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第233話 ジークの過去:受け継がれる剣
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~ジークリード~
天王洲に作戦会議で召集された日。ミナセと天王洲が買い物をしてから冒険家Bに行くと言うので、俺はダンジョン周辺地区、不忍池でユイの修行を手伝ってから行くことにした。
「はぁ……もう無理だぁ……」
ドサリと倒れ込むユイ。彼女の隣には目を回したキル太が地面に転がっていた。透明化したキル太で俺の隙を突こうとした作戦だったが……。
「せっかく透明化があるのに動きが読みやすい。まだまだだな」
「うっせ!」
「だが、見違えるほど強くなった。感心したぞ。メイド達との訓練でまともにやり合えるだけの事はあるな」
ハルフェルメイド長以外は戦闘力が低いが、それでも魔族だ。竜人以上の力を持っている存在。そのメイド達を相手にずっと戦闘訓練をして来たユイだ。戦闘力も俺達に匹敵すると言っても相違ないだろう。
「それに、この前の川崎攻略……ユイの戦闘センスは高いな」
「お、おう……見てくれたんだ……」
「当然だ。変装の為とはいえ金髪にしているとは思わなかったが」
アレはウィッグというヤツだろうか? 髪色が変わるだけでああも別人に見えるとはな。ミナセも驚いていた。
ふとユイを見ると、彼女は顔を赤くしながらフルフルと小刻みに震えていた。
「あ、ああああああれはハルフェルが勝手に選んだだけだ! アタシのセンスじゃねーし!」
「そうなのか?」
「そうなんだよ!! マイのヤツ絶対笑ってただろ!? うあああああああ!!」
「似合うと褒めていたが。俺も似合うと思ったぞ」
「やめろ!! 恥ずかしすぎる!!!」
寝そべったまま、真っ赤にした顔を手で覆って暴れるユイ。その姿は子供のようだ。思わずキル太と顔を見合わせてしまう。なぜこんなに怒っているんだ……?
ひとしきり暴れた後、はぁはぁと息を切らせたユイは、頬を紅潮させながら俺を見上げた。
「和巳も配信開始したばっかの頃は恥ずかしいとか思った?」
「なぜ本名で呼ぶんだ……」
「いいじゃん。それかマイみたいに呼ぼうか? カ・ズ・くん?」
ユイがわざとミナセの真似をして呼んでくる。俺は「やめろ」と言って話を変えることにした。
「配信活動はミナセが始めたからな。正直、俺は自分の配信を見たことが無い。どんな評価かも気にした事もない」
「なんで?」
「俺の目標とする探索者は配信者では無いからだ。俺は人を救う為に探索者の活動をしているし、他の探索者にもそうであって欲しいと思っている」
「ふぅん……前に言ってた和巳を助けた探索者の影響ってヤツか」
ユイは「ん?」と何かに気付いたような顔をしてムクリと起き上がった。
「でもさ、その剣は和巳を助けた探索者の物だろ? なんで持ってんだよ?」
「バルムンクの事がそんなに気になるのか?」
「気になるな。教えてくれよ」
鞘に入ったバルムンクを見つめる。これを手に入れるには相当苦労したな……他人に語るほどの事では無いが……。
ジトリと俺を見つめるユイ。俺が話すまでいつまでも待っていそうな顔だな……。
まぁ、いいか。ミナセにも話した事がある内容だしな。
俺は、バルムンクを手に入れるまでの話を始めた──
◇◇◇
神田明神のモンスター流出事件から数年。俺は訳あって日常生活ができなくなっていた。
シィーリアに勧められて少数クラスの中学、高校へと進み……いわゆる学生らしい生活とは無縁だった。
学校と家の往復。たまにシィーリアが話し相手になってくれて……そんな生活だ。クラスメイトも同じような雰囲気で、それほど深く接する事はなかった。俺は、そんな生活から目を背けるように小説や、漫画を読みふけっていた。
「へぇ~意外。てっきりスポーツでもやってたのかと思った」
「シィーリアに言われて軽いトレーニングはやっていた。それくらいだ」
