461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第186話 突破する砦

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 勝者マンがリザード兵達と戦っている頃。

 ~461さん~


「なんだコイツらは!?」
「フレイムベアの群れだ!! 早く逃げろ!」
「この森にフレイムベアはいないはずだろ!?」
「炎の竜巻で天井が吹き飛ばされたぞ!!」
「し、死にたくないぃ……っ!!」

 隙を突かれた竜人達は、混乱に陥っていた。タルパのぬいぐるみ達をモンスターだと見間違って逃げ惑う竜人達。竜人の砦へと侵入した俺達は、燃え盛るぬいぐるみの後に続いて先を進んだ。

「人間だ!!」
「策略だ! 騙されるな!!」

 しかし、中にはこちらに気付いて襲いかかって来る者もいた。

麻痺波パララウェーブ!!」

 パララもんの放った波動に竜人達が動きを止める。その瞬間を見計らってポイズン社長が猛毒の牙ヴェノムファングを発動。彼の周囲に緑色の矢が複数現れる。

「無防備な時の毒はキツイぜ~!」

 ポイズン社長が手を突き出すと、毒の矢が竜人達に突き刺さる。次の瞬間、竜人の兵士達はもがき出し、無事だった他の竜人達がそれに気付いて駆け寄って来る。そこに再び放たれる麻痺波パララウェーブ。ヤツらが足を止めた瞬間、フィリナが武器を構えた。

「アースブレイク!」

 竜人達の足元に亀裂が入り、地面に隆起を発生させる。突如現れた土の防御壁に竜人達が戸惑いの声を上げた。

「よっしゃ! まとめて蹴散らしたる!!」

 武史が担いでいた大剣を構え、竜人達に技を放った。

「石流岩烈斬《せきりゅうがんれつざん》!!」

 大剣から放たれる衝撃波。地面を砕きながら進むそれは、フィリナの発生させた隆起に直撃し、粉々に打ち砕いてしまう。それでもなお威力は落ちず、土石流のように変化した大地が竜人達に襲いかかった。

「動けない者には手を貸せ!!」
「早く行けよ!」
「うわあああああ!?」
「森に逃げろ!!」
「助げ……っ!?」

 ある者は森へ逃げ込み、ある者は土の波に飲み込まれてしまう。飲み込まれた者もレベルポイントの光が出てない辺り、まだ死んではいないだろう。しかし、這いずり出した者達も完全に戦意を失った様子で逃げていった。


「っしゃ! 上手くいったぜ!」
「ほとんど逃げて行ったのだ!」
「やりましたね!」

 喜ぶパララもん達。俺の隣を走っていた武史が不思議そうに首を傾げた。

「ヨッさんの言う通りにいったけど、なんでアイツらすぐ逃げるんや? 玉砕覚悟で攻撃してくると思ったで」

「ジークが腕輪を捨てた竜人の話をしてたろ? アイツらも一枚岩じゃない。しかも、こんな前線にいるヤツらなんて下っ端だろうしな」

 勝者マンによるリザードマン達の制圧。ぬいぐるみ達を糧に燃え上がる巨大な竜巻に、燃え盛るぬいぐるみ達。これだけの脅威を目の前にして、戦意の低い者は逃走するだろう。俺の仮説だったが、上手くいったみたいだ。

「でもなぁ。よくそれだけの情報でここまで展開読めたな……流石やで」

「ネットの協力者やお前達のおかげだけどな」

 俺達に情報共有されたネット掲示板には竜人達の事が事細かに書かれていた。ヤツらが人間と同じほどの知能を持ち、弱点らしい弱点が無いこと。それに加えて文化や思考……それを俺達の世界に当てはめた場合、どの程度の時代の価値観になるのか。あのスレッドを建てたヤツは相当知識を持ってる。本当に助かるぜ。

 それに俺達が今回得た経験を加えて砦の攻略方法を考えた。剣士の誇りを持ったラムルザ。他者を痛め付ける事に快楽を持っていたガランドラ。そして、腕輪を捨てた竜人……。

 そこから分かることは、人と同じ知能、近い文化を有しているという事は、人と同じ弱点・・・・・・を持っているという事だ。通常のモンスターなら持ち得ない弱点が。

 それは自我が強すぎるという事。モンスターと違って俺達は「群れ」じゃない。「社会」なんだ。それは完全な団結を生まない。上に従うように見えて内心は……というケースが生まれる。

 支配者から命を捧げろと言われても、死にたくない者はいる。より死にやすい前線にいる者はその思考が強いだろう。

 そこにラムルザを撃退し、ガランドラを殺した人間が、派手なスキルで攻撃を仕掛けて来たら?

