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第109話 リザルト
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~461さん~
不死鳥を倒した後、リレイラさんから連絡があった。予想通り現れたもう一体のボス。それは鯱女王に倒されたらしい。それに加えて亜沙山からの使いも。黒幕を捕まえ、管理局へ引き渡したと……これで今日できることは全て終わった。後はルリアを説得するだけだ。
と、今後のことについて考えていると、今までボーッとしていたモモチーが急に我に返ったように大声を上げた。
「いけませんわ! 車をお出しなさい高輪! 品川と田町を迎えて討伐の続きですわよ!」
「ウェイ!」
「パララもんも乗せてって欲しいのだ! ポイ君と合流するのだ!」
あ、そういやまだ時間残ってたな。時間切れかモンスターの全数討伐で終了するってパンフレットに書いてあったし。不死鳥倒して完全に気が緩んでたぜ。
「モモチー。車、マスターに返しといてくれ」
「任されましたわ~!」
モモチーに頼むと、彼女はヒラヒラと手を振った。それを見てアイルが大声を出す。
「モモチー!! ここからが本当の勝負よ!」
「オーホッホッホ!! 天才であるワタクシは誰にも止められませんわよ!!」
モモチー達が車に飛び乗っていく。最後に乗り込んだパララもんはなぜか俺達の方を見て顔を赤くした。
「ありがとうなのだ!! 結果発表でまた会うのだ!」
「お~パララもんもがんばれよ~」
「……!? がんばるのだ!!」
パララもんがブンブンと両手を振る。振りすぎて荷台から落ちそうになるのをモモチーに助けられていた。面白いヤツだな。
彼女達を乗せた軽トラは、池袋駅西口の方へ車に走って行った。
「ほら! 早く行きましょヨロイさん!!」
突然、横にいたアイルが俺の手を握ってグイグイと引っ張っていこうとする。
「何そんなに慌ててるんだよ?」
「鯱女王がボス倒しちゃったからハンターシティのポイントトップになってるかもしれないじゃない!」
「? それがどうした?」
「優勝はヨロイさんなの! まだ時間あるから早く行きましょ!」
「あ、おい!」
俺の手を引っ張るアイル。困惑しているとジークが俺の肩を叩いた。
「ミナセ達のことは俺に任せておけ。鎧が優勝するところは俺も見たい」
「ジーク……」
「ふっふっふ! モモチー達には内緒にしてたけど、このサンシャインビル周辺のモンスターはまだ手付かずよ。今なら大量にポイントゲットできるわ」
「なんでそんなこと知ってんだ?」
「不死鳥と戦ってる時サンシャイン周辺を軽トラで走ったでしょ? その時にチェックしてたのよ!」
ははっ。ちゃっかりしてるな。誰に似たんだよ。
「ミナセも優勝してくれと言うだろう。鎧……鯱女王を倒してお前の名をハンターシティを見ている全員に知らしめてくれ」
不敵に笑うアイル。期待の目を向けるジーク。2人に「優勝」と言われて胸の奥に何かが込み上げるような感覚がした。
初めての感覚だ。今まで感じたことのないような……。
不死鳥を追いかけた辺りから色々考えすぎだったかもな。俺は楽しみたくてハンターシティに参加しようと決めていたんだ。
だったら、最後の最後まで楽しんでやるぜ。
「だからね……ほら、行こう?」
俺を信頼してくれるような目。なんか、今回はアイルにすごく助けられた気がするな。ジーク達を助けに行けたのも、不死鳥を倒せたのも……アイルのおかげだ。そのアイルが俺に優勝して欲しいと言ってる。
……。
やってみるか。
「よし! 行くぜアイル!」
「うん!!」
俺達は駆け出した。ハンターシティを完全攻略する為に。
◇◇◇
1時間後。
──池袋西口公園。
過去最大の参加者を記録したという池袋ハンターシティは、モンスターの全討伐をもって終了した。再び西口公園に集まった俺達は、ステージ前で結果発表の時を待っていた。
期待と不安の入り混じった顔をした探索者達。その背後では優勝者を見ようと観客達が集まっている。なんだか物々しい雰囲気だな……。
