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第185話 竜人の砦。
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~461さん~
翌日。
早朝にオフィスビルを出発した俺達は竜人の砦の手前までやって来た。
木に登って砦を観察していたジークが飛び降りる。
「どうだジーク?」
「向こうの陣形に変化は無い」
「分かった。それじゃあ最終確認に入るぞ」
背後を振り返ると、アイルとタルパと勝者マンが俺の前までやって来た。みんな気合い入ってるな。
「あの砦を突破した後は、俺達パーティと勝者マンで旧都庁の南展望台を攻略する。武史達のパーティにシン、タルパ、鯱女王を加えたメンバーで北展望台を攻略して貰うぜ」
一度深呼吸して言葉を続ける。俺も若干緊張してるのかもな。
……。
……楽しみだぜ。
「みんなイァク・ザァドは復活する物として考えてくれ」
「あれやろ? 都庁を攻略して、イァク・ザァド戦を竜人達に邪魔させやんようにするってことやんな?」
武史の言葉に頷いて答える。彼の隣にいたフィリナが呆れたように肩をすくめた。
「本当に……作戦も何もない無茶な行動ですね」
「大丈夫だってフィリナ。もう絶対負けねーからさ!」
「みんないるのだ! 大丈夫なのだ」
「ふふっ。そうですね。私も今度は絶対……皆さんを守りますから」
決意に満ちたようなフィリナの表情。ポイズン社長やパララもんも落ち着いている。こっちのパーティも心配はいらないな。
「イァク・ザァドが復活したら鯱女王が足止めする。その間に俺達は打ち合わせ通りボス戦の準備に入る。いいな?」
「ま、倒しちゃうかもしれないけど」
腕を組んで不敵に笑う鯱女王。その顔はイベントが待ちきれない子供のようにも見える。だが、一応俺の言う事は聞いてくれている。単独行動に出る気は無さそうだ。
「まずは砦の攻略ね! ヨロイさんの作戦通り行くから勝者マンも配置について!」
アイルが元気よく声を上げると、勝者マンがコクリと頷いて森の中を駆けていった。数分経った所で、タルパの肩を叩いた。
「タルパ、頼む」
「はい!」
タルパが目を閉じて全身から魔力を放出させる。風のようにうねる魔力の中、彼女は魔法名を告げる。
「夢想魔法」
俺達の目の前に人間大の熊のぬいぐるみが現れる。それも大量に。ざっと見渡しただけでも50体はいる。
……1度でこれだけ出せるか。タルパは自分に才能が無いと言っていたが、それは思い込みだな。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫? タルパちゃん?」
シンがタルパの背中を支えた。タルパは彼に支えられながらもさらに魔力の放出を続ける。
「大丈夫……ナーゴさんの魔力回復薬があるから、魔力使い切るまで、頑張るね……」
熊のぬいぐるみがさらに増えて行く。森を埋め尽くすほどのぬいぐるみを見て、タルパは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「すごい……私って、こんなに出せたんだ……」
「ここからよ。タルパちゃんの魔法と私の魔法が合わさったらきっと凄いから」
ここを攻める作戦を考えた時、あの場にいたメンバーの魔法や特技を色々なパターンで組み合わせてみた。中でもタルパとアイルの魔法の組み合わせが砦攻略に最も有効的だ。屋上で火炎魔法と小型のぬいぐるみで試した時も中々の迫力だったしな。
アイルの炎渦魔法は対象を燃やしながらその威力を上げる。タルパの夢想魔法のぬいぐるみ達は攻撃を受けても痛覚がなく、燃え尽きるまで動くことができる。
勝者マンの戦いで奴らの気を引き、この2人の魔法を砦の側面からぶつける。これがヤツらに与える脅威は計り知れないだろう。
ヤツらが混乱した隙に砦を突破する。そういう作戦だ。
「ふう……やるわよ」
アイルが真っ直ぐに杖を構える。それに合わせるようにタルパが手を伸ばすと、ぬいぐるみ達がゾロゾロと進軍を始めた。
「お願いします、アイルさん」
「任せてタルパちゃん」
アイルは竜人達の砦に向かうぬいぐるみ達に向けて、魔法を放った。
「炎渦魔法!!」
◇◇◇
461さん達が動き出して数分後。
──竜人達の砦。
~竜人の警備兵長 ブランベル~
