461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第119話 武史、突破口を見つける。

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 A1出口と書かれた看板前を走って角を曲がる。進んだ先には先ほどと同じ光景が広がっていた。あのポスターに駐輪場に続く道。それだけが目の前に、あった。

「な、なんやこれ? 戻された……のか?」

 頭が混乱する。転移魔法か? いや、転移してるなら流石に分かるはずや。目の前が白くなったりするはずやから。

 引き返してみる。パララもん達の前を通り過ぎ、角を左に曲がると階段があった。そこを下る。その先にはまたも真っ直ぐ伸びた道。今俺が見たばかりの光景を逆側から見ていた。

 走り抜けてA1出口まで行くと、通り過ぎたはずのパララもんとポイズン社長がいた。2人は驚いたような顔で俺を見た。

「あれ? こっちの道に行ったのに反対から武史が来たのだ」

「変わった趣向のダンジョンだな~」

 ダメや……状況が分かってないで。なんて説明すればいい? とにかく、今俺が見た光景を伝えるしかないか。


 俺は、できる限り伝わるようこの変な現象のことを説明した。


 ……。


「え、それってループしてるってことじゃね?」
「閉じ込められたのだ!!」


 説明を終えると、2人は同時に声を上げた。このダンジョンの評価が変わった意味が理解できたで。一度入ると出られない。これが、清澄白河のダンジョンが高難度になった理由、か。


 ……ん?


「でもこのダンジョン、逃げ出した奴・・・・・・がおったよな?」

「そういやそうじゃん。だったら出る方法もあるってことかよ~ビビらすなよなマジで」

 ポイズン社長がニッと笑う。能天気な奴やな……羨ましいでホンマに。だが、そのおかげか少し気分が楽になった気がした。

 ……いかんな。俺も最近考えすぎや。もっと肩肘張らずに挑んだ方がいい。深刻に捉えすぎると脱出する前に精神がイカれてまうわ。

「ま、とりあえず何か脱出のヒントが無いか探そうぜ~」

「せやな。方法があるのは間違いないはずやしな」

 それとミネミちゃんの兄貴や。見て回った感じやと人影は無かった。それとさっき回ってみて気付いたことがある。このダンジョンに来た時は他の出口に向かう案内版があったはずやのに、今は「A1」出口に向かう直進と改札内しか空間が無くなっとる……この中でミネミちゃんの兄貴が見つからないということは、このループを抜けた先におるのかもしれん。

 生きておれば……やが。

 いや、何を疑っとんねん! お前が信じなくてどうするんや武史!

 自分に言い聞かせて探索を再開した。



◇◇◇

 しばらく脱出のキッカケが無いかを探していると、パララもんが看板の近くに何かを見つけた。

「見て! ここに筆記魔法ワーダイトがあるのだ!」

 パララもんの指す先には確かに魔法で書かれた赤い文字が光っていた。ふよふよと漂う文字は探索者用スマホに搭載された機能、筆記魔法ワーダイトで書かれた証。ここに潜った探索者が記録として残したのか。

「どれどれ~なんて書いてあるんだ?」

 ポイズン社長が刻まれた文字を読み上げる。そこにはこう書かれていた。


・魔物を見逃さないこと。

・魔物がいたら引き返すこと。

・魔物がいなかったら、引き返さないこと。

・A8出口には%&がい/気を#_ろ。


「最後だけ文字化けしてるな。読めねぇや」
「書いた人、慌てていたのかもしれないのだ」


 ポイズン社長もパララもんも首を傾げる。続きが無いかと壁周辺をくまなく探したが、結局それ以外のヒントは見つからなかった。


「魔物を見逃さないことってなんや? どっかに隠れてるってことか?」


 じゃあ、ここのループは魔物……モンスターが引き起こしとるということか。なんとか見つけながら進まんとな。



◇◇◇

 3人でさらに進む。今度は魔物を探すため慎重に。しかし、1時間ほど探索しても、一向に魔物は見つからない。やがて諦めて先に進もうとした時、突然パララもんが立ち止まった。

「どうしたパララ?」

「なんか見つけたんか?」

 パララもんが壁に貼られていたポスターを訝しげに見つめる。ポスターの中の人物達は怒ったような表情をしていた。

「この人達……さっき通った時は笑顔だったのだ」

 パララもんに言われて思い出す。確かに全員笑顔のポスターやった。ということは……ここに何か秘密があるってことかも。

「なぁ、ちょっとこのポスター剥がしていいか?」

「いいのだ」
「いいぜ」

 ポイズン社長とパララもんが身構える。俺も背中の飛龍殺しに右手をかけ、勢いよくポスターを引き剥がした。

 そこにあったのは黒い影。その影から8本の脚が伸びる。そして徐々に形を変えてデカい蜘蛛みたいなモンスターへと変化した。

「グアアアア!!!」

「やっぱりおったで!!」

 飛竜殺しを壁に叩き付ける。しかし蜘蛛になった影は大剣の斬撃をスルリと躱し、パララもんへと襲いかかった。

「外した!? コイツ素早いで!?」

「ひゃ~~~~!? 気持ち悪いのだ~!!」

 彼女に蜘蛛が飛びかかる刹那。

「おっと、シャドウスパイダーか」

 ポイズン社長の剣が蜘蛛を受け止めた。

「グアッ!!」

 ターゲットをポイズン社長へ変える蜘蛛。ヤツがその8本の脚の連続突きを放つ。それをポイズン社長が剣先でいなしていく。戦闘技術高いな。敵を前にしてペースを崩さん胆力もある。相当戦い慣れとるな。

