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第175話 武史達、発見する。
しおりを挟む~鉄塊の武史~
異世界からやって来たエルフ、フィリナと俺達が遭遇した翌日。彼女を連れて森の中を進んだ俺達は、池のほとりで休憩する事にした。
休憩中にパララもんがスマホでツェッターを覗く。1通のリプが届いていたようで俺達に見せてくれた。パララもんの古参ファンが掲示板サイト「6ちゃんねる」のURLを送ってくれたらしい。
掲示板名は「竜人のことを教えるスレ」。その中には竜人達の情報と、ヤツらの神イァク・ザァドに関する情報が書かれていた。フィリナにも確認して貰い、それが事実だと確認した。そして、そこにはこうも書かれていた。
イァク・ザァドの復活を阻止する為には、レベルポイントが集まる前に、竜人を全滅させるか、ヤツらの中で唯一レベルドレインの魔法を扱える司祭を倒さなければならない。
フィリナがスレッドを覗き込む。翻訳魔法の影響なのか文字も読めるみたいやな。彼女はその書き込みを見て感心したようにため息を吐いた。
「これは我らの世界に伝わる伝承も含まれています。このwotakuという方は詳しいですね。この世界の人間がどうやってこの事を知ったのでしょう?」
「もしかしてwotakuって異世界から来てたりしてな~!」
「物知りなのだ!」
また話が脱線しそうだったのでポイズン社長達の話を止めることにした。
「そんなこと今はええやろ。フィリナの反応から見てこの書き込みが事実なのは間違いない。俺達のやることは決まったな」
竜人はとんでもなく強いらしい。全員倒すのが厳しいなら、司祭を倒すべきや。そうみんなに言うと、全員俺の案に賛同してくれた。
「なら司祭の場所を突き止めねぇとな! フィリナは知ってるか?」
ポイズン社長がフィリナを見る。彼女は、森の奥を指差した。
「この森を抜けた先に2本の塔が融合したような建物がありまして、そこにとても大きな力を感じます。恐らく、そこに……」
「2本の塔なのだ?」
「それって……都庁のことじゃねえか?」
ポイズン社長がスマホを操作して旧新宿都庁の写真をフィリナに見せる。フィリナはそれを見てコクコクと頷いた。
「この建物です! 木々に取り込まれていましたが……間違いなくこの建物でした!」
「やっぱり都庁なんか」
「でもよぉ、管理局は都庁がこのダンジョンの最深部だって言ってたよなぁ?」
「元々行く予定の場所だったのだ! 竜人がいる所に行かせようとするなんて怪しいのだ!」
ポイズン社長とパララもんが怪訝な表情になる。魔族が俺達を騙した……俺もその可能性を考えたが、そのことに俺はどうも納得できないでいた。
以前会ったヨッさんの彼女、リレイラさんの顔が浮かぶ。アレは本気でヨッさんに惚れとる顔やった。しかも形はどうあれ、12年も人間をサポートして来た管理局が今更俺らを騙すのも変な気もする。なんか、また別の思惑がありそうや。
おっと俺が考えを逸らしてどうする。司祭の討伐やったな。
「それより社長。俺らだけで向かって大丈夫なんか?」
「とりあえず都庁に向かいながら探索者探すか。461さん達と会えたら協力頼もうぜ」
パララもんがスマホを見つめながら頬を膨らませる。
「むぅ~! 461さんかアイルちゃんとプライベートの連絡先交換しておけば良かったのだ!」
「ツェッターで連絡すればいんじゃね?」
ポイズン社長の言葉にパララもんはハッとしたように手を叩いた。
「その手があったのだ! すっかり忘れてたのだ!」
そういやツェッターで個人的に連絡取り合うことってやった事ないな。DMってヤツか。俺は連絡取り合う配信者友達とかおらんかったしなぁ。はは……なんか考えたら泣けて来た……。
「早速送るのだ~」
パララもんがスマホに文字を入力しようとした時、視界の端に尻尾が見えた。緑色と灰色が混ざった色に、テカリのある鱗。フィリナを襲っていたリザードマンの仲間だとすぐに分かった。
「!? やばいで! 隠れろ!」
4人で木の陰に隠れる。森の奥には数体のリザードマンを引き連れたヤツがいた。それは体が炎のように赤く、頭にはうねった2本の角。そして丸太のように鍛え上げられた腕を持ったヤツだった。見た目がリザードマンよりずっと竜に近い。
……アレが、言っていた竜人か。
赤い竜人がリザードマン達に何事かを叫ぶ。さっきのフィリナと同じで何を言っとるのか分からんな。
(何言ってるか分からないのだ!)
(フィリナ、翻訳魔法俺らにも使ってくれねーか?)
(分かりました!)
ポイズン社長がフィリナに頼むと、彼女が杖を俺達に向ける。目の前に小さな魔法陣が浮かび、それと同時にヤツらの声が鮮明に聴こえた。
「あのエルフ女ぁ……っ!? どこ行きやがった!!!」
赤い竜人が目の前のリザードマンを殴り飛ばす。アイツら、フィリナを追ってここまで来たんか?
フィリナを見ると、彼女は申し訳なさそうに目を逸らした。
(すみません、私がいるせいで……)
(気にしなくてええで)
(それより、ここから早く逃げるのだ)
(武史、そっちから茂みに回り込め)
(分かったで)
俺を先頭に茂みの後ろ側へ回り込む。その時、別の声が聞こえた。赤い竜人の方へ目をやると、部下らしき竜人が慌てて走って来た。ローブに杖。魔法職の竜人が。
「ガランドラ様!! 人間を見つけました!!」
「おぉ!! 良くやったぜベイルスト!! どんなヤツだ?」
「壮年の斧使いの男と若い女剣士です! 今はダルクが相手をしております!」
「よし! 俺も遊ばせて貰うぜ!」
雄叫びを上げて、ガランドラと呼ばれた竜人が森の奥へ走っていく。それに続くように部下の竜人とリザードマン達がヤツの後を追いかけていった。
「おじさん斧使いと若い女剣士なのだ? それって……」
パララもんがゴクリと唾を飲む。その見た目には見覚えがあった。スタート地点にいた来堂《らいどう》とミーナというA級探索者達や。アイツら、竜人と戦ってるんか!?
「マズイでっ! 探索者が捕まったら司祭を倒す前に……」
「ああ、ヤツらの神ってヤツが復活しちまうって」
ポイズン社長は頬をパンと叩くと真剣な表情で俺達を見た。
「行くぜ、パララ、武史!! フィリナも戦えるか?」
「昨日お伝えした通り、私もそれなりに魔法を使えますから任せて下さい!」
「じゃあ行くか。気合い入れろよみんな!」
俺達パーティはフィリナを連れて、竜人ガランドラを追った。
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