「コホン。え~参加者が集まった所で結果発表を行うのじゃ」
シィーリアがステージ前に立つ。彼女はマイクを持つと、観客と探索者達へ声をかけるように声を発した。
「まずは3位~10位の発表を行う。前方のモニターに注目するのじゃ!」
シィーリアの声と共にモニターにランキングが表示される。
3位 天王洲アイル 3830pt
4位 ポイズン社長 3150pt
5位 モモチー 2650pt
6位 田仲 2020pt
7位 パララもん 1650pt
8位 タルパマスター 1300pt
9位 ジークリード 1000pt
10位 勝者マン 900pt
「アイルちゃんが3位なんだ!!」
「3000pt超えとかすご!?」
「くぅ~!! 優勝を逃しましたわ!!」
「ポイズン社長4位!?」
「さっきの発表にはいなかったよな!?」
「何やったん!?」
「え、マジ? 集計ミスじゃね?」
「なんでポイ君が1番ビビッてるのだ!!」
「461さんと鯱女王が載ってないぜ!」
「どっちかが優勝なんじゃ……」
「っぱ鯱女王っしょ!」
「でも461さんがあのクソ強い不死鳥倒したんだぜ?」
「鯱女王は1人でボス討伐したじゃん!」
ザワザワと騒ぐ声が聞こえる。アイルのおかげであの後1時間で1200ptも稼ぐことができた。だが、鯱女王はもう1体のボスを1人で倒したらしいしな……その分を足せば1位になっていてもおかしくない。
考えていると、肩を叩かれた。振り返るとそこには不敵な笑みを浮かべる鯱女王の姿が。彼女は、俺の耳元にボソリと声を発した。
「ボクが倒したボス……5000ptはある力量だ。君達の倒した不死鳥ほどじゃないけど、1人で倒したボクの方が有利」
5000? まずいな……計算だと俺のポイントは4000ちょっとだぞ……。
そう思っていると、アイルが俺の手を握り、鯱女王を睨み付けた。
「トップ配信者の貴方は尊敬してるけど、今回の優勝はヨロイさんって決まってるの! 吠え面かかないでよね!」
アイルの挑発に呆気に取られたような顔をする鯱女王。彼女はふっと笑うと、元の不敵な顔に戻った。
「……ふふっ。面白いね、キミ達」
鯱女王がモニターに目を向ける。それに続くように俺とアイルもモニターへと視線を送った。
「続いて1位と2位の発表じゃ!!」
シィーリアの声と共に画面が切り替わる。そこに表示されたのは……。
映し出されたのは……。
……。
1位 461さん 4730pt
2位 鯱女王 4690pt
「すげええええええええええ!!?」
「4000pt越え!?」
「めちゃくちゃ僅差じゃん!?」
「うおあああああああああ!!!?」
「すごいのにゃ!!?」
「461さんの優勝なんだ!!?」
「え!? オルカが2位!?」
「ヨロイさんが不死鳥倒したからですわ!」
「いや、でもオルカ1人でボス倒してたじゃん!」
「なんで!?」
「そうだよおかしくね!?」
「集計変じゃん!?」
「は?」
ポツリと聞こえた鯱女王の声。どよめく会場。隣を見ると、鯱女王がビシリと固まったように画面を見つめていた。
周囲の声を抑えるようにシィーリアが手を上げる。
「説明するのじゃ! モニターに注目!!」
シィーリアが合図をすると、画面に鯱女王と巨大なペリカンのようなモンスターが戦う姿が映る。
「コヤツがオルカの倒したボス、オノクロタルスじゃ。このモンスターを解析した所、ヤツが溜め込んでいたレベルポイントは5000ptじゃった」
「え? じゃあ鯱女王のポイント少なくね?」
「集計ミス?」
「あ!」
「どうしたのだ?」
「い、いや……なんでもねぇ」
「よし。この映像を少し巻き戻してみよう」
シィーリアが指示を出すと、モニターの映像が映り変わる。そこに映っていたのは不鮮明な映像。オノクロタルスを遠くから撮影した物だった。そこには1人の探索者がオノクロタルスに攻撃している所が映っている。
「誰か攻撃してるんだ!」
「なんか魔法撃ってる?」
「ポイ君なのだ!?」
「そういや攻撃したんだよな、アイツに……」
「全然ダメージ受けてないじゃない!?」
「ひゃだ!? あの攻撃に何か秘密があるの!?」
