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第176話 ガランドラの恐怖
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~鉄塊の武史~
俺達はガランドラとかいう竜人を追って森の中を走った。
間に合ってくれよ……。
距離を保ちながら奴らを尾行すると、大きな木の近くで追い詰められた2人の探索者が見えた。
(いたのだ! おじさんと女の人なのだ!)
パララもんが指した方向には俺達の予想通り来堂とミーナがいた。近くにリザードマン達の死骸は転がっとるが……。
「ダルク! それ以上弱らせるなよ!」
ガランドラが叫ぶ。先行していた青い竜人に来堂とミーナはかなりやられとるみたいやな。
「はぁ……はぁ……なんだコイツら……」
「全然技が通用しないよぉ……」
ダルクという青い竜人にボロボロにされた2人のA級探索者。彼らの元にガランドラがドスドスと歩み寄った。
「下がれダルク。後は俺が遊ぶ」
「はっ」
ダルクがガランドラの後ろに下がる。ヤツの姿を見た探索者2人の顔が真っ青になった。
「あの青いヤツより強いのがいるのかよ……」
「う、嘘でしょ……」
まずいな。このままやとあの2人が負けてしまう。
周囲を確認する。2人の前にガランドラ、その後ろにダルクとベイルストという2人の竜人。さらに周囲を複数のリザードマン達が取り囲むという配置。逃がさん気満々やな。
ポイズン社長が俺達を振り向いて声をひそめた。
(フィリナを助けた時の応用で行くか。武史が引き付けてパララがヤツらの動きを止める。俺があの2人を連れ出したら……フィリナ、最後は頼めるか? 聞いた魔法なら時間稼げると思うんだよ)
(はい、『ツリーウォール』を使えば良いのですね)
(ああ。その間に逃げるぜ)
ツリーウォール……周囲の木々を操作して木製の壁を作り出す魔法。昨日見せて貰った限りやと確かに強力な魔法やった。アレなら時間を稼いで逃げる事もできそうや。
(倒さないのだ?)
(今は撤退することだけ考えろ)
(ポイ君にしては弱気なのだ!)
(6ちゃんのスレッドでも見たろ? ヤツらは人間みたいに連携も取れる。あの数相手に無理して戦ったら俺らが全滅するぜ?)
ポイズン社長……口調は軽いが顔は真剣や。確かに、先ほど見た掲示板には竜人のことが事細かに書かれていた。
その中で分かったのは、ヤツらには弱点という弱点が無いこと。対人間レベルの戦術で戦わなければ勝てないと言うことや。技の連打程度じゃ勝てへんやろな。
なら、社長の言う通り初めからあの2人を助ける事に全力を向けるべきか。
(武史の持ってる中で遠距離技あったよな? あれで牽制仕掛けてくれ。気を引くには派手な方がいいだろ)
(よっしゃ。任せとけ!)
俺の肩をバンと叩くとポイズン社長達が走って行く。俺はその様子を見守りながら剣を肩に担ぎ、魔力を剣先に集約させる。
森の奥を見据える。ガランドラと戦う2人。その戦いはあまりに一方的だった。技は完封され、殴られ、ヤツの言う通り遊ばれとる。見るに耐えんで……。
早く配置に着いてくれ! みんな!
