461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
139 / 302

第134話 モモチー、ナーゴ、461さん

しおりを挟む
 ~配信者 ナーゴ~

 ──洋食屋、冒険家B

 お昼の忙しい時間も終わった15時頃、マスターは休憩に入って、ナーゴが店番をすることになったにゃ。

 厨房の整理をしていると、カランというベルの音と一緒に扉が開いた。入って来たのは見知ったフルヘルムの男の人──ヨロさん461さんだったにゃ。ヘルムにTシャツの格好は、ランニングでもした後かもしれないにゃ。

「ん? 今日はナーゴしかいないのか?」

「マスターは今休憩中だにゃ。でもナーゴがお店見てるから大丈夫にゃ~」

「そっか。じゃあアイスコーヒー頼む。ジーク達と待ち合わせしてるんだ」

「了解にゃ~! みんな来るまでこちらの席にどうぞにゃ~」

「あ、それとよ、ジーク達が来たら話があるんだ」

「にゃ? 話?」

 なんだろう? 気になるけど、後でって言われたから今は聞かないほうがいいかにゃ。

 ヨロさんを奥の席に案内する。奥の席は柱の陰になってるにゃ。配信者さん達が来た時は外から見えにくい席でゆっくりして欲しいのにゃ。

 グラスに氷を入れてアイスコーヒーを注ぐ。それをヨロさんへ出した時、またカランと扉が開く音がした。

 入って来たのは女の子。でも、体のラインから女の子と分かるくらいだにゃ。なぜかと言うと、フードを被ってサングラスにマスク姿だから。一見するとあやしそうな見た目……そんな彼女は、ドアから顔を覗かせて、キョロキョロと中を覗いてから中に入って来たにゃ。

「いらっしゃいませにゃ!」

 ナーゴを見てビックリしたような顔をする女の子。彼女はナーゴをジロジロ見たあとポツリと呟いた。

「き、着ぐるみ?……変わったお店ですわね……」

「ナーゴはこのお店のアルバイトにゃ。ちゃんと人間にゃ~♡」

 私の感情に反応して、着ぐるみ装備の「操作」の符呪が発動する。覗き穴が細くなって、ナーゴ着ぐるみの顔がニコリと笑ったのが分かった。

「い、1名入れます?」

「カウンターでよろしいですかにゃ?」

「よろしくてよ。注文はアイスティーを」

「今ならポメラフルーツティーがオススメですにゃ♡」

「では、それを下さいまし」

「承りましたにゃ♡ お待ち下さいにゃ~」

 女の子が席に座ってフードとマスクを外す。ピンク色の縦にクルクル巻いた髪がフワリと出る。んん? なんかこの女の子見たことあるにゃ~?

 カウンターに入ってお湯を沸かす。ティースプーンに一杯茶葉をすくってティーポットに入れる。沸かしたお湯を注いで蒸らしている間に、冷凍庫から凍らせたポメラフルーツ、冷蔵庫からポメラフルーツのジャムを取り出した。

「なんですのその金色のフルーツ? 柑橘かんきつ類みたいですわね」

 ふと見ると、女の子がカウンターから厨房を覗き込んでいた。

「これは森系ダンジョンに生えるポメラフルーツという果物にゃ。酸味と甘味、それと苦味が少しある異世界産フルーツ。グレープフルーツに似た味わいにゃ~」

「へぇ……初めて見ましたわ」

「ナーゴが見つけたのにゃ♡」

 グラスにジャムを入れる。氷と、凍らせたポメラフルーツをギッシリ入れ、ティーポットから紅茶を注いでいく。パキパキと氷の割れる音が気持ちいい。女の子の前にグラスを置くと、彼女はサングラスを外してポメラフルーツティーを見た。

 どことなくお嬢様な雰囲気……やっぱりこの女の子、見たことある気がするにゃ。

「紅茶のオレンジ色とフルーツの金色が混ざって綺麗ですわ」

「ポメラフルーツには疲労回復効果があるにゃ。暑い夏にはピッタリだにゃ~♡」

 それにスタミナ回復効果も。異世界産の食材だけにある不思議な効果にゃ。

「本当に……美味しそう」

 女の子がストローに口を付けてコクリとアイスティー飲む。すると彼女の顔は、パッと笑顔になった。

「美味しいですわ……っ! 爽やかで、甘みも控えめで、紅茶にピッタリ……っ!」

 良かったにゃ。入って来た時はどことなく暗い感じだったけど、元気出してくれたみたいで。

「喜んで貰えて良かったですにゃ♡」

 嬉しくてつい体がクネクネ動いちゃう。ふと奥を見ると、ヨロさんがこちらを見ていた。

「ん? どっかで見たことあると思ったらモモチーじゃん」

「よ、461さん……!? 何でこんな所に……!?」

 ビックリしたような声を出す女の子。「モモチー」という名前を聞いて一気に分かった。あ、そうか。ハンターシティで活躍してた配信者のモモチーだにゃ。あれ? でもモモチーって確か……。