「この時ポイズン社長が放ったのは猛毒の牙。これが実はオノクロタルスを毒状態にして体力を削っていたのじゃ!」
「!!?!?!?!?」
「はあ!?」
「毒!?」
「マジかにゃ!?」
「そんなんあり!?」
「それ言ったらめちゃくちゃ効いてたことになるじゃん!?」
「すげ……っ!?」
「ううん……確かに連続で毒打ち込んだわ、俺」
「だからなんでポイ君が関心してるのだ~!?」
そうか。モンスターから得られるレベルポイントは基本的には与えたダメージ量で決まる。毒ダメージの蓄積が溜まった所に鯱女王がトドメを刺した。それで……。
「そこで削った生命力は約半分!! こうしてオノクロタルスの5000ptはオルカ2500とポイズン社長2500に分けられたのじゃ!」
「えええええええええええ!?」
「マジかよおおおおおお!?」
「いや~毒弱点だったのかもなぁ」
「なんでポイ君が納得してるのだ!」
「謎はとけたんだ!」
「毒の注入……嫌いじゃないわ!!」
隣でその様子を見守っていた鯱女王。彼女は手をギュッと握り締めて俯いていた。震える体、徐々にそれが収まっていき、やがて笑い声に変わった。
「くっくくくふふふふふ……アレだけイキって負けるとか恥ずかし~wwww」
彼女はひとしきり笑った後、俺の顔をジッと見た。その顔はなんというか、暗い笑顔。性格が悪そうというかなんというか……引きこもってた時、久々に鏡で自分の顔を見た時、こんな顔をしていた気がする。
「完全に、計算ミスだ。僕の攻撃を2発必要なモンスターが、まさか体力の半分も削られた後だったなんて……くくっ。僕もまだまだだな」
……映像を見た限り鯱女王の攻撃は一撃が相当強力だ。それだけ技に自信を持っていれば、見誤るのも当然だろう。鯱女王の想像以上にあのボスは強力だったということなんだから。
「あのボスに遭遇したのも、もしかしたら誘導されてたりしてね」
鯱女王が俺の顔をジトリと見つめる。
ポイント表はオルカを焦らせ、いるかもしれないもう一体のボスにぶつけるための物だったが、それを説明するには全部話さないといけないしなぁ。
「今こうやってリザルトを見られてるのはお前のおかげだ。それでいいじゃん」
俺の顔を覗き込んでいた鯱女王。彼女は俺から答えが出ないと悟ると、諦めたようにため息を吐いた。
「まぁいいや。このイベントの全体像を把握していた君のほうが上手……だったということかな」
それだけ言うと、鯱女王がクルリと背を向けた。
「ちょ!? まだ表彰式あるわよ!?」
「ボクは興味無い。2人でやってくれ」
「どこ行くんだよ?」
「約束がね、あるんだ。多分あの子が会場にいるから。醜態を晒しちゃったけどまだ喜んでくれるかな……」
鯱女王が少しだけ寂しそうな顔をする。この女、悪いヤツではないのかもな。
今思えば、俺に勝利宣言をしたのも、探索者達を焚き付けたのも、池袋ハンターシティを最大限楽しみたかったからなのかも。あの時「難易度を上げる」と言っていたし。
「じゃね、また会おう」
ヒラヒラと手を振って人混みの中に消えて行く鯱女王。それをアイルを2人で見送った。
その数十秒後。
会場でギャアギャアと騒ぎ立てる声が聞こえた。後から聞いた話だが、このイベントを見に来ていた少年に、なぜか鯱女王が握手をしたそうだ。あまりのことに少年は失神。それで会場が大騒ぎになったらしい。
なぜ鯱女王が少年に握手を求めたのかは分からない。でも、きっと何か琴線に触れるヤツだったのだろう。
……。
「さ、表彰式よ」
俺の手を引っ張るアイル。その時ふと疑問に思った。そういえばアイルのヤツ、やたら俺の優勝にこだわってたよな。
「なんでアイルは俺が優勝することにこだわってたんだよ?」
アイルは顔を逸らしてポツリと呟いた。
「だって見たいじゃない、好きな人が喜ぶところ」
「え」
俺の声にアイルが振り返る。言われたことを尋ねようとすると、彼女は急激に顔を赤くさせた。
「え……えと……なんでもないわ! ほら! 早く行きましょ!」
アイルが慌てたようにステージの方へ顔を向ける。俺もなんだか聞いてはいけないような気がしてそれ以上は聞けなかった。
今の言葉……。
聞き間違い……だよな?