「クソおおおお!!!」
「当たれぇえ!!」
2人が同時攻撃を仕掛ける。来堂が大斧を叩き付け、ミーナが剣撃を放つ。しかし、ガランドラはその2人の攻撃を素手で受け止めてしまった。
「弱いなぁ!」
ガランドラが拳を叩き付ける。2人はその強靭な腕に絡め取られるように地面に叩き付けられた。
「がはっ……っ!?」
「うっ……」
「待ってやる。立てよ? もう立てないとか言わないだろぉ?」
ガランドラが2人を蹴り飛ばす。木々に叩き付けられた探索者たちはヨロヨロと立ち上がり剣を構えた。
「雑魚が必死になってるほど面白いことはねぇよなぁ? がははははははは!!」
ガランドラは周囲に聞こえるほどの大声を上げた。クソ、相手を痛ぶって喜ぶとか最低やぞ、アイツ。
胸の奥で怒りが渦巻く。だが、これで2人はアイツから離れた。
森の奥を見る。パララもんも、フィリナも魔法の準備はできたみたいや。ポイズン社長も、あの倒れた2人の近くの茂みにおるな。
今なら、行ける。
魔力を解放し、全力の一撃を大地へ叩き込む。
「ダラアアアアアァァァァ!!! 石流岩烈斬!!!」
大剣の剣先から衝撃波が発生する。大地をバキバキと巻き上げながら放たれた一撃は、真っ直ぐにガランドラへと向かった。
「ガランドラ様!!」
竜人ベイルストの声にガランドラが俺の方を見る。
「おぉ! 他の人間もいたのか!」
なんやアイツ……攻撃されて何であんな嬉しそうな顔してるんや。
ガランドラが両拳を振り上げ、石流岩烈斬が当たる直前、両拳を地面へ叩き付けた。
「ふんっ!!!」
その拳が大地に到達した瞬間、ヤツの周囲に衝撃波を発生させる。衝撃波のウネリが石流岩烈斬を飲み込み、あろうことか俺の技を撃ち返して来た。
「なんやと!?」
「馬鹿が! そんなショボい技俺に効く訳ねぇだろうが!!」
咄嗟に地面に飛び込み衝撃波を回避する。馬鹿笑いを上げるガランドラ。ヤツの部下達が俺へと駆け出してきた。
「テメェらあの男を捕えろ!」
ちっ、マジか。自分の技を正面から破られるとかショックやで。
しかし竜人達は完全に俺に気を取られとる。ガランドラの背後に目をやると、ポイズン社長が2人の探索者に回復薬を使っているのが見えた。少し言葉を交わすと、茂みに向かって走りだす3人。よし、救出は成功や。
「だらぁ!!」
飛びかかって来たリザードマンに大剣を薙ぎ払う。その瞬間を見計らったかのようにパララもんが茂みから飛び出した。
「麻痺波!!」
放たれる光の波動。ヤツらが動きを止めた瞬間、俺は後ろに大きく飛び退いた。
「もう大丈夫やぞフィリナ!!」
「分かりました! 魔法を使います!」
俺の合図にフィリナが杖を向ける。彼女に気が付いたガランドラはニタリと嫌な笑みを浮かべた。
「おぉ!? 見つけたぞエルフの女ぁ!!」
ガランドラがドスドスとフィリナに向かって走りだす。彼女はビクリと体を震わせたが、自分を落ち着かせるように深呼吸すると、魔法名を告げた。
「ツリーウォール!」
その声に呼応するかのように周囲の木々が伸びる。無数の木々がうねりをあげて絡みつき、竜人達を包むようにドーム状の壁を形成した。
「ちっ。鬱陶しい魔法を使いやがる!!」
木々の向こうからガランドラの怒声が聞こえる。ダンダンと壁の向こうから音がするが、強靭な木の壁は突破できないようだった。
「ボーッとしてる時間はねーぞ!」
助けた探索者達を連れたポイズン社長の後を追いかける。俺が追い付く頃にはパララもんとフィリナも彼の元に集まっていた。
「やるじゃんフィリナ!」
「想像以上の威力なのだ!」
「ふふっ。上手くいきすぎて自分でも怖いくらいです!」
走りながら社長達が呑気なやり取りをする。こういう所は呑気やが、ある意味凄いよな。肝が据わってるというかなんというか……。
「アンタらは大丈夫なんか?」
「あ、あぁ。救援感謝する」
「マジでやられるところだったよ……っ!」
来堂もミーナも戸惑ってはいるみたいやが、この様子やったら大丈夫やな。
「とりあえずスタート地点の南新宿駅に向かうぜ! そこで作戦を……」
ポイズン社長が言おうとしたその時──。
「ォラァ!!!」
ツリーウォールに風穴が空いた。中から赤い両手が伸びると、バキバキと音を立てて木の壁を破壊し、ガランドラが顔を覗かせた。
「ふははははは!! こんなもんで俺を止められるかよバカが!!」
ガランドラ達がツリーウォールを破壊して追いかけて来る。だが無駄や! この間にかなり距離を取った。このまま撒けるはず。
「俺から逃げられるとか思ってんのかぁ!?」
ガランドラが飛び上がる。その跳躍力は凄まじく、俺達をあっという間に飛び越してしまう。大地を揺らす衝撃と共にガランドラが俺達の目の前に着地した。
「うそやろ!?」
「そのエルフがいりゃ十分だからなぁ……人間共はぶっ殺してやるよ!!」
突然、ガランドラが拳を放つ。その先にいたのは──無防備なパララもんだった。
「え?」
パララもんのヤツ、反応できとらんぞ!? ヤバイ、あんな攻撃モロに受けたら……っ!?
