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第126話 会得
しおりを挟むさらに数日かけて俺は魔力コントロールの訓練を続けた。
そして……掴んだきっかけを確実な物にするために、もう一度アイルに相手を頼むことにした。リレイラさんにも連絡を入れて。
「使うのは電撃魔法で良かったのよね?」
「ああ、今度こそ成功させてやるぜ」
不忍池に併設された公園でアイルと向かい合う。
「ヨロイ君、こっちも準備できたよ」
木の下でリレイラさんがスマホのカメラを向ける。彼女には撮影を頼んでいた。後で自分の動作を確認するために。
「お願いします」
リレイラさんはコクリと頷くとスマホをタップした。
「いくぜアイル!」
「任せて!」
アスカルオを引き抜くと同時にアイルが杖を構える。彼女が魔力を溜めると、そのローブが風に靡くように揺れた。
周囲を確認する。背後には池に落下しない為の柵。ここを利用すれば……。
「電撃魔法!!!」
アイルの杖から電撃魔法が放たれる。それが真っ直ぐに俺のもとへと向かう。俺は、背後の落下防止用の柵へと飛び乗った。
「な、何やってるのヨロイさん!?」
「こうするためだ!!」
柵を蹴って空中に飛び上がる。アスカルオの刀身。その金属部分に反応して電撃が軌道を変える。空中へと登った電撃がアスカルオに喰らいついた。
「ぐ……っ!?」
右手がピリつく。失敗した時の痛みが蘇る。落ち着け。まだ魔力は安定していない。両手に意識を集中するんだ。魔力を安定させろ、支配下におけ! 照明魔法と同じ要領……俺ならできる! 信じろ!!
刀身に魔力が吸収される。電撃が刃の形となり、アスカルオが雷を纏った。
「すごい……っ!? 魔法剣になったわ!」
「まだだ!!」
落下しながら魔法を解除する時の感覚を使う。照明魔法の応用。これでアスカルオが喰らった「魔力」を放出できるはずだ!
「うおおおおおおおおお!!!」
着地まで時間が無い。体を捻り、池に向けてアスカルオを薙ぎ払う。
刀身が喰らった電撃が、斬撃の形状へと変化する。雷の刃。それが水面へと直撃し、轟音と共に水柱が上がった。
弾け飛んだ飛沫が雨のように降り注ぐ中、地面へと着地する。
「……」
よし……。
よしっ!!
「成功だ!!」
思わずガッツポーズしてしまう。テンションが急激に上がる。ここ数日の試行錯誤が一気に報われた。
俺は新たな技術を習得できたんだ!!
感極まって目頭が熱くなる。こんな興奮は久しぶりだ。ダンジョンに挑み始めた頃、何をやっても上手く行かず、だが諦めきれずに何度も何度も試行錯誤して初めてクリアした時の感覚と同じ。
最高だ!! 痛い思いしながらやって良かった~!!
「す、すご……」
「これが……聖剣アスカルオの力なのか……」
振り返るとアイルもリレイラさんも驚いた顔をしていた。俺もこの剣の性質を理解するまで全く使えなかったからな。この一瞬じゃ何が起こったのか分からなかったかもしれない。
「え、何でできるようになったの!?」
「私にも原理を教えてくれ!」
駆け寄ってきた2人に仕組みを説明する。
聖剣アスカルオ。コイツに符呪された「魔喰い」は電撃や火炎などのエネルギーを喰う訳じゃない。リレイラさんの言った通り魔力自身を喰らう。
しかし、そこから魔力を刀身に留めるのは使用者の技量なんだ。アスカルオを手にしているということは、俺自体が喰らった魔力を保持する器になる。留められなかった魔力は、俺という器を通して外へと放出される。
魔力は物体から物体へ優先的に流れていく。魔力コントロールが未熟な俺に、その流れを止めることはできない。だが物体の無い空中なら? 試してみて分かったが、大気へも魔力放出はされるが、地面に立っている時よりもずっと緩やかだ。だからこそ、俺でもコントロールできる。
鑑定で見た戦士も飛び上がっていた。きっと同じ発想に至ったんだろう。魔法職ではないからこそ、編み出した方法という訳だ。
「魔力が地面に? 全く知らなかったわ……」
「属性魔法は放った瞬間その手から離れる。もしかしたら身体強化を使うミナセやユイならすぐに把握できたかもな」
「なるほどな……それを防ぐためにヨロイ君は柵を足場に飛び上がったという訳だな」
「地面に流れ込むなら強制的に流れ込まないようにしてやればいい。そういう発想です」
「すごい! こんなに短時間で使いこなせるなんて!!」
アイルのツインテールが激しく揺れる。喜んでくれて俺も嬉しくなった。
「俺の力だけじゃないぜ? アイルに協力して貰ったからだし、それに……」
「それに?」
視線を移す。その先には真剣な表情で俺の話を聞いてくれているリレイラさん。彼女は、俺の視線に気付くと戸惑ったような表情を浮かべた。
「え、え? なぜ私を見るんだ?」
「リレイラさんが調べてくれたおかげです。アレがなかったらいつまで経っても使いこなす事なんてできなかった」
「ヨロイ君……」
リレイラさんが恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
ふとアイルを見ると、彼女は俺とリレイラさんのことを見つめていた。
「な、なんだよ?」
「ん~? 私も嬉しいの!」
リレイラさんに抱き付くアイル。リレイラさんも顔を綻ばせてアイルの頭を撫でる。なんか、最近一段と仲良くなった気がする。
「リレイラのおかげだって~」
「は、恥ずかしいからやめてくれ……」
……。
ホント、2人のおかげで使いこなせたようなもんだ。何か礼しないとな。
だが、まずはアスカルオの仕上げをしよう。
「後は実戦経験だ。準備して明日にはダンジョンに行くか」
「アスカルオの実戦……それならオススメのダンジョンが……」
リレイラさんが端末を操作し、ある写真を見せてくれる。馬鹿でかい提灯に「雷門」と書かれた赤い門の写真を。
「ここだ。アスカルオの実戦に最適な場所。浅草ダンジョン……挑戦してみないか?」
「へぇー! 浅草!? 私初めて行くかも!」
アイルが端末を覗き込む。そんな彼女にリレイラさんは端末を見せながらダンジョンの説明をしていく。その様子を見ていると、無性にワクワクした気持ちになってきた。
浅草か……いいじゃん。面白くなってきたぜ。
「ね、リレイラ? 今からヨロイさんの家で攻略会議しましょうよ!」
「いい提案だなそれはっ!!」
「え、俺の家でやるの?」
「当たり前でしょ!?」
「ヨロイ君は嫌なのか!?」
2人の圧がすごい……仲良すぎないか?
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