461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第239話 スージニア尋問

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 ~461さん~

 スージニアを倒した俺達は、ジーク達とスージニアをシィーリアの屋敷へと運び込んだ。屋敷に到着する頃にはリレイラさんが到着しており、スージニアを拘束。客間へと運び込んだ。

 屋敷の主であるシィーリアはというと……。

「……」

 彼女はイスに座り、悲痛な表情をしていた。その視線の先にはベッドに寝かされたミナセ、ユイ、そしてジークの姿があった。

 みんな回復薬と医者が使った回復魔法のおかげで傷は治ったようだが、ジークの左眼は傷が深く、もう戻らないらしい。

 目が覚めた時……特にジークが心配だ。左眼も、命より大事だと言っていた愛剣も失ったのだから。

「すまぬ……妾がもっと早く気付いてやれば……」

 シィーリアは涙を堪えているようだ。彼女を無理に連れて行く気にはどうしてもなれず、様子を見守っていると彼女の方から話題を振ってきた。

「いかんな……妾にはまだやらねばならぬ事があるのじゃ」

「大丈夫か? シィーリア」

「……大丈夫な訳ないじゃろ。今すぐ九条とあのスージニアという女を八つ裂きにしてやりたいわ」

 部屋の隅にいたタルパがビクリと反応する。シィーリアは、そんな彼女の反応に静かに首を振った。

「すまぬ……妾も気が動転しておったのじゃ。お主が恐れるような事は何もせぬと誓おう」

「は、はい……」

「シィーリア、スージニアの尋問は任せていいか? 今アイツの前にいけば……俺が何するか分からねぇから」

「ああ。よくぞ生かして捕らえてくれたな。感謝するのじゃ」

「……」

 何も言えない。実際、ダガーを投げる直前までスージニアを殺すつもりだった。それが踏み止まれたのはアイルがいたからだ。今スージニアを逃せばアイルを助けられないと思ったから……。

 ちっ、何感傷に浸ってんだ。俺じゃねぇだろ、キツいのは。

 シィーリアは、深呼吸して椅子から立ち上がった。

「よし……行ってくるかの」



◇◇◇

 ~シィーリア~

 スージニアを拘束している客間の扉を開ける。中へ入ると中央のテーブルにリレイラとメイド長のハルフェル。そして魔法によって作られた鎖で拘束されたスージニアの姿があった。胸の傷は治療されているが、時折顔を歪める様子から完全に治癒できていない事が分かる。

 リレイラが近寄ってきて耳打ちしてくる。

「ダメです。何も話してくれません」

「後は妾がやろう。お主はヨロイを頼む。平気なフリをしておるが、内心は相当傷付いておるじゃろうからな」

「……分かりました。封印魔法シールは使用していますが何をするか分かりません。お気を付けて」

「それと」

 呼び止めると、リレイラは怪訝な顔をした。

「この事はまだ管理局の誰にも言うな」

「え? ですが……」

「本当に信用できる者にしか話してはいかん」

 リレイラ以外の魔族には話す事はできぬ。この裏には魔王様の姉君、イシャルナ様が関わっておる。他の魔族に知られれば妾達に謀反の疑いがかけられるじゃろう。同じ魔族を信用できぬとは、なんとも皮肉な話じゃ。

 ……とはいえ、イシャルナ様が妾のことに気付かないはずがない。今妾達が無事なのは捨て置かれているからなのか……何か嫌な予感がするのじゃ。

「……分かりました」

 リレイラが出て行ったのを確認して、スージニアの向かいへと腰を下ろした。スージニアは妾をジッと見つめた後、顔を伏せた。

「妾の顔に何か付いておるかの?」

「……」

 答えぬ……か。今アイルは捕えられているのじゃ。こうしているうちにも事態は悪化しておるかもしれぬ。多少強引でも話を聞き出すか。

「お主はツノ無しのようじゃな」

「……それがどうした」

 スージニアが妾を睨み付ける。反応したか。ヨロイからスージニアの話を聞いた時、真っ先にそれが気にかかった。イシャルナ様もツノが無い。今回の事がイシャルナ様の策謀ならば、なぜ同じツノ無しのスージニアを使役しているのかと。

 まずは揺さぶってみるかの。

「この世界には選ばれた魔族しか転移して来れぬはずじゃ。何故ツノ無しのお主がこの世界におるのじゃ?」

 スージニアが唇を噛み締める。よほど「ツノ無し」と言われたのが許せぬようじゃな。ここで脅しをかけてみるか。

「……ダンマリか。このままお主が答えぬのならお主をルガトリウム異世界へ強制送還せざるを得ないが?」

 どうじゃ? ツノ無しのお主にとってルガトリウムに良い感情は無いはずじゃ。

「……そんな事はできない。私の存在を組織内に明かした時、後悔するのはお前の方だ」

「それはお主の背後に魔王様の姉君、イシャルナ様がいるからか?」

 スージニアは何も答えない。だが、1つ分かった事がある。イシャルナ様へ絶対の忠誠を誓った者ならば、今この場で舌を噛み切って死んでもおかしくない。余計な話をしないようにするために。

 だが、この女子おなごはそれをしない。ということは、イシャルナ様に完全な忠誠を誓っておらぬということ……ならば、まだ情報を聞き出せるはず。ここは彼女に選択肢を与えてみるべきか。強引じゃが……彼女の傷を利用するか。

 メイド長のハルフェルへと目を向けると、彼女はうやうやしく頭を下げた。

「ハルフェル。ヨロイを連れて来い」

「承知しました」

 ヨロイの名を告げた時……スージニアに異変が起こった。体が震えているのを隠しきれていない。

 この反応、よほどヨロイが怖いのじゃな。先程まで顔色1つ変えなかったお主の顔に動揺の色が見えるぞ?