ガランドラの拳がパララもんに迫る。クソ、頭では分かっとるのに体が反応しない!
「ガハハハハハ!! まずはガキからぶっ殺してやるぜ!!」
心臓が跳ね上がる。
動け……動け!!
パララもんは俺の仲間やぞ!!
俺が盾にならんくてどうするんや!!
ダメや、パララもんを死なす訳には──。
「パララ!!」
ポイズン社長がパララもんを突き飛ばす。彼はガランドラの拳をモロに喰らって後ろに吹き飛んでしまった。
「ポイ君!?」
ワンテンポ遅れて体が動く。ポイズン社長の元へ駆け出すパララもん。それを狙うガランドラ。俺はヤツに大剣を叩き付けた。ガランドラは、バックステップで攻撃を避けると俺に狙いを変えて突撃してきた。
「お前が遊んでくれるのかよ!!」
ヤツの拳を大剣で受ける。衝撃音と共に両手が痺れた。俺のスキル「鉄壁」が発動した上でこの威力……なんて力やコイツ。
「テメェはタフみたいだなぁ!! 痛めつけがいがあるぜぇ!!」
「ふざけんなや!!」
ヤツの拳を大剣で何とかいなす。そのまま、全力の一撃を叩き付けた。袈裟懸けに放った一撃。しかしヤツは攻撃を受けてなおニタリと嫌な笑みを浮かべた。
「痛いっちゃ痛いが……力はイマイチだな。コレは楽しくなってきたぜぇ!!」
ヤツの拳が俺の顔面に直撃する。鉄壁が発動するが、意識が刈り取られそうな一撃や。そう何発も喰らえやんで。
「だらぁ!!」
横に回転して攻撃を放つ。ヤツの胴体に大剣が深く突き刺さる。しかし、ヤツの体を傷付けることはできず、ヤツが反撃の拳を放った。左頬に衝撃が走る。歯を食いしばって耐え、魔力を溜める。さらに2発の攻撃を受けながら、ヤツの頭上に岩烈斬を放った。
「ぐぉっ!?」
ヤツが小さく悲鳴を上げる。これならいけるか……!?
「いい攻撃持ってんじゃねぇか!!」
ヤツの拳がみぞおちに叩きこまれ、息が止まりそうになる。体が浮いたところにヤツが拳を振り上げた。
「オラ死ねぇ!!」
ヤバイ!?
咄嗟に大剣で防御する。叩き付けられるガランドラの右ストレート。先ほどとは桁違いの威力に俺の体は後ろに吹き飛ばされた。数秒の浮遊感を感じた後、地面にぶつかり全身に痛みが走った。
「がは……クソッ!! 強すぎる……」
「もっと遊ぼうぜ~?」
遠くでガランドラが笑みを浮かべる。アイツ……俺を痛ぶるために手加減してやがったな。
立ちあがろうとすると、パララもんとフィリナがポイズン社長に声をかけているのが目に入った。
「何やってるんや! 早く逃げるんや!」
俺の言葉にパララもんが顔を上げる。その顔は、涙でぐしゃぐしゃの顔になっていた。
「武史ぃ……ポイ君がぁ……ポイ君が息してないのだ!!」
泣き叫ぶパララもん。彼女が必死に体を揺すっても社長の目は閉じたままだった。
「え、は……? ど、どういうことや?」
「さっきから体を揺すっても叩いても起きないのだぁ……っ!!」
パララもんの言葉が、状況が、飲み込めない。
え……社長、さっきまで軽そうに話してたぞ。
調子いい感じで。こんな時まで普段と変わらんなぁって。
やっぱ社長はすごいなって俺は……。
え。
ウソやろ?
