461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第117話 武史、自信を無くす

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 ~ダンジョン配信者 鉄塊の武史~


 ──秋葉原。「方内ほううち武器店」


 目の前に飾ってある大剣を見てため息を吐いてしまう。値段は120万……この店で売ってる大剣はこれだけらしい。

「はぁ~高けぇ……」

 ハンターシティでヨッさん461さんに大剣を貸してしまって武器が無い。ヨッさんのことやから式島のオッサンあたりに渡してくれてるやろうけど……どうにもなぁ……ジークリードに負けたことで亜沙山の奴らに会うことに気が引けてまうわ。

 そのせいでハンターシティから1週間、ずっと宙ぶらりんな状態やった。東京のダンジョン情報を調べたり、こうやって武器を見て回ったりする程度。

 ……。

 あれから妙に自信が無くなってしまった。そりゃジークリードに勝てるかもなんて甘い願望持ってはいたが……あそこまで差を見せつけられるとはなぁ。


 背負ってるもん、か。俺にはそんなもん無いよな……。


「どうするッスか~?」

 隣で店員の女の子が見てくる。さっきからずっと説明してくれるのはありがたいが、流石に120万なんて金ないし、気まずいで。

「いや、流石に120万はありえんやろ。高すぎや」

「大剣「飛竜殺し」。攻撃力激高のレア武器ッスからね~!」

 確かに強そうや。磨き上げられた刃、各所に巻き付けられた飛竜の皮、符呪《エンチャント》の刻印……だが、それだけでレア武器かは分からんな。

「ちゃんと鑑定しとるんやろうな?」

「ちょっ!? ウチは信頼で成り立ってるっス!! お兄の鑑定魔法は間違い無いっス!」

 お兄? じゃあこの子の兄貴が直接鑑定魔法アプレイザル使ってるんか。

「なんや? お前らも探索者なんか?」

1ヶ月前・・・・に加護受けたばかりだけどちゃんと探索者ッスよ~!」

 言ってから女の子は「あっ!」と口を押さえた。おいおい……探索者歴1ヶ月ってど素人もええとこやないか。

「なんか心配になって来るなぁ」

「た、探索者としては新人ッスけど武器屋としてはベテランッス! 知識はあるから鑑定魔法使えれば十分なんスよ。その為にスキルツリー解放したッス!!」

 ふぅん……まぁ、鑑定商をしてた伊達のオッサンみたいなもんか。伊達のオッサンは探索者を実質引退して鑑定商していたが、この子達は武器屋の延長で探索者になったってことか。

 確かにここは神田明神ダンジョンが近い。あの周辺に倉庫でもあれば鑑定スキルは使えるかもな。

「証拠を見せるッス~!」

 そう言うと、女の子がタタタッとカウンターの方へ走って手招きする。俺がカウンターまで行くと、彼女が店の奥からノートを取り出した。

「ほら! ちゃんと読み取った内容も書き写してあるッス!!」

 渡されたノートを見る。そこには大剣「飛竜殺し」から読み取られた情報がビッシリと書かれていた。

「な、なんやこれ……制作者の様子から素材情報まで、こんなに細かく書けるもんなんか……」

 ビックリや。伊達のオッサンの鑑定もすごいとは思ったが、情報の密度が違う。想定素材や重量による攻撃力の割り出し、使用想定された人間の身長や体重まで……よほど武器に熱意を持っとらんとここまで読み取れへんぞ。

「ふふん! お兄はすごいッス!」

 胸を張る女の子。店員用エプロンにつけられた名札が電灯に照らされキラリと光る。そこに書かれた「方内ほううちミネミ」という名前が目に入った。方内……武器屋の名前か。店主の関係者かこの子ら自身が店主か……いずれにしても相当武器が好きなんやな。

 そう思ってふと思い出す。俺って……なんで探索者になったんやっけ? 配信者始めたのは強くなる為に金が欲しかったからやし、じゃあなんで強くなりたかったんや?

 別のことに思考が持っていかれそうになって思考を追い出す。ミネミという女の子はあの大剣のことを熱心に語っていた。

「アンタ……ミネミさんも詳しいなぁ」

「ミネミちゃんって呼んで下さいッス! それでッスね~あの「飛竜殺し」の想定使用者にお客さんはピッタリなんスよ! その身長、鍛えた二の腕……きっと使いこなせるはずッス!」

「そこまで言われると嬉しいわ」

「探索者名教えて欲しいッス!」

「え、ああ……俺はB級探索者の鉄塊の武史って言うんや」

「鉄塊の……っ!? カッコいい~!!」

 目を輝かせるミネミちゃん。恥ずかしくなって思わず顔を背けてしまった。なんか、そんな目を向けられるのも俺にはもったいないというか……もっとジークリードみたいな奴らが向けられる視線やろ。

「でも、ミネミちゃんの兄貴ほんとすごいわ。ここまで詳しく情報が書かれてたら確かにあの武器に興味湧くな」

 渡されたノートに再び目をやった。話題を変えたくてミネミちゃんの兄貴の話を振ったんやけど……ミネミちゃんにとってそれがクリーンヒットやったらしく、まくし立てるようにいかに兄貴がすごいかを話し出した。どんだけ兄貴のこと好きやねん。

 まぁでも、こうやって目を輝かせてる女の子は可愛いかもな。

「そうそう! 最近はお兄がダンジョンに潜って仕入れすることもあるッス! 今日もッスね~! 清澄白河きよすみしらかわダンジョンに行ってるッス! 担当のアノラスさんがレアアイテム眠ってるかもって言ってたっス!」

 不意に聞こえてきたダンジョン名に先ほどまでの浮かれた気持ちが一気に消えてしまう。

「は? お、おい……今なんて言ったんや?」

「え? 清澄白河ダンジョンにお兄が……」


 清澄白河?


