461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第197話 竜王攻略の突破口

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 ~461さん~

 連携攻撃を受けたイァク・ザァドが空を見上げて咆哮する。それと同時に天高く厚い雲が発生し、俺達のいる地上へと大量の落雷が降り注いだ。

「ひゃああああ!? 当たったら死んじゃうのだぁ!!」

 走り回るパララもんの腕を掴み、全力で屋根の下へと走る。

 俺達がイァク・ザァドとの最終決戦に選んだ場所は旧東京都議会場前の半円状の広場だ。

 そこは地上階から一段低くなっている広場で、都議会場の向かいに位置する都庁の地下に隣接していた。つまり、広場に出れば攻撃が行え、都庁の地下にいつでも逃げ込める構造になっている。

 アスカルオを鑑定したことによって得た情報があったからこそ、イァク・ザァド戦に選んだ場所。ここなら落雷にも対抗できる……いきなり役に立つとは思わなかったが。

「ヨロイさん!!」
「雷の量が増えています! 急いで!」

 屋根の下からアイルとタルパが叫ぶ。俺は、パララもんを抱き上げた。

「ひゃっ!?」

「悪いが我慢してくれよ!」

「う、うん……」

 なぜか顔を真っ赤にするパララもんを横抱きに抱えて全力で走る。目の前に落ちた雷をサイドステップで避け、なんとか屋根の下へと駆け込んだ。


「「「キュアアアアアアアアアアア!!?」」」


 周囲に響き渡るイァク・ザァドの咆哮。アイツ、無差別に攻撃したのは俺達の位置を把握し切れていなかったからか。自我が無くなって索敵能力は低下したみたいだな。


 ……。


 アイルに他のメンバーへの指示を任せて、ナーゴのいる都庁地下の入り口前まで走る。そこでは、ナーゴとシンが鯱女王オルカの介抱をしていた。

「鯱女王は生きてるか?」

「はい。骨折はしてるみたいですがなんとか……」
「回復薬かけて安静にさせておくにゃ」

 ナーゴがカバンから回復薬のボトルを取り出し、鯱女王の体にかける。ジュウジュウという音と共に苦悶の表情を浮かべる鯱女王。彼女は、虚ろな表情で俺を見た。

「なんで助けたんだよ……?」

「お前は死んだら負け。俺は死なせたら負け。そういう縛りなんだよ」

「へぇ、君も縛りプレイしてたのか……」

 彼女なりに納得したのか、それ以上は聞かずに鯱女王は天井を見上げた。落雷の雨が地上に直撃したからか、天井から轟音が響く。ぼんやりとその様子を見つめた彼女は、少しだけ表情を綻ばせた。

「ふふっ……想像を絶する強さだね、アレは……燃えて来た……」

 ボロボロで身動き取れない様子なのに、鯱女王の目はまだ死んでいない。


 ……つまるところ。俺達はそういう人種らしい。俺も鯱女王オルカと同じ立場なら、同じことを言っただろう。


「鯱女王……まだやれるよな?」

「当たり前だろ……ここでやめられる訳がない」

 鯱女王が俺の腕を掴む。

「回復したらそっちに行く。僕の分残しといてよ……?」

「分かってるよ」

「ふ……ふふ……楽しみだなぁ……」

 そう言うと、鯱女王は意識を失ってしまう。シンが彼女の口元に耳を寄せ、コクリと頷いた。

「大丈夫、息はあります。気を失っただけですよ」

「ヨロさん、後はナーゴに任せてにゃ」

「ああ。回復したら引きずってでも連れて来てくれ。そうしないと絶対怒るぜ、鯱女王オルカのヤツ」

「にゃ! 任せておくにゃ!!」

 ナーゴに鯱女王を任せて立ち上がる。出口の雷の雨はもうすぐ止むだろう。森に入られたら厄介だ。火の手が上がれば俺達に不利になってしまう。ヤツがこの場所にいる間に決着を付けないとな。

「行くぜシン、鯱女王オルカがヤツの攻撃パターンを引き出してくれた。倒すぜ、アイツをな」

「はいっ!」

 シンと2人で地下を進む。鯱女王は実際想像以上の働きをしてくれた。ヤツの攻撃パターン、使う魔法、そして……再生能力。それを使わせてくれたのだから。

 武史達の話では今回のイァク・ザァドは司祭が変異したものらしい。過去のイァク・ザァドは黄金に輝いていたが、今回のヤツは漆黒……再生能力も俺の鑑定した映像にも、リレイラさんに見せて貰った本にも無かった。あれは今回のヤツの固有能力だろう。

 鯱女王オルカの戦闘を思い返す。特に最後の決着の瞬間。

 鯱女王は2つの頭を完全に破壊していたはずだが……それが一瞬で再生してしまった。なぜだ? 自動再生なら眼球が破壊された段階で発動していたはずだ。なぜわざわざ追い詰められる瞬間まで再生しなかった?

 ……いや、出来なかったのか?

 そう考えた瞬間、次々に今までの事が浮かんで来る。

 掲示板に書かれていた竜人の情報に再生能力なんてなかった。にもかかわらず再生していたラムルザの腕。司祭が変異した3つ首竜……。


 ということは……。


「なるほどな。そういうことか」


「461さん、何か思い付いたんですか?」

「ああ。アイツの再生能力、アレは恐らく再生魔法・・だ。アイツが自分の意志で発動しているな」

「自分の意志で?」

「そうだ。なら、勝機も見えて来る。元の攻略に応用を加えるだけだ」


 地下の出口まで歩いて行くと、アイル達が集まっていた。鯱女王とナーゴを除いて全員。戦意を失っているヤツはいない。むしろ、みんなやる気だ。鯱女王オルカの戦闘を間近で見て触発されたか?