俺達はガランドラとかいう竜人を追って森の中を走った。
間に合ってくれよ……。
距離を保ちながら奴らを尾行すると、大きな木の近くで追い詰められた2人の探索者が見えた。
(いたのだ! おじさんと女の人なのだ!)
パララもんが指した方向には俺達の予想通り来堂とミーナがいた。近くにリザードマン達の死骸は転がっとるが……。
「ダルク! それ以上弱らせるなよ!」
ガランドラが叫ぶ。先行していた青い竜人に来堂とミーナはかなりやられとるみたいやな。
「はぁ……はぁ……なんだコイツら……」
「全然技が通用しないよぉ……」
ダルクという青い竜人にボロボロにされた2人のA級探索者。彼らの元にガランドラがドスドスと歩み寄った。
「下がれダルク。後は俺が遊ぶ」
「はっ」
ダルクがガランドラの後ろに下がる。ヤツの姿を見た探索者2人の顔が真っ青になった。
「あの青いヤツより強いのがいるのかよ……」
「う、嘘でしょ……」
まずいな。このままやとあの2人が負けてしまう。
周囲を確認する。2人の前にガランドラ、その後ろにダルクとベイルストという2人の竜人。さらに周囲を複数のリザードマン達が取り囲むという配置。逃がさん気満々やな。
ポイズン社長が俺達を振り向いて声をひそめた。
(フィリナを助けた時の応用で行くか。武史が引き付けてパララがヤツらの動きを止める。俺があの2人を連れ出したら……フィリナ、最後は頼めるか? 聞いた魔法なら時間稼げると思うんだよ)
(はい、『ツリーウォール』を使えば良いのですね)
(ああ。その間に逃げるぜ)
ツリーウォール……周囲の木々を操作して木製の壁を作り出す魔法。昨日見せて貰った限りやと確かに強力な魔法やった。アレなら時間を稼いで逃げる事もできそうや。
(倒さないのだ?)
(今は撤退することだけ考えろ)
(ポイ君にしては弱気なのだ!)
(6ちゃんのスレッドでも見たろ? ヤツらは人間みたいに連携も取れる。あの数相手に無理して戦ったら俺らが全滅するぜ?)
ポイズン社長……口調は軽いが顔は真剣や。確かに、先ほど見た掲示板には竜人のことが事細かに書かれていた。
その中で分かったのは、ヤツらには弱点という弱点が無いこと。対人間レベルの戦術で戦わなければ勝てないと言うことや。技の連打程度じゃ勝てへんやろな。
なら、社長の言う通り初めからあの2人を助ける事に全力を向けるべきか。
(武史の持ってる中で遠距離技あったよな? あれで牽制仕掛けてくれ。気を引くには派手な方がいいだろ)
(よっしゃ。任せとけ!)
俺の肩をバンと叩くとポイズン社長達が走って行く。俺はその様子を見守りながら剣を肩に担ぎ、魔力を剣先に集約させる。
森の奥を見据える。ガランドラと戦う2人。その戦いはあまりに一方的だった。技は完封され、殴られ、ヤツの言う通り遊ばれとる。見るに耐えんで……。
早く配置に着いてくれ! みんな!
