461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
121 / 302

第118話 武史、異変を見つける

しおりを挟む
 目の前のポイズン社長とパララもんは不思議そうな顔で俺を見た。なんか2人から見られると妙に居心地が悪い。

「な、なんや……?」

「あ!」

 ポイズン社長が声を上げる。それとほぼ同時にパララもんも何かを思い出したかのように手を叩いた。


「お前、鉄塊の武史だろ!?」
「Dチューブの人気動画に上がってたのだ!」


「へ? そ、そうなんか?」

 そういや最近通知が多かったが……人気動画? ハンターシティ以降は何もアップしとらんぞ俺は。

 まぁ……再生数のチェックも無意識に避けてたしな。知らんのも当たり前か。


「知らねーのか? 461さんがハンターシティ優勝しただろ?」

「その影響で過去の動画めちゃくちゃ見られてるのだ! 特に鉄塊の武史との中野コラボは人気なのだ!」

 ポイズン社長が思い出したように笑う。

「あのコメ民の熱量ヤベーよな! クッソ笑ったぜ~」
「人気配信者なのだ!」

「人気って……アンタらより全然やで……俺、B級やし……」

 口にして自分で悲しくなる。前にヨッさんに偉そうなこと言ったのに、結局俺もランクで力量測っとるやないか。本当に情けない。自分の今までの努力とか、色んなもんが信用できなくなって来たで……。


「……」


 うつむいていると、視界の隅に突然パララもんが映った。

「うわっ!?」

 にゅっと覗き込んで来る大きな丸い目。それがすぐ目の前にあって思わずのけ反ってしまう。


「ねぇポイ君? この人とコラボしてもいいのだ?」


「俺は構わないぜ~」


「コラボ!? そんな、俺なんか……」


 戸惑っていると、パララもんが手を差し出して来た。


「君が良かったら、なのだ。せっかく同じダンジョンに行くから、協力した方がお互い安全かなって」


「あ、ああ……それも、そうやな……」


 ……確かに。今は遠慮しとる場合ちゃう。ミネミちゃんの兄貴を救出せなあかんのや。人手は多いに越したことはない。


「じゃあ……ありがたく受けさせて貰うて。それと1つ協力してくれんか?」

「協力?」
「協力なのだ?」

 俺は、2人に事情を説明した。



◇◇◇


 その後10分ほどかけて入り口を調べた。何も見つからず途方に暮れかけた頃、疲れたパララもんが壁にもたれかかると壁面に隠されていた転移魔法陣が発動した。

「わ!?」

 白く光って消えるパララもん。ポイズン社長と顔を見合わせ、意を決して転移魔法陣に手をあてた。

 目の前に広がる白い光。それが眩しくて思わず目を閉じてしまう。

 次に目を開くと駅のホームに立っていた。真っ白い床に転落防止用の柵。なんの変哲もない駅のホーム。ダンジョン化する前の景色がそのまま残ってるみたいやな。


「ここが清澄白河きよすみしらかわダンジョンの中か? ただの駅やん」


 周囲を見回していると、柱の陰に隠れていたパララもんがヒョコッと顔を出す。

「2人とも遅いのだ! 不安だったのだ!」

「悪かったって。にしても転移先にモンスターいなくて良かったな。パララ1人だと流石にヤバかったぜ~」

「こんな中に探索者歴の浅い子がいるなんて心配なのだ!」

 両手を胸の前に構えて気合いを入れるパララもん。可愛らしい動きに妙に気が抜けてしまう。

 顔を叩いて気合いを入れ直した。

「先に進むか……準備はええか2人とも?」

「いいぞ~」
「行けるのだ!」

「じゃあ、行くで」

 駅の中を進む。ホームから改札を出て左へ。まずは先ほどのA1出口へと向かう。俺達が入ろうとしていたシャッターの場所へ。


 ……。


 しかし、中はなんの変哲もない駅構内で拍子抜けしてしまった。モンスターもおらへんし、ただ人の歩いていない道だけがずっと続いている。結局、何も起きないままシャッターの裏側まで来てしまって引き返すことにした。


