461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第120話 武史、遭難者を見つける。

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 それから俺達は順調にモンスターを見つけ出して倒しては引き返した。引き返すたびに出口のカウントは進み、気付いたら「A4」出口まで進んでいた。

 モンスターが現れるのは異変とセット。光っていた蛍光灯が突然切れて真っ暗になったり、ポスターが増殖したり、あったはずの鏡が消滅したり……どれも気味が悪い物ばかりやった。しかし、今まで遭遇したモンスターは通常のモンスターばかり。ここの現象にあのモンスター達が関わってるとは思えん。ボスの能力でこんな事になっとるんやろうか。

 そんな事を考えていると、パララもんがモジモジし始めた。内股になってソワソワする様子……なんかあったんか?

「どうしたんやパララもん?」

「と、トイレに行きたいのだぁ……」

「どうせダンジョンなんだからよ~その辺の物陰にでも」

「ポイ君デリカシー無さすぎなのだ! 武史もいるのにそんなこと出来るわけないのだ!!」

「痛っ!? 冗談だって!」

 涙目でポイズン社長をポカポカと殴るパララもん。ま、まぁ……こんな狭いダンジョンやったら……いくらなんでもそれは可哀想やな。確か改札まで戻ればあったよな、トイレ。

 3人で道を引き返して改札を通り抜ける。突き当たりまで行くと、そこには中身が散乱したリュックがあった。

「おいこれ……さっきまで無かったよな。異変じゃ、ねぇよな」

 ポイズン社長が腰の剣を抜き、リュックをつつく。モンスターの気配は無い。普通のリュックみたいや。

「焦って置いていったってことか? じゃあミネミちゃんの兄貴はこの辺に隠れとるかもしれへん……」

「う~限界なのだ~! トイレトイレ~!!」

 言い終わる前にパララもんが女子トイレに走って行く。その様子を見てポイズン社長が肩をすくめた。

「ま、とりあえずリュックの中を見るか」

「そうやな、なんか分かればいいが……」

 リュックを漁る。中にあったのは回復薬に各種状態異常回復薬、煙幕玉……それと探索者用スマホ。

「やっぱ探索者のもんやな」

「にしてもスマホまで置いてくなんてよぉ。よほど焦ってたのか?」

 と、話していたその時、急に大声が聞こえた。



「ひやあああああああああああああああああああああああ!?」


「今のパララもんの声ちゃうか!?」

「モンスターか!?」


 俺達は急いで女子トイレに向かった。




 ……。




「最低! 最低! 最低なのだ!!! 謝って欲しいのだ!!!」

「ごめんなさいごめんなさい!!」


 女子トイレの中に入ると、仁王立ちするパララもんと土下座する男の姿があった。

「どうしたんだよパララ?」

 ポイズン社長の質問に、パララもんは顔を真っ赤にしながら答える。

「パララもんがその、あの……しようとしたらこの人がいきなりドアをバンッて開けたのだ!!」

「ごめんなさいごめんなさい!! 助けが来たかと思って……というか誰かいるのが嬉しくつい……」

「ついじゃないのだ!!」

「ごめんなさい!!」

 ひたすら謝り倒す男子。その見た目は10代くらいに見えた。モンスターの皮で作られた胸当てに籠手……いかにも初心者ですって感じの空気に、どことなくミネミちゃんに似ている顔。それで1発で分かった。

「アンタ……方内ミネミちゃんの兄貴か?」

「え?」

 彼は、驚いたように俺達を見た。



◇◇◇

 その男子は「方内ワタリ」と名乗った。ワタルかと思ったらワタリらしい。

「で? なんで女子トイレに隠れていたのだ?」

 改札前まで戻った俺達はワタリから事情を聞くことにした。パララもんは怒りの形相で仁王立ち。ワタリはなぜか正座させられていた。

「うう……すっごく怖いヤツに追いかけられていたんです。それで、慌てて改札の中に逃げ込んで、トイレが目に入ったから……女子トイレとか気にする余裕が無かったんです」

 涙目のワタリ。彼の怯えた様子を見て、パララもんの怒りも落ち着いたように見えた。逆立っていた彼女の髪も、今ではペタリと元の髪型に戻っている。

「怖いヤツ? 一体どんなヤツやったんや?」

「はい……ワイシャツを着たおじさんでした」

「は?」

「髪が短くて、ワイシャツを着ていて、右手にカバンを持ったおじさんが……ずっと追いかけてきたんです。どれだけ先に進んでもずっと追いかけてきて……それで……僕の前まで来た瞬間……」