「後の尋問はヨロイに任せることとしよう」

「ま、待て……あの男は……」

 想像以上の反応……ここはまず1つに絞って情報を聞き出すか。

「妾が知りたいのはイシャルナ様の目的だけじゃ。それが知りたい。それさえ教えてくれたのなら、お主の身の安全は妾が保障しよう」

 スージニアの表情に迷いが生まれる。スージニアは命が大事か……。

 そしてそれは彼女の状況を読み解けば理解できそうだ。彼女は九条アラタの元で暗躍しておった。そしてイシャルナ様への忠誠よりも、今この場での死を恐れている。そこから考えるに、九条の元にいる事が彼女の価値観を形成しているということか。もう少しだけ脅させて貰おう。

「話してくれぬのならば……お主の処遇はヨロイに一任するしかないが?」

 立ち上がると、スージニアは真っ青な顔になった。

「わ、分かった……話す……イシャルナ様は東京パンデモニウムへ入ると行っていた」


「東京パンデモニウム……なぜじゃ?」


 震える体を押さえ付けるように両腕を抱き、スージニアはポツリと呟いた。

「東京パンデモニウムの正体は……時の迷宮。イシャルナ様はそれを起動しようとしている」


 時の迷宮?


 その言葉に全身が凍り付くような感覚がした。


「時の迷宮……時の迷宮じゃと!?」


 全てが繋がっていく。なぜイシャルナ様がこの世界を選んだのか。わざわざそれを起動させようとするのか……妾達が知っている時の迷宮の伝説が真実であるならば……。

「お主……それが何を意味しておるのか分かっておるのか!?」

「……どういうこと?」

 スージニアの顔に疑問が浮かぶ。コヤツら……イシャルナ様に騙されておるのか。時の迷宮の伝説は魔王様の血族しか知らない内容がある。なぜ我らの世界で時の迷宮が封印されたのかも。

「いいか? 時の迷宮にはこんな伝説がある。時の迷宮を起動すれば、真なる時間魔法が解放される。それを使えば過去と未来へ自由に行き来し、現在を改変できると」

「それは知っている。イシャルナ様が言っていた」

「お主、その代償は知っておるのか?」

「代償?」

「時間魔法の使用には大量のマナを使用する」

「それがどうしたの? マナは魔法の触媒。使った所で何も無い」

「それは『我らが使う魔法』だからじゃ!!」

 焦って大声を出してしまう。妾達が使う魔法はマナを触媒に使用する。マナは使えば力を失うが、長い年月をかけて世界を循環する。それ故妾達の世界はマナと共存できておる。

 だが、時間魔法はその根幹から異なっておる。マナを吸い尽くし、消費し、2度とマナが戻ることの無い古代の魔法。文字通り魔の力じゃ。

「そして……わざわざマナが大量に残るこの世界を時の迷宮起動の場に選んだとするならば……相当な過去……神話時代のルガトリウムに飛ぶつもりかもしれぬ」

「何の為に?」

「分からぬ、分からぬが……もしそうなってしまえばこの世界のマナは食い尽くされ、枯渇してしまう」

 マナは生命という太陽が放つ光。いわば生命が生命たり得る証でもある。それをもし一瞬にして奪い去れば……。


「この世界は形状を維持できず……崩壊する」


「え……」

 スージニアがその眼を見開く、その様子に無性に腹が立った。なんと恐ろしいことに手を貸していたのかと。そして、それを何食わぬ顔をして指示していたイシャルナ様にも。

「もはや悠長な事を言っている暇は無い。お主もイシャルナ様を止めるのに協力しろ!!」

「つ、ツノがあるお前の言うことなど……」

「この顔が嘘を吐いておる顔か!!」

 テーブルを叩く。力の加減ができず、テーブルを真っ二つに破壊してしまう。スージニアはビクリと体を震わせた。

「良いのか!? お主の大切な九条もろとも全て消し飛ぶ事になるぞ!?」

「……」

「イシャルナ様は今までどんな事をもやってのけたお人じゃ。彼女がやると言った限りは必ずやる。今止めないと後悔する事になる」

 後悔どころじゃない。世界中のマナを使い果たせば待ち受けるのは無じゃ。何もない闇。そうなってはジーク達も消えてしまう。嫌じゃ、そんなのは……。

「イシャルナ様達が東京パンデモニウムに向かうのはいつじゃ!?」

「天王洲アイルと紫電の剣を回収したら東京パンデモニウムへ入る予定だった……既に魔法障壁の中にいるはず……」

「なんじゃと……?」

 あの魔法障壁の中は広大だ。最深部に到着するにはまだ時間はあるはずじゃが……モタモタしている暇は無い。

「……」

 スージニアが視線を彷徨わせる。困惑したような顔……ダメじゃな。思考が止まってしまっておる。今はこれ以上迫っても逆効果か。

「……少しだけ時間をやろう。それまでに考えておいてくれ。妾達に協力するか否かを。妾達はダンジョンへ向かう支度をする」

 スージニアを置いて扉を出る。とにかく今は準備しなければ。東京パンデモニウムを攻略して九条とイシャルナ様を止める。


 それしか妾達に道はない。







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