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第193話 宝玉
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~シン~
ダルクからレベルポイントが溢れ出し、僕達のスマホへと吸収される。吸収されると、僕のスマホから機械的な女性の声が響いた。
『レベルポイントを3000pt獲得しました』
1人3000ptも? アイツ、18000ptも持ってるヤツだったのか……。
〈2万近くあるじゃん!?〉
〈それを倒すなんて凄いのだ!: 8666円〉
〈ご祝儀なのだ! : 8666円〉
〈パララもん凄いのだ! :8666円〉
〈凄い戦いだったわね~!〉
「ダルク!? く、クソ……まだだ!!」
残ったベイルストがフィリナさんのアイヴィーレストのツタを引きちぎって杖を構える。
「させないのだ!!」
パララもんがベイルストに連続で麻痺魔法を撃ち込む。麻痺状態になったベイルストは、足がもつれたように倒れ込み、ゴロリと仰向けになった。
「あ、あ……あぁぁぁ……ダメだ……俺は、勝たないと……」
ベイルストの顔から血の気が引く。その瞳には怯えの色も含まれている。この怯え方……なんだ? なぜベイルストは怯えているんだ?
「腕輪は私が取ります!」
タルパちゃんのぬいぐるみがベイルストの腕輪を奪い、フィリナさんがもう一度魔法のツタで拘束する。完全に身動きが取れなくなったベイルスト。武史さんが大剣を担いでヤツに近付こうとした時、背後から声が聞こえた。
「もう終わってたのか。残念だな」
振り返ると、鯱女王が階段の所に立っていた。そのあっけらかんとした様子に思わず声をあげてしまった。
〈鯱女王来た〉
〈え、早くない? あの量やで?〉
〈鯱女王凄いんだ!〉
〈同接数急に増えたな〉
〈461さん達も攻略完了した:wotaku〉
〈ひゃだ!? 向こう見逃したわ!〉
「鯱女王さん! あの竜人達は!?」
「トドメだけは刺してない。ま、全員胴体を貫いたからもうすぐ死ぬだろうけどね」
〈ぎゃああああああ!?〉
〈グッロ!!〉
〈映らなくて良かったな〉
〈映ってたら垢BANされたんちゃうか!?〉
〈パララもんの配信にはストッパーあるから大丈夫なのだ!〉
〈グロ過ぎると配信が強制シャットダウンするんだ!〉
〈ドローンに設定してるのだ!〉
〈はえ~便利〉
〈視聴者想いなんだ!〉
〈さすがパララもんね! プロだわ!〉
「胴体って……ヤバすぎやろ」
「グロすぎなのだ!」
「私、気分が……」
「大丈夫かフィリナ?」
ドン引きする武史さん達。彼らの様子に鯱女王は少しムッとした顔をした。
「全員倒したからいいだろ? 僕はさっさとボスと戦いたいんだけど」
「驚いただけやって」
「短気な子供みたいなのだ」
「パララさん、それは言い過ぎですよ」
「パララってたまに毒吐くよなぁ」
〈パララもんw〉
〈トップ配信者に喧嘩売るなぁwww〉
〈ほのぼのしとるね〉
〈この雰囲気……嫌いじゃないわ!〉
〈和むんだ!〉
その時、みんな鯱女王に気を取られていた。僕達は油断してしまった。一瞬でもベイルストから目を離しちゃいけなかったんだ。
「みなさん! あ、あれ!!」
タルパちゃんの指した方向を見ると、ベイルストのすぐ側に魔法陣が浮かんでいた。
「あれって……」
「移動魔法の魔法陣です」
フィリナさんの表情が険しくなる。その魔法陣の中から、白い衣装を身に纏った竜人が現れる。忘れもしない。ルミネエストで志村さん達からレベルポイントを奪った張本人、司祭だ。
〈東エリアにいた竜人……:wotaku〉
〈ヤバイんだ!?〉
〈アイツがボスかしら?〉
〈そんな強そうじゃないけどな〉
〈魔導士タイプちゃう?〉
「さすがガランドラを殺した人間達だ。ダルクやベイルスト如きでは止められないか」
司祭が笑みを浮かべながらしゃがみ込む。そして、懐から催事用のようなゴテゴテしたナイフを取り出し、ベイルストの首に当てがった。
「し、司祭様……お許しを……!?」
ベイルストが恐怖に引き攣った表情で声を絞り出す。それと対照的に司祭は、穏やかな笑みをベイルストに向ける。