「クソおおおお!!!」
「当たれぇえ!!」
2人が同時攻撃を仕掛ける。来堂が大斧を叩き付け、ミーナが剣撃を放つ。しかし、ガランドラはその2人の攻撃を素手で受け止めてしまった。
「弱いなぁ!」
ガランドラが拳を叩き付ける。2人はその強靭な腕に絡め取られるように地面に叩き付けられた。
「がはっ……っ!?」
「うっ……」
「待ってやる。立てよ? もう立てないとか言わないだろぉ?」
ガランドラが2人を蹴り飛ばす。木々に叩き付けられた探索者たちはヨロヨロと立ち上がり剣を構えた。
「雑魚が必死になってるほど面白いことはねぇよなぁ? がははははははは!!」
ガランドラは周囲に聞こえるほどの大声を上げた。クソ、相手を痛ぶって喜ぶとか最低やぞ、アイツ。
胸の奥で怒りが渦巻く。だが、これで2人はアイツから離れた。
森の奥を見る。パララもんも、フィリナも魔法の準備はできたみたいや。ポイズン社長も、あの倒れた2人の近くの茂みにおるな。
今なら、行ける。
魔力を解放し、全力の一撃を大地へ叩き込む。
「ダラアアアアアァァァァ!!! 石流岩烈斬!!!」
大剣の剣先から衝撃波が発生する。大地をバキバキと巻き上げながら放たれた一撃は、真っ直ぐにガランドラへと向かった。
「ガランドラ様!!」
竜人ベイルストの声にガランドラが俺の方を見る。
「おぉ! 他の人間もいたのか!」
なんやアイツ……攻撃されて何であんな嬉しそうな顔してるんや。
ガランドラが両拳を振り上げ、石流岩烈斬が当たる直前、両拳を地面へ叩き付けた。
「ふんっ!!!」
その拳が大地に到達した瞬間、ヤツの周囲に衝撃波を発生させる。衝撃波のウネリが石流岩烈斬を飲み込み、あろうことか俺の技を撃ち返して来た。
「なんやと!?」
「馬鹿が! そんなショボい技俺に効く訳ねぇだろうが!!」
咄嗟に地面に飛び込み衝撃波を回避する。馬鹿笑いを上げるガランドラ。ヤツの部下達が俺へと駆け出してきた。
「テメェらあの男を捕えろ!」
ちっ、マジか。自分の技を正面から破られるとかショックやで。
しかし竜人達は完全に俺に気を取られとる。ガランドラの背後に目をやると、ポイズン社長が2人の探索者に回復薬を使っているのが見えた。少し言葉を交わすと、茂みに向かって走りだす3人。よし、救出は成功や。
「だらぁ!!」
飛びかかって来たリザードマンに大剣を薙ぎ払う。その瞬間を見計らったかのようにパララもんが茂みから飛び出した。
「麻痺波!!」
放たれる光の波動。ヤツらが動きを止めた瞬間、俺は後ろに大きく飛び退いた。
「もう大丈夫やぞフィリナ!!」
「分かりました! 魔法を使います!」
俺の合図にフィリナが杖を向ける。彼女に気が付いたガランドラはニタリと嫌な笑みを浮かべた。
「おぉ!? 見つけたぞエルフの女ぁ!!」
ガランドラがドスドスとフィリナに向かって走りだす。彼女はビクリと体を震わせたが、自分を落ち着かせるように深呼吸すると、魔法名を告げた。
「ツリーウォール!」
その声に呼応するかのように周囲の木々が伸びる。無数の木々がうねりをあげて絡みつき、竜人達を包むようにドーム状の壁を形成した。
「ちっ。鬱陶しい魔法を使いやがる!!」
木々の向こうからガランドラの怒声が聞こえる。ダンダンと壁の向こうから音がするが、強靭な木の壁は突破できないようだった。
「ボーッとしてる時間はねーぞ!」
助けた探索者達を連れたポイズン社長の後を追いかける。俺が追い付く頃にはパララもんとフィリナも彼の元に集まっていた。
「やるじゃんフィリナ!」
「想像以上の威力なのだ!」
「ふふっ。上手くいきすぎて自分でも怖いくらいです!」
走りながら社長達が呑気なやり取りをする。こういう所は呑気やが、ある意味凄いよな。肝が据わってるというかなんというか……。
「アンタらは大丈夫なんか?」
「あ、あぁ。救援感謝する」
「マジでやられるところだったよ……っ!」
来堂もミーナも戸惑ってはいるみたいやが、この様子やったら大丈夫やな。
「とりあえずスタート地点の南新宿駅に向かうぜ! そこで作戦を……」
ポイズン社長が言おうとしたその時──。
「ォラァ!!!」
ツリーウォールに風穴が空いた。中から赤い両手が伸びると、バキバキと音を立てて木の壁を破壊し、ガランドラが顔を覗かせた。
「ふははははは!! こんなもんで俺を止められるかよバカが!!」
ガランドラ達がツリーウォールを破壊して追いかけて来る。だが無駄や! この間にかなり距離を取った。このまま撒けるはず。
「俺から逃げられるとか思ってんのかぁ!?」
ガランドラが飛び上がる。その跳躍力は凄まじく、俺達をあっという間に飛び越してしまう。大地を揺らす衝撃と共にガランドラが俺達の目の前に着地した。
「うそやろ!?」
「そのエルフがいりゃ十分だからなぁ……人間共はぶっ殺してやるよ!!」
突然、ガランドラが拳を放つ。その先にいたのは──無防備なパララもんだった。
「え?」
パララもんのヤツ、反応できとらんぞ!? ヤバイ、あんな攻撃モロに受けたら……っ!?