不死鳥を倒した後、リレイラさんから連絡があった。予想通り現れたもう一体のボス。それは鯱女王に倒されたらしい。それに加えて亜沙山からの使いも。黒幕を捕まえ、管理局へ引き渡したと……これで今日できることは全て終わった。後はルリアを説得するだけだ。
と、今後のことについて考えていると、今までボーッとしていたモモチーが急に我に返ったように大声を上げた。
「いけませんわ! 車をお出しなさい高輪! 品川と田町を迎えて討伐の続きですわよ!」
「ウェイ!」
「パララもんも乗せてって欲しいのだ! ポイ君と合流するのだ!」
あ、そういやまだ時間残ってたな。時間切れかモンスターの全数討伐で終了するってパンフレットに書いてあったし。不死鳥倒して完全に気が緩んでたぜ。
「モモチー。車、マスターに返しといてくれ」
「任されましたわ~!」
モモチーに頼むと、彼女はヒラヒラと手を振った。それを見てアイルが大声を出す。
「モモチー!! ここからが本当の勝負よ!」
「オーホッホッホ!! 天才であるワタクシは誰にも止められませんわよ!!」
モモチー達が車に飛び乗っていく。最後に乗り込んだパララもんはなぜか俺達の方を見て顔を赤くした。
「ありがとうなのだ!! 結果発表でまた会うのだ!」
「お~パララもんもがんばれよ~」
「……!? がんばるのだ!!」
パララもんがブンブンと両手を振る。振りすぎて荷台から落ちそうになるのをモモチーに助けられていた。面白いヤツだな。
彼女達を乗せた軽トラは、池袋駅西口の方へ車に走って行った。
「ほら! 早く行きましょヨロイさん!!」
突然、横にいたアイルが俺の手を握ってグイグイと引っ張っていこうとする。
「何そんなに慌ててるんだよ?」
「鯱女王がボス倒しちゃったからハンターシティのポイントトップになってるかもしれないじゃない!」
「? それがどうした?」
「優勝はヨロイさんなの! まだ時間あるから早く行きましょ!」
「あ、おい!」
俺の手を引っ張るアイル。困惑しているとジークが俺の肩を叩いた。
「ミナセ達のことは俺に任せておけ。鎧が優勝するところは俺も見たい」
「ジーク……」
「ふっふっふ! モモチー達には内緒にしてたけど、このサンシャインビル周辺のモンスターはまだ手付かずよ。今なら大量にポイントゲットできるわ」
「なんでそんなこと知ってんだ?」
「不死鳥と戦ってる時サンシャイン周辺を軽トラで走ったでしょ? その時にチェックしてたのよ!」
ははっ。ちゃっかりしてるな。誰に似たんだよ。
「ミナセも優勝してくれと言うだろう。鎧……鯱女王を倒してお前の名をハンターシティを見ている全員に知らしめてくれ」
不敵に笑うアイル。期待の目を向けるジーク。2人に「優勝」と言われて胸の奥に何かが込み上げるような感覚がした。
初めての感覚だ。今まで感じたことのないような……。
不死鳥を追いかけた辺りから色々考えすぎだったかもな。俺は楽しみたくてハンターシティに参加しようと決めていたんだ。
だったら、最後の最後まで楽しんでやるぜ。
「だからね……ほら、行こう?」
俺を信頼してくれるような目。なんか、今回はアイルにすごく助けられた気がするな。ジーク達を助けに行けたのも、不死鳥を倒せたのも……アイルのおかげだ。そのアイルが俺に優勝して欲しいと言ってる。
……。
やってみるか。
「よし! 行くぜアイル!」
「うん!!」
俺達は駆け出した。ハンターシティを完全攻略する為に。
◇◇◇
1時間後。
──池袋西口公園。
過去最大の参加者を記録したという池袋ハンターシティは、モンスターの全討伐をもって終了した。再び西口公園に集まった俺達は、ステージ前で結果発表の時を待っていた。
期待と不安の入り混じった顔をした探索者達。その背後では優勝者を見ようと観客達が集まっている。なんだか物々しい雰囲気だな……。
「コホン。え~参加者が集まった所で結果発表を行うのじゃ」
シィーリアがステージ前に立つ。彼女はマイクを持つと、観客と探索者達へ声をかけるように声を発した。
「まずは3位~10位の発表を行う。前方のモニターに注目するのじゃ!」
シィーリアの声と共にモニターにランキングが表示される。
