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第118話 武史、異変を見つける
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目の前のポイズン社長とパララもんは不思議そうな顔で俺を見た。なんか2人から見られると妙に居心地が悪い。
「な、なんや……?」
「あ!」
ポイズン社長が声を上げる。それとほぼ同時にパララもんも何かを思い出したかのように手を叩いた。
「お前、鉄塊の武史だろ!?」
「Dチューブの人気動画に上がってたのだ!」
「へ? そ、そうなんか?」
そういや最近通知が多かったが……人気動画? ハンターシティ以降は何もアップしとらんぞ俺は。
まぁ……再生数のチェックも無意識に避けてたしな。知らんのも当たり前か。
「知らねーのか? 461さんがハンターシティ優勝しただろ?」
「その影響で過去の動画めちゃくちゃ見られてるのだ! 特に鉄塊の武史との中野コラボは人気なのだ!」
ポイズン社長が思い出したように笑う。
「あのコメ民の熱量ヤベーよな! クッソ笑ったぜ~」
「人気配信者なのだ!」
「人気って……アンタらより全然やで……俺、B級やし……」
口にして自分で悲しくなる。前にヨッさんに偉そうなこと言ったのに、結局俺もランクで力量測っとるやないか。本当に情けない。自分の今までの努力とか、色んなもんが信用できなくなって来たで……。
「……」
俯いていると、視界の隅に突然パララもんが映った。
「うわっ!?」
にゅっと覗き込んで来る大きな丸い目。それがすぐ目の前にあって思わずのけ反ってしまう。
「ねぇポイ君? この人とコラボしてもいいのだ?」
「俺は構わないぜ~」
「コラボ!? そんな、俺なんか……」
戸惑っていると、パララもんが手を差し出して来た。
「君が良かったら、なのだ。せっかく同じダンジョンに行くから、協力した方がお互い安全かなって」
「あ、ああ……それも、そうやな……」
……確かに。今は遠慮しとる場合ちゃう。ミネミちゃんの兄貴を救出せなあかんのや。人手は多いに越したことはない。
「じゃあ……ありがたく受けさせて貰うて。それと1つ協力してくれんか?」
「協力?」
「協力なのだ?」
俺は、2人に事情を説明した。
◇◇◇
その後10分ほどかけて入り口を調べた。何も見つからず途方に暮れかけた頃、疲れたパララもんが壁にもたれかかると壁面に隠されていた転移魔法陣が発動した。
「わ!?」
白く光って消えるパララもん。ポイズン社長と顔を見合わせ、意を決して転移魔法陣に手をあてた。
目の前に広がる白い光。それが眩しくて思わず目を閉じてしまう。
次に目を開くと駅のホームに立っていた。真っ白い床に転落防止用の柵。なんの変哲もない駅のホーム。ダンジョン化する前の景色がそのまま残ってるみたいやな。
「ここが清澄白河ダンジョンの中か? ただの駅やん」
周囲を見回していると、柱の陰に隠れていたパララもんがヒョコッと顔を出す。
「2人とも遅いのだ! 不安だったのだ!」
「悪かったって。にしても転移先にモンスターいなくて良かったな。パララ1人だと流石にヤバかったぜ~」
「こんな中に探索者歴の浅い子がいるなんて心配なのだ!」
両手を胸の前に構えて気合いを入れるパララもん。可愛らしい動きに妙に気が抜けてしまう。
顔を叩いて気合いを入れ直した。
「先に進むか……準備はええか2人とも?」
「いいぞ~」
「行けるのだ!」
「じゃあ、行くで」
駅の中を進む。ホームから改札を出て左へ。まずは先ほどのA1出口へと向かう。俺達が入ろうとしていたシャッターの場所へ。
……。
しかし、中はなんの変哲もない駅構内で拍子抜けしてしまった。モンスターもおらへんし、ただ人の歩いていない道だけがずっと続いている。結局、何も起きないままシャッターの裏側まで来てしまって引き返すことにした。
今度は戻りの通路を3人で進んでいく。左の角を曲がってすぐ右へ。するとまたずーっと続く直線。ホントにダンジョンなんかこれ? ただの駅にしか見えんけどなぁ。
しばらく歩いていると、急にポイズン社長がピタリと足を止めた。そして、壁にあるポスターをジッと見つめる。
「どうしたんや?」
「いや、なんとなく気になってさ」
壁には俳優が写ったポスターが貼ってあった。にこやかに笑う主人公に、周囲に映る美男美女。テレビドラマのポスターか? 2021年1月放送と書かれとるな……その頃から駅はそのままの姿を残しとるってことか。
「最近じゃすっかり見ないようになったよな、こういうの」
ポイズン社長が腕を組んでポスターを眺める。どことなく悲しげな表情。何か思う所があるんやろか?
