461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第183話 探索者という生き物。

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 ~異世界のエルフ フィリナ~

「私達は……既に詰んでいます」

 私達が倒されても、竜人を倒してもイァク・ザァドは復活してしまいます。ヤツらは砦を築いて都庁という建物への道を封鎖しているといいます。それを見つからぬよう突破して、都庁に侵入し、司祭だけを倒すなんてとてもじゃないけど……できない。

 いや、もしかしたら司祭もこの腕輪を装備してるかも……。

 イァク・ザァド復活のトリガーがどれほどの光の量なのか分からない私達に、復活を防ぐ方法なんてありません。周囲を見ると、みなさん暗い顔をしていました。


 こんな状況、一体どうしたら……。


「みんな何を暗い顔してんだよ?」


 461さんという方が能天気な声を上げました。あまりにあっけらかんとした言い方に、私は思わず声を荒げてしまいます。

「で、ですが! 私達がどうやってもイァク・ザァドは復活してしまうのですよ!? このままではどちらにしても私達は……」


「イァク・ザァドが倒せない・・・・なんて誰が言ったんだ?」

「え」

 461さんは腰に視線を落としました。そこにある剣を見て、私は心臓が跳ね上がりそうな感覚に襲われます。

 あの形……見た事があります。過去に読んだ書物の中に描かれていた物と同じ。私が生まれるより以前の伝説に語られていた……聖剣アスカルオ。

 それをなぜ、この世界の住人である彼が持っているのですか?

 彼に問いかけようとした時、武史さんが教えてくれました。この世界で行われた競技で彼が優勝し、聖剣を手にしたことを。

 ……聖剣もこの世界に流れ着いていたの? 何という運命。これも大樹様のお導きなのでしょうか?

 彼は、聖剣の鞘を持ち、話を続けました。

「俺はこの聖剣を使いこなす為に異世界の本を見せて貰ったことがある。そこにはこう書かれてたぜ? この剣を使っていた戦士はアスカルオを使って竜を討ち取った……ってな。なら、普通に考えて倒せるだろ」

 周囲がざわつきます。当然でしょう。先程まで得体の知れない神だと思っていた存在を、461さんは倒せると言ったのですから。

「で、ですが! 我らの神話時代の物語ですよ!? 倒した者が遥かに強い存在だったのかもしれませんし!」

「俺はこの剣を鑑定アプレイザルしたこともある。その伝説の戦いってヤツを垣間見てるぜ? 確かに化け物並みの力を持つ竜だが……行動パターンと対処法を見つければ勝てない道理はない」

 行動パターン? 対処法? 何を言っているのですかこの方は……。

「いいね、エルフの君が狼狽えるほど戦いたくなる」

 鯱女王オルカさんが頬を紅潮させます。この人も……なぜ? どうして自ら死を選ぶような事をするの?


 分かりません。彼らが何を考えているのか、私には……。


「私もイァク・ザァドと戦うわ。ヨロイさんが倒せるって言うならそれを信じる」


 アイルさんが立ち上がります。ジークリードさん、ミナセさん、ナーゴさん。みなさん461さんの事を見つめます。

「俺も天王洲と同じだ。必ず勝ってみせる」
「私達ならできるよね~!」
「ナーゴがみんなを支えるにゃ!」

 みなさんの顔は、461さんと共に戦うという顔をしていました。

 彼らを突き動かすのは何なのですか? 過去の戦いを見たとはいえ、神の如き力を振るう化け物であるのは変わらないはず。彼らを立ち向かわせる勇気は、一体どこから……。

「な、なぜ貴方はそれほどの自信を持って言えるのですか? なぜ勝てると?」


「探索者だからだ」


 彼の言葉に思考が止まってしまいます。探索者だから? そんなものは答えになっておりません。一体彼は何を言っているのでしょうか?

「え、ええと……つまり、どういう事ですか?」

「俺は……困難に見舞われた時、強い敵に立ち向かう時が1番燃える」

「は、はぁ……」

「それをどう打ち破るか、弱点は無いか、突破口は? 自分の持てる物全てを使い立ち向かってクリアする。それが、好きだ」

 461さんはぼんやりと上を見ました。

「だから俺は攻略したい。この新宿迷宮というダンジョンを完全攻略してみたい。だからイァク・ザァドとも戦う。戦って、勝ってみせる。俺にあるのはそれだけだ」

 完全攻略……目の前の男性が言っていることが、私には理解できませんでした。長寿を誇る我らエルフすら命を賭ける行為は避けるのに、短命な種族に生まれた彼はなぜ命を捨てるようなことを言うのでしょう。