3位 天王洲アイル 3830pt
4位 ポイズン社長 3150pt
5位 モモチー 2650pt
6位 田仲 2020pt
7位 パララもん 1650pt
8位 タルパマスター 1300pt
9位 ジークリード 1000pt
10位 勝者マン 900pt
「アイルちゃんが3位なんだ!!」
「3000pt超えとかすご!?」
「くぅ~!! 優勝を逃しましたわ!!」
「ポイズン社長4位!?」
「さっきの発表にはいなかったよな!?」
「何やったん!?」
「え、マジ? 集計ミスじゃね?」
「なんでポイ君が1番ビビッてるのだ!!」
「461さんと鯱女王が載ってないぜ!」
「どっちかが優勝なんじゃ……」
「っぱ鯱女王っしょ!」
「でも461さんがあのクソ強い不死鳥倒したんだぜ?」
「鯱女王は1人でボス討伐したじゃん!」
ザワザワと騒ぐ声が聞こえる。アイルのおかげであの後1時間で1200ptも稼ぐことができた。だが、鯱女王はもう1体のボスを1人で倒したらしいしな……その分を足せば1位になっていてもおかしくない。
考えていると、肩を叩かれた。振り返るとそこには不敵な笑みを浮かべる鯱女王の姿が。彼女は、俺の耳元にボソリと声を発した。
「ボクが倒したボス……5000ptはある力量だ。君達の倒した不死鳥ほどじゃないけど、1人で倒したボクの方が有利」
5000? まずいな……計算だと俺のポイントは4000ちょっとだぞ……。
そう思っていると、アイルが俺の手を握り、鯱女王を睨み付けた。
「トップ配信者の貴方は尊敬してるけど、今回の優勝はヨロイさんって決まってるの! 吠え面かかないでよね!」
アイルの挑発に呆気に取られたような顔をする鯱女王。彼女はふっと笑うと、元の不敵な顔に戻った。
「……ふふっ。面白いね、キミ達」
鯱女王がモニターに目を向ける。それに続くように俺とアイルもモニターへと視線を送った。
「続いて1位と2位の発表じゃ!!」
シィーリアの声と共に画面が切り替わる。そこに表示されたのは……。
映し出されたのは……。
……。
1位 461さん 4730pt
2位 鯱女王 4690pt
「すげええええええええええ!!?」
「4000pt越え!?」
「めちゃくちゃ僅差じゃん!?」
「うおあああああああああ!!!?」
「すごいのにゃ!!?」
「461さんの優勝なんだ!!?」
「え!? オルカが2位!?」
「ヨロイさんが不死鳥倒したからですわ!」
「いや、でもオルカ1人でボス倒してたじゃん!」
「なんで!?」
「そうだよおかしくね!?」
「集計変じゃん!?」
「は?」
ポツリと聞こえた鯱女王の声。どよめく会場。隣を見ると、鯱女王がビシリと固まったように画面を見つめていた。
周囲の声を抑えるようにシィーリアが手を上げる。
「説明するのじゃ! モニターに注目!!」
シィーリアが合図をすると、画面に鯱女王と巨大なペリカンのようなモンスターが戦う姿が映る。
「コヤツがオルカの倒したボス、オノクロタルスじゃ。このモンスターを解析した所、ヤツが溜め込んでいたレベルポイントは5000ptじゃった」
「え? じゃあ鯱女王のポイント少なくね?」
「集計ミス?」
「あ!」
「どうしたのだ?」
「い、いや……なんでもねぇ」
「よし。この映像を少し巻き戻してみよう」
シィーリアが指示を出すと、モニターの映像が映り変わる。そこに映っていたのは不鮮明な映像。オノクロタルスを遠くから撮影した物だった。そこには1人の探索者がオノクロタルスに攻撃している所が映っている。
「誰か攻撃してるんだ!」
「なんか魔法撃ってる?」
「ポイ君なのだ!?」
「そういや攻撃したんだよな、アイツに……」
「全然ダメージ受けてないじゃない!?」
「ひゃだ!? あの攻撃に何か秘密があるの!?」
「この時ポイズン社長が放ったのは猛毒の牙。これが実はオノクロタルスを毒状態にして体力を削っていたのじゃ!」
「!!?!?!?!?」
「はあ!?」
「毒!?」
「マジかにゃ!?」
「そんなんあり!?」
「それ言ったらめちゃくちゃ効いてたことになるじゃん!?」
「すげ……っ!?」
「ううん……確かに連続で毒打ち込んだわ、俺」