「なぁ~本当に人間達なんて来るのかぁ?」
副長のアルビスがおおきな欠伸をする。全く能天気だなコイツ……昨日ガランドラ様がやられたばかりだっていうのに。
しかし、アルビスの気持ちも分からんでもない。あれ以降人間側の動きが全くといって無いらしいからな。
視線を前方に向ける。設置されたやぐらの上では、リザード弓兵達が周囲を警戒しているのが見えた。その下には巡回のリザード兵が。近くに人間達がいるならリザード兵達も反応するはずだ。
「はぁ……早く交代の時間になんねぇかなぁ……」
「副長だろ? しっかりしろ」
アルビスを注意したその時。
「勝者アロー!!!」
突然変な声が聞こえた。次の瞬間、周囲を警戒していたリザード兵に赤い槍が突き刺さった。
「て、敵襲!? 人間か!?」
「早く増援を──」
「グギャアアアアアアアアアアアアア!?」
リザード兵に刺さった槍が大爆発を起こす。その爆音に俺の声はかき消されてしまった。
「な、なんだあれは!?」
「爆発だと!?」
「勝者ファイッ!!!」
呆気に取られている間に木の影から妙な姿をした人間が現れた。返り血で真っ赤に染まった服を着た男。ソイツがリザード兵に飛びかかり、1体がヤツのナイフに滅多刺しにされてしまう。
普通に考えるなら全く馬鹿な行動だ。リザード兵の群れの中に1人で挑んだりしたらあっという間に取り囲まれて殺されてしまうだろう。
しかし、ヤツは様子が違った。
鬼気迫る勢いでリザード兵を滅多刺しにする男。周囲に響き渡るリザード兵の悲鳴。その様子を見ていたリザードマン達は、あろうことか怯えたように逃げ始めてしまった。
「勝者ナイフッ!!!」
逃げるリザード兵の中を男が縫うように走る。男がリザード兵とすれ違う度に血飛沫が上がり、リザード兵がバタバタと倒れていく。男は、リザード兵の盾を奪ってやぐらから放たれる弓矢を防ぐ。
弓兵達が弓を射るが、男はそれを盾で防ぎながらやぐらの梯子に飛び付いた。梯子を蹴落とそうとしたリザード兵に男がナイフを投げ付ける。胸にナイフが突き刺さったリザード兵が下に落ちてしまった。
「グアグア!!」
再び発射される弓兵達の矢。しかし、男は盾で矢を防ぎながらさらにやぐらの上を目指す。
そして、ついにやぐらの上に辿り着いた男は、魔法を唱えて右手に赤い槍を出現させる。そして、梯子の近くにいたリザード兵をその槍で串刺しにして地面へとたたき落としてしまう。
「グ、グ……グアアアア!!!」
最後の1体となったリザード兵が弓を捨て、腰の剣を引き抜いて襲いかかる。男は、切り掛かったリザード兵の斬撃をするりと避け、両手でリザード兵の体を持ち上げた。
「勝者フォール!!」
何事かを叫んだ男がリザード兵をやぐらの下へ放り投げる。
「グアアアアアアアアア~!?」
叫びながら大地へ叩き付けられるリザード兵。男はその片手を天高く突き上げた。
「勝者アロー!!!」
男が右手の槍を高々と掲げる。男は、槍を構え、地面でビクビクと痙攣しているリザード兵へと投擲した。
「ギャ」
槍が突き刺さり、リザード兵が小さく悲鳴を上げた次の瞬間──。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
槍が大爆発を起こし、やぐらごと吹き飛んだ。
「な、なんだアイツは!!?」
「気でも触れてるんじゃねぇか!?」
爆発の中、男が吹き飛ぶ。地面への着地と同時にゴロゴロと回転した男は、ジロリと俺達を見た。
「や、やべぇぞ……!? アイツと目が合っちまった!?」
逃げようとするアルビスの腕を掴む。
「なんだよ!?」
「お前!? 我らはイァク・ザァド様に身を捧げると誓ったろ!!」
「うるせえ!! 俺はテメェらみたいに信心深く無いんだよ!! 死にたくねぇよぉ!!!」
アルビスに顔面を殴られ地面に倒れ込んでしまう。アルビスは、一直線に森の中に逃げていった。
「クソ……あの馬鹿野郎……! 敵襲だ!!! 陣形を組め!!!」
振り返って指示を出すが、そこには誰もいなかった。砦の側面から大量の燃え盛る熊が侵攻し、仲間達を襲っている。その中央では巨大な炎の竜巻が砦を焼き尽くしていた。
「うわああああ!?」
「炎の竜巻だ!!」
「魔導士が火に飲み込まれたぞ!?」
「こ、こちらは燃え盛る熊の軍団にやられました!」
「な、なんだこれは……?」
お、俺達は嵌められたのか?