「グアアアアアア!!」

 蜘蛛は連続突きが効かないと悟ると、ポイズン社長へ糸を吐きかけた。それを左手で受け止める。

 糸を手繰り寄せて蜘蛛を蹴り飛ばすポイズン社長。彼はパララもんへ向かって叫んだ。

「防御高い個体だわ~。パララ! 麻痺魔法パラライズ使え!」

「了解なのだ! 麻痺魔法パラライズ!!」

 パララもんが手をかざし麻痺魔法パラライズを発動する。それが直撃した蜘蛛が痺れたように動きを止めた。

「武史! 攻撃頼んだぜ!」

「お、おう!!」

 攻撃を完全に俺へ任せたという声。さっき会ったらばかりなのになんでここまで任せられるんや? いや、疑問に思っていてもしゃあない。今は攻撃するのが先決や!

 飛龍殺しを引き抜き振りかぶる。鉄塊のような大剣を大蜘蛛めがけて振り下ろした。

「だらぁ!!」

「ギャアッ!?」

 一撃で大蜘蛛を叩き潰す。しかし、その体は黒い霧のように霧散し、小さな子蜘蛛達に変わってしまった。

「なんや!? 増えたで!?」

 蜘蛛達が一斉に通路奥へと逃げ込んでいく。

 マズイ、逃げられる!? 逃げられたらどうなるんやこれ!? 「倒したら戻れ」やったよな!?

 そう思った時、ポイズン社長は俺の肩を叩いた。振り返ると、彼は何も言わずに親指を立てる。

 なんや? なんでこんな余裕あるんやコイツ?

「パララ。新技使え」

「任せるのだ!」

 パララもんは通路を逃げる子蜘蛛達を見つめると、真っ直ぐ両手を伸ばす。その両手に魔力が集まり、彼女の手を眩く輝かせた。


「麻痺光波《パララ・ウェーブ》!!」


 直後、パララもんの両手から光の波動のような物が発せられる。一瞬のうちに遥か向こうまで放たれる光の波動。それに当たった子蜘蛛達は、体が麻痺して地面へ倒れ込んでしまう。

「仕上げだな。猛毒の牙ヴェノム・ファング

 ポイズン社長が魔法名を告げると、彼の周囲に毒々しい色をした円錐状の物体が現れる。1、2、3、4……全部で8つ。それはポイズン社長が手をかざすと子蜘蛛達へと1本ずつ突き刺さった。


「キ、イアアアアアアアアア!?」

 通路に子蜘蛛達の声が響く。やがて子蜘蛛達は力尽きたように倒れ込み、その体からレベルポイントの光を溢れさせた。


「すげ……めっちゃ強いやん」


「アイツら毒属性持ちの蜘蛛じゃ無いからな。ま、俺の毒魔法ならボスの耐性も貫通するけどなっ!」

「ハンターシティのオノクロタロスの時に気付いたクセによく言うのだ!」

「まぁいいじゃん! なははは~!」

 とぼけたように笑うポイズン社長。コイツ……ふざけとるがメチャクチャ強い……コイツ1人の力やなくて、パララもんや俺も使う事で最善の手を考えるタイプや……ヨッさんのタイプに近いかもしれん。


「そんなことよりモンスター倒した訳だし戻ってみようぜ」

 ポイズン社長はニッと笑った。



◇◇◇

 3人でもと来た道を戻る。すると、先程まで「A1」出口と書いてあった出口が「A2」出口になっていた。

「お! 変わっとる!」

「やったのだ! 成功なのだ!」

 パララもんが俺の手を取ってピョンピョン飛び跳ねる。俺も嬉しくなってつい飛び跳ねてしまう。それをポイズン社長に見られてことに気付いて急に顔が熱くなった。

「な、なんや……?」

「いや~? さっきよりいい顔になったと思ってよ。辛気臭え顔しててもしょうがないじゃん、遭難した新人は大丈夫だって。俺らが見つけりゃ問題無し! 気楽に行こうぜ~」

「絶対、新人を見つけて出てやるのだ~!」

 緩い雰囲気の2人。でも、戦闘を経験した後はハッキリ分かる。コイツらは頼りになるってことが。

「にしてもパララ・ウェーブって面白い名前だよな~笑えるぜ~!」

「う、うるさいのだ! 僕もまだ慣れて無いから恥ずかしいのだ!」

 そんな2人を見ていたら……深刻な状況にも関わらず、楽しいと思ってしまう自分がいた。


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