「そうか? 俺の地元やとまだ結構見るで?」
「そりゃ政治家もテレビ局もみーんな京都に行ったしな。近くの大阪ならあるだろ」
俺の地元、三重やから大阪とは違うんやが……説明するのも面倒なのでそのままにしておく。
俺達が話していると、パララもんはいつの間にか周囲の壁を調べていた。
「何やってんだよパララ?」
「入り口みたいに転移魔法陣があるかもしれないのだ。遭難した子はもたれかかって転移しちゃったのかも!」
パララもんの様子は真剣そのもの。感心していると、隣にいたポイズン社長がふっと笑った。
「どうしたんや?」
「いやぁパララのヤツ、この前まで超ビビりだったんだよ。ハンターシティの不死鳥戦がいい経験になったらしくてよ~」
そういや後でネットニュースで見たが……パラランもんってボスモンスターに攫われたって載ってたな。
ポイズン社長はパララもんの様子を嬉しそうに見つめた。
「攫われた時はヒヤヒヤしたが、結果的にこうなって良かったぜ。パララを助けてくれたヤツらに感謝だな」
ヨッさんと天王洲アイルがパララもん助けたんやったよな。ヨッさん……俺らと戦ってボスまで倒すなんてアンタはハンターシティでどんだけエグい動きしてたんや……。
「僕はもっと強くなるって決めたのだ~!」
「パララは461さんに会いてーんだもんなっ!」
顔を真っ赤にするパララもん。ヨッさんてモテるんやな。羨ましいなクソッ。
ていうかあれ?
ヨッさんって彼女おらんかったっけ?
「リレイラさん」っていう魔族の美人さんとお泊まりするとか言ってたような……それに中野のダンジョンに挑む時のあの雰囲気……完全に恋人同士みたいやったし。
……。
「パララもんはもっともっと強くなって一緒にパーティ組むのだ! ハートを射止めるのだ!」
目をキラキラ輝かせながら気合いを入れるパララもん。なんか、完全に乙女やな。ま、まぁ……黙っておいてやるのが優しさか。
それにしても、相方のポイズン社長はいいんか? パララもんのハート完全に持ってかれとるぞ。
「いや~やっぱさ、妹の恋は応援してやりてーよな!」
「妹!? アンタら兄妹やったんか!?」
「あれ? これって公開プロフィールじゃなかったっけ? まぁいいや! なはははは~!!」
「もう! あんまり461さんのこと言いふらさないで欲しいのだ~!!」
能天気そうに笑うポイズン社長に、顔を真っ赤にしながらその背中を叩くパララもん。
なんか……あんなに焦っていたのに2人と一緒やと気が抜けてばっかなんやが……。
◇◇◇
さらに真っ直ぐ進むと突然雰囲気が変わった。他の場所よりも暗い通路。その奥には「地下駐輪場」と書かれた看板と、上に登る階段があった。
「何やここの電灯? 並びめちゃくちゃやないか」
「なんか不気味だな~パララもこれは怖いんじゃね?」
「こ、怖くないのだ!」
天井にぐちゃぐちゃに並んだ蛍光灯。それがチカチカ光る道を、警戒しながら進んで行く。
そして、階段を登って右へ曲がるとそこは……。
「は?」
「え?」
「のだ?」
見たことある風景。看板を見ると「A1出口」の文字。
「え、俺ら、駐輪場に出たはずやったよな?」
A1出口から駐輪場に向かっていたはずの俺達は、A1出口前にいた。自分でも何を言っているか分からないが、確かにそこは、先ほど歩いた場所だった──。
「な、なんや……?」
「あ!」
ポイズン社長が声を上げる。それとほぼ同時にパララもんも何かを思い出したかのように手を叩いた。
「お前、鉄塊の武史だろ!?」
「Dチューブの人気動画に上がってたのだ!」
「へ? そ、そうなんか?」
そういや最近通知が多かったが……人気動画? ハンターシティ以降は何もアップしとらんぞ俺は。
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「知らねーのか? 461さんがハンターシティ優勝しただろ?」