混乱していると、背後で地面を踏み締める音が聞こえた。
恐る恐る振り返る。目の前には返り血で真っ赤に染まった足が見えた。ゆっくり顔を上げると、ナイフを持った男が俺を見下ろしていた。正気を失ったような目に、俺の体はガタガタ震えて、剣を掴み損ねてしまう。
「ひっ……ひいっ……っ!?」
カランと落ちる俺の剣。男は剣を一瞥すると、ナイフを構えた。
「勝者ファイッ!!」
「ひ、ひ、ひああああああああ!!?」
謎の言葉を聞いた瞬間、俺は武器を捨てて一心不乱に森へと逃げた。自分からこんな情け無い声が出るとは思っても見なかった。
悪魔だ。
あれは赤い悪魔だ!!!
ずっとヤツが追いかけて来る気がして、俺はひたすら森の中を走り続けた──。
翌日。
早朝にオフィスビルを出発した俺達は竜人の砦の手前までやって来た。
木に登って砦を観察していたジークが飛び降りる。
「どうだジーク?」
「向こうの陣形に変化は無い」
「分かった。それじゃあ最終確認に入るぞ」
背後を振り返ると、アイルとタルパと勝者マンが俺の前までやって来た。みんな気合い入ってるな。
「あの砦を突破した後は、俺達パーティと勝者マンで旧都庁の南展望台を攻略する。武史達のパーティにシン、タルパ、鯱女王を加えたメンバーで北展望台を攻略して貰うぜ」
一度深呼吸して言葉を続ける。俺も若干緊張してるのかもな。
……。
……楽しみだぜ。
「みんなイァク・ザァドは復活する物として考えてくれ」
「あれやろ? 都庁を攻略して、イァク・ザァド戦を竜人達に邪魔させやんようにするってことやんな?」
武史の言葉に頷いて答える。彼の隣にいたフィリナが呆れたように肩をすくめた。
「本当に……作戦も何もない無茶な行動ですね」
「大丈夫だってフィリナ。もう絶対負けねーからさ!」
「みんないるのだ! 大丈夫なのだ」
「ふふっ。そうですね。私も今度は絶対……皆さんを守りますから」
決意に満ちたようなフィリナの表情。ポイズン社長やパララもんも落ち着いている。こっちのパーティも心配はいらないな。
「イァク・ザァドが復活したら鯱女王が足止めする。その間に俺達は打ち合わせ通りボス戦の準備に入る。いいな?」
「ま、倒しちゃうかもしれないけど」
腕を組んで不敵に笑う鯱女王。その顔はイベントが待ちきれない子供のようにも見える。だが、一応俺の言う事は聞いてくれている。単独行動に出る気は無さそうだ。
「まずは砦の攻略ね! ヨロイさんの作戦通り行くから勝者マンも配置について!」
アイルが元気よく声を上げると、勝者マンがコクリと頷いて森の中を駆けていった。数分経った所で、タルパの肩を叩いた。
「タルパ、頼む」
「はい!」
タルパが目を閉じて全身から魔力を放出させる。風のようにうねる魔力の中、彼女は魔法名を告げる。
「夢想魔法」
俺達の目の前に人間大の熊のぬいぐるみが現れる。それも大量に。ざっと見渡しただけでも50体はいる。
……1度でこれだけ出せるか。タルパは自分に才能が無いと言っていたが、それは思い込みだな。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫? タルパちゃん?」
シンがタルパの背中を支えた。タルパは彼に支えられながらもさらに魔力の放出を続ける。
「大丈夫……ナーゴさんの魔力回復薬があるから、魔力使い切るまで、頑張るね……」