 きっとヤツらは俺達の実力を過大評価する。ラムルザは探索者を技のみだと蔑んだが、初見でそれを見破れるヤツは少数派だろう。だからこそ、俺達はそれを逆に利用させて貰う事にした。派手な技で防衛線が突破される。それが、俺達の実力を強大に感じさせると。

 だが、上手くいき過ぎているとも思える。本来、防衛を務める砦であればラムルザクラスの竜人が配置されていてもおかしくない。だが、この竜人達の混乱ぶりを見る限りここには下級の兵士しかいないみたいだ。

 そこだけが引っかかる。まるで、砦の竜人達をわざと死なせようとしているような……腕輪の件もある。コイツらは見捨てられているのか?

 ……もしそうだとしたら、竜人達を支配しているヤツは相当なゲス野郎だな。

 いずれにせよこの絡め手が通用するのはこの辺りまでだ。ここから先はより支配者に近い者が防衛に入る。気を引き締めないとな。



◇◇◇

 砦を突破した後もタルパとアイルが生み出した炎の熊が竜人達に襲いかかり、道を開いてくれた。竜人が弓で射っても、槍で貫いても止まらないぬいぐるみ。その様子はまるでゾンビ映画のようだ。

「ダメだ!?」
「組み付かれるな! 燃やされるぞ!!」
「ひぃぃいい!!」

 燃え盛るぬいぐるみは倒せないと諦めた竜人達は、森の中へと逃走していく。先程からこの光景が繰り返されていた。

 それを横目に駆け抜けると、やがて勝者マンが合流した。

 再び全員揃った俺達はさらに奥へと駆け抜け、ついに旧都庁の入り口へと辿り着いた。

「あそこがイァク・ザァドと戦う広場ね」
「その前に、都庁にいる竜人達を倒さないと……」

 アイルとシンが同時に下を覗き込む。俺達の立っている地上階から一段下がった位置に、旧都議会場前の半円状の広場があった。

「それにしてもさ~、さっきまでとは打って変わって誰もいないねぇ」

 ミナセが額に手を当てて周囲を見回す。確かに周囲は不気味なほど静まり返っていた。

 都庁の入り口は開いたままになっており、まるで入って来いとでも言っているようだ。

「罠だろうな。それか、俺達を分断させてから戦うつもりか」

 ジークが腰のバルムンクを構える。罠か。にしても今更感があるな。俺達を分断したいならここに来る前にやるべきだ。なんか妙だな……。

「どっちでもいい。僕は北展望台に向かうよ」

「ちょ、待って下さいよ!」
「はぁ……頭痛くなる……憧れてたのに……」

 ツカツカと歩いて行く鯱女王オルカ。シンとタルパは慌てて彼女の後を追った。

「俺らも行こーぜ。鯱女王いるからって安心できないしな」

「行くのだ!」
「っしゃ! 今度こそやったるで!」
「みなさん、くれぐれも油断しないで下さいね」

 歩いて行くポイズン社長。その後に武史達が続く。

「ポイズン社長」

 別れ際に声をかけてしまう。無意識というか、無性に声をかけたくなってしまったから。


「どうしたんだよ461さん?」


 振り返るポイズン社長。作戦会議の時も、飄々としているようで誰よりも真剣に向き合っていたのは彼だ。それはきっと、一度死にかけたから……だからこそ、同じ失敗はしないだろう。武史達や、シンとタルパ、鯱女王オルカも。俺がいなくても、彼なら上手く気遣ってまとめてくれる……そんな気がした。


「そっちは任せたぜ」


 ポイズン社長は一瞬驚いたような顔をした後ニカリと笑った。


「へへっ。アンタに言われると嬉しいな!」


「お~! キッチリ竜人達には借り返すで!」
「私も頑張ります!」

 ここに来るまでの戦闘を見たが、良いパーティだ。フィリナが加わって攻撃、防御共にバランスもいい。アレだけの連携が取ることができるパーティはそうそういないだろう。

「ほらパララ」

 なぜかポイズン社長がパララもんの背中を叩く。彼女はオドオドした様子で俺の前にやってきた。

「あの……461さんも気を付けて欲しいのだ」

「ああ、ありがとなパララもん。シン達の事も頼んだぜ」

「任されたのだ!」

 少し顔を赤くしたパララもんは、敬礼のようなポーズを決めると、仲間達の方へと走って行った。

 俺達とはまた違う雰囲気……色んなパーティの形があるんだな。


「私達も行きましょ、ヨロイさん」

「……そうだな」


 アイルに声をかけられ、俺達も都庁へと侵入した。




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