そんな生活でも現実を見なければならない時が来た。高校2年の頃、進路選択だ。このまま普通に就職するか探索者になるか……だ。俺に大学に進むという選択は無かったし、できないとも思った。俺だけがそんな贅沢をしていいのかと思っていたから。
「なんで?」
「神田明神の事件で生き残ったから……とだけ言わせてくれ」
「すぐに探索者にならなかったのか?」
「俺の命を粗末にするような事をしていいのか……その迷いがあった」
俺は特別運動神経が良い訳でもなかったから、探索者になればすぐに死ぬんじゃないかと思っていた。俺が死ねば、助けてくれたあの探索者の行動が無駄になってしまう。そう思って……。
そんなある日、俺は再会したんだ。
「再会? 誰と?」
「俺を助けてくれた探索者の仲間さ」
年はどれくらいだっただろう? 40代くらいだった気がする。その男はずっと俺を探していたと言っていた。仲間が助けた子供が無事に生きているかを確かめる為に……と。俺もその顔に薄らと見覚えがあった。俺を助けてくれた探索者……彼が亡くなった後に縋りついて泣いていた男だ。
男は俺を見るとこう言ったんだ。
「管理局が今、仲間の持っていた『紫電の剣』の後任を探している」と。
俺を助けてくれた探索者の武器。「紫電の剣」は指折りのレアアイテムだった。それを回収した管理局は、次の持ち主を選定していたんだ。強い者に強力な武器を渡し、データ収集をするのが彼らの役割だから。
俺に話しかけてきた男は「その剣を手に入れたい、だが不安がある」と言っていたんだ。
将来有望な者の方が選ばれやすいだろうと。その時、俺は思ったんだ。これは天啓なんじゃないかと。俺を救ってくれた探索者。彼の意思を継ぎ、その剣を手に入れることが俺が生き残った意味なのかもしれないと。俺は、シィーリアに探索者になりたいと伝えた。
「シィーリアは反対した?」
「最初は驚いていたな。俺が剣の話を知っていた事に。ただ、最終的には俺の意思を尊重してくれた。その上で、早く強くなる方法を教えてくれた」
「……それはアタシでも分かるよ。鯱女王の成長構築だろ?」
そう、スキル特化型成長構築。幸い、探索者になった俺には「閃光」のスキルが既に取得できる状態にあった。俺はそれを伸ばしながら強くなることにした。なにしろ時間が無かったから。
その頃には既に探索者が人を襲ってアイテムを奪う事件も起こっていたから。そんな奴らに、彼の剣を渡してはいけないと……そう考えていた。
「……」
ユイが悲しげな顔で黙り込んでしまう。彼女は九条商会でその事件を起こしていた実行犯でもある。しまったな……。
「す、すまない。そんなつもりは……」
「ううん。続き、聞きたいからさ、続けてよ」
彼女に促されて続きを話す。
……。
結局、あの剣を手に入れるまで2年かかった。その間、他の者に剣が渡らなかったのは奇跡だ。もしかしたらシィーリアが手を回してくれていたのかもしれない。まぁ、そうだったとしても彼女は絶対に教えてくれないだろうが。
「アレを手に入れたのは和巳が努力した結果だよ。シィーリアはそんな事しないって」
「……ありがとう」
ひたすら探索者を救出して回って、スキルを伸ばして……死にそうになる事も何度もあった。
だけど、俺は諦めなかった。どうしてもあの剣を受け継ぐ必要があると思ったから。
俺は閃光と攻略情報を駆使する事で難関ダンジョンやボスを倒していった。探索者を助け、ダンジョンをクリアする。
やがてランクも上がり、もうすぐAランクかと思っていた時、シィーリアに呼び出された。管理局に行くと、あの剣を差し出された。新たに鞘が新造されていて、真新しく磨かれた剣が。
「……すごいじゃん。嬉しかった?」
「嬉しかった。シィーリアは悲しそうな顔をしていたが」
「悲しそう……かぁ」
「これを手にする事は、お主を苦難の道へ向かわせる」と伝えられたな。彼女に否定的な事を言われたのは、その1度だけだ。
「……」