「なに、私はお前を責めてはおらん。勇気を持って戦った者には敬意を払わんとな」
そう言いながら、司祭はベイルストの首を掻き切った。
「があ゛っ!?」
首から血を吹き出しながら、ベイルストは口をパクパクとさせた。大きく見開かれた目と、流れ出る血に吐き気がする。自分達の戦闘とは全く違う……仲間を殺した司祭。その異常さにゾワリと悪寒が走った。
〈ギャアアアアア!?〉
〈マジグロ!?〉
〈垢BANされ〉
突然、コメントがピタリと止まってしまう。飛んでいたドローンを見ると撮影を示す赤い光が消えていた。今の映像を映してしまったことでコメントにあったストッパーが発動してしまったのかも……それだけ僕達の感覚から見て異常な光景だってことだよな……。
「お前は良くやったよベイルスト。我が糧として永遠に生き続けるがいい」
司祭がその手の宝玉を翳す。ベイルストから溢れ出したレベルポイントの光が全て宝玉に吸い込まれていく。
自分の為に戦った仲間をあんな風に殺すなんて……。
「お前! ワザと仲間を殺したのか!」
「くくっ、あの時の小僧か。あの人間達から奪った光……そして貴様達が倒した我が同胞の光のおかげで宝玉を満たすことができた。礼を言おう」
司祭が宝玉を掲げる。水晶のように透明な球体の中に、レベルポイントの光が渦巻いている。その球体には見覚えがあった。管理局の担当に教えて貰った宝玉……賢人を生き返らせる為の鍵だ。
僕の探していた宝玉は、竜人のいう神を復活させる為のアイテムだったのか。
「はははは! もはや私は誰にも止められん!!」
ダガーを握りしめる。マズイ。このままいけばあの宝玉は無くなってしまうかもしれない。今、あの宝玉を手に入れないと賢人は……。
「……っ!」
ダガーを構え、司祭に向かって全力で駆け出した。
「シンくん!?」
背後からタルパちゃんの声が聞こえる。勝手なことしてごめん。だけど、今動かないと全部無駄になっちゃうんだ……っ!
「邪魔はさせん!」
司祭が杖を向け魔法を発動する。先端から放たれた火球が僕に向かって発射された。
──中々の威力の魔法だな。
内なる声が聞こえた瞬間、火球がピタリと動きを止める。
「何?」
司祭が怪訝な顔をする。これは……今まで幸運だと思ってたスキルの挙動だ。内なる声がやっていたのか?
いや、今はそんな事を気にしてる場合じゃない!
火球をサイドステップで避け、司祭に向けて駆け抜ける。
もう少しだ。もう少しで──。
ヤツの宝玉に向けて手を伸ばす。あと少しで届くという所で、急に後へ引っ張られた。不意の力に背後に倒れ込み、地面に体を打ち付けてしまう。
「うわっ!?」
さっきまで僕が立っていた場所に火柱が上がる。司祭が魔法を発動していたみたいだ。あのまま突っ込んでいたら……。
「何やってる? ボス戦は僕がヤルって話だろ」
見上げるとすぐ側に鯱女王が立っていた。鯱女王が司祭に向かって拳を構える。
「鯱パンチ」
彼女の右肘で水の爆発が起こる。高速で放たれた拳が司祭を捉えた。しかし、司祭が発動した障壁魔法が彼女の拳を防いでしまう。
「私は既に神の力を得ている。そのような攻撃は効かん!」
鯱女王も何度も鯱パンチを放つが、ビクともしない。これだけ浴びせても破壊できないなんて……どれだけ強力な障壁なんだ?
「貴様達に神の姿を見せてやろう!!」
司祭が叫ぶと、その手の宝玉が眩いまでの光を放ち、司祭を包み込んでしまう。
宝玉が……賢人が、このままじゃ……。
「早くここから逃げろ。邪魔なんだよ」
「でも僕は宝玉を!」
「……鬱陶しいな!!」
鯱女王が僕を蹴り飛ばす。武史さんに受け止められて、その肩に担がれた。
「は、離して下さい!!」
「あの光見ろ! もうイァク・ザァドが現れる! 悠長な事言ってられんで!」
武史さんに担がれたまま階段を降りる。視線の先には対峙する鯱女王と司祭。宝玉に届かなかった……クソ、クソクソクソ!! すぐ目の前にあったのに!
──まだだ。
内なる声? まだって……どういうことだ?
──あの宝玉はイァク・ザァドの力の結晶。ヤツを倒せばまた吐き出すだろう。
吐き出す?
──そうだ。やる事は変わらない。
その話が本当なら……まだ終わってない!