熊のぬいぐるみがさらに増えて行く。森を埋め尽くすほどのぬいぐるみを見て、タルパは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「すごい……私って、こんなに出せたんだ……」
「ここからよ。タルパちゃんの魔法と私の魔法が合わさったらきっと凄いから」
ここを攻める作戦を考えた時、あの場にいたメンバーの魔法や特技を色々なパターンで組み合わせてみた。中でもタルパとアイルの魔法の組み合わせが砦攻略に最も有効的だ。屋上で火炎魔法と小型のぬいぐるみで試した時も中々の迫力だったしな。
アイルの炎渦魔法は対象を燃やしながらその威力を上げる。タルパの夢想魔法のぬいぐるみ達は攻撃を受けても痛覚がなく、燃え尽きるまで動くことができる。
勝者マンの戦いで奴らの気を引き、この2人の魔法を砦の側面からぶつける。これがヤツらに与える脅威は計り知れないだろう。
ヤツらが混乱した隙に砦を突破する。そういう作戦だ。
「ふう……やるわよ」
アイルが真っ直ぐに杖を構える。それに合わせるようにタルパが手を伸ばすと、ぬいぐるみ達がゾロゾロと進軍を始めた。
「お願いします、アイルさん」
「任せてタルパちゃん」
アイルは竜人達の砦に向かうぬいぐるみ達に向けて、魔法を放った。
「炎渦魔法!!」
◇◇◇
461さん達が動き出して数分後。
──竜人達の砦。
~竜人の警備兵長 ブランベル~
「なぁ~本当に人間達なんて来るのかぁ?」
副長のアルビスがおおきな欠伸をする。全く能天気だなコイツ……昨日ガランドラ様がやられたばかりだっていうのに。
しかし、アルビスの気持ちも分からんでもない。あれ以降人間側の動きが全くといって無いらしいからな。
視線を前方に向ける。設置されたやぐらの上では、リザード弓兵達が周囲を警戒しているのが見えた。その下には巡回のリザード兵が。近くに人間達がいるならリザード兵達も反応するはずだ。
「はぁ……早く交代の時間になんねぇかなぁ……」
「副長だろ? しっかりしろ」
アルビスを注意したその時。
「勝者アロー!!!」
突然変な声が聞こえた。次の瞬間、周囲を警戒していたリザード兵に赤い槍が突き刺さった。
「て、敵襲!? 人間か!?」
「早く増援を──」
「グギャアアアアアアアアアアアアア!?」
リザード兵に刺さった槍が大爆発を起こす。その爆音に俺の声はかき消されてしまった。
「な、なんだあれは!?」
「爆発だと!?」
「勝者ファイッ!!!」
呆気に取られている間に木の影から妙な姿をした人間が現れた。返り血で真っ赤に染まった服を着た男。ソイツがリザード兵に飛びかかり、1体がヤツのナイフに滅多刺しにされてしまう。
普通に考えるなら全く馬鹿な行動だ。リザード兵の群れの中に1人で挑んだりしたらあっという間に取り囲まれて殺されてしまうだろう。
しかし、ヤツは様子が違った。
鬼気迫る勢いでリザード兵を滅多刺しにする男。周囲に響き渡るリザード兵の悲鳴。その様子を見ていたリザードマン達は、あろうことか怯えたように逃げ始めてしまった。
「勝者ナイフッ!!!」
逃げるリザード兵の中を男が縫うように走る。男がリザード兵とすれ違う度に血飛沫が上がり、リザード兵がバタバタと倒れていく。男は、リザード兵の盾を奪ってやぐらから放たれる弓矢を防ぐ。