俺はその剣を「バルムンク」と呼ぶ事にした。俺を助けてくれた彼……英雄の武器に相応しい名前に。
名前を変えたのは俺が彼の剣を、意思を引き継ぐという決意表明のためだ。俺の名前もそうだ。俺の中の英雄。彼を忘れない為に物語の英雄の名前を敢えて付けた。1文字少ないのは俺が未熟だから。その戒めに。
散々他の探索者には言われたがな。「調子に乗るな」とか「自意識過剰だ」とか。だが、俺にとってそんなことはどうでも良かった。
ただ彼のようになりたかった。彼のような英雄に。英雄になって、何かを守りたいと思った。
このあとの俺は決して褒められたものでは無いがな。ただ自分だけを見ていれば良かったのに、他の探索者達に苛立ち、勝手に視野を狭めていった。
鎧達に出会わなければ、自分の身を顧みなければ……今の俺はもっと酷い有様だっただろう。
「まぁ、こんな感じだ」
ユイは黙って聞いていた。そしてゆっくり立ち上がると少し幼いような笑みを浮かべた。
「……なんだ?」
「いやぁ? マイが惚れる理由もちょっと分かるなって」
「からかうなよ。真面目に話したんだぞ」
「からかってねぇし」
ユイは、立ち上がると俺の目をまっすぐに見た。
「和巳がマイを救った。そのマイがアタシを救ってくれた。アンタはもうなってるよ。アタシ達の英雄に」
ユイは、耳まで赤くした顔でニカリと笑う。
ミナセやユイには話していないが……彼のようになりたかったのは憧れだけじゃない。罪悪感が多分に含まれた逃げだったのかもしれない。
いつか彼の家族に会いに行こうと思っていた。彼の家族に会って、許されないとは思うが……謝って……その為にも、俺は人を救おうと。
だけど……そうだな。ミナセやユイと一緒にいられるのは、嬉しい。それだけでもやって来て良かったと思える。
「2人ともまだこんな所にいたの~!? そろそろアイルちゃん達と約束した時間だよ!!」
公園の入り口で息を切らせたミナセがやって来た。
「ヤバッ!? 急ごう和巳!」
ユイが俺の手を取ってミナセの元へ走り出す。
……。
あの時、俺に剣の事を告げてくれた彼の仲間は今どうしているのだろうか? 俺の事をどこかで見てくれているのだろうか?
……分からない。だけど、俺はこの先も同じ事を続けていくだけだ。
天王洲に作戦会議で召集された日。ミナセと天王洲が買い物をしてから冒険家Bに行くと言うので、俺はダンジョン周辺地区、不忍池でユイの修行を手伝ってから行くことにした。
「はぁ……もう無理だぁ……」
ドサリと倒れ込むユイ。彼女の隣には目を回したキル太が地面に転がっていた。透明化したキル太で俺の隙を突こうとした作戦だったが……。
「せっかく透明化があるのに動きが読みやすい。まだまだだな」
「うっせ!」
「だが、見違えるほど強くなった。感心したぞ。メイド達との訓練でまともにやり合えるだけの事はあるな」
ハルフェルメイド長以外は戦闘力が低いが、それでも魔族だ。竜人以上の力を持っている存在。そのメイド達を相手にずっと戦闘訓練をして来たユイだ。戦闘力も俺達に匹敵すると言っても相違ないだろう。
「それに、この前の川崎攻略……ユイの戦闘センスは高いな」
「お、おう……見てくれたんだ……」
「当然だ。変装の為とはいえ金髪にしているとは思わなかったが」
アレはウィッグというヤツだろうか? 髪色が変わるだけでああも別人に見えるとはな。ミナセも驚いていた。
ふとユイを見ると、彼女は顔を赤くしながらフルフルと小刻みに震えていた。
「あ、ああああああれはハルフェルが勝手に選んだだけだ! アタシのセンスじゃねーし!」
「そうなのか?」
「そうなんだよ!! マイのヤツ絶対笑ってただろ!? うあああああああ!!」
「似合うと褒めていたが。俺も似合うと思ったぞ」
「やめろ!! 恥ずかしすぎる!!!」
寝そべったまま、真っ赤にした顔を手で覆って暴れるユイ。その姿は子供のようだ。思わずキル太と顔を見合わせてしまう。なぜこんなに怒っているんだ……?