眩い光に包まれる展望台を横目に、僕達は北棟を駆け降りた。
ダルクからレベルポイントが溢れ出し、僕達のスマホへと吸収される。吸収されると、僕のスマホから機械的な女性の声が響いた。
『レベルポイントを3000pt獲得しました』
1人3000ptも? アイツ、18000ptも持ってるヤツだったのか……。
〈2万近くあるじゃん!?〉
〈それを倒すなんて凄いのだ!: 8666円〉
〈ご祝儀なのだ! : 8666円〉
〈パララもん凄いのだ! :8666円〉
〈凄い戦いだったわね~!〉
「ダルク!? く、クソ……まだだ!!」
残ったベイルストがフィリナさんのアイヴィーレストのツタを引きちぎって杖を構える。
「させないのだ!!」
パララもんがベイルストに連続で麻痺魔法を撃ち込む。麻痺状態になったベイルストは、足がもつれたように倒れ込み、ゴロリと仰向けになった。
「あ、あ……あぁぁぁ……ダメだ……俺は、勝たないと……」
ベイルストの顔から血の気が引く。その瞳には怯えの色も含まれている。この怯え方……なんだ? なぜベイルストは怯えているんだ?
「腕輪は私が取ります!」
タルパちゃんのぬいぐるみがベイルストの腕輪を奪い、フィリナさんがもう一度魔法のツタで拘束する。完全に身動きが取れなくなったベイルスト。武史さんが大剣を担いでヤツに近付こうとした時、背後から声が聞こえた。
「もう終わってたのか。残念だな」
振り返ると、鯱女王が階段の所に立っていた。そのあっけらかんとした様子に思わず声をあげてしまった。
〈鯱女王来た〉
〈え、早くない? あの量やで?〉
〈鯱女王凄いんだ!〉
〈同接数急に増えたな〉
〈461さん達も攻略完了した:wotaku〉
〈ひゃだ!? 向こう見逃したわ!〉
「鯱女王さん! あの竜人達は!?」
「トドメだけは刺してない。ま、全員胴体を貫いたからもうすぐ死ぬだろうけどね」
〈ぎゃああああああ!?〉
〈グッロ!!〉
〈映らなくて良かったな〉
〈映ってたら垢BANされたんちゃうか!?〉
〈パララもんの配信にはストッパーあるから大丈夫なのだ!〉
〈グロ過ぎると配信が強制シャットダウンするんだ!〉
〈ドローンに設定してるのだ!〉
〈はえ~便利〉
〈視聴者想いなんだ!〉
〈さすがパララもんね! プロだわ!〉
「胴体って……ヤバすぎやろ」
「グロすぎなのだ!」
「私、気分が……」
「大丈夫かフィリナ?」
ドン引きする武史さん達。彼らの様子に鯱女王は少しムッとした顔をした。
「全員倒したからいいだろ? 僕はさっさとボスと戦いたいんだけど」
「驚いただけやって」
「短気な子供みたいなのだ」
「パララさん、それは言い過ぎですよ」
「パララってたまに毒吐くよなぁ」
〈パララもんw〉
〈トップ配信者に喧嘩売るなぁwww〉
〈ほのぼのしとるね〉
〈この雰囲気……嫌いじゃないわ!〉
〈和むんだ!〉
その時、みんな鯱女王に気を取られていた。僕達は油断してしまった。一瞬でもベイルストから目を離しちゃいけなかったんだ。
「みなさん! あ、あれ!!」
タルパちゃんの指した方向を見ると、ベイルストのすぐ側に魔法陣が浮かんでいた。
「あれって……」
「移動魔法の魔法陣です」
フィリナさんの表情が険しくなる。その魔法陣の中から、白い衣装を身に纏った竜人が現れる。忘れもしない。ルミネエストで志村さん達からレベルポイントを奪った張本人、司祭だ。
〈東エリアにいた竜人……:wotaku〉
〈ヤバイんだ!?〉
〈アイツがボスかしら?〉
〈そんな強そうじゃないけどな〉
〈魔導士タイプちゃう?〉
「さすがガランドラを殺した人間達だ。ダルクやベイルスト如きでは止められないか」
司祭が笑みを浮かべながらしゃがみ込む。そして、懐から催事用のようなゴテゴテしたナイフを取り出し、ベイルストの首に当てがった。
「し、司祭様……お許しを……!?」
ベイルストが恐怖に引き攣った表情で声を絞り出す。それと対照的に司祭は、穏やかな笑みをベイルストに向ける。
「なに、私はお前を責めてはおらん。勇気を持って戦った者には敬意を払わんとな」
そう言いながら、司祭はベイルストの首を掻き切った。
「があ゛っ!?」