 俺が東京に来た時から界隈じゃ騒がれてたダンジョンやぞ……なんでそんな所に初心者が……。

「み、ミネミちゃん。担当魔族は何も言っとらんかったんか? 清澄白河について」

「? 低級ダンジョンって言ってたっスよ?」

「はぁ!?」

 怒りが湧いてカウンターを叩いてしまう。俺の様子が豹変したことにミネミちゃんはビクリと体を震わせた。

「な、なんかあったんスか?」

「そのダンジョンは3ヶ月前に評価が変わった・・・・・・・んや。生態系が変化したとかでA級探索者が逃げ帰ったほどの高難度になったと聞いとる……そんな所に探索者歴1ヶ月のヤツを……?」

 ミネミちゃんを見る。彼女の顔はすっかり青ざめていた。

「で、でもアノラスさんは……」

「その魔族は担当歴何年や!?」

「こ、この世界に来たばかりだって……で、でも魔族の世界には詳しいから大丈夫だって……」

「バカが!! ど素人が新人の命軽くみやがって!!」

「ひっ!?」

 ミネミちゃんの表情が怯えた物になる。それを見て我に帰る。しまった……つい怒鳴ってしまった。

「す、すまん。俺も焦ってしまって……」

 怒りで震える声を落ち着かせる。冷静になれ。俺が焦っても仕方ないやろ。

 どうする? 管理局に連絡して救出してもらうか?

「ミネミちゃんの兄貴はいつ清澄白河に言ったんや?」

「け、今朝……ッス」

 5時間は経っとる。ヤバイな。まだ生きとるかも分からん。

「う、うぅ……お兄ぃ……」

 ミネミちゃんの両眼に涙が溜まっていく。俺が怖がらせただけと違う。本気で心配して、不安になってる顔や。

 先ほどのミネミちゃんの顔が浮かぶ。楽しそうに話していた顔が。


 ……。


 このまま見て見ぬフリなんて、できんわな。


「おい、そこの「飛竜殺し」貸してくれや。俺がミネミちゃんの兄貴を助けに行く」

「ほ、ホントッスか!?」

「心配すんな。絶対助けたる。だからそう泣かんといてくれ。な?」

「う、うぅ……武史さん、ありがとうッス……」

 涙を拭くミネミちゃん。彼女に管理局に連絡するように指示して、俺の連絡先も教えて店を出た。飛竜殺しを借り受けて。



◇◇◇

 秋葉原を出て電車を乗り継ぎ、目的地へと向かった。途中で俺の担当へ連絡して情報を集めて貰いながら。

 そこで分かったことは1つ。清澄白河は「妙なこと」が起こるダンジョンらしいということやった。しかし、詳しいことは分からない。とにかく逃げ出した探索者が発狂寸前やったそうや。その探索者の状況を見て管理局はダンジョンの評価を変えたとか。なんであの子達の担当は知らんかったんや……バカが。

 イライラするのを抑えて椅子に座り直す。清澄白河駅は今は降りられん。大江戸線の1つ手前。森下駅で下車して清澄白河へ向かう。


 ……。



「あっづぅ……」

 外に出ると感じるジリジリとした日差し。それが俺の黒い鎧の温度を上げていく。クソ、鎧に「氷冷」の符呪しとけば良かったわ。

 走っているうちにダンジョン周辺地区になって人通りが無くなる。走っていると、徐々に冷静になって来る。それと共に自分の実力にも疑問を感じてしまう。


 Aクラスが逃げ出すダンジョン……か。

 カッコつけてあの子に大丈夫なんて言ったが、俺は本当に大丈夫なんやろうか?


 いや、やるしかない。あんな泣き顔見せられて引き下がるなんて……そんなん男じゃないやろ、俺。


 ……。


 橋を渡りきると「清澄白河 A1出口」と書かれた看板が見えた。しかし、その手前、下り階段の所に先客がいた。



「も~! どうするのだ!? これじゃ入ろうにも入れないのだ~!!」

「落ち着けってパララ。こういうのはよ~大抵入るための転移魔法がどっかにあるんだって~」



 駅の前で男女が揉めていた。どうやら入り口のシャッターが閉じられて入り方が分からないらしい。あの2人組……。

 男は黒髪に緑のメッシュ、黒いスーツに剣を腰に差したホストみたいな見た目。もう1人はオレンジ色の髪に肩紐が付いたハーフパンツの女の子だった。その2人には見覚えがあった。


 配信を見たこともあるし、ハンターシティでも活躍していた……。


「ポイズン社長と、パララもん……」


「んん?」
「のだ?」


 ポイズン社長とパララもんは不思議そうな顔で俺を見た──。




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