「どうしたんだよこんな所で?」

「い、いえ……ちょっと普段とは違う空気を吸いたくなりまして……」

 何だか様子がおかしいモモチーに思わずヨロさんと顔を見合わせてしまう。


「実は……」


 モモチーは、ゆっくりと話し始めた。

「先日ある方とコラボをしまして、最後に失敗してしまったのです」

「失敗? 誰かに怪我させちまったのか?」

「いえ、ボスを倒したのですが、死に際の一撃を喰らってしまって装備が……」

 そうだにゃ! 確か装備が吹っ飛んじゃったのにゃ! 可哀想に……ナーゴなら恥ずかしくて人前に出られなくなっちゃうにゃ……。


「まぁそれはいいのですが」


「いいのかにゃ!? 見られちゃったのに!?」

「? 私のこと知っておりますの?」

「にゃにゃ!? 知ってるにゃ! ハンターシティでも活躍してたし!」

「そうですの。なら私の普段の装備のことも知ってるでしょう? あの装備を身に付けた時からああいう覚悟はしておりましたわ」

「!? そ、そうかにゃ……」

 髪を手で払い、寂し気な笑顔を浮かべるモモチー。なんだにゃこの顔。どういう感情?

「武器を扱うには代償が伴うもの。その代償を受け入れてこそ、己の全てを使うことになるのです」

 自分の体を「武器」って言っちゃってるのにゃ!? しかもなんか裸になっちゃったことをカッコいい風に言ってるにゃ!? 

「俺もそう思うぜ」

 コクリと頷くヨロさん。え、本当かにゃ? 本当に分かってるヨロさん?

「俺も聖剣を使うのに苦労したしな。代償……確かに代償もあるな。使う場所は制限されるし、気を抜くともろに魔法でダメージ受けるし」

 ヨロさんが納得したように大きく頷いた。ダメだにゃ!? この人絶対モモチーの言ってること勘違いしてるのにゃ!?

「でもよ。それなら何をそんな憂鬱そうな顔してるんだ?」

「……自分が油断してしまったことが悔しいのですわ。あの屈辱を思い返すと手が震えて……どうしたらいいのか……」

 モモチーをチラリと見るヨロさん。彼はヘルムの口元をスライドして開けると、アイスコーヒーを一口飲んだ。

「そんなの簡単だぜ」

「え?」

「次は油断しなきゃいい」

「そ、そうですが……」

「モモチーは油断したらどうなるのかを身を持って味わったんだろ? しかも生きてる。それってある意味成功だと思うぜ、俺は」

「成功……」

 え、え? なんだにゃ? 何でモモチーは何かを掴もうとしてるのにゃ!?

「そうですわね。一度こんな経験をしたのなら、もう絶対にしない。いえ、しないように動いてみせる。そんな……簡単なことでしたのね」

「ああ。モモチーは不死鳥とガチで斬り合った探索者なんだからさ。腕は確かだと思うぜ?」

「461さん……ありがとうございますわ!」

 モモチーは立ち上がるとナーゴを真っ直ぐ見た。

「ありがとうございますわ。フルーツティー……美味しかったですの!」

 え、いいのかにゃ。何にも解決してないような気がするけど……。

「そうです。失敗などで落ち込むなんて私らしくなかったですわ! 早速高輪達と修行に出ますわよ! オーホッホッホ!!!」

 高笑いを上げながら、モモチーはお金を置いて出て行った。


 これで良かったのかにゃ……本人がいいなら良かったのかにゃあ?


「お、おいナーゴ! 今そこでモモチー見たぞ!! 覚えてるか!? ハンターシティで俺が軽トラ貸した子!」


 モモチーが出ていって数秒後にマスターが帰って来た。すごく慌てた様子で。


「? 覚えてるにゃ。というかさっきまでココに来てたにゃ」

「なんだとっ!? なんで連絡しないんだよぉ……」


 ヘタリと座り込むマスター。理由を聞いたら「自分がいい事言って立ち直らせたかった」とよく分からない嘆き方をしていた。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...