

 戸惑うヨロイさんの声。ごめんねリレイラ、許して。

「私にもギュッてして……リレイラにしたみたいに」

「……ああ」

 言えた。ずっと胸の奥に残っていた後悔がスッと消えた気がする。ヨロイさんは、何も言わずに強く抱きしめてくれた。ひんやりしたヨロイの感触。不死鳥と戦っていた時は必死すぎて分からなかった感触。それが感じられて嬉しい。

「お前ならできる、絶対だ」

「うん、任せて」


◇◇◇

 数分後。

 ──東池袋交差点付近。



「いいわ高輪さん! 高架下から出て!」

「ウェイ!!」

 軽トラが加速して高架下から出る。そのまま弧を描きながら「池袋駅方面」と書かれた看板のある大通りへと入った。このまま直進すれば東口の前に出る。


 ──キュオオオオオオオン!!!


 その瞬間、空高くから甲高い鳥の声が聞こえた。

「やっぱり来ましたの!! ケープスフェニックスですわ!」

 モモチーの指した先に青い不死鳥がいた。真っ直ぐこちらへ向かって来る姿……相当怒ってるわね、アレ。

 イヤホンに手をかざして私の担当・・・・に語りかける。作戦の概要も説明した。きっと彼女なら上手くやってくれるはず。

「リレイラもナビ頼むわね!」

『任せてくれ。この東エリアを周回しながらヤツを引き付ければいいんだな?』

「そうよ! 私とモモチーは戦闘に集中するから!」

『無茶をさせて、すまな』

「謝らないで! 私はしなきゃいけないことをするだけよ!」

『……ありがとう。アイル君』

 リレイラの言葉に笑みが溢れる。心配をしてくれていても、私の意思を尊重してくれるリレイラ……やっぱり大好き。ヨロイさんもリレイラも2人とも大好き。

 ヨロイさんが私を引っ張ってくれる。リレイラが支えてくれる。見てて2人とも。私、ちゃんとやってみせるからね。

 スマホをスピーカーモードにして高輪さんに渡す。視線を移すと、遠くでヨロイさんが路地に入っていくのが見えた。


 私達が不死鳥を引き付けて、軽トラを降りたヨロイさんが不死鳥に見つからないようにする作戦。上手く行ったわね。


 ふとモモチーを見ると、彼女は関心したような顔で私を見ていた。

「なに?」

「ワタクシは、アイルさんを応援しておりますわよ」

「なによそれ」

「……ってどうでもいいですわそんなこと! そろそろヤツが仕掛けて来ますわよ!」

 ツンと顔を背けるモモチー。まぁいいわ。この子なりに慰めてくれたってことにしておこう。

 頬を叩いて気合いを入れる。速雷魔法を発動し、杖に火炎魔法用の魔力を貯める。

「気合い入れていくわよモモチー! 高輪さんも!」


「カンッペキに指示をこなしてあげますわ!」
「ウェイ!!」



「キュオオオオオオオオオオンンン!!!」



 不死鳥を引き連れて、私達を乗せた軽トラは道路を駆け抜けた──。


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