461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第184話 親愛なる相棒へ

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 ~天王洲アイル~

 探索者達が全員集まってから数時間後。

 ──西新宿エリアのオフィスビル。


 ドローンでの偵察が終わった後、みんなで攻略の打ち合わせをした。

 まず、勝者マンと私とタルパちゃんで砦を攻略。その後都庁に侵入して、二手に別れて北展望台と南展望台を攻略する。

 私達はイァク・ザァドと戦う為の下準備として竜人達と戦う。イァク・ザァドとのボス戦を邪魔されないように極力多くの竜人を倒せるように時間を稼ぐ必要があるからだ。だから最初は私達が動く。頑張らないと……。

 それと、イァク・ザァドと戦う場所も決めた。都庁の向かいにある旧東京都議会議事堂前。半円になった広場に屋根が合わさったような形状は、イァク・ザァドと戦う時に有利らしい。階層を利用して攻撃もできるし、都庁に続く屋根の下へと逃げ込めば大規模攻撃から身を守る事ができそうだから。

「……よし、これで大丈夫」

 頭の中でもう一度自分の役割を確認した私は、ヨロイさんを探す事にした。1つ気がかりな事があったから。

「シン君、タルパちゃん。そっちのボトル取って欲しいにゃ~」
「これですね」
「私、隣の部屋にあったボトルをかき集めて来ます」

 ビルの給湯室ではナーゴ達がみんなの分の体力回復ドリンクと魔力回復スープを準備してくれていた。

 この森で採集した回復効果のある薬草やターロンベアの胆のうで作った特製ドリンクとスープ。ナーゴの調合スキルの効果も相まって通常の回復薬並みの効果が出る。ナーゴも戦ってくれているんだな……。

「腕輪を外すならパララとフィリナに竜人の動きを止めてもらうのが1番だろうな~」
「魔法でツタを出現させて敵を拘束する魔法があります。それを使いましょう」
「俺達のパーティでは天王洲に速雷魔法ラピッド・ショック氷結魔法フロストを使って貰うしかないか」
「だね。他に相手の動き止める方法も無いし。後で話しておくよ」

 会議室ではジークとミナセさん、ポイズン社長とフィリナさんが竜人との戦い方を再確認していた。相手の動きを止める……か。さっきの打ち合わせでも言ってたな。覚えておこう。

「……」

 会議室の奥では勝者マンが黙々と武器の手入れをしている。勝者マン、やたら落ち着いてるわね……。

「アイルちゃん!」

 廊下を歩いていると、不意にパララもんに呼び止められた。

「パララもん。どうしたの?」

「みんなが書き込んでくれた地図をね、マップアプリに変換したのだ!」
「この青い線で囲まれたエリアが竜人の徘徊しとる場所や」

 武史が説明してくれる。パララもんのスマホに映し出されたマップには青いマーカーで囲まれた一帯が映し出されていた。あの砦を中心にぐるっと一周。そこが竜人達の縄張りの境界線になっているみたいだ。

「アイルちゃんのスマホにも転送しておくのだ」
「他のヤツには入れたでな、後はアンタだけや」

「そうなの? ありがとう」

 パララもんのスマホに自分のスマホを向ける。彼女がマップからデータファイルを選択。指でスワイプすると、私のスマホに「マップデータが更新されました」という表示が出た。2人にお礼を言ってヨロイさんの所へ。