首から血を吹き出しながら、ベイルストは口をパクパクとさせた。大きく見開かれた目と、流れ出る血に吐き気がする。自分達の戦闘とは全く違う……仲間を殺した司祭。その異常さにゾワリと悪寒が走った。
〈ギャアアアアア!?〉
〈マジグロ!?〉
〈垢BANされ〉
突然、コメントがピタリと止まってしまう。飛んでいたドローンを見ると撮影を示す赤い光が消えていた。今の映像を映してしまったことでコメントにあったストッパーが発動してしまったのかも……それだけ僕達の感覚から見て異常な光景だってことだよな……。
「お前は良くやったよベイルスト。我が糧として永遠に生き続けるがいい」
司祭がその手の宝玉を翳す。ベイルストから溢れ出したレベルポイントの光が全て宝玉に吸い込まれていく。
自分の為に戦った仲間をあんな風に殺すなんて……。
「お前! ワザと仲間を殺したのか!」
「くくっ、あの時の小僧か。あの人間達から奪った光……そして貴様達が倒した我が同胞の光のおかげで宝玉を満たすことができた。礼を言おう」
司祭が宝玉を掲げる。水晶のように透明な球体の中に、レベルポイントの光が渦巻いている。その球体には見覚えがあった。管理局の担当に教えて貰った宝玉……賢人を生き返らせる為の鍵だ。
僕の探していた宝玉は、竜人のいう神を復活させる為のアイテムだったのか。
「はははは! もはや私は誰にも止められん!!」
ダガーを握りしめる。マズイ。このままいけばあの宝玉は無くなってしまうかもしれない。今、あの宝玉を手に入れないと賢人は……。
「……っ!」
ダガーを構え、司祭に向かって全力で駆け出した。
「シンくん!?」
背後からタルパちゃんの声が聞こえる。勝手なことしてごめん。だけど、今動かないと全部無駄になっちゃうんだ……っ!
「邪魔はさせん!」
司祭が杖を向け魔法を発動する。先端から放たれた火球が僕に向かって発射された。
──中々の威力の魔法だな。
内なる声が聞こえた瞬間、火球がピタリと動きを止める。
「何?」
司祭が怪訝な顔をする。これは……今まで幸運だと思ってたスキルの挙動だ。内なる声がやっていたのか?
いや、今はそんな事を気にしてる場合じゃない!
火球をサイドステップで避け、司祭に向けて駆け抜ける。
もう少しだ。もう少しで──。
ヤツの宝玉に向けて手を伸ばす。あと少しで届くという所で、急に後へ引っ張られた。不意の力に背後に倒れ込み、地面に体を打ち付けてしまう。
「うわっ!?」
さっきまで僕が立っていた場所に火柱が上がる。司祭が魔法を発動していたみたいだ。あのまま突っ込んでいたら……。
「何やってる? ボス戦は僕がヤルって話だろ」
見上げるとすぐ側に鯱女王が立っていた。鯱女王が司祭に向かって拳を構える。
「鯱パンチ」
彼女の右肘で水の爆発が起こる。高速で放たれた拳が司祭を捉えた。しかし、司祭が発動した障壁魔法が彼女の拳を防いでしまう。
「私は既に神の力を得ている。そのような攻撃は効かん!」
鯱女王も何度も鯱パンチを放つが、ビクともしない。これだけ浴びせても破壊できないなんて……どれだけ強力な障壁なんだ?
「貴様達に神の姿を見せてやろう!!」
司祭が叫ぶと、その手の宝玉が眩いまでの光を放ち、司祭を包み込んでしまう。
宝玉が……賢人が、このままじゃ……。
「早くここから逃げろ。邪魔なんだよ」
「でも僕は宝玉を!」
「……鬱陶しいな!!」
鯱女王が僕を蹴り飛ばす。武史さんに受け止められて、その肩に担がれた。
「は、離して下さい!!」
「あの光見ろ! もうイァク・ザァドが現れる! 悠長な事言ってられんで!」
武史さんに担がれたまま階段を降りる。視線の先には対峙する鯱女王と司祭。宝玉に届かなかった……クソ、クソクソクソ!! すぐ目の前にあったのに!
──まだだ。
内なる声? まだって……どういうことだ?
──あの宝玉はイァク・ザァドの力の結晶。ヤツを倒せばまた吐き出すだろう。
吐き出す?
──そうだ。やる事は変わらない。
その話が本当なら……まだ終わってない!
眩い光に包まれる展望台を横目に、僕達は北棟を駆け降りた。
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