「だからなんでポイ君が関心してるのだ~!?」
そうか。モンスターから得られるレベルポイントは基本的には与えたダメージ量で決まる。毒ダメージの蓄積が溜まった所に鯱女王がトドメを刺した。それで……。
「そこで削った生命力は約半分!! こうしてオノクロタルスの5000ptはオルカ2500とポイズン社長2500に分けられたのじゃ!」
「えええええええええええ!?」
「マジかよおおおおおお!?」
「いや~毒弱点だったのかもなぁ」
「なんでポイ君が納得してるのだ!」
「謎はとけたんだ!」
「毒の注入……嫌いじゃないわ!!」
隣でその様子を見守っていた鯱女王。彼女は手をギュッと握り締めて俯いていた。震える体、徐々にそれが収まっていき、やがて笑い声に変わった。
「くっくくくふふふふふ……アレだけイキって負けるとか恥ずかし~wwww」
彼女はひとしきり笑った後、俺の顔をジッと見た。その顔はなんというか、暗い笑顔。性格が悪そうというかなんというか……引きこもってた時、久々に鏡で自分の顔を見た時、こんな顔をしていた気がする。
「完全に、計算ミスだ。僕の攻撃を2発必要なモンスターが、まさか体力の半分も削られた後だったなんて……くくっ。僕もまだまだだな」
……映像を見た限り鯱女王の攻撃は一撃が相当強力だ。それだけ技に自信を持っていれば、見誤るのも当然だろう。鯱女王の想像以上にあのボスは強力だったということなんだから。
「あのボスに遭遇したのも、もしかしたら誘導されてたりしてね」
鯱女王が俺の顔をジトリと見つめる。
ポイント表はオルカを焦らせ、いるかもしれないもう一体のボスにぶつけるための物だったが、それを説明するには全部話さないといけないしなぁ。
「今こうやってリザルトを見られてるのはお前のおかげだ。それでいいじゃん」
俺の顔を覗き込んでいた鯱女王。彼女は俺から答えが出ないと悟ると、諦めたようにため息を吐いた。
「まぁいいや。このイベントの全体像を把握していた君のほうが上手……だったということかな」
それだけ言うと、鯱女王がクルリと背を向けた。
「ちょ!? まだ表彰式あるわよ!?」
「ボクは興味無い。2人でやってくれ」
「どこ行くんだよ?」
「約束がね、あるんだ。多分あの子が会場にいるから。醜態を晒しちゃったけどまだ喜んでくれるかな……」
鯱女王が少しだけ寂しそうな顔をする。この女、悪いヤツではないのかもな。
今思えば、俺に勝利宣言をしたのも、探索者達を焚き付けたのも、池袋ハンターシティを最大限楽しみたかったからなのかも。あの時「難易度を上げる」と言っていたし。
「じゃね、また会おう」
ヒラヒラと手を振って人混みの中に消えて行く鯱女王。それをアイルを2人で見送った。
その数十秒後。
会場でギャアギャアと騒ぎ立てる声が聞こえた。後から聞いた話だが、このイベントを見に来ていた少年に、なぜか鯱女王が握手をしたそうだ。あまりのことに少年は失神。それで会場が大騒ぎになったらしい。
なぜ鯱女王が少年に握手を求めたのかは分からない。でも、きっと何か琴線に触れるヤツだったのだろう。
……。
「さ、表彰式よ」
俺の手を引っ張るアイル。その時ふと疑問に思った。そういえばアイルのヤツ、やたら俺の優勝にこだわってたよな。
「なんでアイルは俺が優勝することにこだわってたんだよ?」
アイルは顔を逸らしてポツリと呟いた。
「だって見たいじゃない、好きな人が喜ぶところ」
「え」
俺の声にアイルが振り返る。言われたことを尋ねようとすると、彼女は急激に顔を赤くさせた。
「え……えと……なんでもないわ! ほら! 早く行きましょ!」
アイルが慌てたようにステージの方へ顔を向ける。俺もなんだか聞いてはいけないような気がしてそれ以上は聞けなかった。
今の言葉……。
聞き間違い……だよな?
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高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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