「その影響で過去の動画めちゃくちゃ見られてるのだ! 特に鉄塊の武史との中野コラボは人気なのだ!」
ポイズン社長が思い出したように笑う。
「あのコメ民の熱量ヤベーよな! クッソ笑ったぜ~」
「人気配信者なのだ!」
「人気って……アンタらより全然やで……俺、B級やし……」
口にして自分で悲しくなる。前にヨッさんに偉そうなこと言ったのに、結局俺もランクで力量測っとるやないか。本当に情けない。自分の今までの努力とか、色んなもんが信用できなくなって来たで……。
「……」
俯いていると、視界の隅に突然パララもんが映った。
「うわっ!?」
にゅっと覗き込んで来る大きな丸い目。それがすぐ目の前にあって思わずのけ反ってしまう。
「ねぇポイ君? この人とコラボしてもいいのだ?」
「俺は構わないぜ~」
「コラボ!? そんな、俺なんか……」
戸惑っていると、パララもんが手を差し出して来た。
「君が良かったら、なのだ。せっかく同じダンジョンに行くから、協力した方がお互い安全かなって」
「あ、ああ……それも、そうやな……」
……確かに。今は遠慮しとる場合ちゃう。ミネミちゃんの兄貴を救出せなあかんのや。人手は多いに越したことはない。
「じゃあ……ありがたく受けさせて貰うて。それと1つ協力してくれんか?」
「協力?」
「協力なのだ?」
俺は、2人に事情を説明した。
◇◇◇
その後10分ほどかけて入り口を調べた。何も見つからず途方に暮れかけた頃、疲れたパララもんが壁にもたれかかると壁面に隠されていた転移魔法陣が発動した。
「わ!?」
白く光って消えるパララもん。ポイズン社長と顔を見合わせ、意を決して転移魔法陣に手をあてた。
目の前に広がる白い光。それが眩しくて思わず目を閉じてしまう。
次に目を開くと駅のホームに立っていた。真っ白い床に転落防止用の柵。なんの変哲もない駅のホーム。ダンジョン化する前の景色がそのまま残ってるみたいやな。
「ここが清澄白河ダンジョンの中か? ただの駅やん」
周囲を見回していると、柱の陰に隠れていたパララもんがヒョコッと顔を出す。
「2人とも遅いのだ! 不安だったのだ!」
「悪かったって。にしても転移先にモンスターいなくて良かったな。パララ1人だと流石にヤバかったぜ~」
「こんな中に探索者歴の浅い子がいるなんて心配なのだ!」
両手を胸の前に構えて気合いを入れるパララもん。可愛らしい動きに妙に気が抜けてしまう。
顔を叩いて気合いを入れ直した。
「先に進むか……準備はええか2人とも?」
「いいぞ~」
「行けるのだ!」
「じゃあ、行くで」
駅の中を進む。ホームから改札を出て左へ。まずは先ほどのA1出口へと向かう。俺達が入ろうとしていたシャッターの場所へ。
……。
しかし、中はなんの変哲もない駅構内で拍子抜けしてしまった。モンスターもおらへんし、ただ人の歩いていない道だけがずっと続いている。結局、何も起きないままシャッターの裏側まで来てしまって引き返すことにした。
今度は戻りの通路を3人で進んでいく。左の角を曲がってすぐ右へ。するとまたずーっと続く直線。ホントにダンジョンなんかこれ? ただの駅にしか見えんけどなぁ。
しばらく歩いていると、急にポイズン社長がピタリと足を止めた。そして、壁にあるポスターをジッと見つめる。
「どうしたんや?」
「いや、なんとなく気になってさ」
壁には俳優が写ったポスターが貼ってあった。にこやかに笑う主人公に、周囲に映る美男美女。テレビドラマのポスターか? 2021年1月放送と書かれとるな……その頃から駅はそのままの姿を残しとるってことか。
「最近じゃすっかり見ないようになったよな、こういうの」
ポイズン社長が腕を組んでポスターを眺める。どことなく悲しげな表情。何か思う所があるんやろか?