ひとしきり暴れた後、はぁはぁと息を切らせたユイは、頬を紅潮させながら俺を見上げた。
「和巳も配信開始したばっかの頃は恥ずかしいとか思った?」
「なぜ本名で呼ぶんだ……」
「いいじゃん。それかマイみたいに呼ぼうか? カ・ズ・くん?」
ユイがわざとミナセの真似をして呼んでくる。俺は「やめろ」と言って話を変えることにした。
「配信活動はミナセが始めたからな。正直、俺は自分の配信を見たことが無い。どんな評価かも気にした事もない」
「なんで?」
「俺の目標とする探索者は配信者では無いからだ。俺は人を救う為に探索者の活動をしているし、他の探索者にもそうであって欲しいと思っている」
「ふぅん……前に言ってた和巳を助けた探索者の影響ってヤツか」
ユイは「ん?」と何かに気付いたような顔をしてムクリと起き上がった。
「でもさ、その剣は和巳を助けた探索者の物だろ? なんで持ってんだよ?」
「バルムンクの事がそんなに気になるのか?」
「気になるな。教えてくれよ」
鞘に入ったバルムンクを見つめる。これを手に入れるには相当苦労したな……他人に語るほどの事では無いが……。
ジトリと俺を見つめるユイ。俺が話すまでいつまでも待っていそうな顔だな……。
まぁ、いいか。ミナセにも話した事がある内容だしな。
俺は、バルムンクを手に入れるまでの話を始めた──
◇◇◇
神田明神のモンスター流出事件から数年。俺は訳あって日常生活ができなくなっていた。
シィーリアに勧められて少数クラスの中学、高校へと進み……いわゆる学生らしい生活とは無縁だった。
学校と家の往復。たまにシィーリアが話し相手になってくれて……そんな生活だ。クラスメイトも同じような雰囲気で、それほど深く接する事はなかった。俺は、そんな生活から目を背けるように小説や、漫画を読みふけっていた。
「へぇ~意外。てっきりスポーツでもやってたのかと思った」
「シィーリアに言われて軽いトレーニングはやっていた。それくらいだ」
そんな生活でも現実を見なければならない時が来た。高校2年の頃、進路選択だ。このまま普通に就職するか探索者になるか……だ。俺に大学に進むという選択は無かったし、できないとも思った。俺だけがそんな贅沢をしていいのかと思っていたから。
「なんで?」
「神田明神の事件で生き残ったから……とだけ言わせてくれ」
「すぐに探索者にならなかったのか?」
「俺の命を粗末にするような事をしていいのか……その迷いがあった」
俺は特別運動神経が良い訳でもなかったから、探索者になればすぐに死ぬんじゃないかと思っていた。俺が死ねば、助けてくれたあの探索者の行動が無駄になってしまう。そう思って……。
そんなある日、俺は再会したんだ。
「再会? 誰と?」
「俺を助けてくれた探索者の仲間さ」
年はどれくらいだっただろう? 40代くらいだった気がする。その男はずっと俺を探していたと言っていた。仲間が助けた子供が無事に生きているかを確かめる為に……と。俺もその顔に薄らと見覚えがあった。俺を助けてくれた探索者……彼が亡くなった後に縋りついて泣いていた男だ。
男は俺を見るとこう言ったんだ。
「管理局が今、仲間の持っていた『紫電の剣』の後任を探している」と。
俺を助けてくれた探索者の武器。「紫電の剣」は指折りのレアアイテムだった。それを回収した管理局は、次の持ち主を選定していたんだ。強い者に強力な武器を渡し、データ収集をするのが彼らの役割だから。
俺に話しかけてきた男は「その剣を手に入れたい、だが不安がある」と言っていたんだ。
将来有望な者の方が選ばれやすいだろうと。その時、俺は思ったんだ。これは天啓なんじゃないかと。俺を救ってくれた探索者。彼の意思を継ぎ、その剣を手に入れることが俺が生き残った意味なのかもしれないと。俺は、シィーリアに探索者になりたいと伝えた。
「シィーリアは反対した?」
「最初は驚いていたな。俺が剣の話を知っていた事に。ただ、最終的には俺の意思を尊重してくれた。その上で、早く強くなる方法を教えてくれた」
「……それはアタシでも分かるよ。鯱女王の成長構築だろ?」
