461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第201話 おかえりなさい

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 ~461さん~

「じゃあね~みんな~」
「次の攻略も楽しみにしているぞ」

 ブンブンと手を振るミナセに笑みを浮かべたジーク。秋葉原駅で2人を見送った俺達は、御徒町方面へと歩いた。

「それにしてもみんなあっという間に帰っちゃったわね。打ち上げとかしたかったのに」

「みんな疲れてたんだにゃ。それはまた今度にしようにゃ~」

 前を歩くアイルとナーゴは連絡先を聞いたメンバーを打ち上げに誘おうと話をしていた。

「そう言えば! シンのヤツ水臭いわよね~黙って残っちゃうんだから。タルパちゃん心配してたし!」

 思い出したかのようにムッとするアイル。それを見たナーゴはスマホを操作する。

「シン君も無事に帰れたみたいにゃ。タルパちゃんに連絡あったらしいにゃ~」

「でもあんな可愛い子放っておくなんて!」

「まぁまぁ、今度打ち上げする時に怒ってあげればいいにゃ……」

 ナーゴの着ぐるみが笑みを浮かべる。シャキンと右手から現れるクロー。電柱がナーゴの顔に影を落とし、その笑顔が恐ろしいものに見えた。

 ナーゴ……こんな顔するのか、勝者マンと接してからちょっと黒い所も見えるようになったな……。

「にゃ? どうしたにゃヨロさん?」

「ん? あ、いや、なんでもない」

 ナーゴは1番怒らせたらダメなタイプかもなぁ……。

 そんな事を考えていると、俺達は洋食屋「冒険家B」の前に到着した。ナーゴはすぐにマスコット的なにこやかな顔になり、俺達に手を振った。

「それじゃナーゴはこれからゲットした食材をマスターに見せてくるにゃ~」

「ナーゴは元気よねぇ」

「新宿迷宮じゃ満足な調理はできなかったからにゃ! 本気のレシピを作ってやるのにゃ!」

 眉をクッと寄せて真剣な表情を作るナーゴの着ぐるみ。しかし新しい食材を見つけた嬉しさが抑えきれないのか、その体だけはクネクネと動きまくっている。表情と動きのギャップが妙な面白さを生んでいた。

 ナーゴが店の中に入って行くと、中からマスターの大きな声が聞こえた。窓から中を覗く。マスターとナーゴは早速食材を並べて何かを話していた。マスターにも挨拶しようと思ったが、これは邪魔しない方がいいな。それに、あまり遅くなってもいけないし。


「ヨロイさん、そろそろ行こ?」

「ああ」


 再び御徒町駅に向かって2人で歩く。なんだか、アイルと2人で歩くのは随分久しぶりな気がする。新宿迷宮にいた期間は数日なのに、もう何ヶ月もあの中にいたみたいだ。

「きっと待ってるわ! 早く早く!」

 アイルが駆け出し、振り返っては手招きする。その様子に、胸の奥から何かが込み上げて来た。思っていた事を伝えるには、今この瞬間しかない気がする。
 
「アイル」

「どうしたの?」

「俺さ、アイルがいなかったら新宿迷宮は攻略できなかったと思う」

「え? えっと……」

 困ったようにアイルは視線を彷徨わせた。

「あのね、私……みんなの足手纏いにならないか必死で……だから、きっと攻略できたのはヨロイさんやみんなが」

「そんなことねぇよ」

 弱気な言葉を遮ると、彼女が俺を見つめた。その目に涙が浮かぶ。彼女は声を震わせて言葉を続けた。

「私、すぐ気を抜いちゃうし、せっかく私に任せてくれた時もみんなを危険な目に遭わせちゃったし……」

 後でフィリナ達から聞いた話だと、イァク・ザァドのブレス攻撃で危うく防御壁を突破されるところだったらしい。きっとその事を言ってるんだな。

「でも、みんな生きてるだろ? それに、最後の一撃……お前が速雷魔法ラピッド・ショックを設置してくれていなかったら結果は変わっていた」

「う、うん……」

 アイルの目に浮かんだ涙は頬を伝い、やがてボロボロと涙を流し始めた。きっと彼女なりに色んなプレッシャーを感じながら動いてくれていたんだな。

「ありがとな、アイル」

 アイルは、両眼をゴシゴシと擦った。

「……ふふっ。ヨロイさんからそんな風に言われるなんて……嬉しいわ」

「思ったことを言っただけだ」

「……うん」

 アイルが何かを言おうとしては、黙ってしまう。何を言うのかと待っていると、彼女は杖をギュッと握って俺を見た。

「ヨロイさん、前に言ってくれたよね。ヨロイさんは一生私の相棒でいてくれるって」

「? ああ、そのつもりだぜ」

「私も……私もそう。私はヨロイさんとずっと一緒にいたい」

 アイルは深く深呼吸した。彼女は俺の手をギュッと握って、ゆっくりと離す。


「だけど……だけどね、私じゃできないこともあるって……分かってる、から」


 その言葉は、なぜだか自分に言い聞かせているように聞こえた。どうしたんだ? アイルのヤツ。

「ん? それはどういう……」

「あ! 見て!」

 質問しようとすると、アイルが駅の方を指した。その先にはよく知った紫の髪にツノの生えた女性がいた。

「おーい! リレイラ~!!」

 アイルの声はすっかり元通りで、リレイラさんに向かって大きく手を振った。

 俺達の顔を見て顔を歪めるリレイラさん。途中でつまずいて転びそうになりながらも必死に俺達に駆け寄って来る彼女。俺達も、彼女の元へ走った。


「ヨロイ君! アイル君!」


 リレイラさんが飛び付いてくる。彼女は、俺達2人の首に手を回して、ギュッと抱きしめてくれた。


「良かった……本当に、無事で良かった……」


 号泣しながら俺とアイルを抱きしめるリレイラさん。彼女の髪から香る花のような香り。それを感じた瞬間、俺は……帰って来たんだなと実感が湧く。

 彼女の肩が震えているのを感じる。俺達の事、ずっと心配してくれていたんだな……。

「泣き過ぎよリレイラ」

「うぅ……いいじゃないか、嬉しいんだから……」

 ふと、横目でアイルを見る。彼女は、リレイラさんに抱きしめられて気持ち良さそうに目を細めていた。

 なんだか全身の力が抜けていくような感覚する。帰って来れたという安心感……それが全身を包んでいく。


 ……。


 新宿迷宮では色々な事があった。挑む前の期待、先の見えない不安、アイルに支えて貰ったこと、ラムルザと戦った時の高揚に悲しみ、攻略した瞬間の喜び……本当に色んな事が。

 だけど今、それを思い返す事ができるのは……リレイラさんがいたからだ。彼女が迎えてくれたから、俺は今……思い返すことができている。

 新宿迷宮を攻略した後のことを色々考えなければいけないと思うが……。


「ただいま、リレイラさん」
「ただいまリレイラ」


「おかえりなさい、2人とも」


 今はただ、この感覚に身を任せていたいと思った。



―――――――――――
 あとがき。

 これにて長らく続いた新宿迷宮編は完結です。お付き合い頂きましてありがとうございました。しかし、まだまだ物語は続きますのでご安心下さい。次話からは下記のようなお話をお送りします。

202話
掲示板回(コテハン祭り)

203話
リレイラさんがシィーリアに新宿迷宮の攻略報告をする話

204~205話
461さん達3人の関係が変化する話

 その後、アイルの閑話とシィーリアが竜人転移の真相を確かめるべく魔王に会いに行く話をお送り致します。

 次回は11/10(日)12:10投稿です。引き続きどうぞよろしくお願いします。
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