 ヨロイさんのいる屋上に上がる。扉に手をかけた時、話し声が聞こえた。覗き込むと屋上の奥でヨロイさんと鯱女王オルカが話をしているのが見えた。

「話ってなに?」

 鯱女王がヨロイさんのヘルムをジッと見つめる。落下防止の手すりに寄りかかったヨロイさんはいつもと同じ様子で話し出した。

「……お前、打ち合わせ聞いてなかったろ? 南展望台攻略はポイズン社長達とシン達に任せる。お前は彼らのパーティに協力してくれ」

「ふぅん。ま、良いけど。でもイァク・ザァドが出現したら僕1人でヤらせてもらう」

 有無を言わせないような鯱女王の言葉。ヨロイさんは肩をすくめた。

「最後まで話聞けって」

「……分かった」

 少しだけ体を震わせて笑みを浮かべる鯱女王。ふざけてるみたいだけど、ヨロイさんの話を聞こうとしているのだけは分かる。

「イァク・ザァド討伐の方法を考えた。最終決戦の場所に人員をどう配置するかもな」

「へぇ。それで?」

「だが、その前に俺達は竜人達とも戦わなきゃならない。戦いの中でのイァク・ザァド出現……恐らく俺達の準備が整うまでは時間がかかる」

 そこまで言って、ヨロイさんは鯱女王を見た。

「だからその準備が整うまで、お前には1人・・でイァク・ザァドと戦って貰う」

 ヨロイさんがそう言った瞬間、鯱女王がお腹を抱えて笑い出した。

「ははっ! てっきり「みんなと協力しろ」とか言われると思ったよ! ……倒しちゃってもいいんだよね?」

「倒せるならそれで構わない。だが、これだけは覚えておけ、お前が死んでも俺達はイァク・ザァドと戦う」

「どういうこと?」

「お前が死んだらイァク・ザァド討伐の称号は俺達のものってことだ」

「……挑発? 死んだらいけないルールね。そっちの方が難易度高そうだ」

「だろ? 頼むぜ」

 鯱女王がこちらに歩いてくる。心の底から嬉しそうな顔。彼女は扉の影にいた私に目を向けると、ニヤリと笑みを浮かべて階段を降りていった。

 屋上に出て、手すりに寄りかかっていたヨロイさんの横へ行く。

「聞いてたか?」

「ええ。どうしてわざわざあんなこと言ったの?」

「……死んだら困るだろ」

 やっぱり。その言葉にずっと感じていた事に確信を持てた。あの後から様子が変だと思ったのよね。みんながイァク・ザァドと戦うって言った後から。

「ヨロイさん、責任感じてるでしょ?」

「……」

 ヨロイさんは答えない。だけど私にはそれが肯定だと分かる。私はヨロイさんの相棒だから。

「やっぱり。イァク・ザァド倒す事にみんなを巻き込んじゃったって思ってるのね」

「……あの言葉は本心だ。だけどよ、そのせいで誰か死んじまったら俺はどう思うのかって考えちまったんだよ」

 ヨロイさんが遠くを見つめる。その視線の先に都庁が見える。ここからだと見上げないといけないほど高いビル。それを、彼は静かに見つめていた。

 その姿に……胸の奥が熱くなる。ヨロイさんは変わらない。ずっとダンジョンが大好きで、きっとこれからも挑み続ける人。だけど、今はその「好き」の中に私達も入ってる。大切な存在だと想われている。私や、パーティのみんなだけじゃなくて、ここにいる探索者みんなの事を。

 それが嬉しかった。ヨロイさんの「好き」が広がって。

 初めてヨロイさんに出会った時、少し怖い人だなと思った。自分の命も何もかも、全部顧みない人に思えたから。でも、それから私に色々教えてくれて、誰かを助けるようになってくれて……大事なものが増えてる事が私は嬉しい。

 でも、それはヨロイさんが責任を感じる事じゃない。そのせいでヨロイさんが楽しめないのは違うと思う。

 私にできることは私の気持ちを伝えることだけ。でも、伝えたい。それでヨロイさんが余計な心配をしなくて良くなるなら。

「ヨロイさん、ちょっとしゃがんでくれない?」

「なんでだよ?」

「いいから」

 ヨロイさんが膝をつく。私は、彼のヘルムをそっと外して横に置いた。久々に見たヨロイさんの素顔。その顔は少し戸惑っていた。この新宿に入ってから、きっとヘルムの奥で、彼は色んな顔をしていたのかもしれない。

 私達にはずっと頼もしい姿を見せてくれていたけれど、きっと色んな事を考えていた……そう思うと、とても彼が愛しく感じる。

 彼の頬を両手で挟んで。私はその額に自分の額を当てた。

「ヨロイさん。私達はね、ヨロイさんと同じ。みんなダンジョンが好きだから戦うって決めたんだよ?」

「……」

 なんだろうこの気持ち? 前はドキドキする気持ちもあったけど、今は少し違う。胸の奥がじんわり熱くて、ただ、ヨロイさんに笑っていて欲しい。楽しんでほしい……純粋にそう思える。

「みんな自分で決めたの。だから、ヨロイさんは何も責任なんて感じる必要ないわ」

 額から伝わる熱、目の前で感じる呼吸。それの全部が好き。

「みんなで決めたことだから、一緒に楽しも? 私もヨロイさんにいっぱい助けて貰うし、いっぱい助けるよ」

「アイル……」

「ね? だから何も心配しないで? 私達は大丈夫。絶対大丈夫だから」

「……ありがとな」

 短い言葉。だけど、額を離した時、彼は恥ずかしそうに微笑んでいた。その目が私を真っ直ぐ見てくれている事が、すごく嬉しい。

 彼にヘルムを被せる。いつも見ている、私の大好きなヘルム。このヘルムも、中の素顔も私は大好き。大好きだから、安心して欲しい。安心して攻略を楽しんで欲しい。

 この気持ちってなんだろう? 好きだけど、もっと……守ってあげたいような、包んであげたいような気持ち。リレイラなら分かってくれるかな?

 ヨロイさんはゆっくり立ち上がって、ふぅと息を吐いた。

「みんなに今日は良く休むように言わないとな。朝になったら都庁エリアの攻略開始するぞ」

「うん!」

 そっとヨロイさんの手に自分の手を重ねると、彼は私の手を握ってくれた。



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