 ワタリの話を食い入るように聞いていたせいか、ポイズン社長とパララもんは身を乗り出した。

「どうなったんだよ?」
「ど、どうなったのだ?」

「えっと……真っ黒い騎士、みたいなヤツに変異したんです。ゴツくて、デッカい盾を持っていて、ヘルムの中はにこやかなおじさんの顔のままで……それで攻撃してきて……」

 オッサンに擬態しとるってことか? ゴツい騎士になっても顔はオッサンって逆に怖いな。でもなんの為にオッサンに? まあ、今はそのことはええわ。

「それで、ソイツはどこにおったんや? いや、「何番」の出口の時に遭遇した?」

「確か「A8」出口だったと思います。自動筆記ワーダイトの文字見て、書かれた通りに進んだので」

「え!? お前初心者であのモンスター達倒してきたのかよ!?」

 感心したように大声を出すポイズン社長。ワタリは申し訳なさそうに首を振った。

「いえ、遭遇したらずっと逃げていました。あの自動筆記ワーダイトに書かれていたのは「魔物がいたら引き返すこと」でしたよね? だから逃げれば先に進めました。出口の番号が変わればモンスターはいなくなりますし」

「そ、そうやったんか……」
「倒さなくてもよかったのだ?」
「もっと分かりやすく書けよな~」

 俺達の反応を見てワタリが不安そうな顔をする。ちょっと申し訳ないな……。

 不安をなんとかしてやりたくてワタリに声をかける。

「心配すんな。絶対ミネミちゃんのもとに返したる。A級が2人もおるんや。絶対大丈夫やで」

「あ、ありがとうございます。そちらの2人はポイズン社長とパララもんですよね? 攻略動画見たことあります」

「わ! 見てくれててうれしいのだ!」
「この武史も強いんだぜ! だから安心しろよな!」 

 ポイズン社長に背中を叩かれる。俺ってそんなに役に立ってるんやろうか……? 敵が分裂したりするとポイズン社長がほとんど倒してたし、俺がやったことと言えば、2人の壁的なことしたくらいやしな……。

 あ。ダメやダメや。今はワタリを安心させることが先決やろ。ここは自信があるように見せやなあかん所や。


「戦闘は任せとけ。それで、その騎士に遭遇してからはどう動いた?」


「めちゃくちゃに逃げたせいで「A1」まで戻されちゃったんです。なんとか「A4」まで戻ったんですが……疲れてモンスターから逃げられなくなって……トイレに」

 逃げ込んだってことか。

 話をふむふむと聞いていたポイズン社長は、スマホを開いて何かを調べ始めた。

「擬態に怪異に重装騎士……か。そういやそんな話どっかで……お、ネット繋がるじゃん。さすが探索者用スマホだな」

 小気味よく画面をタップするポイズン社長。彼は目的の物を見つけたようで、俺達にスマホの画面を差し出した。

「今の話、どっかで聞いたことあるなと思ったんだけどよ、それコイツじゃね?」

 差し出されたのはダンジョン攻略情報を発信している「ウォタク」のサイトだった。そこのボスモンスター欄から1体を選び、ポイズン社長が1体のモンスターの情報欄をタップする。


悪夢の重装騎士ナイトメア・アーマー

幻影騎士ミラージュナイトから進化したボスモンスター。悪夢領域ナイトメア・フィールドを展開し、その領域を支配する。領域内はループ空間となっている。閉じ込められた者が脱出する寸前や油断したタイミングで現れ、獲物を捕食する。

 悪夢領域は特殊な手順に沿わないと脱出できない。手順は個体により異なる。また、見たことのある者へ擬態することがある。注意が必要。


「ほ、ホンマや。ここが悪夢領域やとすればこの現象に全部説明がつくで」

「な? 結構このサイト見るからよ、覚えてたんだ」

 これで攻略の糸口を掴んだ。ウォタクって俺の中野攻略の時にもコメントくれたよな。こういう情報あるだけでホンマ助かるな。

「じゃ、じゃあ……あのおじさんは擬態した姿だったんですね……」

「きっと逃げ帰った探索者がそういうヤツだったんやろな」

「というか、ワイシャツに手持ちカバンなんて……そんな装備でダンジョンに行くんじゃないのだ!!」

 プンプンと怒るパララモン。彼女はズボンの肩紐がズレたのを直しながらさらに怒り散らす。そんな様子を見かねたのか、ポイズン社長が苦笑して彼女をなだめた。彼の黒いスーツが電灯に照らされテラテラと光る。2人の装備……いや、服も中々アレやぞ。


「ダンジョンを舐めてるのだ! 脳天気・・・に攻略しようとしていたに決まってるのだ!」


 パララもん。お前とポイズン社長も似たようなもんやろ。

 俺は、心の中でツッコミを入れた。


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