「ヨロイさん、みんなスキルツリーの強化は完了してるわよ」

「サンキューな、アイル」
 
 アイルを通して全員にスキルツリー強化を指示していた。今回のダンジョン探索で得たレベルポイントは膨大だ。戦闘前に基礎を向上させれば、全員数段強くなった状態でボス戦に挑める。当然、俺もラムルザのポイントを使って全体的な基礎能力を向上させていた。


 全員が俺の顔を見る。作戦の最終確認しないとな。今までの俺が経験した戦闘から対処法は掴める。不死鳥、真竜、ロード・デザレア。あの辺りの戦闘を応用すれば……。



◇◇◇

 全員に改めて攻略方法を説明した。具体的にはロード・デザレアの応用。各頭部にメンバーを割り当て、3つ首の意識を分散させる。そして、ヤツの意識外から最大攻撃を放ち、3つ首の同時破壊を狙う。


 奇しくも今の俺ならそれができる状況だ。聖剣アスカルオの「魔喰い」の能力に、ラムルザから受け継いだ「ストルムブレイド」……それに上空に浮かぶ鯱女王の蒼球魔法アクア・スフィアの魔力を合わせれば……。


 ヤツは毎回頭部から魔法を放っている。自分の意思で魔法を発動していると考えるなら……再生魔法を発動する前に全ての頭部を破壊すれば、ヤツを殺す事ができるだろう。

 それぞれにどの頭部を狙うのか指示し、怪我をすればナーゴの所に行くよう伝える。

「ポイズン社長、猛毒魔法ヴェノムベイン頼めるか?」

「みんなの武器には毒属性符呪エンチャント済みだ! 残るはアンタだけだぜ~」

 彼がアスカルオの刀身に手をかざして魔法を発動する。すると、アスカルオの刀身が緑色に発光した。

「ミナセ、全員に強化魔法をかけてくれ、できれば2段階がいい」

「分かったよ~さっき言ってたみたいにカズく……ジークが速度、武史君が防御、魔法を使う子たちは魔法攻撃を上昇させればいいんだよね?」

「そうだ。俺と勝者マン、ポイズン社長は防御で頼む。即死は避けたい」

 彼女の強化魔法と障壁魔法は汎用性が高い。上手く動いて貰えば戦闘が一気に楽になるはずだ。

 ミナセが全員に強化魔法を使い終わった頃、タルパが俺に話しかけて来た。

「アイルさんのことは任せて下さい。ぬいぐるみ達を盾にして絶対守ってみせますから」

 ……タルパのヤツ、俺達が別れて動く事を気にしてくれたのか。

「頼むぜタルパ。それと、ヤツに隙ができたらまたアイルとの連携技やってくれ」

「はい!」

 パララもんにも確認をしておく。彼女の役割も重要だ。麻痺魔法パラライズでアイツを麻痺状態にできれば、戦闘を有利に運べるはずだ。

「パララもん、さっき俺達の攻撃に合わせて麻痺魔法使って貰ったが、アイツの麻痺耐久値の予測はつくか?」

「とんでもなく高いのだ。だけど、461さんが言ってた体内に直接撃ち込む方法なら早く麻痺にできると思うのだ」

「そうか。……やる事は覚えてるな?」

「イァク・ザァドの気を引いたらポイ君と合流してアイツの体に直接麻痺を撃ち込んでやるんだよね? バッチリ覚えてるのだ!」

「それでいい。頼んだぜ」

「うん! 絶対麻痺にしてやるのだ!!」

 その時、背中をバンと叩かれた。振り返ると、武史が白い歯を見せて親指を立てた。

「ヨッさん! 最後の仕上げの時は任せてくれや! ちゃんと送り届けたるからな!」

「ああ、お前にかかってるからな。頼んだぜ」

 武史に下手な気負いはなさそうだな。重要な役割を任せちまったが、武史の能力なら仲間を守りながら自分も生き残れるだろう。これ以上の適任はいない。

 他のメンバーの準備も大丈夫そうだ。最後に自分の装備を最終確認していると、ジークが地下の出口へ目を向けた。

「雷が止んだ。ヤツも俺達がいない事に気付いたようだ」

「ああ。そろそろ行くぜ」

 出口に向かおうとした時、後ろから手を引かれる。振り返ると、アイルが俺の手を掴んでいた。

「ちゃんとみんなで話すタイミングってこれが最後でしょ? ヨロイさんからみんなに何か言ってあげて」

「何かって……なんだよ?」

「なんでもいいの! みんなの気合い入ること言って!!」

 なんだよそれ……。

 一瞬だけなんと言っていいか思案する。考えたが、やっぱりこれしか浮かばなかった。

「お前ら……絶対勝つぜ。勝ってこの新宿を完全攻略しようぜ」


 全員がコクリと頷く。そのやる気の入り方に笑みが溢れる。みんなも一緒のことを考えてたか。


「勝者アロー!!!」


 勝者マンが爆槍魔法を発動する。彼が両手に赤い槍を出現させたのを合図に俺達は走り出した。


「こっからラスボス戦だ!! 気合い入れろよ!!」


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