461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
245 / 302

第233話 ジークの過去:受け継がれる剣

しおりを挟む
 ~ジークリード~

 天王洲に作戦会議で召集された日。ミナセと天王洲が買い物をしてから冒険家Bに行くと言うので、俺はダンジョン周辺地区、不忍池しのばずのいけでユイの修行を手伝ってから行くことにした。

「はぁ……もう無理だぁ……」

 ドサリと倒れ込むユイ。彼女の隣には目を回したキル太が地面に転がっていた。透明化したキル太で俺の隙を突こうとした作戦だったが……。

「せっかく透明化があるのに動きが読みやすい。まだまだだな」

「うっせ!」

「だが、見違えるほど強くなった。感心したぞ。メイド達との訓練でまともにやり合えるだけの事はあるな」

 ハルフェルメイド長以外は戦闘力が低いが、それでも魔族だ。竜人以上の力を持っている存在。そのメイド達を相手にずっと戦闘訓練をして来たユイだ。戦闘力も俺達に匹敵すると言っても相違ないだろう。

「それに、この前の川崎攻略……ユイの戦闘センスは高いな」

「お、おう……見てくれたんだ……」

「当然だ。変装の為とはいえ金髪にしているとは思わなかったが」

 アレはウィッグというヤツだろうか? 髪色が変わるだけでああも別人に見えるとはな。ミナセも驚いていた。

 ふとユイを見ると、彼女は顔を赤くしながらフルフルと小刻みに震えていた。

「あ、ああああああれはハルフェルが勝手に選んだだけだ! アタシのセンスじゃねーし!」

「そうなのか?」

「そうなんだよ!! マイのヤツ絶対笑ってただろ!? うあああああああ!!」

「似合うと褒めていたが。俺も似合うと思ったぞ」

「やめろ!! 恥ずかしすぎる!!!」

 寝そべったまま、真っ赤にした顔を手で覆って暴れるユイ。その姿は子供のようだ。思わずキル太と顔を見合わせてしまう。なぜこんなに怒っているんだ……?


 ひとしきり暴れた後、はぁはぁと息を切らせたユイは、頬を紅潮させながら俺を見上げた。


和巳カズミも配信開始したばっかの頃は恥ずかしいとか思った?」

「なぜ本名で呼ぶんだ……」

「いいじゃん。それかマイみたいに呼ぼうか? カ・ズ・くん?」

 ユイがわざとミナセの真似をして呼んでくる。俺は「やめろ」と言って話を変えることにした。

「配信活動はミナセが始めたからな。正直、俺は自分の配信を見たことが無い。どんな評価かも気にした事もない」

「なんで?」

「俺の目標とする探索者は配信者では無いからだ。俺は人を救う為に探索者の活動をしているし、他の探索者にもそうであって欲しいと思っている」

「ふぅん……前に言ってた和巳を助けた探索者の影響ってヤツか」

 ユイは「ん?」と何かに気付いたような顔をしてムクリと起き上がった。

「でもさ、その剣は和巳を助けた探索者の物だろ? なんで持ってんだよ?」

「バルムンクの事がそんなに気になるのか?」


「気になるな。教えてくれよ」

 鞘に入ったバルムンクを見つめる。これを手に入れるには相当苦労したな……他人に語るほどの事では無いが……。

 ジトリと俺を見つめるユイ。俺が話すまでいつまでも待っていそうな顔だな……。

 まぁ、いいか。ミナセにも話した事がある内容だしな。

 俺は、バルムンクを手に入れるまでの話を始めた──



◇◇◇

 神田明神のモンスター流出事件から数年。俺は訳あって日常生活ができなくなっていた。

 シィーリアに勧められて少数クラスの中学、高校へと進み……いわゆる学生らしい生活とは無縁だった。

 学校と家の往復。たまにシィーリアが話し相手になってくれて……そんな生活だ。クラスメイトも同じような雰囲気で、それほど深く接する事はなかった。俺は、そんな生活から目を背けるように小説や、漫画を読みふけっていた。

「へぇ~意外。てっきりスポーツでもやってたのかと思った」

「シィーリアに言われて軽いトレーニングはやっていた。それくらいだ」

 そんな生活でも現実を見なければならない時が来た。高校2年の頃、進路選択だ。このまま普通に就職するか探索者になるか……だ。俺に大学に進むという選択は無かったし、できないとも思った。俺だけがそんな贅沢をしていいのかと思っていたから。

「なんで?」

「神田明神の事件で生き残ったから……とだけ言わせてくれ」

「すぐに探索者にならなかったのか?」

「俺の命を粗末にするような事をしていいのか……その迷いがあった」

 俺は特別運動神経が良い訳でもなかったから、探索者になればすぐに死ぬんじゃないかと思っていた。俺が死ねば、助けてくれたあの探索者の行動が無駄になってしまう。そう思って……。


 そんなある日、俺は再会したんだ。


「再会? 誰と?」

「俺を助けてくれた探索者の仲間・・さ」


 年はどれくらいだっただろう? 40代くらいだった気がする。その男はずっと俺を探していたと言っていた。仲間が助けた子供が無事に生きているかを確かめる為に……と。俺もその顔に薄らと見覚えがあった。俺を助けてくれた探索者……彼が亡くなった後に縋りついて泣いていた男だ。