ガランドラの拳がパララもんに迫る。クソ、頭では分かっとるのに体が反応しない!
「ガハハハハハ!! まずはガキからぶっ殺してやるぜ!!」
心臓が跳ね上がる。
動け……動け!!
パララもんは俺の仲間やぞ!!
俺が盾にならんくてどうするんや!!
ダメや、パララもんを死なす訳には──。
「パララ!!」
ポイズン社長がパララもんを突き飛ばす。彼はガランドラの拳をモロに喰らって後ろに吹き飛んでしまった。
「ポイ君!?」
ワンテンポ遅れて体が動く。ポイズン社長の元へ駆け出すパララもん。それを狙うガランドラ。俺はヤツに大剣を叩き付けた。ガランドラは、バックステップで攻撃を避けると俺に狙いを変えて突撃してきた。
「お前が遊んでくれるのかよ!!」
ヤツの拳を大剣で受ける。衝撃音と共に両手が痺れた。俺のスキル「鉄壁」が発動した上でこの威力……なんて力やコイツ。
「テメェはタフみたいだなぁ!! 痛めつけがいがあるぜぇ!!」
「ふざけんなや!!」
ヤツの拳を大剣で何とかいなす。そのまま、全力の一撃を叩き付けた。袈裟懸けに放った一撃。しかしヤツは攻撃を受けてなおニタリと嫌な笑みを浮かべた。
「痛いっちゃ痛いが……力はイマイチだな。コレは楽しくなってきたぜぇ!!」
ヤツの拳が俺の顔面に直撃する。鉄壁が発動するが、意識が刈り取られそうな一撃や。そう何発も喰らえやんで。
「だらぁ!!」
横に回転して攻撃を放つ。ヤツの胴体に大剣が深く突き刺さる。しかし、ヤツの体を傷付けることはできず、ヤツが反撃の拳を放った。左頬に衝撃が走る。歯を食いしばって耐え、魔力を溜める。さらに2発の攻撃を受けながら、ヤツの頭上に岩烈斬を放った。
「ぐぉっ!?」
ヤツが小さく悲鳴を上げる。これならいけるか……!?
「いい攻撃持ってんじゃねぇか!!」
ヤツの拳がみぞおちに叩きこまれ、息が止まりそうになる。体が浮いたところにヤツが拳を振り上げた。
「オラ死ねぇ!!」
ヤバイ!?
咄嗟に大剣で防御する。叩き付けられるガランドラの右ストレート。先ほどとは桁違いの威力に俺の体は後ろに吹き飛ばされた。数秒の浮遊感を感じた後、地面にぶつかり全身に痛みが走った。
「がは……クソッ!! 強すぎる……」
「もっと遊ぼうぜ~?」
遠くでガランドラが笑みを浮かべる。アイツ……俺を痛ぶるために手加減してやがったな。
立ちあがろうとすると、パララもんとフィリナがポイズン社長に声をかけているのが目に入った。
「何やってるんや! 早く逃げるんや!」
俺の言葉にパララもんが顔を上げる。その顔は、涙でぐしゃぐしゃの顔になっていた。
「武史ぃ……ポイ君がぁ……ポイ君が息してないのだ!!」
泣き叫ぶパララもん。彼女が必死に体を揺すっても社長の目は閉じたままだった。
「え、は……? ど、どういうことや?」
「さっきから体を揺すっても叩いても起きないのだぁ……っ!!」
パララもんの言葉が、状況が、飲み込めない。
え……社長、さっきまで軽そうに話してたぞ。
調子いい感じで。こんな時まで普段と変わらんなぁって。
やっぱ社長はすごいなって俺は……。
え。
ウソやろ?
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数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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