 今度は戻りの通路を3人で進んでいく。左の角を曲がってすぐ右へ。するとまたずーっと続く直線。ホントにダンジョンなんかこれ? ただの駅にしか見えんけどなぁ。


 しばらく歩いていると、急にポイズン社長がピタリと足を止めた。そして、壁にあるポスターをジッと見つめる。

「どうしたんや?」

「いや、なんとなく気になってさ」

 壁には俳優が写ったポスターが貼ってあった。にこやかに笑う主人公に、周囲に映る美男美女。テレビドラマのポスターか? 2021年1月放送と書かれとるな……その頃から駅はそのままの姿を残しとるってことか。

「最近じゃすっかり見ないようになったよな、こういうの」

 ポイズン社長が腕を組んでポスターを眺める。どことなく悲しげな表情。何か思う所があるんやろか?

「そうか? 俺の地元やとまだ結構見るで?」

「そりゃ政治家もテレビ局もみーんな京都に行ったしな。近くの大阪ならあるだろ」

 俺の地元、三重やから大阪とは違うんやが……説明するのも面倒なのでそのままにしておく。

 俺達が話していると、パララもんはいつの間にか周囲の壁を調べていた。

「何やってんだよパララ?」

「入り口みたいに転移魔法陣があるかもしれないのだ。遭難した子はもたれかかって転移しちゃったのかも!」

 パララもんの様子は真剣そのもの。感心していると、隣にいたポイズン社長がふっと笑った。

「どうしたんや?」

「いやぁパララのヤツ、この前まで超ビビりだったんだよ。ハンターシティの不死鳥戦がいい経験になったらしくてよ~」

 そういや後でネットニュースで見たが……パラランもんってボスモンスターに攫われたって載ってたな。


 ポイズン社長はパララもんの様子を嬉しそうに見つめた。

「攫われた時はヒヤヒヤしたが、結果的にこうなって良かったぜ。パララを助けてくれたヤツらに感謝だな」


 ヨッさん461さんと天王洲アイルがパララもん助けたんやったよな。ヨッさん……俺らと戦ってボスまで倒すなんてアンタはハンターシティでどんだけエグい動きしてたんや……。


「僕はもっと強くなるって決めたのだ~!」

「パララは461さんに会いてーんだもんなっ!」

 顔を真っ赤にするパララもん。ヨッさんてモテるんやな。羨ましいなクソッ。


 ていうかあれ?

 ヨッさんって彼女おらんかったっけ?


 「リレイラさん」っていう魔族の美人さんとお泊まりするとか言ってたような……それに中野のダンジョンに挑む時のあの雰囲気……完全に恋人同士みたいやったし。

 ……。


「パララもんはもっともっと強くなって一緒にパーティ組むのだ! ハートを射止めるのだ!」


 目をキラキラ輝かせながら気合いを入れるパララもん。なんか、完全に乙女やな。ま、まぁ……黙っておいてやるのが優しさか。

 それにしても、相方のポイズン社長はいいんか? パララもんのハート完全に持ってかれとるぞ。


「いや~やっぱさ、の恋は応援してやりてーよな!」


「妹!? アンタら兄妹やったんか!?」

「あれ? これって公開プロフィールじゃなかったっけ? まぁいいや! なはははは~!!」

「もう! あんまり461さんのこと言いふらさないで欲しいのだ~!!」

 能天気そうに笑うポイズン社長に、顔を真っ赤にしながらその背中を叩くパララもん。

 なんか……あんなに焦っていたのに2人と一緒やと気が抜けてばっかなんやが……。



◇◇◇

 さらに真っ直ぐ進むと突然雰囲気が変わった。他の場所よりも暗い通路。その奥には「地下駐輪場」と書かれた看板と、上に登る階段があった。

「何やここの電灯? 並びめちゃくちゃやないか」

「なんか不気味だな~パララもこれは怖いんじゃね?」

「こ、怖くないのだ!」

 天井にぐちゃぐちゃに並んだ蛍光灯。それがチカチカ光る道を、警戒しながら進んで行く。

 そして、階段を登って右へ曲がるとそこは……。


「は?」
「え?」
「のだ?」


 見たことある風景。看板を見ると「A1出口」の文字。


「え、俺ら、駐輪場に出たはずやったよな?」


 A1出口から駐輪場に向かっていたはずの俺達は、A1出口前にいた。自分でも何を言っているか分からないが、確かにそこは、先ほど歩いた場所だった──。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...