 男は俺を見るとこう言ったんだ。


「管理局が今、仲間の持っていた『紫電の剣』の後任を探している」と。


 俺を助けてくれた探索者の武器。「紫電の剣」は指折りのレアアイテムだった。それを回収した管理局は、次の持ち主を選定していたんだ。強い者に強力な武器を渡し、データ収集をするのが彼らの役割だから。

 俺に話しかけてきた男は「その剣を手に入れたい、だが不安がある」と言っていたんだ。

 将来有望な者の方が選ばれやすいだろうと。その時、俺は思ったんだ。これは天啓なんじゃないかと。俺を救ってくれた探索者。彼の意思を継ぎ、その剣を手に入れることが俺が生き残った意味なのかもしれないと。俺は、シィーリアに探索者になりたいと伝えた。

「シィーリアは反対した?」

「最初は驚いていたな。俺が剣の話を知っていた事に。ただ、最終的には俺の意思を尊重してくれた。その上で、早く強くなる方法を教えてくれた」

「……それはアタシでも分かるよ。鯱女王オルカ成長構築ビルドだろ?」

 そう、スキル特化型成長構築ビルド。幸い、探索者になった俺には「閃光」のスキルが既に取得できる状態にあった。俺はそれを伸ばしながら強くなることにした。なにしろ時間が無かったから。

 その頃には既に探索者が人を襲ってアイテムを奪う事件も起こっていたから。そんな奴らに、彼の剣を渡してはいけないと……そう考えていた。

「……」

 ユイが悲しげな顔で黙り込んでしまう。彼女は九条商会でその事件を起こしていた実行犯でもある。しまったな……。

「す、すまない。そんなつもりは……」

「ううん。続き、聞きたいからさ、続けてよ」

 彼女に促されて続きを話す。

 ……。

 結局、あの剣を手に入れるまで2年かかった。その間、他の者に剣が渡らなかったのは奇跡だ。もしかしたらシィーリアが手を回してくれていたのかもしれない。まぁ、そうだったとしても彼女は絶対に教えてくれないだろうが。

「アレを手に入れたのは和巳が努力した結果だよ。シィーリアはそんな事しないって」

「……ありがとう」

 ひたすら探索者を救出して回って、スキルを伸ばして……死にそうになる事も何度もあった。

 だけど、俺は諦めなかった。どうしてもあの剣を受け継ぐ必要があると思ったから。

 俺は閃光と攻略情報を駆使する事で難関ダンジョンやボスを倒していった。探索者を助け、ダンジョンをクリアする。

 やがてランクも上がり、もうすぐAランクかと思っていた時、シィーリアに呼び出された。管理局に行くと、あの剣を差し出された。新たに鞘が新造されていて、真新しく磨かれた剣が。

「……すごいじゃん。嬉しかった?」

「嬉しかった。シィーリアは悲しそうな顔をしていたが」

「悲しそう……かぁ」

 「これを手にする事は、お主を苦難の道へ向かわせる」と伝えられたな。彼女に否定的な事を言われたのは、その1度だけだ。

「……」

 俺はその剣を「バルムンク」と呼ぶ事にした。俺を助けてくれた彼……英雄の武器に相応しい名前に。

 名前を変えたのは俺が彼の剣を、意思を引き継ぐという決意表明のためだ。俺の名前もそうだ。俺の中の英雄。彼を忘れない為に物語の英雄の名前を敢えて付けた。1文字少ないのは俺が未熟だから。その戒めに。

 散々他の探索者には言われたがな。「調子に乗るな」とか「自意識過剰だ」とか。だが、俺にとってそんなことはどうでも良かった。


 ただ彼のようになりたかった。彼のような英雄・・に。英雄になって、何かを守りたいと思った。

 このあとの俺は決して褒められたものでは無いがな。ただ自分だけを見ていれば良かったのに、他の探索者達に苛立ち、勝手に視野を狭めていった。

 鎧達に出会わなければ、自分の身を顧みなければ……今の俺はもっと酷い有様だっただろう。

「まぁ、こんな感じだ」

 ユイは黙って聞いていた。そしてゆっくり立ち上がると少し幼いような笑みを浮かべた。

「……なんだ?」

「いやぁ? マイが惚れる理由もちょっと分かるなって」

「からかうなよ。真面目に話したんだぞ」

「からかってねぇし」

 ユイは、立ち上がると俺の目をまっすぐに見た。

「和巳がマイを救った。そのマイがアタシを救ってくれた。アンタはもうなってるよ。アタシ達の英雄に」


 ユイは、耳まで赤くした顔でニカリと笑う。


 ミナセやユイには話していないが……彼のようになりたかったのは憧れだけじゃない。罪悪感が多分に含まれた逃げだったのかもしれない。

 いつか彼の家族に会いに行こうと思っていた。彼の家族に会って、許されないとは思うが……謝って……その為にも、俺は人を救おうと。

 だけど……そうだな。ミナセやユイと一緒にいられるのは、嬉しい。それだけでもやって来て良かったと思える。


「2人ともまだこんな所にいたの~!? そろそろアイルちゃん達と約束した時間だよ!!」


 公園の入り口で息を切らせたミナセがやって来た。

「ヤバッ!? 急ごう和巳!」

 ユイが俺の手を取ってミナセの元へ走り出す。


 ……。


 あの時、俺に剣の事を告げてくれた彼の仲間は今どうしているのだろうか? 俺の事をどこかで見てくれているのだろうか?


 ……分からない。だけど、俺はこの先も同じ事を続けていくだけだ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...