そう、スキル特化型成長構築。幸い、探索者になった俺には「閃光」のスキルが既に取得できる状態にあった。俺はそれを伸ばしながら強くなることにした。なにしろ時間が無かったから。
その頃には既に探索者が人を襲ってアイテムを奪う事件も起こっていたから。そんな奴らに、彼の剣を渡してはいけないと……そう考えていた。
「……」
ユイが悲しげな顔で黙り込んでしまう。彼女は九条商会でその事件を起こしていた実行犯でもある。しまったな……。
「す、すまない。そんなつもりは……」
「ううん。続き、聞きたいからさ、続けてよ」
彼女に促されて続きを話す。
……。
結局、あの剣を手に入れるまで2年かかった。その間、他の者に剣が渡らなかったのは奇跡だ。もしかしたらシィーリアが手を回してくれていたのかもしれない。まぁ、そうだったとしても彼女は絶対に教えてくれないだろうが。
「アレを手に入れたのは和巳が努力した結果だよ。シィーリアはそんな事しないって」
「……ありがとう」
ひたすら探索者を救出して回って、スキルを伸ばして……死にそうになる事も何度もあった。
だけど、俺は諦めなかった。どうしてもあの剣を受け継ぐ必要があると思ったから。
俺は閃光と攻略情報を駆使する事で難関ダンジョンやボスを倒していった。探索者を助け、ダンジョンをクリアする。
やがてランクも上がり、もうすぐAランクかと思っていた時、シィーリアに呼び出された。管理局に行くと、あの剣を差し出された。新たに鞘が新造されていて、真新しく磨かれた剣が。
「……すごいじゃん。嬉しかった?」
「嬉しかった。シィーリアは悲しそうな顔をしていたが」
「悲しそう……かぁ」
「これを手にする事は、お主を苦難の道へ向かわせる」と伝えられたな。彼女に否定的な事を言われたのは、その1度だけだ。
「……」
俺はその剣を「バルムンク」と呼ぶ事にした。俺を助けてくれた彼……英雄の武器に相応しい名前に。
名前を変えたのは俺が彼の剣を、意思を引き継ぐという決意表明のためだ。俺の名前もそうだ。俺の中の英雄。彼を忘れない為に物語の英雄の名前を敢えて付けた。1文字少ないのは俺が未熟だから。その戒めに。
散々他の探索者には言われたがな。「調子に乗るな」とか「自意識過剰だ」とか。だが、俺にとってそんなことはどうでも良かった。
ただ彼のようになりたかった。彼のような英雄に。英雄になって、何かを守りたいと思った。
このあとの俺は決して褒められたものでは無いがな。ただ自分だけを見ていれば良かったのに、他の探索者達に苛立ち、勝手に視野を狭めていった。
鎧達に出会わなければ、自分の身を顧みなければ……今の俺はもっと酷い有様だっただろう。
「まぁ、こんな感じだ」
ユイは黙って聞いていた。そしてゆっくり立ち上がると少し幼いような笑みを浮かべた。
「……なんだ?」
「いやぁ? マイが惚れる理由もちょっと分かるなって」
「からかうなよ。真面目に話したんだぞ」
「からかってねぇし」
ユイは、立ち上がると俺の目をまっすぐに見た。
「和巳がマイを救った。そのマイがアタシを救ってくれた。アンタはもうなってるよ。アタシ達の英雄に」
ユイは、耳まで赤くした顔でニカリと笑う。
ミナセやユイには話していないが……彼のようになりたかったのは憧れだけじゃない。罪悪感が多分に含まれた逃げだったのかもしれない。
いつか彼の家族に会いに行こうと思っていた。彼の家族に会って、許されないとは思うが……謝って……その為にも、俺は人を救おうと。
だけど……そうだな。ミナセやユイと一緒にいられるのは、嬉しい。それだけでもやって来て良かったと思える。
「2人ともまだこんな所にいたの~!? そろそろアイルちゃん達と約束した時間だよ!!」
公園の入り口で息を切らせたミナセがやって来た。
「ヤバッ!? 急ごう和巳!」
ユイが俺の手を取ってミナセの元へ走り出す。
……。
あの時、俺に剣の事を告げてくれた彼の仲間は今どうしているのだろうか? 俺の事をどこかで見てくれているのだろうか?
……分からない。だけど、俺はこの先も同じ事を続けていくだけだ。
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