 分かりません。私が人では無いからでしょうか。私が探索者ではないから? 分かりません……。

 しかし、彼が発した「完全攻略」という言葉が場の空気を変えたような気がします。他の皆さんも、どことなく顔が明るくなっていました。


「俺もヨッさん461さんに乗ったで」


 突然、今まで黙っていた武史さんが声を上げました。

「た、武史さん!? 何を言ってるのです!? 貴方はガランドラに勝てなかったでは無いですか?」

「でも、生きとる。俺も、社長も……みんな生きとるで」

「生きているって……それは助けて貰ったから……」

 武史さんは自分の手を見つめて拳を作りました。何かに想いを馳せるように。その瞳には、強い意志が込められている様な気がしました。

「運が良かった、生き残った。だからや。俺達はまだ新宿迷宮に挑める。次は絶対に勝つ。竜人にも、そのイァク・ザァドってヤツにも」

「だよな。当然俺もやるぜ~!」
「やってやるのだ!!」

「何を言ってるのですか2人とも!?」

「だって今度は俺らだけじゃねぇし。な? パララ?」
「そうなのだ! ポイ君がやられたお返しにこのダンジョンを攻略しないといけないのだ!」

 呑気そうに笑う2人、分かりません。パララさんはあれほど悲しんでいたではありませんか。社長さんも、またパララさんに会えて嬉しいと涙ぐんでいたではありませんか。なのに、また命を捨てるような事を……。

「勝者ファイ!」

 奥にいた勝者マンという方も……何を言っているのか分かりかねますが、戦うのが当然という顔をしています。


「な? みんな本当は攻略したいんだって。シンとタルパもそうだろ?」


 軽い口調の461さん。シンさんと、タルパさんも皆さんと同じ瞳をしていました。


「……はい。僕はどうしてもボスを倒さないといけないんです」
「私も! 私も変わりたいんです! その為にここに来たんだから!」


 おかしいです。


 ここにいる人はみんなおかしい。誰1人負けると思っていない。負けた事も糧のように捉えています。そして、皆さん同じ目をしています。私には分かりません。私には……。

「アンタはどうする?」

 461さんが私を見ます。同調を求めている訳ではなく、あくまで私の意志を聞いているだけの質問。きっと私が拒めば、彼らは私を残して先に進むでしょう。そう考えると、急に私の胸の奥がズキリと痛みました。1人怯えてここに残るのが……とても寂しい気がして。

「わ、私は……」

 戸惑っているとパララさんが私の手を取りました。

「フィリナはボク達のパーティメンバーなのだ。フィリナが良かったら、ボクは一緒に行きたいのだ!」

「パーティメンバー……ですか」

「そうなのだ! フィリナがいると楽しいのだ!」

 笑顔のパララさん。なぜですか? あんなに泣きじゃくっていたのに。

「な、なぜ……? パララさんは怖くないのですか……?」

「怖い? う~ん……」

 パララさんが考え込みます。そして、私を見てもう一度笑顔になりました。

「怖いのは怖いのだ。だけど、同じ失敗はもうしない。みんなと一緒なら、絶対攻略できるのだ!」


  みんなと一緒なら?


 社長さんも私を見ます。のほほんとした雰囲気を取り戻していて、死にかけた事が嘘のよう。

「俺もそんな感じかな。それによ、ここで暗い顔してたって何か変わる訳じゃないもんな。だったらみんなと攻略する方を選ぶぜ?」

「そうです、が……」


「ね? 今度はきっと大丈夫なのだ! だからフィリナも一緒に攻略しよ?」


 命を賭けた戦いをこんな、こんな遊びみたいに誘って……馬鹿者です。


 こんな人達は大馬鹿者です。


 ですが……。


「はい。私も……やれそうな気がします。みなさんとなら」


 私の戸惑いに反して、口から出てしまいます。彼らと進みたいと。


 自分でも分かりません。なぜそんなことを言ってしまったのか。私も、馬鹿者の1人になってしまったのかもしれません。


 ただ……。


「よし。じゃあ早速マップ作らねえとな」
「ヨロイさん! 私のドローン飛ばすわ!」
「ドローンで偵察するんか! 俺も飛ばすで!」
「ボクも飛ばすのだ~!」
「俺は新宿の地図持ってきてるぜ~!」
「あ! じゃあ私が書きこむね♪」
「俺が見た竜人の配置も書いておこう」
「ナーゴはみんなのために回復ドリンク作るにゃ!」
「ナーゴさん! 僕も手伝いますよ!」
「私も! シンくんと練習したので下処理も任せて下さい!」
「勝者ファイッ!!」
「ふふふ……楽しみだなぁ……」


 彼らを見ていると、私の中でウズウズするような、ワクワクするような気持ちがしたのをハッキリと感じました。

 彼らなら、いいえ。彼らとなら、攻略できる気がします。この新宿迷宮というダンジョン・・・・・を。



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