弓兵達が弓を射るが、男はそれを盾で防ぎながらやぐらの梯子に飛び付いた。梯子を蹴落とそうとしたリザード兵に男がナイフを投げ付ける。胸にナイフが突き刺さったリザード兵が下に落ちてしまった。
「グアグア!!」
再び発射される弓兵達の矢。しかし、男は盾で矢を防ぎながらさらにやぐらの上を目指す。
そして、ついにやぐらの上に辿り着いた男は、魔法を唱えて右手に赤い槍を出現させる。そして、梯子の近くにいたリザード兵をその槍で串刺しにして地面へとたたき落としてしまう。
「グ、グ……グアアアア!!!」
最後の1体となったリザード兵が弓を捨て、腰の剣を引き抜いて襲いかかる。男は、切り掛かったリザード兵の斬撃をするりと避け、両手でリザード兵の体を持ち上げた。
「勝者フォール!!」
何事かを叫んだ男がリザード兵をやぐらの下へ放り投げる。
「グアアアアアアアアア~!?」
叫びながら大地へ叩き付けられるリザード兵。男はその片手を天高く突き上げた。
「勝者アロー!!!」
男が右手の槍を高々と掲げる。男は、槍を構え、地面でビクビクと痙攣しているリザード兵へと投擲した。
「ギャ」
槍が突き刺さり、リザード兵が小さく悲鳴を上げた次の瞬間──。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
槍が大爆発を起こし、やぐらごと吹き飛んだ。
「な、なんだアイツは!!?」
「気でも触れてるんじゃねぇか!?」
爆発の中、男が吹き飛ぶ。地面への着地と同時にゴロゴロと回転した男は、ジロリと俺達を見た。
「や、やべぇぞ……!? アイツと目が合っちまった!?」
逃げようとするアルビスの腕を掴む。
「なんだよ!?」
「お前!? 我らはイァク・ザァド様に身を捧げると誓ったろ!!」
「うるせえ!! 俺はテメェらみたいに信心深く無いんだよ!! 死にたくねぇよぉ!!!」
アルビスに顔面を殴られ地面に倒れ込んでしまう。アルビスは、一直線に森の中に逃げていった。
「クソ……あの馬鹿野郎……! 敵襲だ!!! 陣形を組め!!!」
振り返って指示を出すが、そこには誰もいなかった。砦の側面から大量の燃え盛る熊が侵攻し、仲間達を襲っている。その中央では巨大な炎の竜巻が砦を焼き尽くしていた。
「うわああああ!?」
「炎の竜巻だ!!」
「魔導士が火に飲み込まれたぞ!?」
「こ、こちらは燃え盛る熊の軍団にやられました!」
「な、なんだこれは……?」
お、俺達は嵌められたのか?
混乱していると、背後で地面を踏み締める音が聞こえた。
恐る恐る振り返る。目の前には返り血で真っ赤に染まった足が見えた。ゆっくり顔を上げると、ナイフを持った男が俺を見下ろしていた。正気を失ったような目に、俺の体はガタガタ震えて、剣を掴み損ねてしまう。
「ひっ……ひいっ……っ!?」
カランと落ちる俺の剣。男は剣を一瞥すると、ナイフを構えた。
「勝者ファイッ!!」
「ひ、ひ、ひああああああああ!!?」
謎の言葉を聞いた瞬間、俺は武器を捨てて一心不乱に森へと逃げた。自分からこんな情け無い声が出るとは思っても見なかった。
悪魔だ。
あれは赤い悪魔だ!!!
ずっとヤツが追いかけて来る気がして、俺はひたすら森の中を走り続けた──。
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