「そうか? 俺の地元やとまだ結構見るで?」
「そりゃ政治家もテレビ局もみーんな京都に行ったしな。近くの大阪ならあるだろ」
俺の地元、三重やから大阪とは違うんやが……説明するのも面倒なのでそのままにしておく。
俺達が話していると、パララもんはいつの間にか周囲の壁を調べていた。
「何やってんだよパララ?」
「入り口みたいに転移魔法陣があるかもしれないのだ。遭難した子はもたれかかって転移しちゃったのかも!」
パララもんの様子は真剣そのもの。感心していると、隣にいたポイズン社長がふっと笑った。
「どうしたんや?」
「いやぁパララのヤツ、この前まで超ビビりだったんだよ。ハンターシティの不死鳥戦がいい経験になったらしくてよ~」
そういや後でネットニュースで見たが……パラランもんってボスモンスターに攫われたって載ってたな。
ポイズン社長はパララもんの様子を嬉しそうに見つめた。
「攫われた時はヒヤヒヤしたが、結果的にこうなって良かったぜ。パララを助けてくれたヤツらに感謝だな」
ヨッさんと天王洲アイルがパララもん助けたんやったよな。ヨッさん……俺らと戦ってボスまで倒すなんてアンタはハンターシティでどんだけエグい動きしてたんや……。
「僕はもっと強くなるって決めたのだ~!」
「パララは461さんに会いてーんだもんなっ!」
顔を真っ赤にするパララもん。ヨッさんてモテるんやな。羨ましいなクソッ。
ていうかあれ?
ヨッさんって彼女おらんかったっけ?
「リレイラさん」っていう魔族の美人さんとお泊まりするとか言ってたような……それに中野のダンジョンに挑む時のあの雰囲気……完全に恋人同士みたいやったし。
……。
「パララもんはもっともっと強くなって一緒にパーティ組むのだ! ハートを射止めるのだ!」
目をキラキラ輝かせながら気合いを入れるパララもん。なんか、完全に乙女やな。ま、まぁ……黙っておいてやるのが優しさか。
それにしても、相方のポイズン社長はいいんか? パララもんのハート完全に持ってかれとるぞ。
「いや~やっぱさ、妹の恋は応援してやりてーよな!」
「妹!? アンタら兄妹やったんか!?」
「あれ? これって公開プロフィールじゃなかったっけ? まぁいいや! なはははは~!!」
「もう! あんまり461さんのこと言いふらさないで欲しいのだ~!!」
能天気そうに笑うポイズン社長に、顔を真っ赤にしながらその背中を叩くパララもん。
なんか……あんなに焦っていたのに2人と一緒やと気が抜けてばっかなんやが……。
◇◇◇
さらに真っ直ぐ進むと突然雰囲気が変わった。他の場所よりも暗い通路。その奥には「地下駐輪場」と書かれた看板と、上に登る階段があった。
「何やここの電灯? 並びめちゃくちゃやないか」
「なんか不気味だな~パララもこれは怖いんじゃね?」
「こ、怖くないのだ!」
天井にぐちゃぐちゃに並んだ蛍光灯。それがチカチカ光る道を、警戒しながら進んで行く。
そして、階段を登って右へ曲がるとそこは……。
「は?」
「え?」
「のだ?」
見たことある風景。看板を見ると「A1出口」の文字。
「え、俺ら、駐輪場に出たはずやったよな?」
A1出口から駐輪場に向かっていたはずの俺達は、A1出口前にいた。自分でも何を言っているか分からないが、確かにそこは、先ほど歩いた場所だった──。
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